• 認知症
  • 【公開日】2023-01-31
  • 【更新日】2023-12-20

認知症の入院費用はいくら?入院費用を軽減する方法についても解説

認知症の入院費用はいくら?入院費用を軽減する方法についても解説

認知症が進行すると、汚物を触る方や徘徊する方、中には暴力を振るう方もいます。そうなると在宅での介護が難しくなるケースがあります。

しかし認知症で入院する際には費用が心配になるのではないでしょうか。

本記事では認知症症状での入院における費用の目安と、高額になってしまった際に利用できる制度について解説します。

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公益社団法人青少年健康センター 理事
所有資格:CFP®,FP技能士1級,総合旅行業務取扱管理者
専門分野:高齢期の資金計画
職業: ファイナンシャルプランナー
出身組織: 駒沢大学大学院

1963年、東京都港区生まれ。 大学1年生のときにフリーライター活動をはじめ、マネーライターを経て、1992年にファイナンシャルプランナーになる。FP資格取得後は、新聞、雑誌、ウエブに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などもおこなう。 ひきこもりのいるご家庭向けに生活設計アドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、教育資金アドバイスをおこなう「子どもにかけるお金を考える会」を主宰している。著書・監修書は、「おひとりさまの大往生 お金としあわせを貯めるQ&A」(主婦の友社)ほか、70冊を超える。プライベートでは、二男一女の母。詳しくはこちら

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認知症で入院した場合費用はどれくらいかかる?

認知症症状の緩和目的の入院は精神科が該当します。しかし、認知症と診断された誰もが入院できるわけではありません。在宅介護が困難で、治療が必要であると認められれば入院ができます

認知症で入院する場合、医療保険による自己負担割合や入院環境によって費用は大きく異なりますが、1か月の入院で約13万円~30万円ほどの金額が目安となるでしょう。

認知症で入院した場合にかかる費用は以下のとおりです。

  • 認知症の治療費
  • 個室や2人部屋などの差額ベッド代
  • 食費、病衣代、リネンなどのレンタル料
  • テレビ視聴料にかかる費用など

費用は通常の入院と同じです。居住費、治療費、サービス費、食費です。費用の内訳を具体的に解説します。

認知症の治療費

認知症の治療費は認知症の進行度やADL(日常生活自立度)、BPSD(周辺症状)の程度によって大きく異なります。症状の緩和には投薬治療と非薬物治療が用いられます。認知症の治療費は以下の表を参照してください。

認知症病棟費用 ※1割負担の場合

認知症病棟入院料1 30日以内の利用

1,811円

31日以上60日以内の利用

1,503円

61日以上の利用

1,204円

認知症病棟入院料2 30日以内の利用

1,318 円

31 日以上60日以内の利用

1,112円

61日以上の利用

988円

このほかにも、認知症専門診断管理料や認知症患者地域連携加算代、投薬代、カウンセリング料などが必要です。また、在宅復帰に向けてのリハビリが増えると機能訓練加算もかかり、より高額な治療費が加算される場合があるのです。また、排泄介助や食事介助にも都度費用がかかります。どの費用が必要になるか医師に相談してみましょう。

個室などの場合の差額ベッド代

個室の場合は差額ベッド代が必要です。基本的には「医療・介護を通じた居住費負担の公平化」により従来型個室と多床室の居住費は基本的に一律となっています。しかし、設備の違いにより病院によって個室費用が異なる場合がありますので確認が必要です。

厚生労働省が提示している居住費(介護医療院の場合の日額)

多床室

従来型個室

基準費用日額

377円 1,668円

負担額(第1段階)

0円 490円

負担額(第2段階)

370円 490円

負担額(第3段階①)

370円 1,310円

負担額(第3段階②

370円 1,310円

非課税世帯かつ年金収入が80万円以上の場合の差額ベッド代は940円です。

食費や病衣代

治療費は医療保険適用となり、1~3割負担で利用できます。しかし、居住費はもちろん食費や病衣代などの生活にかかる費用は全額自己負担です。病院により必要な費用は違うので、入院先の病院に確認が必要です。入浴に際して費用がかかる病院もあるので確認しておきましょう。

食費(介護医療院の場合の日額)

食費 基準費用日額 1,445円
負担額(第1段階) 300円
負担額(第2段階) 390円
負担額(第3段階①) 650円
第3段階② 1,360円

※第1段階…生活保護者や非課税世帯で老齢福祉年金を受給している者

第2段階…市民税非課税世帯で、年金所得などの合計所得金額が80万円以下の者

第3段階①…市民税非課税世帯で、年金所得などの合計所得金額が80万円超120万円以下の者

第3段階②…市民税非課税世帯で、年金所得などの合計所得金額が120万円超の者

上記の第1から第3段階に該当するものであっても、一定以上の資産を保有していると、軽減措置が受けられない第4段に分類される。

その他必要費用例

テレビ代 1,000円(24時間) 持ち込みテレビ代 55円
コインランドリー 100円(回) ティッシュ代 99円
保冷庫 1,000円(8日間) 洗濯代 550円/kg
日用品一式(日額) 341円

