今後の人生計画を立てる過程で、老後の住まいについて考え始めた方の中には、高齢者の方が老後を安心して暮らせる住まいである「シニア向け分譲マンション」という名前をご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかしながら、「名前だけは知っているけど、具体的にどのような住まいなのかはわからない」という方も多いことでしょう。
本記事では、そんな方のために、シニア向け分譲マンションとはどのような住まいなのかについて詳しく解説していきます。

シニア向け分譲マンションとは
シニア向け分譲マンションとは、アクティブシニアに向けたバリアフリー付の住宅を提供する、高齢者の方が暮らしやすいマンションです。
2022年6月末時点で、全国で98物件・14,947戸(2023年までに竣工予定の物件を含む)のシニア向け分譲マンションが供給されており、現状の物件数は少ないものの、市場の成熟とともに物件数は増えていくことが予想される、近年注目の住まいとなっています。
「シニア向け分譲マンションは老人ホームの1つなの?」という疑問がよく上がりますが、厳密に言うと、シニア向け分譲マンションは「住まい(住宅)」であり、「介護施設」ではありません。
また、シニア向け分譲マンションは、高齢者の方が安心して暮らせるよう、安否確認サービスや見守りサービスが提供されていますが、老人ホームと違って介護を前提としていないため、介護サーービスが提供されていないことにも注意が必要です。
そのほか、シニア向け分譲マンションは住まい(住宅)であることから、通常の分譲マンションと同様、住まいを「購入する」形となり、また、施設も非常に充実しているため、購入費用は数千万円~数億円と高額になっています。
「シニア向け分譲マンションは資産となる」「シニア向け分譲マンションは家族に相続できる」という話が挙がるのは、こうした理由が背景にあるのです。
では、シニア向け分譲マンションの特徴について、観点別に詳しく見ていきましょう。
シニア向け分譲マンションの入居条件
実際のところ、介護施設とは異なり、シニア向け分譲マンションには明確な入居条件はありません。
ただし、シニア向け分譲マンションは、自立して生活を送ることができる高齢者の方を入居対象としているため、自立しているかどうかが1つの入居条件と言えるかもしれません。
また、重度の要介護認定を受けている場合や重度の認知症がある場合、看取りまで希望する場合は、入居対象外となる可能性が高いです。
要支援1~2、要介護1~2の場合は入居可能としているところもありますので、要介護認定を受けている場合は、一度入居を検討しているマンション側に確認してみるとよいでしょう。
そのほか、シニア向け分譲マンションの中には、45歳~55歳以上など低めではあるものの、入居者に年齢制限を設けているケースがあるため、その点も入居前に確認しておく必要があります。
シニア向け分譲マンションは何歳から入れるのか詳しく知りたいという方は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。

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シニア向け分譲マンションの費用
シニア向け分譲マンションの費用相場ですが、全国の平均価格は4,386万円となっています。
また、シニア向け分譲マンションにかかる費用は大きく以下2種類に分かれます。
- 初期費用(マンションの購入費):おおよそ3,000万円~1億円
- 月額費用(管理費や修繕積立金、オプションサービス利用料等):おおよそ10万円~30万円
特に月額費用について、シニア向け分譲マンションでは、介護サービスが提供されておらず、介護が必要な方は別途外部の業者に委託する必要があるため、その際は、1割~3割の自己負担分の介護サービス費が発生することに注意しておきましょう。
シニア向け分譲マンションの費用についてさらに詳しく知りたいという方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。

