「段差の多い昔ながらの家に住んでいるから、何かあったら心配…でも、老人ホームにはまだ入居したくない。何かいい方法はないかな?」
そう思っている人がいたら、シニア向けマンションを検討してみるのも一つの手です。
シニア向けマンションは、費用が高めではあるものの、自由度が高く住みやすさが追及されているので、比較的元気な高齢者が快適に暮らすことができます。
具体的にどのような物件なのか、メリット・デメリットを踏まえて見ていきましょう。
シニア向けマンションとは
シニア向けマンションとは、民間事業者が販売・運営する、高齢者を対象にした分譲マンションです。
主に自立あるいは要支援状態の高齢者を受け入れ、食事の提供や緊急時の対応などのサービスを提供するほか、フィットネスやレクリエーションの充実した施設が整っています。
シニア向けマンションと老人ホームの違い
– | シニア向け分譲マンション | 介護型有料老人ホーム |
対象の年齢 | なし | 原則60歳以上 |
対象の介護度 | 自立以上 | 原則要介護1以上 |
同居 | 〇 | × |
権利方式 | 所有権 | 利用権 |
生活の仕方 | 自由に生活できる | 食事時間や外出に制限がある |
老人ホームは、介護体制が整っている反面、制限も多くなってしまいますが、シニア向け分譲マンションは、適度な介護体制は整えつつ自由な生活を送ることができます。
そして、何よりシニア向けマンションが老人ホームと一線を画すのが、賃貸借契約で利用権を手に入れるのではなく、購入することで所有権を手に入れることができる点です。そのため、退居することになっても、資産として活用することができます。
介護が必要ない高齢者も増えている
現在、80歳以上の3人に2人は要介護認定なしという実態があります。要介護・要支援認定の高齢者の割合は、厚生労働省による「平成29年度介護保険事業状況報告と総務省統計局の人口推計データ」を見ると、下記のようになっています。
男性 | 女性 | |
65歳以上70歳未満 | 3.09% | 2.5% |
70歳以上75歳未満 | 5.98% | 5.9% |
75歳以上80歳未満 | 10.87% | 13.7% |
80歳以上85歳未満 | 21.7% | 31.3% |
85歳以上90歳未満 | 39.28% | 55.6% |
90歳以上 | 63.11% | 80.0% |
80歳以上の高齢者のうち、3人に2人以上は要介護・要支援認定を受けていないのです。高齢者の絶対数が増えているので、もちろん要介護・要支援認定を受けている人は多いものの、まだまだ元気な高齢者も多いということが伺えます。
シニア向けマンションの入居基準とサービス内容
それでは、そういった元気な高齢者にぴったりのシニア向けマンションは、具体的にはどのような人が対象で、どのようなサービスが受けられるのでしょうか。
ここでは、シニア向けマンションの入居基準とサービス内容について、見ていきましょう。
シニア向けマンションの入居基準
シニア向けマンションは、基本的に費用があれば購入可能です。
下記は入居基準の目安なので、それ以外は物件ごとに異なります。たとえば、「年齢が60歳以上」や「身元引受人がいる」といったことが入居基準になる物件もあります。
自由に個人購入できるだけに、物件ごとにその入居基準が大きく異なるので、自分の希望や条件に合った物件を検討しましょう。
年齢 | なし |
介護度 | 自立から軽介護度 |
認知症 | 対応なし |
共同生活 | なし |
シニア向けマンションが向いている人
シニア向けマンションが向いているのは、何かあったときに安心な環境で暮らしたい人、自由で活動的な生活を送りたい人、室内を自分の好みに変えて生活したい人などです。
現時点で介護が必要なく意欲的に活動しているものの、加齢により家事が負担になったり、一人が不安になったことなどがきっかけで、シニア向けマンションの購入を検討し始めるのではないでしょうか。
また、富裕層をターゲットにしているため、ある程度の貯蓄も必要になります。
シニア向けマンションで受けられるサービス
シニア向けマンションで受けられるサービスは、基本的に通常の分譲マンションと同じで、介護や医療サービスはありません。
物件によっては食事、日常生活支援、コンシェルジュサービスなどのサービスを提供しています。中には高級物件として、プールやフィットネスがあったり、ホテルのルームサービスのような豪華な食事が提供されるところもあります。
主にフロントに設置されているコンシェルジュサービスでは、多くの場合、郵便やクリーニングの取次や、外部事業者の手配など、多岐に渡るサポートを行っています。
これらのサービスにはオプション費用がかかってくることがあるので、購入する際にはどのようなサービスがどれくらいで利用できるのかを、事前に確認しておきましょう。
シニア向けマンションの入居費用
シニア向けマンションに住むためには、入居費用を用意する必要があります。シニア向けマンションの入居費用について見ていきましょう。
購入費用
もちろん物件によって大きく異なりますが、安いものだと数百万円、高ければ一億円以上することもあります。相場としては、数千万円程度です。
これらは、月額費用としてではなく、住宅ローンなどを利用して返済していく形になります。
管理費・修繕積立金・固定資産税
購入するとはいえ、月額費用がかかります。管理費や修繕積立金、固定資産税など、これらは通常のマンションでも必要になる費用です。
オプションサービス利用料・介護サービス料
月額費用には、さらにマンションが提供するオプションサービスを利用した際の料金が入ってきます。介護サービスを利用する際には、外部事業者との契約により、介護保険の自己負担1割(収入によっては2・3割)を支払います。
購入が難しい人には賃貸物件も