油山病院くまもと南部広域病院から抜粋

実際の病院から例をとりましたが、病院ごとに費用は異なるので注意が必要です。入院する前や入院時に有料になる品物のリストと代金が記載された表を渡されるなど、説明があるのが一般的です。もし、説明がない場合は質問するとよいでしょう。

その他

入院となるとほかに消耗品などの費用が必要です。病院で入浴するとなるとシャンプーなどの衛生用品などです。

必要なもの一例

  • おむつ
  • シャンプーなどの入浴用品
  • 歯ブラシやブラシなどの衛生用品
  • 肌着類
  • 化粧水などの化粧品

利用される方によって必要なものは異なってきますが、入院費用や治療費以外にもあらゆる費用が発生します。実際にどの程度の自己負担額になるのでしょうか。

認知症入院費用の保険と自己負担額目安

認知症治療で入院される時には国民健康保険から医療保険として適用されます。実際の金額の1〜3割負担で済みますが、居住費や差額ベッド代、食費などは医療保険の対象にはなりません。以下について解説します。

  • 医療保険の適用による自己負担額(1~3割)
  • 保険適用外の費用
  • 任意で加入している医療保険から入院給付金が受け取れるケースもある

実際にどこまで保険適用になり、自己負担額はどのくらいになるか解説します。

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医療保険の適用による自己負担額

認知症の入院費用で保険適用になるのは基本的には治療費のみです。しかし、治療目的でも保険適用にならないケースや、例外で適用されるケースなどあるので注意が必要です。

認知症入院における保険適用範囲

検査代 入院中に受ける各種検査(血液検査、神経心理検査など)
薬代 認知症の周辺症状を抑えるために処方される薬代や、中核症状を一時的に抑えるために処方される薬代など
機能訓練加算 周辺症状にはまず非薬物治療が行われます。専門スタッフによる機能訓練を受けた時には機能訓練加算がされます。
処置 療養指導などを受けた時

医療サービスを受けた時に基本的に適用されます。

保険適用外の費用

保険適用の範囲を解説しましたが、医療ケア以外は保険適用外となるので全額自己負担です。実際の入院では治療費以外でどのくらいの負担になるのでしょうか。

例)要介護3 従来型個室利用・非課税世帯・第2段階の場合
1ヵ月内訳 テレビ30時間、冷蔵庫40時間、コインランドリー16回使用

1ヵ月内訳 テレビ30時間、冷蔵庫40時間、コインランドリー16回使用

居住費 420円/日
食費 390/日
病衣 110円/日
小計 920円/日
テレビカード代 1,000円×3
コインランドリー 100円×16
冷蔵庫 1,000×5
おむつ代 4,0000/月
小計 49,600円
合計 77,220円/月

※モデルケースとして作成

あくまで一例です。おむつ代はADLによって使用頻度が異なりますので、金額を抑えられる可能性はあります。

テレビカード代などは節約はできますが、娯楽がなくなれば認知症が進行してしまう危険性もあります。さらに治療費の自己負担額が認知症入院の費用です。

任意保険でカバーできる場合も

国民健康保険とは別に任意で医療保険に加入されている方も多いのではないでしょうか。任意保険に加入している場合、治療のために入院すると、入院給付金が受け取れます。

保険適用の費用が抑えられても、保険適用外の費用がかさんで高額になる場合があります。また、認知症の方の中には多床室がストレスになる方もいるので、個室での入院をせざるを得ない場合もあります。また大声を出したり、不規則な行動を取るために、個室への入院を促されるケースもあります。

任意の医療保険では、入院1日目から入院給付金が出る商品が多くあります。また認知症保険に加入していると、認知症と診断された時に一時金が受け取れます。

認知症入院費用の自己負担額が高額になった場合

保険適用で1割負担になったとしても、投薬やカウンセリング、機能訓練、各種サービス加算で高額になってしまう場合もあります。支払いが困難になったら以下の3つの制度を利用できます。

  • 高額療養費制度
  • 健康保険限度額適用認定証
  • 高額療養費貸付制度

国民保健には入院費用の支払いが難しい場合の制度があります。支払いが困難になった場合の制度や対象者、申請方法まで解説します。

高額療養費制度

健康保険や国民健康保険には、入院費用の支払いが難しい場合の制度があります。支払いが困難になった場合の制度や対象者、申請方法まで解説します。
H3高額療養費制度
高額療養費制度とは、自己負担額が一定の金額以上になった場合に国民健康保険や国民健康保険から給付を受けられる制度です。上限の金額は年齢や収入によって変わります。

70歳以上

区分 上限額
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万円~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収156万~約370万円 80,100円+(医療費-267,000)×1%
年収156万円~約370万円 57,600円
住民税非課税世帯Ⅰ 24,600円
住民税非課税世帯Ⅱ

