「どうしたら食べてくれるんだろう?」「体調が悪いのかな?」「もしかして、まずい?」
などと高齢者の食事のわがままに振り回されて困っていませんか?
しかし、わがままをそのまま放っておくわけにはいきませんよね…。
この記事では、高齢者が食事にわがままになってしまう原因を探り、わがままにならない工夫やわがままと上手に付き合う方法をご紹介します。
介護者やご本人様が食事の時間を苦に思わず、一緒に楽しめる方法を見つけられる記事になっていますので、ぜひ参考にご覧ください。
高齢者が食事でわがままになる3つの原因
高齢者が食事にわがままになってしまうのはなぜでしょうか?
高齢者が食事にわがままになってしまう原因は、大きく分けて下記の3つが考えられます。
- 認知症や認知機能低下
- 身体的な問題
- 提供される食事内容
これらの原因についてそれぞれ詳しくご紹介していきましょう。
認知症や認知機能低下
認知症や認知機能低下が起こると食事にわがままになる傾向があります。
認知症の症状において、食べ物を食べ物として認識できない失認の症状や、食事の仕方がわからないといった失行の症状の影響が挙げられます。
また、認知症による集中力の低下や抑うつ状態なども食事にわがままになる原因です。食事をする際に、ご本人様が食事以外に気を取られ食事ができない場合には、認知症が原因と考えてもよいでしょう。
身体的な問題
身体的な問題として、身体機能の低下や嚥下障害、食欲不振などでわがままになってしまう場合があります。
高齢になると、食べ物を咀嚼・嚥下・消化する力が衰えやすく、食欲不振になる場合が挙げられます。
また、筋力低下によって姿勢の維持が難しくなり腹部が圧迫され食欲減退につながったり、活動量が減り食欲が湧かなかったりする場合もあるでしょう。
提供される食事内容
食事内容に苦手なものが含まれていたり、好みの味付けでなかったりするのが原因でわがままになってしまう場合があります。
好みのものや食べにくさを感じる食事はわがままになりやすく、食欲減退にもつながってしまいがちです。
また、ご本人様の状態を考慮したミキサー食や減塩食などの食事でも、食事の見た目や味の薄さからわがままになってしまう場合も考えられます。
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高齢者が食事でわがままにならないための工夫
高齢者がわがままにならずに食事をしてもらうためには、さまざまな側面からの対策が必要です。
調理の方法や食事提供の仕方など、どのような点に注意をするとよいのかをご紹介します。
食材や食器の工夫をする
認知症の症状が進行していたり認知機能が低下していたりすると、食器と食べ物の区別がしづらくなっている場合があります。
料理はシンプルな無地のお皿で提供すると、食べ物だとわかりやすいでしょう。また、箸を上手に使えない場合には、スプーンやフォークに変更すると食べやすくなります。
さらに、食材を高齢者が食べやすい大きさにカットしたり硬さを工夫したりするのも効果的です。
好みのメニューを組み合わせる
ご本人様の好みを理解した料理提供が行えているのかの確認は大切です。
食事の栄養バランスはもちろん大切ですが、わがままになって食事を摂らないでいては健康を害してしまいます。好みのメニューを基本に、ほかのメニューを組み合わせて提供すると食欲促進につながるでしょう。
また、料理の盛り付けも一度にたくさん盛り付けるのではなく、少量ずつにすると見た目の圧迫感が薄れ食欲につながる場合があります。
食事環境を整える
ご本人様が食事をしやすい環境づくりも大切です。
食事に集中しづらい環境では、リラックスできずに食べなくなってしまう場合があります。テレビの音量や机の上に不要なものが散乱している場合には改善が必要です。
食事に集中できるように環境を整えたり一緒に食べられる環境をつくったりすると、1人では食が進まない方でも食欲促進につながるでしょう。
また、食事をする姿勢も重要です。食事をする際には、足が床につくように椅子の高さを調節し、食べやすい姿勢で食事ができるようにしましょう。
高齢者が食事でわがままになっても上手に付き合う方法
ここでは実際に、高齢者が食事でわがままになってしまう原因と対処法を組み合わせてご紹介します。
