高齢化が進行している日本では、高齢者の住宅の確保が問題となっています。通常の賃貸住宅では、年齢を理由に入居を断られることもあり、住む場所がなかなか見つからずに困るという人は少なくありません。高齢者の住宅問題を解消する手立てとして、シルバーハウジングというものが誕生しています。
シルバーハウジングとはどのような住宅なのか、特徴から費用まで把握して、高齢者でも暮らしやすい住宅を見つけましょう。
シルバーハウジングとは
まずはシルバーハウジングがどのような住宅なのか、基本的な特徴から知っていきましょう。高齢化が進行している日本においては、シルバーハウジングは住宅問題を解消する方法の1つです。
高齢者自身にとってはもちろん、社会においても重要なものであるため、基本的な知識を身につけておきましょう。
シルバーハウジングができた背景
そもそも高齢者向けの住宅であるシルバーハウジングが誕生した背景ですが、これは高齢者の自宅での事故の多さが原因です。高齢者は自宅で転倒したり、認知機能の低下によって火事などの事故につながったりと、日常生活にはさまざまなリスクが潜んでいます。
これらを解消するためにシルバーハウジングは誕生しており、高齢者でも安心して暮らせる住宅を提供することで、事故の防止に努めています。
自宅での事故は本人にとってのリスクになるだけではなく、周辺住民にも被害を及ぼしてしまう可能性もあるため、これを回避する意味でも、事故防止は重要です。
特徴
シルバーハウジングは高齢者が安全に暮らせるように、バリアフリー住宅になっています。ただバリアフリー環境が整えられているだけではなく、次の3つのうち、いずれかの団体が運営していることは大きな特徴です。
- 地方自治体
- 都市再生機構
- 住宅供給公社
これらの公的な機関が提供している住宅であり、公営の集合住宅と考えるとイメージしやすいでしょう。
受けられるサービス
住宅で高齢者向けのサービスが受けられることも、シルバーハウジングならではのポイントです。サービスは生活援助員によって提供されるものであり、高齢者が安全かつ健康に暮らせるように見守り体制が整っています。
生活援助員について
ライフサポートアドバイザー(LSA)とも呼ばれる生活援助員は、シルバーハウジングに住んでいる高齢者の生活を見守り、サポートします。生活援助員は集合住宅に常駐しているため、すぐにサービスを受けられることが特徴です。
生活援助員という見守りを行う人員が近くに配置されていることから、家族と離れて暮らす高齢者も、安心してシルバーハウジングに住むことができます。
生活援助員からの3つの支援
市区町村や自治体によって詳細な内容は異なりますが、生活援助員から受けられるサービスは、次の3つがあげられます。
- 生活サポート
- 健康サポート
- 緊急時サポート
生活援助員が入居者から生活や福祉に関する相談を受けたり、見守りなどの安否確認をしたりすることが生活サポートです。ただ話し相手になるだけではなく、高齢者が抱えている問題を把握して、外部機関に連絡するなど、高齢者の快適な生活を守るためのサポートを行っています。
また、地域サークルを勧めたり、地域活動への参加を促したりと、高齢者が社会とかかわりながら生活できる環境を整えることも、生活サポートの一環です。
健康面でのサポートも実施されており、これは健康状態のチェックや健康促進のサポートなどがあげられます。ただし、医療的なサポートが行われているわけではなく、あくまで生活援助員によるチェックに限られることは理解しておきましょう。
緊急時のサポートとしては、入居者の体調不良や容体の悪化などの際に、生活援助員が対応を行います。医療機関や家族に連絡することはもちろん、病気の際には家事の手伝いをするなどもサポートに含まれます。
入居条件
シルバーハウジングは誰でも利用できるわけではなく、入居の条件が定められています。入居できるかどうかをチェックする際のポイントとしては、次の2つがあげられます。
- 年齢
- 年収
これら2つの条件を満たすことで、シルバーハウジングへの入居が可能です。
年齢
シルバーハウジングは、次のうちいずれかの年齢要件を満たす人が入居できます。
- 60歳以上の単身者
- 夫婦のどちらかが60歳以上の世帯
- 60歳以上の人のみからなる世帯
- 障害単身者または障害者とその配偶者の世帯
年齢は基本的には60歳以上からですが、地域や物件ごとで65歳以上からなど条件が変わることもあります。また、障害を持っている人や、その人の配偶者も含めた世帯も、シルバーハウジングへ入居できます。
