【病院インタビュー】高齢者がかかりやすい認知症・心不全とはどんな病気?

【病院インタビュー】高齢者がかかりやすい認知症・心不全とはどんな病気?

ケアスル介護の連載企画、病院インタビューの2回目は保坂メディカルクリニック様へのインタビューです。

今回は保坂達明様に、認知症・心不全の症状やケア方法についてお伺いしました。

保坂達明 様
保坂メディカルクリニック
医師、外科専門医、初期臨床研修医指導医
日本外科学会、心臓血管外科学会、血管外科学会、胸部外科学会
東邦大学医学部卒業後、東邦大学医療センター大森病院にて初期臨床研修を終了。その後同心臓血管外科に入局。循環器診療および手術に携わり研鑽を積み、小田原循環器病院や、三郷中央総合病院での勤務も経験。コロナ渦以降は、東邦大学医療センター大森病院救命センターにてコロナ重症患者の治療にあたりながら、救急疾患患者の治療にもあたる。大学での研鑽を積み、生まれ故郷である山梨にて保坂メディカルクリニック副院長として、2022年より地域医療への取り組みを開始し始めた。

退院後まで見据えた地域のかかりつけ医としての病院

ケアスル介護編集部:

本日はお時間をいただきましてありがとうございます。まず初めに、御院の医療・介護における取組みを教えてください。

 

保坂様:

当院は、平成14年に現院長の保坂力(つとむ)が地域医療に貢献したいという思いから脳神経外科を標榜し内科的疾患のみならず、認知症や、頭痛、頭部外傷といった診療に従事してきました。

そして、令和4年5月より副院長の保坂達明とともに、循環器科の標榜も加え脳神経疾患のみならず循環器疾患にも対応できるよう移転し、現在甲斐市にて更なる地域医療への貢献を目指し進化を続けています。

近隣の病院と医療連携を密にとっているため、例えば肺炎や心不全で入院が必要な患者さんが入院をスムーズにできるのみならず、入院中からでも退院後を見据えた介護サービスの調整なども可能です。

実際に、副院長が入院先病院でソーシャルワーカーと連携し調整することで、在宅から入院までを地域のかかりつけ医としてかかわらせていただいております。そのため、患者さんの必要とする治療、サービスに介入できるシステムを構築しています。

まだまだ、始動したばかりのシステムではありますが今後訪れる高齢化社会に向けてこのシステムをさらに強固なものにしていきたいと、日々スタッフ一同邁進しています。

 

高齢者に多い認知症・心不全について

ケアスル介護編集部:

なるほど、ありがとうございます。今回は保坂メディカルクリニック様が認知症・心不全に強いとお伺いし、実際の症状や対策方法についてお話をお伺いできればと思っています。

まずはじめに、認知症や心不全の特徴や症状についてお伺いさせてください。

保坂様:

認知症に関しては、最近物忘れがひどくなった、今までできていたことができなくなってきたという家族からの指摘で気づかれることが多い病気です。

当院ではスクリーニング検査をおこなっており、実際の患者様と接する機会が多いのですが、「物忘れが多いな」「できていたことができなくなったな」と言われて来院したという方も多くいらっしゃいます。

なおスクリーニング検査に関しては、外来で常時対応可能ですので、認知症かなと思ったら気軽に相談していただける環境をこれからも提供し続けて行きます。

特に、現状の医療では認知症を治すいわゆる特効薬というものは存在しません。我々医療者が提供できるものは、認知症の進行の抑制、および認知症と付き合っていくために必要なサービスを提供することです。病気のみならず、患者さんおよびその家族の皆さんが少しでも負担が少なくなるようこれからも努めていきます。

また心不全に関しては、心不全に至る原因疾患があります。虚血(心臓へ血液を送る血管の動脈硬化等)や弁膜症、不整脈といったものが原因疾患として挙げられます。

症状としては、最近疲れやすい、足がむくむ、呼吸が苦しいといった症状があります。当院では、症状から心不全と診断した場合、その原因疾患の診断まで行うように努めています。

そして、治療の必要性があると判断した場合は速やかに、連携病院へ紹介し治療を行えるようにしています。

しかし、心不全は1度罹患してしまうと、以前の状態へ100%戻すことは難しく症状は緩徐に進行してしまいます。現状の心機能を維持するために薬の調節や検査を適宜行いながら患者さんのQOLを保つ治療をこれからも提供させていただきます。

 

それぞれ具体的にどんな症状があるのでしょうか?

ケアスル介護編集部:

認知症・心不全ではどういった症状があるのでしょうか?

保坂様:

認知症の症状では、初期症状として最近の記憶が覚えれない、日付を忘れてしまう、物の名前が出てこない、またそれらの症状を取り繕うような症状が現れます。

患者さん自身が認知症かもと気づくことは少なく、周りの家族が最近物忘れがひどくなったと言って受診されるケースが多いです。

心不全に関しては、疲れやすい、息苦しい感じがする、足がむくむといった症状を認めます。

時には、急に胸が痛くなったと言って受診された患者さんが心不全のケースもあります。異常を感じた場合には、早めに病院を受診することをおすすめします。

 

かかりやすい人はどんな人?