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シニア向け分譲マンションのメリット
シニア向け分譲マンションのメリットには、主に以下のようなものが挙げられます。
- シニア向けの娯楽施設が充実している
- さまざまな生活支援サービスを受けられる
- 資産として残せる
- 身体状況や好みに合わせてリノベーションできる
シニア向けの娯楽施設が充実
シニア向け分譲マンションのメリットとして1つ目は、シニア向けの娯楽施設が充実していることです。参考として、娯楽設備には以下のようなものがあります。
- カラオケ
- プール
- フィットネスジム
- レストラン
- 温泉
- 麻雀卓
なおプライベートに制限はないため、気分に合わせて好きな場所で、心豊かな毎日を楽しむことができます。「いくつになっても趣味を楽しみたい」「同世代の友達が欲しい」という方にもぴったりの環境でしょう。
さまざまな生活支援サービスを受けることができる
シニア向け分譲マンションのメリットとして2つ目は、さまざまな生活支援サービスを受けることができることです。
シニア向け分譲マンションでは、食事の提供や見守り、来客対応など、便利な生活支援サービスを受けることができます。
生活コンシェルジュが常駐していることも多く、ほとんどの家事を行ってもらえる場合や、外部サービスの紹介などを行ってくれることもあります。
無料で利用できるサービスと、別途料金がかかるサービスは物件によって異なるため、よく確認してみましょう。
コンシェルジュは「ひとり暮らしが不安になってきた」「これからの介護について詳しく知りたい」などの要望にも、親身に対応してくれます。
以上のことからシニア向け分譲マンションのメリットとして、さまざまな生活支援サービスを受けることができる点が挙げられます。
資産として残せる
シニア向け分譲マンションのメリットとして3つ目は、資産として残すことができる点です。
一般的な分譲マンションと同様、シニア向け分譲マンションも物件の所有権は購入者にあります。
家族への譲渡や売却、賃貸物件とすることもできます。一般的な老人ホームは賃貸借契約のため、第三者に利用の権利を譲渡したり、資産として活用することはできません。
しかし、シニア向け分譲マンションは、誰も住んでいない場合でも管理費・修繕積立金などのランニングコストが掛かったり、売却には専門知識が必要となります。
したがって、運用をする際には、マンション側や不動産屋とよく相談することがおすすめです。
身体状況や好みに合わせてリノベーションできる
シニア向け分譲マンションのメリットとして4つ目は、身体状況や好みに合わせてリノベーションできる点です。
必要に迫られたリフォーム内容によっては補助金が出る場合もあるため、事前に自治体やリフォーム業者に確認しておくとよいでしょう。
近年では、環境にやさしい「省エネ」「エコ」のためのリフォームを行った場合、補助金・助成金対象になる制度が数多くあります。
下記がその一例です。
- 壁や窓の断熱リフォーム
- 節水性の高いトイレやバスタブへの交換
- 高効率給湯器の設置
- 蓄電池の導入
- 高効率給湯器
シニア向け分譲マンションはバリアフリー目線で作られてはいますが、人によって生活の仕方が変われば要望も違うものです。生活の場が、自分に合わせてより快適にリフォームできるのは、大きな魅力と言えます。
シニア向け分譲マンションのデメリット
一方、シニア向け分譲マンションのデメリットには、主に以下のようなものが挙げられます。
- 購入費用が高い
- 全国に物件数が少ない
- 介護サービスは外部事業者との契約が必要になる
- 介護度が高くなると住み続けることが難しい
- 将来的に売却できるか確実ではない
購入費用が高い
シニア向け分譲マンションのデメリットとして1つ目は、購入費用が高いことです。
東京カンテイの「シニア向け分譲マンションの供給動向について」によると、全国の平均価格は4386万円となっており、決して安くない金額であることが分かるでしょう。
購入総額が1億円を超える物件も珍しくないため、お金に余裕のある方には非常に住みやすい環境ですが、資金面で入居のハードルは高いと言えます。
というのもシニア向け分譲マンションには、アクティブな生活を好む富裕層向けに、レストランや温泉、シアタールームなどの娯楽設備が充実していることが多いです。
したがって、物件の管理費・主膳積立金、人件費などで、通常の分譲マンションよりも高い費用が必要となるのです。
具体的な費用の内訳としては、以下のようなものが挙げられます。
- 物件の購入費
- 管理費
- 修繕積立費
- 固定資産税
- 都市計画税
- 見守りなどのサービス料
見守りや食事提供などのサービスを受けている場合は、サービス料として毎月の費用が発生するため、注意が必要です。
また、費用を考える際に忘れがちなのが生活費でしょう。
マンション側に払う費用のほかに、光熱費、通信費などの日常生活にかかるお金も考えておかなければなりません。計画性がなければ、物件購入後にお金に悩まされてしまいます。