下記に挙げる項目でいずれかに当てはまるものがある場合には、対処法を参考にしてみるとよいでしょう。
- 体調不良によるわがまま
- 認知症によるわがまま
- 嚥下機能の低下によるわがまま
- 病気や副作用によるわがまま
- 意欲低下によるわがまま
それでは対処法を一つずつ解説しますので、上手に付き合える方法を見つけましょう。
体調不良によるわがままの場合
まずは、日々のケアの中で、高齢者の体調不良に気づけるかどうかが大切です。
認知症の方や意思表示が難しい方は、体調不良を訴えられずにいるかもしれません。そうした場合には、日々のケアで体調を伺い「はい」「いいえ」といった簡単に答えられる質問で体調確認を行いましょう。
さらに、顔色や表情などを確認しておくと体調不良時に気づきやすくなります。体調不良の場合、体調不良の原因を解決すると食欲が戻ってくる場合も…。
例えば、口腔内に問題があった場合、食事前に口腔ケアを行うと食欲が出る場合がありますよ。
認知症によるわがままの場合
認知機能の低下や認知症によるわがままの場合、食べ物がわからない失認の症状や食べる行為自体を忘れてしまっている失行の症状が影響していると考えられます。
その場合の対処法は、安心して食べられる状況づくりが大切です。
食事を介助する際に、一緒に食事を食べ、味を伝えてみるのも一つの手段です。どんな食材でどのような味がするのかなど、ご本人様が食欲が湧くような声かけをすると食事によいイメージが湧き、食欲促進につながるでしょう。
嚥下機能の低下によるわがままの場合
嚥下機能低下によるわがままの場合、食べやすい状態にするのが大切です。
嚥下機能が低下していると、咀嚼力や飲み込む力が弱くなっているため、食材の硬さや大きさなどの工夫が必要です。時には、とろみをつけて食べやすくするのもよいでしょう。
また、食べる時の姿勢やあごの角度に注意すると、誤って気管に入るのを防げ、むせ込みの予防にもつながります。
そして、嚥下機能の低下している方のケアでは、食事をしっかりと飲み込めたのか最後まで見守り確認するように注意しましょう。
病気や副作用によるわがままの場合
高齢者の場合、複数の病院にかかっている方も少なくありません。
病気で内服している薬の副作用によるわがままの場合、薬の組み合わせを確認しましょう。
医師や薬剤師が薬の飲み合わせや副作用を確認していても、影響が出る場合があります。食事の時間に眠くなってしまったりお口が乾きやすくなったりして、食事に集中できなくなってしまう方もいます。
こうした症状の改善には、食事の際の状態や状況の把握をして、食事に集中できる環境づくりが必要です。
また、飲み合わせや副作用の相談ができる環境を整えるのも必要になるでしょう。
意欲低下によるわがままの場合
食事に対する意欲低下や物事に対する意欲低下によるわがままの場合、認知症やうつ状態である可能性が考えられます。
うつ状態では、最初の一口までの行動に時間がかかってしまう傾向があるため、味見をお願いしてみると継続して食事を食べてくれる場合があります。
また、食事をする際には、出来る限り一緒に食べる環境を整え1人での時間が短くなるような配慮をするだけでも、気分の落ち込みが減り意欲低下を防げるでしょう。
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高齢者の食事のわがままを受け入れるには
高齢者の食事に対するわがままにはさまざまな原因があり、適切な方法で対処すると上手に付き合えるようになります。
高齢者の方がなぜ食事にわがままになってしまうのかを考え、原因を探れるようにするのがポイントです。日々のケアで、ご本人様の状況や状態を観察し適切に対処ができると、お互いの関係もよくなるでしょう。また、認知症の方であっても「感情」の記憶は残りやすく、食事の時間を楽しく過ごせると食事が楽しいものだと記憶し、食事に対するわがままも減っていきます。
ケアを行う際には、高齢者が食事にわがままになってしまっても、そこに「ご本人の意思」が存在し、ご本人を尊重するケアである必要があります。そのためには、ケアを行う介護者が無理に食べさせたり怒ったりせずに、余裕を持った介助で優しく見守るように心がけるとよいでしょう。
高齢者の食事のわがままも受け入れられる心の余裕を持ち合わせられると、お互いに食事の時間を楽しめ食事がより一層美味しくなりますよ!