ケアスル介護編集部:

認知症や心不全は、どういった方がかかりやすい病気なのでしょうか?

保坂様:

認知症は現在日本国内では200万人以上が罹患しており、加齢に伴い罹患率も上昇しています。50代以降で有病率が上昇しており、若干女性のほうが有病率が高いです。

心不全に関しては、動脈硬化、脂質異常症、糖尿病などのいわゆる生活習慣病を患っている方では罹患率が高くなります。

生活習慣病は自覚症状こそないため、健康診断で指摘されても何となく先延ばしにしてしまう傾向がありますが、生活習慣病への早期治療介入が将来の心不全等の病気への予防となります。

「健康診断で毎年同じ項目を指摘されているけども、なんともないからいいか」と思っていると思わぬ病気になってしまう可能性もあります。決して放置せず、病院に相談するようお願いします。

 

認知症や心不全の治療方法について

ケアスル介護編集部:

認知症や心不全にかかった場合、具体的にどのような治療をしていくのでしょうか?

 

保坂様:

認知症に対する治療は、現在認知症を治す薬というものは存在しません。認知症と診断された患者さんに対しては、お薬で認知症の進行を抑制する治療が現在の医療では限界です。

お薬での治療だけでなく、必要なサービスの導入、患者さんを支える家族の病気の受け入れ等をマネージメントしていくことも広い意味で治療といえるかもしれません。

心不全の治療に関しては、まずは心不全の原因疾患に対する治療が必要な場合があります。お薬で血圧を適正なバランスに保つこと、体の中の水分量を適切なところへコントロールすることにより心不全の病勢をコントロールします。

また、心不全という病気は段階的に悪くなっていく病気です。患者さんのADL及びQOLを少しでも長く保つようにトータルでマネージメントをしていきます。

 

この病気・医療にならないための対策はありますか?

ケアスル介護編集部:

なるほど。認知症に特効薬はないのですね。。ちなみに、認知症や心不全を事前に回避するという視点で考えたときに、できることや対策などはありますでしょうか?

保坂様:

認知症に関しては、加齢に伴いある程度進行してきてしまいます。日常生活で様々なことに触れて刺激を与えることで予防になるかもしれませんが、早期診断、早期治療介入に尽きるかと思います。

心不全に関しては、前述した通り生活習慣病がリスクファクターであり、健康診断で毎年引っかかっているのだけれども自覚症状もないから病院に行ってませんといった患者さんには、早期に受診をお勧めします。

あくまで今の健康状態でなく、数十年後を見据えた治療だと思ってください。

 

治療の際、家族に求められること

ケアスル介護編集部:

両親や祖父母が認知症・心不全にかかったというケースも多くあると思います。実際に身近な人がこの病気にかかった際、どのような対応やコミュニケーションを心がけるべきでしょうか?

保坂様:

認知症、心不全のみならず病気全般に言えることですが、まずは患者さん自身および患者さんを支える家族の病気の認識、受け入れから治療が始まります。

病気が見つかると最初は皆さん頑張れますが、長期にわたる介護が必要になる場合、患者さん自身もですがその負担は家族にもかかります。

介護する家族は、自身の生活や、仕事もある中時間を割いて患者さんの介護にあたりますが、長い期間それを家族だけに強いるのは無理があります。

そんな時には介護サービスの活用を促し、例えばショートステイの利用、レスパイトケアを目的とした入院での対応を提供することにより、患者さん自身の苦痛のみでなくそれを支える家族への負担も減らしつつ、無理なくみんなで患者さんを支えるといった医療体制を構築していきたいと考えています。

介護施設・サービスの選び方

ケアスル介護編集部:

介護施設や介護サービスの活用によって負担が軽くなるというのはありますね。この場合、どういった施設・サービスを選ぶべきなのかお伺いしたいです。

保坂様:

介護施設を選ぶ際には、施設そのもののサービスはもちろんそこに付随する施設も考慮されるといいと思います。

例えば認知症で施設に入所する場合、その施設の嘱託医が認知症の専門外であると、何となく今まで出されていたお薬を続けるといった治療になりがちです。

施設を選ぶ際には、施設そのもののサービスのみならず、施設に付随する医師の専門等もチェックするとよいでしょう。

最後にケアスル介護の読者へメッセージをお願いします

保坂様:

日本の高齢化社会は、これからピークを迎えます。それに伴い、介護絵を必要とする患者さんが増えるのは当然のことですが、それに付随して介護に携わる家族はその倍以上のスピードで増えると考えられます。

介護の悩みを打ち明ける場がない。自分たちだけで何とかしなきゃいけないと考えがちですが、そうではありません。

今回、このインタビューの機会をいただいたケアスル介護様をはじめ、そういった悩みを解決するための情報を提供してくださる会社も増えており、介護とはもはや家族だけの問題でなく社会全体で取り組む問題となってきています。

私たち保坂メディカルクリニックはそういった社会の一役を担うために日々スタッフ一同患者さんおよび家族たちに接して行きます。

今回このようなインタビューの機会をあたえていただいたケアスル介護様にこの場をお借りして御礼を申し上げるとともに私たちクリニックの思いをここに発信させていただきます。