全国に物件数が少ない
シニア向け分譲マンションのデメリットとして2つ目は、全国に物件数が少ないことです。
というのも、シニア向け分譲マンションは2022年度7月時点で全国に98物件しかありません。
したがって、エリアによっては物件自体がなかったり、見つかっても立地や利便性が希望に沿わないする場合があるのです。
理想の物件に出会うためには、日頃から情報収集をしておくとよいでしょう。人気物件の空き状況や、新築情報を早めに手に入れることで、物件選びが有利になります。
また、日頃から情報収集をしておくと、シニア向け分譲マンションを取り扱う仲介業者とも仲が深まるかもしれません。そうなると、「物件に空きが出た」などの情報を提供してくれる可能性があります。
介護サービスは外部事業者との契約が必要
シニア向け分譲マンションのデメリットとして3つ目は、介護サービスは外部事業者との契約が必要であることです。
シニア向け分譲マンションには食事の提供や見守りなどさまざまなサービスがありますが、介護サービスは提供されていません。
食事や入浴、排せつの介助といった日常的な介護が必要になった場合、別途料金を払って外部の事業者を利用する必要があるため、注意しましょう。
介護サービスには介護保険が適用になるため、介護サービスの自己負担額は総額の1〜3割のみとなるため、ある程度は抑えられます。
しかし、介護保険には介護度に応じた利用限度額があるため、限度額を超えた分は保険が効かず全額自己負担となることもあります。
資金にゆとりがある方であればさほど問題はないかもしれませんが、外部の事業者と契約する手間や別途費用が発生してしまうことは、負担となり得るでしょう。
介護度が高くなると住み続けることが難しい
シニア向け分譲マンションのデメリットとして4つ目は、介護度が高くなると住み続けることが難しいことです。
前述のとおり、介護が必要になった場合は訪問介護などを利用することはできますが、訪問サービスでは寝たきりの方や重度の認知症の方へのケアは難しいと言わざるを得ません。
したがって、ほとんどの場合は介護度が高くなると、ほかの介護施設などへの移動が必要となるのです。
住み慣れた環境でいつまでも暮らせるとは限らないことは、理解しておくことが大切と言えるでしょう。
将来的に売却できるか確実ではない
シニア向け分譲マンションのデメリットとして5つ目は、将来的に売却できるか確実ではないことです。
シニア向け分譲マンションは「分譲マンション」という名前の通り、購入後は資産としての活用することが可能です。
将来的に家族への譲渡や売却、賃貸物件とすることができる点も大きな特徴とされています。
しかし、実際のところ買い手がつくかどうかは怪しいと言わざるを得ないのです。
というのも前述のとおり、シニア向け分譲マンションは2022年6月時点で全国でまだ98物件しか存在せず、市場に多く出回っているわけではありません。
販売価格だけではなく管理費や修繕積立金などのメンテナンスコストも高いため、簡単に購入者が現れるとは限らないのです。
したがって、所有権を得ることはできるものの、実際に将来売却できるのかというと物件数やメンテナンスコストの高さから難しい可能性があります。

