アスル介護の連載企画、病院インタビューの4回目は市立大町総合病院様へのインタビューです。
市立大町総合病院では、チーム医療で早期改善を実現する取り組みをされており、その取り組みや効果についてインタビューしてみました。
市立大町総合病院 医療社会事業部長
日本プライマリ・ケア連合学会、日本内科学会
信州大学医学部医学科卒業後、諏訪中央病院総合診療科などを経て現職
チーム医療による認知症ケア
ケアスル編集部:
本日はお時間をいただきましてありがとうございます。まず初めに、市立大町総合病院様のほか病院にない強みや特色を教えてください。
金子様:
チーム医療を大事にしている点です。院内では様々なチームが形成されており、例えば認知症サポートチームでは、認知症認定看護師が早期から認知症が悪化しないよう介入を行います。
また、不幸にも認知症が悪化した症状をもつ患者様には、できるだけ薬や抑制を行わないよう多職種でいろいろなアイディアを提案します。とくにその人の生きてきた物語を大切にした医療を心がけています。
またユマニチュードというフランス発祥の認知症ケアも積極的に取り入れています。それ以外にも排泄ケアチーム、褥瘡チームなど多職種が活発に活動をし、できるだけ早くできるだけ元の状態で自宅に帰られるよう支援しています。
ケアスル編集部:
なるほど。チームで取り組みをされているのですね。
この取り組みはどのような経緯で始まったのでしょうか?
金子様:
やはり高齢者の入院が増えていることがきっかけです。普段、高齢者の方が治療する際は病棟を利用することになっているのですが、病棟の医師や看護師はどうしても忙しく、各患者様に合わせた個別的なケアができません。
その結果、認知症の悪化などが生じて入院が長引いたり、希望する退院先に帰られなかったりといったことがありました。
そこで、できるだけ病状の悪化を抑え各患者の個別ケアを重視する方向にすることで、入院した患者さんが笑顔で希望した退院先に帰られるよう工夫するうちに、現在の体制となりました。
病棟とチームの密な連携によるチーム医療
ケアスル編集部:
実際に初めて見て、どういった効果があったのでしょうか?
金子様:
チームで診るようになってから、病棟で勤務している人の意識が変わってきました。
主にこのチーム医療の対象となるのは、高齢者でもともとの認知症がある方、虚弱高齢者、重篤な疾患がある方などです。こういった患者さんは根気強く、丁寧な対応を続けながら悪化を抑えていく必要がありました。
ただ、このチーム医療が始まってからは私から言わなくても、患者さんがどんな背景で暮らしていたか気にかけるようになり、また患者さんに対して日付や場所といった見当識の支援も積極的になりました。
できるだけ抑制など行わなくて済むように病棟が知恵を出すようになりました。
ケアスル編集部:
このチーム医療の取り組みの流れを教えてください。
金子様:
病状や症状など、テーマごとにチームを形成し、対応方針をまとめています。例えば、認知症サポートチームや排泄ケアチーム、褥瘡チームといった形で作っています。
そして、それぞれのチームが自発的に考え、積極的に介入をしたほうがよい患者様を見つける工夫もしています。なお、病棟側が対応依頼できるチームがなくて困り、依頼を出すこともあります。
病棟とチームが連携をし、話し合いながら最適なケア方法を模索しています。
今後はユマニチュードも見据えた対応を
ケアスル編集部:
この取り組みを通じて、実際にどういった声がありましたか?
金子様:
- これまでどんなケアをすればよいか悩んでいたが、ケアの方法に方針が出ることで迷いがなくなった
- 忙しいときに、対応方針や診断方針の問題点の評価をしてもらえるので助かる
- 患者さんが希望するところに退院できて嬉しい
などの声をもらっています。実際、病棟側もどういった対応をすればよいか明確でないところがあったので、その対応に対して方針を提示できたのが良かったのかなと思っています。
ケアスル編集部:
今後の展望を教えてください。
金子様:
今、病院をあげてユマニチュードに取り組んでいきます。
高齢者でよくある問題点である、認知症、排泄、褥瘡などに老年医学の見地をとりいれながらチームとして取り組んでいきたいと思います。
ケアスル介護の読者へメッセージ
当院では介護の休暇をとるためのレスパイト入院に取り組んでいます。
また、認知症、褥瘡、排泄、痛みなどにも専門の看護師がいます。外来での相談もできますので、相談窓口までぜひ困ったことがあったらご相談ください。