高齢者を食事でわがままにさせないメニュー
高齢者の方が食事にわがままになってしまっても、食事はしっかりと摂って欲しいですよね。ただでさえ高齢者の方の食事は、偏りやすく手軽に食べられるものになってしまう傾向にあります。
栄養バランスが十分に摂れない食事を続けると、健康に影響を及ぼす場合も考えられ、食事をしっかりと摂れるようにする工夫が必要です。
そこで、高齢者の方の食事で注意すべきポイントや栄養バランスが整ったレシピをご紹介します。
高齢者が食事にわがままになってしまった時に、食べやすいメニューを提供してあげられるように参考にしてください。
食べやすい食材と食べにくい食材
高齢者の食事では、食べやすい食材と食べにくい食材があり、それにわがままも加わると、食事が偏ってしまう傾向が見受けられます。
具体的にどのような食材が食べやすくて食べにくいのかを、下記の表にまとめましたので参考にしてください。
【食べやすい食材】
食事提供の状態 | メニューや食品 |
---|---|
おかゆ状のもの | おかゆ、パンがゆ |
乳化しているもの | アイス、ヨーグルト類 |
ポタージュ状のもの | ポタージュスープ類、カレー、シチュー |
ゼリーやプリン状のもの | ゼリー、プリン、茶碗蒸し、卵豆腐 |
ミンチ状のもの | つみれ、ハンバーグ、つくね |
【食べにくい食材】
食事提供の状態 | メニューや食材 |
---|---|
硬い野菜 | きゃべつ、レタス、きゅうり |
繊維が残るもの・感じるもの | ふき、ごぼう、水菜、たけのこ |
スポンジ状のもの | はんぺん、がんもどき |
弾力があるもの | こんにゃく、餅 |
噛みにくいもの | ステーキ、かまぼこ、フライ |
喉に張りつくもの | のり、わかめ、きなこ |
また、食べにくい食材に、水や汁物も挙げられます。
水や汁物は、お口の中でまとまりにくく嚥下しづらいため、水分不足になる高齢者の方もいらっしゃいますので、注意しましょう。
やわらか小芋の豚汁
具だくさんの豚汁は食べ応えがあり食材のサイズも好みに合わせやすく、栄養バランスも取れるメニューです。
【材料】2人分
- 豚肉(薄切り)2枚
- 小芋 4~6個
- 大根 適量
- 人参 適量
- ネギ 少量
- だし汁 400ml
- お味噌 大さじ1.5~2
- 醤油 小さじ1/2
【下準備】
- 豚肉は食べやすいサイズにカットします。
- 小芋は水洗いして、皮をむき食べやすいサイズにカットして、水にさらしておきましょう。
- 大根は皮をむいていちょう切り、人参は半月切りにすると食べやすいでしょう。
【作り方】
- 鍋に水切りをした小芋、大根、人参、だし汁を加えて強火にかけ、煮立ったら弱火にします。アクを取りながら具材がやわらかくなるまで10〜15分程煮ましょう。
- 1に豚肉を加え、肉の色が変わったらお味噌を入れて、醤油とネギを加え、火を止めます。お椀に注ぎ、お好みで一味唐辛子や七味唐辛子を加えるとよいでしょう。
やわらかヒレ肉のポークピカタ
豚ヒレ肉を叩くとやわらかく仕上がります。調理法も簡単なので取り入れやすいメニューです。
【材料】2人分
- 豚ヒレ肉(カツ用) 6~8枚
- 塩 適量
- 粒マスタード 少量
- 小麦粉 適量
- 溶き卵 1個分
- オリーブオイル 大さじ3
【下準備】
- 豚ヒレ肉に塩を振り、すりこ木などで叩いて厚さ7~8mmにのばし、両面に粒マスタードを薄くぬります。
- 卵を溶いて網を通してバットに流しておきましょう。
【作り方】
- 下ごしらえをした豚ヒレ肉に小麦粉をまぶして、溶き卵を絡めて3分置きます。
- フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、1を並べて焼き、焼き目がついたら裏返して焼きましょう。
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高齢者の食事のわがままに寄り添える心の余裕を持とう
高齢者が食事にわがままになってしまっても上手に付き合う方法は下記の通りです。
- わがままになってしまう原因を探れるように、日々のケアでご本人様を観察する
- 「はい」「いいえ」など簡単に答えられる質問でコミュニケーションを図る
- 食事内容や環境の工夫をしてご本人様の好みに合わせた食事を提供する
- 食事をする際には、出来る限り1人で食べさせず一緒に食事をする
- 怒ったり焦ったりせず、余裕を持って優しく見守るようにする
これらのポイントを意識しながらケアを行えれば、ご本人様が食事に意欲的になり食事の時間を楽しみにしてくれるきっかけになります。
高齢者の食事のわがままに寄り添える心の余裕が持てるように、高齢者の方との信頼関係の構築や環境への配慮を行い、お互いが食事の時間を苦に思わずにいられるといいですね!
高齢者の食事に関するよくある質問
Q.高齢の両親が好き嫌いをいって食べてくれません。どうしたらいいですか?
A.食事にわがままになってしまう理由はさまざまです。ご両親がなぜ好き嫌いをいうようになったのか原因を探ってみましょう。また、食事の際の声かけや環境づくりを行うのもよいでしょう。
Q.高齢の母が食材を買っても食べずに残したり、甘いものばかりを食べたりします。もっと栄養のあるものを食べてもらいたいのですが、いい方法はありますか?
A.買い物に同行する際、レジを通すまでにかごの中を一度確認するのはいかがでしょうか?「食べたい」「美味しそう」と選んでも無駄にせずに食べきれるのか一度冷静になって考える時間が必要だと思います。毎日の買い物は、気晴らしや運動としてもよいので、少量ずつ購入するとよいでしょう。
高齢者の方が食事にわがままになってしまった際には「認知症」「身体的な問題」「食事の好み」等の原因が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
「食べやすい環境を作る」「食べやすい状態の食事を提供する」等の対応を取ることで改善される可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。