※年金収入80万円以下など

15,000円

69歳未満

区分 上限額
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370~約770万円 80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円 57,600円
住民税非課税世帯 35,400円

高額療養費制度は加入している健康保険や国民健康保険によって申請方法が違うので注意が必要です。自治体の健康保険の場合は保険年金担当課で申請ができます。

参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)

限度額適用認定証

入院が決まった時に負担額が高額になるとあらかじめ分かっている場合は事前に「健康保険限度額適用認定証」を申請できます。限度額認定証と健康保険証、高齢受給者証を提示するだけで、最終的な自己負担額だけの支払いですませられるのです。

申請は加入している健康保険によって違います。申請しても発行されないケースもあります。年齢が70歳以上かつ75歳未満の年収約1,160万円以上の方です。年収約1,160万円以上の方は高齢受給者証と健康保険証の提示だけで限度額内での支払いができます。

非課税世帯の方は、代わりに「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が発行されます。

高額療養費貸付制度

高額療養費を受給するには、事前に医療費の1~3割分などの支払いを済ませておく必要があります。自己負担割合に応じた医療費をいったんは支払ったあと、加入先の健康保険に申請をして、受給できるまでおよそ3ヵ月かかります。その先払いが困難な方のために高額療養費の給付額の約8割を借りられる制度です。

給付を受けて、返金するまで無利子で借りられます。

申請は高額療養費の加入先の健康保険もしくは役所の保険年金担当課でできます。自治体によっては高額療養費受領委任払いを取り入れているので、問い合わせてみましょう。

認知症の場合は介護施設の検討も!

認知症は投薬やリハビリである程度緩解するケースが見込まれますが、完治は困難とされています。

長期の入院で費用の負担を感じた場合や、治療をやめて介護施設への入居をされる方もいます。以下の3つの施設です。

  • グループホーム
  • 特養(特別養護老人ホーム)
  • 老健(介護老人保健施設)

選択肢として参考にしてはいかがでしょうか。

グループホーム

認知症専門の介護施設であり、自立した行動ができる方が対象です。認知症の方が穏やかに生活を送れます。認知症対応型共同生活介護費(Ⅰ,Ⅱ)費用は以下の表のとおりです。

グループホームサービス費用(日額)

ユニットが一つの場合 要介護1 764円
要介護2 800円
要介護3 823円
要介護4 840円
要介護5 858円
ユニットが二つ以上の場合 要介護1 752円
要介護2 787円
要介護3 811円
要介護4 827円
要介護5 844円

各種の加算と家賃、光熱費、生活雑費が必要です。介護保険が適用されます。

 

特養(特別養護老人ホーム)

公的機関となるため、費用が比較的安いです。主に要介護3以上の方が利用しており、認知症の方も利用できます。

入居の費用は「医療・介護を通じた居住費負担の公平化について」により入院時の費用と同じです。

特別養護老人ホームサービス費用(1点が10円の地域の日額)

多床室 従来型個室 ユニット型個室 ユニット型個室的多床室
要介護1 573円 573円 652円 652円
要介護2 641円 641円 720円 720円
要介護3 712円 712円 793円 793円
要介護4 780円 780円 862円 862円
要介護5 847円 847円 929円 929円

ここに個別機能訓練加算やADL維持等加算などの費用がかかります。レクリエーションが充実しているので、認知症の方ものびのびと暮らせます。

一方で入れ替わりが多いので環境の変化に弱い認知症の方のストレスになりかねません。

老健(介護老人保健施設)

介護老人保健施設は、特別養護老人ホームと同じく公的施設です。

在宅復帰が基本の介護施設なので、機能訓練が充実しています。ただし、ターミナルケアを見据えた入居施設ではありません。

介護老人保健施設サービス費用(1点が10円の地域の日額)

従来型個室・基本型 従来型個室・在宅強化型
要介護1 714円 768円
要介護2 759円 816円
要介護3 821円 877円
要介護4 874円 928円
要介護5 925円 981円

ここに認知症ケア加算、短期集中リハビリテーション実施加算などの各種加算がつきます。

 

制度を上手に利用して認知症治療に臨もう

認知症と診断された場合、必ずしも入院による治療が必要ではありませんが、適切な治療を受ければ、そのあとの在宅介護が楽になる場合もあります。入院したとしても、高額療養費制度を利用すれば、高額なイメージの認知症も前向きに検討できるのではないでしょうか。認知症の入院や、認知症専門の介護施設など、選択肢を広げて介護の負担を軽減してはいかがでしょうか。

入院した場合は介護保険が使える?

A.病院への入院では、原則、保険の併用はできません。入院の際は医療保険が適用されます。

自己負担額が高額になったらどこに相談すればいい?

A.病院などには、ソーシャルワーカーや相談員が常駐している場合が多いので、入院費などの支払いが困難な場合は、早めに相談することをおすすめします。

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