親の老いを突然目の当たりにしたり、在宅介護に限界を感じ始めたりして、何から手をつけたらいいか分からず焦りや不安を抱える方は多くいらっしゃると思います。
本記事では、介護に関する最初の相談先として選ぶべき窓口をはじめ、無料で頼れる公的機関・民間サービスのそれぞれの特徴を分かりやすく解説します。
また、実際に窓口へ連絡する際のスムーズな流れや、事前に手元へ準備しておくべき具体的なメモの項目について、専門家や介護経験者のリアルなインタビューをもとにご紹介しています。
仕事や家事と介護を両立させ、一人で孤独に抱え込まないための第一歩として、お住まいの地域での具体的な行動計画の立案に活用してください。
はじめての介護相談は「地域包括支援センター」へ!
「親の様子が最近おかしい」「急に介護が必要になったけれど、何から手をつけていいか分からない」と、焦りや不安を抱えていませんか?
仕事や家事に追われる中で、知識ゼロの状態から介護と向き合うのは本当に大変なことです。
もし今、どこに相談すべきか迷っているなら、まずは「地域包括支援センター」へ相談してください。
地域包括支援センターは、各市区町村が設置している高齢者の暮らしを支える総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門家が在籍しており、介護保険の申請から日々のちょっとした困りごとまで、あらゆる相談に無料で乗ってくれます。
「まだ介護が必要かどうかも分からないレベルだけど…」という段階でも全く問題ありません。むしろ、取り返しがつかなくなる前に、少しでも不安を感じたらすぐに相談するのが正解です。
実際に多くの専門家も、「まずは地域包括支援センターを頼ることが、後悔しない介護の第一歩だ」と口を揃えます。
介護福祉士の須川さん(仮名)にお話しを伺いました。
インタビュー情報(クリックして開く)
・お名前:須川さん
・性別:男性
・年齢:39歳
・職業:介護福祉士(10年)
・居住地:東京都
須川さん:
介護現場で長く働いていると、「もっと早く相談してくれていれば、ご家族がここまで疲弊せずに済んだのに」と感じるケースにたくさん出会います。ご家族だけで抱え込んで限界を迎えてからでは、取れる選択肢も狭まってしまいます。
「こんな些細なことで相談していいのかな」とためらう必要は全くありません。プロの目が入ることで防げるトラブルはたくさんありますので、少しでも親の様子に不安を感じたら、まずは地域包括支援センターを頼ってほしいですね。
【無料】介護の相談窓口一覧
地域包括支援センター以外にも、介護に関する悩みを無料で相談できる窓口は複数存在します。
それぞれの窓口には役割や得意分野があるため、今の自分の状況や知りたい内容に合わせて使い分けることが、スムーズな介護への第一歩です。まずは、各相談窓口の基本情報と「どんなときにおすすめか」を一覧表で確認しましょう。
市区町村の担当窓口
役所(市役所・区役所・町役場など)に設置されている「高齢者福祉課」や「介護保険課」といった窓口です。
介護サービスを利用するための第一歩である「要介護認定」の申請窓口となります。
制度の仕組みや事務的な手続きについて最も正確な情報を得られるため、まずは公的な手続きを確実に進めたい場合に足を運んでみましょう。
社会福祉協議会
社会福祉協議会(通称:社協)は、地域福祉の推進を目的として各市区町村に設置されている民間組織です。
配食サービスや車椅子の貸し出し、ボランティアの派遣など、公的な介護保険ではカバーしきれない独自のサポートを行っています。
認知症で判断能力が低下した方の預貯金出し入れなどを手伝う事業も行っているため、介護保険以外の生活密着型のサポートが必要な際にも頼りになります。
参考:地域福祉・ボランティア | 社会福祉法人 全国社会福祉協議会
民生委員
民生委員は、厚生労働大臣から委嘱されてそれぞれの地域で活動しているボランティアです。
高齢者の見守りや相談活動を行っており、必要な場合は専門機関への橋渡しをしてくれます。
親が遠方に住んでいて頻繁に様子を見に行けないご家族にとって、現地の状況確認を頼めます。(※担当する民生委員の連絡先はお住まいの市区町村役場で確認できます)