購入は少しハードルが高いという人は、不動産会社に問い合わせて賃貸物件を探してみても良いでしょう。数は少ないものの、予算内で入居できる物件が見つかるかもしれません。
ただし、この場合は所有権を持つことができないので、退居になった場合は手放さなければなりません。
シニア向けマンションのメリット・デメリット
ここでは、シニア向けマンションのメリットとデメリットを、見ていきましょう。
シニア向けマンションのメリット
まずは、シニア向けマンションのメリットについてです。
高齢者が住みやすい
通常のマンションに比べて、バリアフリー完備で高齢者が住みやすい設備になっています。また、明確な定義はないものの、マンションということからも想像できる通り、部屋面積は35~100㎡と広々としており、夫婦で住むことができる物件も少なくありません。
現在住んでいる家は段差が多く不便さを感じているが、広々としたプライベート空間を保ちたい場合などには、シニア向けマンションに移り住むことで快適に暮らせるでしょう。
入居者の権利が守られている
基本的に、シニア向けマンションだと入居者の権利が守られているので、希望する限りは住み続けることができます。
ただし、寝たきりや重度の認知症になり、外部事業者が対応できなくなった場合など、結果的に退居しなければならないことになることがあります。
資産になる
賃貸借契約ではなく購入するので自分の資産となり、ほかの人に売却・賃貸したり、家族に相続したりすることができます。
また、自分の好みに合わせて改装することができるのは、月額利用料を支払う有料老人ホームなどでは行えないマンションの特権です。
レクリエーションや設備が充実
基本的に自立や要支援程度の人向けに作られているので、入居者が活動的に楽しめるよう、レクリエーションや設備が充実しています。
ほかの入居者と交流することもできるので、高齢者同士でコミュニティを持つことができ、認知症予防にも繋がります。
シニア向けマンションのデメリット
次に、シニア向けマンションのデメリットについてです。
費用が高い
富裕層をターゲットにしており、購入費用が高い物件がほとんどです。また、通常のマンション同様、管理費や修繕積立金がかかってくるため、介護施設に入居するよりも月額費用が高額になりやすいです。
さらに、マンションが提供するオプションサービスや、将来的に外部事業者の介護サービスを受ける場合、追加費用が必要になります。
選択肢が少ない
高齢化に伴い需要が広まってきたものの、まだまだ市場が成熟していないのが現状です。物件の絶対数が少ないため、自宅付近で希望にあったものを探すとなると、苦労する可能性があります。
希望にあったシニア向けマンションを見つけたい場合は、住んでいる地域を離れて移住することも選択肢に入るでしょう。
重度の要介護状態では住み続けられないことも
入居時に自立生活が可能だったとしても、暮らし続ける中で介護が必要になった場合、外部事業者の訪問介護や通所介護を利用することになります。
外部事業者を利用すると、寝たきりや重度の認知症になった場合、介護保険の限度を超えて介護サービスを受けると介護費用が高額になったり、そもそも対応できなかったりします。そのため、必然的に退居しなければならなくなります。
中には、クリニックや介護サービス事業所を併設し、介護・医療面の機能を充実させた物件も登場しているので、施設内の対応が気になる人は確認しておきましょう。
シニア向けマンションについて知っておきたいこと
ここでは、シニア向けマンションについてさらなる理解を深めるために、知っておきたい特徴を確認しておきましょう。
資産価値のリスク
上記にも述べた通り、シニア向けマンションは所有権を持つことができるので、売買や賃貸、相続を行うことができますが、一方でリスクにもなりかねません。
売買や賃貸を行う相手がその物件の入居基準に満たず契約することができなかったり、既に高齢者のコミュニティが出来上がっているため入居することに躊躇されたり、といった理由で資産価値が低くなってしまうことも考えられます。
また、中古市場が確立されていないため、将来的にも需要が少ないといったことが起こり得ます。
これは通常の分譲マンションと同じことが言えますが、購入する際にはその点のリスクも頭に入れておきましょう。心配であれば、信頼のおける不動産会社に、売買や賃貸について相談しておくことも大切です。
入居者の総意によるサービス内容の変更
通常の分譲マンション同様、所有権を持つ入居者が快適に住み続けるために、管理組合の総会により管理運営されることがほとんどです。これはシニア向けマンションの特徴であり、有料老人ホームなどでは懇親会はあっても、その場で意思決定が行われることはまずありません。
この管理組合の総会では、サービス内容などを入居者自らの意思によって変更することができます。ただし、入居者が高齢ということもあり、外部の専門事業者による管理を行っている物件もあるので注意が必要です。
入居するまでの流れ
入居するまでの流れは、基本的には老人ホームなどと同じです。ただし、高額な費用がかかること以外は、入居の難易度はあまり高くありません。
各マンションの運営会社に申し込み、訪問や来訪による面談の後、住民票や健康診断書などの必要書類を提出します。介護度の確認や資産状況を確認されることがあるので、事前に把握しておきましょう。
アクティブシニアは自由度の高いシニア向けマンションがおすすめ
高齢になったからといって、自分らしさを失わずに生活したい人は多いはずです。
定年退職や還暦を迎えても、意欲的に活動する元気なシニアを、「アクティブシニア」と呼びます。そうしたアクティブシニアにとって、自由度が高く住みやすさが追及されたシニア向けマンションは最適といえます。
気になる場合は、まず初期費用と月額費用をしっかり調べてから、提供されるサービス内容と照らし合わせ、購入を検討してみてはいかがでしょうか。