シニア向け分譲マンションを購入する前にすべき3つのこと
ここまで、シニア向け分譲マンションの特徴やメリット・デメリットについて話してきました。いざシニア向け分譲マンションを購入する前にすべき3つのことについて解説します。
購入前にすべきこと①:家族との相談
シニア向け分譲マンションへの住み替えに限らず、将来に向けても住み替えについて家族とよく話し合うことはとても大事です。以下に、家族会議で話し合うべき3ポイントを記しています。ぜひ家族との相談にご活用ください。
- どんな暮らしがしたいか:ライフスタイル・健康について
- どこに住みたいか:立地・利便性について
- お金のことはどうするか:予算・資産計画について
- その他事前に決めておくべきこと:万が一の時の対応について、相続についてなど
購入前にすべきこと②:希望条件の整理
家族で話し合って、方向性と合意が定まったら、次は希望する条件を整理していきましょう。住まい選びで後悔しないために、希望条件を整理して「譲れないこと」を見つけましょう。
その際は、以下の観点で条件を整理していくと良いでしょう。
- 立地・周辺環境:今の家の近く? 子どもの家の近く? 利便性の高い都心?
- 建物・居室:レストランや大浴場は必要? フィットネスジムは使う?
- 共用施設・サービス:近くに総合病院は必要? 館内にクリニックや健康相談室は欲しい?
- その他:ペットは可? 趣味のサークルは活発?
これらの細かい条件の中でも、最も大事にしたい条件の優先度を明確にしておくと、のちのちマンションを絞る際に有効に働くでしょう。
購入前にすべきこと③:資産計画の具体化
新しい住まいの検討には、安心できる資金計画が不可欠です。シニア向け分譲マンションの費用に関しては以下の記事を参考にしつつ、無理のない資産計画を2ステップで立てていきましょう。
ステップ①:「今の家の価値」を正確に知る
資金計画の根幹は、現在の自宅の売却価格です。まずは複数の不動産会社に無料査定を依頼し、ご自宅の資産価値を把握しましょう。
ステップ②:「お金の専門家」に相談する
長期的な生活設計は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのが最も確実です。年金や資産状況を基に、将来にわたって安心できるかを客観的に診断してくれます。

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シニア向け分譲マンションに関するよくある質問
さいごに、これまでにご紹介した内容以外で、シニア向け分譲マンションに関するよくある質問をまとめ、回答していきます。
シニア向け分譲マンションで起こるトラブルとは?
シニア向け分譲マンションで起こるトラブルには、主に以下のようなものが挙げられます。
- 入居後にサービスが受けられなくなった
- サービスを過剰に提供される
- 認知症を持つ居住者の迷惑行為を受ける
- 人付き合いがうまくいかない
トラブルの詳しい事例とその対処法について知りたいと思った方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

シニア向け分譲マンションとサ高住の違いは?
一番大きな違いは、住まいの権利が「所有権」か「賃貸」かという点です。シニア向け分譲マンションは購入してご自身の資産になりますが、サ高住は基本的に賃貸です。
それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
項目 | シニア向け分譲マンション | サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) |
---|---|---|
権利形態 | 所有権(売買契約) | 賃貸借契約が中心 |
資産になるか | 資産になる(売買・相続・賃貸が可能) | 資産にならない |
初期費用 | 物件購入費(高額) | 敷金など(比較的安価) |
月々の費用 | 管理費・修繕積立金・固定資産税 | 家賃・公益費・サービス費 |
生活の自由度 | 非常に高い(自宅と同じ感覚) | 高いが賃貸契約のルールによる |
ペット可のシニア向け分譲マンションはある?
ペット同伴での入居を受け入れているシニア向け分譲マンションはあります。
ただし、ペットの数や入居者自身でペットの世話ができるか、入居者に危険を及ぼすことがないかといった、マンション側が定める条件を満たす必要があります。
ペットと一緒にシニア向け分譲マンションに入居したいと考えている方は、そのマンションがペット同伴可能なのか、その際、満たすべき条件は何なのか確認しておくようにしましょう。
そのほか、ペット可のシニア向け分譲マンションでよくあるきまりごとや費用などについて詳しく知りたいという方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

まとめ
本記事では、シニア向け分譲マンションとはどのような住まいなのか、その特徴について詳しく解説していきました。
シニア向け分譲マンションを検討する際には、本記事で解説した情報を理解するとともに、適切な相談者・支援者の力を借りながら進めていくことが大切です。
本記事が、これからシニア向け分譲マンションを検討しようと考えている方、今まさに検討中の方の助けになっていれば幸いです。
シニア向け分譲マンションとは、アクティブシニアに向けたバリアフリー付の住宅を提供する、高齢者の方が暮らしやすいマンションです。詳しくはこちらをご覧ください。
厳密に言うと、シニア向け分譲マンションは「住まい(住宅)」であり、「介護施設」ではありません。詳しくはこちらをご覧ください。