参考:ご存じですか?地域の身近な相談相手「民生委員・児童委員」 | 政府広報オンライン
病院の相談窓口
総合病院や大きな病院には「医療相談室」や「地域医療連携室」が設置されており、医療ソーシャルワーカーと呼ばれる専門家が常駐しています。
医療と介護の両方の視点を踏まえ、スムーズに次の生活へ移行できるようプロの視点で退院支援を行ってくれます。
電話相談窓口
自治体や民間団体が運営している電話ホットラインです。
24時間対応や、土日祝日も受け付けている窓口も多くあります。
突然のトラブルで行き詰まったときや、対面での相談にどうしてもハードルを感じてしまう場合の相談先としても適しています。
参考:よりそいホットライン | 一般社団法人 社会的包摂サポートセンター
法テラス
国が設立した「法的トラブル解決のための総合案内所」です。
介護に伴う法的な問題に対して、制度の案内や無料の法律相談(条件あり)を行っています。
認知症の親の財産をどう守るか、あるいは親族間で意見が対立してしまった場合など、専門的な解決が求められる場面で活用しましょう。
介護の相談をするときの主な流れ
相談先がなんとなくイメージできたところで、「実際にどうやって相談すればいいの?」「専門用語なんて分からないけど大丈夫?」という疑問にお答えします。
基本の流れは以下の3ステップです。特別な知識は一切不要ですので、安心してください。
- ステップ1:相談先を決める
- ステップ2:予約をいれる
- ステップ3:状況を伝える
それぞれ詳しくご紹介します。
ステップ1:相談先を決める
まずは、前章を参考に相談する窓口を決めましょう。
迷った場合や、まだ介護認定を受けていない全くの初期段階であれば、親がお住まいの地域の「地域包括支援センター」を選ぶのが最も確実です。
インターネットで「(親が住んでいる市区町村名) 地域包括支援センター」と検索するか、親の住む役所の代表電話に「実家の親の件で包括支援センターに繋いでほしい」と問い合わせてみましょう。
親と離れて暮らしている子世代が、自分の自宅から電話をかけても全く問題ありません。
ステップ2:予約をいれる
相談先が決まったら、いきなり窓口へ訪問するのではなく、まずは電話で予約を入れましょう。
担当者が不在だったり、他の相談者の対応で長く待たされたりして、せっかくの時間が無駄になってしまうのを防ぐためです。
初めて電話をかける時は緊張するかもしれませんが、以下のように伝えるだけで大丈夫です。
「実家の親の介護(今後の生活)について、初めて相談したいのですが、お話を聞いていただける面談の予約をお願いできますか?」
これだけで、担当者が「ご本人のお住まいはどちらですか?」「今はどのような状態ですか?」と優しくリードしてヒアリングし、スムーズに日程調整をしてくれます。
「ネットでうまく検索できない」「どこに電話すればいいかやっぱり迷う」という場合は、自治体の広報誌や情報誌を活用して、まずは代表窓口に電話をかけてみるのもおすすめです。
実際に介護を経験した方や専門家も、手元にある情報からまずは連絡をとってみることをおすすめしています。
介護福祉士である須川さん(仮名)にもお話しを伺いました。
インタビュー情報(クリックして開く)
・お名前:須川さん
・性別:男性
・年齢:39歳
・職業:介護福祉士(10年)
・居住地:東京都
須川さん:
どこに相談すればいいか分からない時は、タウンページなどの冊子にいろんな電話番号が載っているので、そこにかけてみるのもいいと思いますよ。
そこに電話をして「もうめちゃくちゃ大変で、どうにかしたいんですけど」と率直に相談してみる方法も全然ありです。
介護経験者の山田さん(仮名)にお話しを伺いました。
インタビュー情報(クリックして開く)
・お名前:山田さん(仮名)
・性別:女性
・年齢:65歳
・職業:自営業・フリーランス
・居住地:東京都
・当時の状況:フリーランスの仕事をしながら、脳梗塞で寝たきりとなった80歳頃の母親を姉と協力して介護。親の年金だけでは個室代などが足りず、資産把握も困難だったため、不足分を姉と折半した。1円単位で厳密に帳簿をつけて金銭トラブルを防ぎ、役所に相談して相性の合わないケアマネジャーを変更し精神的負担を軽減した。