年収
年収の要件は、シルバーハウジングを運営している団体によって異なります。自治体が運営している場合は、年収や月収が一定以下と定められており、これがいくらになるかは入居の申し込みの際に確認しておきましょう。
都市再生機構が運営しているUR住宅の場合は、82,500円以上20万円未満の家賃額の例だと、単身の場合は月収が25万円以上、世帯の場合は合計で月収33万円以上が必要です。
自治体運営のものは経済的に苦しい人が優先的に利用できるように、年収や月収が制限されています。対して都市再生機構が運営しているものは、支払いが滞らないように月収の規定があると考えましょう。
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シルバーハウジングとサービス付き高齢者向け住宅の違い
高齢者が利用できる住宅の選択肢は、シルバーハウジングだけではありません。他の選択肢としてはサービス付き高齢者向け住宅、いわゆるサ高住と呼ばれるものもあります。
どちらも高齢者向けという点は共通していますが、細かいポイントは異なります。それぞれの違いを知り、シルバーハウジングがどのような特徴を持っているかについて、さらに理解を深めていきましょう。
費用
サ高住は高齢者が暮らしやすいようにさまざまな設備が搭載された住宅であり、かつ掃除や洗濯、食事などのサービスが受けられるものもあります。手厚いサービスが受けられるため費用は高く、シルバーハウジングのほうが安価で利用できます。
サ高住は入居してから家賃がかかるだけではなく、入居時に一時金の支払いが必要なことも多いです。初期費用は物件によって異なりますが、数十万円から介護型となると数百万円など高額なコストになることも少なくありません。
シルバーハウジングも入居の際には敷金といった費用がかかりますが、これは家賃の1~3ヶ月分程度であることが多く、そもそも家賃もそれほど高くはないため、サ高住よりはコストは低いです。
入居条件
シルバーハウジングは60~65歳以上の健康な高齢者が入居可能な住宅であり、要支援や要介護などの人は、基本的には入居できません。自立した生活が可能な範囲で介護サービスを利用する場合なら入居は可能ですが、介護サービスの利用頻度が高いと入居できない場合が多いです。
一般型のサ高住は自立から軽度の要介護の人まで入居可能であり、シルバーハウジングよりも幅広い人が対象となっています。また、介護型のサ高住の場合は自立から要介護5までの人が入居可能であり、介護サービスを必要とする人も対象になります。
サービス内容
提供されているサービス内容にも違いがあり、シルバーハウジングでは常駐している生活援助員が、日常生活におけるさまざまな手伝いをしてくれます。対してサ高住は生活支援のサポートが受けられるだけではなく、介護型なら医療ケアも受けられることが特徴です。
ただし、夜間は医療や介護ケアなどを行えるスタッフが常駐していない場合もあるため、この点は注意しなければなりません。生活支援のサービスはそれぞれで受けられますが、その質はサ高住のほうが高いです。
また、介護型ではなく、一般型のサ高住やシルバーハウジングでは、医療や介護ケアを必要とする場合は、別途外部のサービス事業者と契約しなければならない点は共通しています。
運営
施設を運営している団体も、それぞれで異なります。シルバ-ハウジングは自治体や都市再生機構などが運営していますが、サ高住は主に民間企業が運営しています。シルバーハウジングは運営している団体の特徴から公的な性質が強く、これが安価で利用できる理由です。
対してサ高住は営利目的の民間企業が運営しているためコストは高いものの、その分充実したサービスが受けられるという違いがあることは覚えておきましょう。
シルバーハウジングのメリット・デメリット
高齢者の住宅問題を解消する手立てとして、シルバーハウジングは有効ですが、実際にはメリットだけではなくデメリットもあります。そのため、特徴を詳細まで把握して、どのような点が魅力かだけではなく、いかなる点で不満を感じやすいのか、また、マイナスポイントとなりやすいのかなども知っておきましょう。
メリット
シルバーハウジングに住むメリットは、安価で住居が手に入れられる点にあります。特に自治体が運営しているシルバーハウジングの場合は、経済的に困窮した人が優先的に入居でき、かつ家賃なども安く設定されています。
周辺相場と同等かそれ以下に設定されている場合が多く、更新契約料もかからないためシルバーハウジングに住むことで得られるコストメリットは高いです。また、生活援助員が常駐していることで、高齢者でも安心して暮らせることもメリットの1つです。
安否の確認や健康面での相談、緊急時の家族や医療機関への連絡など、幅広いサービスが受けられるのはシルバーハウジングならではの魅力です。バリアフリー仕様で安全に生活を送りやすい点も魅力であり、これもシルバーハウジングのメリットといえます。
他にも通常の賃貸住宅だと、年齢を理由に入居を断られることがありますが、シルバーハウジングなら60~65歳以上などの要件をクリアすることで、高齢でも入居できることも魅力的なポイントです。
デメリット
シルバーハウジングのデメリットは、医療介護の職員は常駐していないため医療や介護ケアなどは受けられない点があげられます。シルバーハウジングで提供されているのは、あくまで簡単な生活支援であり、医療や介護などは外部のサービス事業者と契約して受ける必要があります。
また、健康な人しか入居できず、自立が難しいと判断された場合は入居審査で落ちたり、すでに住んでいる人でも要介護度が上がることで、退去を求められる可能性もあったりする点もデメリットです。
他にも入居の際に年齢や収入などの条件を満たさなければ入居できなかったり、年齢制限があることで家族との同居ができなかったりする点も、デメリットとして覚えておきましょう。
シルバーハウジングの利用方法
実際にシルバーハウジングを利用するには、どのような方法を用いるのかを知っていきましょう。利用を検討するうえでは、入居の申し込みの方法はもちろん、費用や入居の難易度なども知っておくことが大切です。細かいポイントを把握して、シルバーハウジングへスムーズに入居できるように準備をしていきましょう。
費用について
シルバーハウジングに住む際には、初期費用と月額費用がかかります。初期費用としては敷金や家具の購入費などがあげられます。敷金は家賃の1~3ヶ月分であることが多く、礼金は不要です。そのため、初期費用はそれほど高くはなく、エアコンなど基本的な家電が揃っていることも多いため、低コストで入居できます。
また、月額の費用は家賃以外にも、食費や水道光熱費、その他雑費なども考慮する必要があります。住居によっては管理費や共益費などが別途請求されることもあるため、これらの費用が家賃に含まれているかは確認しておきましょう。
入居までの流れ
シルバーハウジングに入居するまでの大まかな流れは、次の通りです。
- 空室があるかを調べる
- 入居条件を確認する
- 申し込みをする
- 契約をする
- 初期費用を支払い入居
まずは自治体や都市再生機構のホームページなどから、シルバーハウジングの空室があるかを見つけましょう。空室があるなら、自分が入居の条件を満たしているかを確認して、申し込みを行います。
申し込み後、審査を経て問題がなければ入居となりますが、希望者が多い場合は抽選となるため注意しなければなりません。なお、自治体が運営している施設は応募多数なら抽選となりますが、都市再生機構が運営している場合は先着順となるため、この点も覚えておきましょう。
契約をした後は、敷金などの初期費用を支払います。費用を支払うと入居が可能であり、現住所から引越しをして、入居は完了となります。
入居の難易度
高齢でも入居が可能であり、安価で住めるシルバーハウジングは人気であるため、応募多数で抽選となることも多いです。都市再生機構は先着順ですが、需要が高いため、空室は少なくなっています。
地域によって入居の難易度は違いますが、基本的には入居が難しく、長期間待たなければならないケースも多いことは理解しておきましょう。
シルバーハウジングは人気のサービス
安い家賃で入居でき、生活援助員が常駐しているシルバーハウジングは、高齢者が安心して暮らせる住居として人気です。しかし、人気が高い分競争率も高く、入居するまでに時間がかかってしまうことも少なくありません。
そのため、シルバーハウジングへの入居を考えているなら、早めから動き出しておくことが大切です。住みやすい住宅を確保するためにも、事前の情報収集は念入りに行い、スムーズにシルバーハウジングへ入居しましょう。
シルバーハウジングとは、「生活サポート」「健康サポート」「緊急時サポート」などのサービスを受けることができるバリアフリー対応住宅です。詳しくはこちらをご覧ください。
シルバーハウジングとサ高住の違いは、「費用」「入居条件」「サービス内容」「運営団体」などの点が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。