山田さん:
どこに相談していいか分からない時は、ご両親が住んでいる自治体の広報誌を見てみるのが一つの手かなと思います。シニアや介護の欄を見ると、相談窓口のヒントが載っていたりするんですよね。
私も実際に区の広報誌を見て、そこに書いてある直通の電話番号にかけて問い合わせをしたところ、担当の方に繋いでもらうことができました。
あるいは、まずは区役所や保健所に電話してみて「こういう問題はどこに聞きに行けばいいですか?」と聞いて担当機関や担当者に繋いでもらうという方法もお勧めです。
ステップ3:状況を伝える
予約した日時に窓口へ行く、あるいは電話で、親の現状や家族の困りごとを伝えます。
順序立ててうまく話せるか不安になるかもしれませんが、相手は毎日何件もの相談を受けているプロです。
「仕事との両立が限界で夜も眠れない」「イライラして親にきつく当たってしまう」といった、家族のリアルな悩みや愚痴をそのまま吐き出してしまって構いません。
むしろ、遠慮して「まだ頑張れます」と見栄を張ってしまうと、緊急性が低いと判断され必要な支援が後回しにされてしまう可能性があるので注意が必要です。
介護経験者の方からも、「自分の限界や金銭事情を正直に伝えることが重要」というリアルな声が寄せられていますのでご紹介します。

インタビュー情報(クリックして開く)
・お名前:古川さん
・性別:女性
・年齢:39歳
・職業:パート・アルバイト
・居住地:東京都
・当時の状況:自身の家庭を抱えながら、車で1時間の距離を週3回通い、若年性アルツハイマー(要介護3)の母親を介護。しかし父親の急死後、母の貯蓄がほぼないことが判明。徘徊などの症状も重なる中で金銭的・体力的に限界を迎え、「介護費用はこれ以上出さない」と決断。
古川さん:
役所に相談した際、なかなか相手が動いてくれなくて、思わず「このままだと母のこと殺しそうですけど大丈夫ですか?」と極限状態を伝えたんです。そこまで言って、やっと役所が動き出してくれました。
だからこそ、自分にはお世話ができない、費用が負担できないということは、最初からはっきりと言ってしまった方がいいと思います。
介護の相談をする前に準備しておくこと
介護の相談をする前には、担当者に「今のリアルな状況」を正確に把握してもらうため事前に情報を整理しておくのがポイントです。
初めての相談では緊張したり、焦って現状をうまく説明できなかったりすることがよくあります。
相談前に準備しておくことは以下の3つです。
- 本人の基本情報と心身の状況をメモする
- 家族関係とその状況をメモする
- 自分が今一番困っていることや希望を整理する
それぞれ詳しくご紹介します。
本人の基本情報と心身の状況をメモする
親の生年月日、住所、かかりつけ医、持病や飲んでいる薬などの基本情報に加え、「最近できなくなってきたこと」や「気になる変化」を具体的に書き出しましょう。
【本人の情報で整理しておくこと】
- 基本情報:氏名、年齢、住所、電話番号、かかりつけの病院、お薬手帳の有無
- 生活状況:食事、着替え、入浴、排泄は自分でできているか(介助が必要か)
- 身体の状況:歩行時にふらつきはないか、最近転んでいないか
- 認知の状況:物忘れがひどい、同じことを何度も聞く、怒りっぽくなった、鍋を焦がす等の変化はないか
「たまにトイレを失敗する」「お風呂に1週間入っていない」といった言いづらいデリケートな情報ほど、必要なサポートを見極めるための重要な手がかりになります。
離れて暮らしていて分からない項目については、「数ヶ月会っていないので現状は分からない」と伝えることも立派な情報です。
また、実際に介護の相談をしに行った方によると、言葉で現状を説明するのが難しい場合は「写真」を活用するのも効果的だと言います。
インタビュー情報(クリックして開く)
・お名前:吉田さん
・性別:女性
・年齢:47歳
・職業:会社員
・居住地:岡山県
・当時の状況: 同じ町内に住む78歳(要介護2)の母親が、庭で転倒して骨折したことを機に介護が開始。非協力的な2人の兄に対し、自身の更年期障害による体調不良を理由に一時音信不通となり、強制的に役割分担させた。介護を仕事のプロジェクトと捉え、公的機関をフル活用することで、自身の負担を大幅に軽減。
吉田さん:
私の場合、制度のことが100%分からない状態で福祉事務所に駆け込みました。
その際、言葉で説明するだけでなく、親のケガの状態がひと目でわかる写真を見せて「今こんな状態で大変なのですが、どうやって助けてもらえますか?」と相談しました。
それが迅速な支援につながる一番の行動だったと思います。
家族関係とその状況をメモする
介護は親本人だけでなく、家族全体のサポート体制をどう構築するかが鍵となります。
また、介護サービスを利用する上で「お金」の問題は避けて通れません。以下の項目を整理しておきましょう。
【家族関係の情報で整理しておくこと】
- 同居の有無:親は誰と同居しているか(または一人暮らしか)
- キーパーソン(主な窓口):主に誰が動くのか、その人の仕事や家庭の状況(フルタイム勤務、育児中など)
- 協力者の有無:いざという時に手伝ってくれる他の親族(兄弟姉妹など)は近くにいるか
- 経済状況の目安:親の年金額、預貯金の概算など、毎月介護に充てられる予算(※分かる範囲で)
これらを伝えることで、家族が仕事や自分の生活と両立して共倒れにならないための、予算に見合った現実的なプランを相談員が提案しやすくなります。
自分が今一番困っていることや希望を整理する
「何から話していいか全く分からない」という場合は、今一番ストレスに感じていること、あるいはどうしても譲れない希望などを整理しておきましょう。
例えば、以下のような「本音」で構いません。
【介護における困りごとや希望の例】
- 「日中は仕事で誰もいないから、とにかく日中の一人歩きによる事故を防ぎたい」
- 「自分の睡眠時間が削られて限界なので、夜間だけでもどうにかしたい」
- 「絶対に今の仕事は辞めたくない(介護離職は避けたい)」
- 「下の世話(排泄介助)だけは自分ではどうしてもできない」
「こんなことを言ったら冷たい家族だと思われるのでは…」と体裁を気にする必要は一切ありません。
プロはその「SOS」と「家族の限界ライン」を受け止めたうえで、必要な支援の優先順位をつけてくれます。
看護師であり様々な介護施設で高齢者ケアに携わってきた菅原さんに、状況を整理して伝えることの大切さについてお話を伺いました。


例えば、お金をかけてサービスに頼って負担を減らしたいのか、それともお金をかけずに自分たちでカバーするのか、そういったご家族の優先順位を明確にしてご相談いただければと思います。
また、こうした本音や限界を伝える際は、ただ感情をぶつけるだけでなく「事実ベース」で整理しておくことも大切です。
介護経験者の吉田さん(仮名)も以下のように語っています。
インタビュー情報(クリックして開く)
・お名前:吉田さん
・性別:女性
・年齢:47歳
・職業:会社員
・居住地:岡山県
吉田さん:
介護の相談をするときは、感情論で動かない方がいいと思います。まずは「何が困っているのか」を事実ベースで書き出してみてください。
それを整理することで、自分たちで解決すべきことなのか、それとも公的サービスで解決できる課題なのかを見極めやすくなります。
まとめ
親の介護は、ある日突然、あるいは徐々に始まります。
仕事や家事でただでさえ忙しい中、介護の知識ゼロの状態で一人抱え込んでしまうと、あっという間に心身の限界を迎えてしまいます。
本記事の重要なポイントは以下の通りです。
【本記事の重要なポイント】
- はじめての介護相談は、親が住む地域を管轄する「地域包括支援センター」がおすすめ。
- 相談は基本的に無料。「まだ早いかも」と思う段階での相談が、後悔しない介護の鍵になります。
- 相談をスムーズに進めるために、親の心身の状況や家族の就労状況などを事前にメモしておくようにしましょう。
専門的な知識がないのは当たり前です。「今の状況なら、まずは地域包括支援センターに電話をかければ道が開ける」。
この具体的な第一歩を踏み出すだけで、介護のプロがあなたの味方になり、一緒に伴走してくれます。
決して一人で悩まず、地域包括支援センターなどの機関に相談の予約を入れてみましょう。