「終末期医療の費用が気になる」「満足のいく最期にしてあげたい」とお考えの方は多いでしょう。
そこで本記事では終末期医療の費用を解説するだけでなく、少しでもご家族の負担が軽くなるような制度について紹介します。
また入院にあたって準備するものやご家族ができる対応についても網羅的に解説しますので、終末期医療ケアを検討している方は参考にしてください。
終末期医療の費用で考えておきたいこと
終末期医療とは、病気や障害、老衰などで、治療が難しく、余命わずかになった方へ提供される医療です。
身体的、精神的な苦痛の緩和を目的としており、「ターミナルケア」とも呼ばれています。
数週間〜数ヶ月提供されるケースもあり、家族としては費用が気になるところでしょう。
そこで、終末期医療の費用に関連して、下記を解説します。
- 終末期医療ケアの費用相場
- 終末期医療ケアでかかる費用の項目
- 病気による追加治療の費用
- 病院で看取る際の費用
- 在宅で看取る際の費用
それぞれ見ていきましょう。
1.終末期医療ケアの費用相場
まず気になるのが費用相場でしょう。
病院での終末期医療費は医療保険に準じており、75歳以上の医療費負担割合は所得に応じて1〜3割です。
また、高額療養費制度の対象であり、一定の金額を超えた支払い分は、所得に応じた金額が返金されます。
【一般的な所得(26万円以下/月)の場合】
全体の医療費 | 100万円 |
---|---|
窓口の支払額 | 10万円 |
高額医療費の払い戻し | 4万2,400円 |
実質自己負担額(月) | 57,600円 |
参照:全国健康保険協会
上記の表から分かるように、所得に応じて自己負担額は変わります。
さらに、これらの費用に加えて、差額ベッド代やおむつなどの実費分が加算されるので注意しましょう。
2.終末期医療ケアでかかる費用の項目
終末期に行われる医療ケアは、主に以下の3つです。
- 精神面のケア
- 社会的なケア
- 身体的なケア
精神的ケアでは、死を目前にした患者が不安や恐怖を和らげ、心穏やかに死を迎えられるように、寄り添いサポートします。
具体的な内容の例は下記の通りです。
【精神的のケア】
ベッド周囲の環境調整
好きな音楽をかける
思い出の品を飾る
本人に寄り添い話を聴く
精神的ケアでは、本人が穏やかに過ごせるような環境調整、ネガティブな感情を取り除けるような関わりを行います。
また、話を聴くのもケアに含まれ、医療スタッフだけではなく、患者家族やボランティアの方がサポートを行う場合もあります。
【社会的ケア】
医療ソーシャルワーカーによる社会援助
遺品整理や、遺産相続の相談、支援
社会的ケアとは、医療による経済的な負担、社会、家庭などの役割の喪失からの苦痛を和らげるケアです。
そうした不安や苦痛に対しては、医療ソーシャルワーカーが社会援助、心理的負担の軽減を行います。
【身体的ケア】
痛みを取るための麻薬の投与
点滴・経管栄養・胃ろうによる水分・栄養補給
床ずれ予防ためのポジショニング
不眠症状改善のための眠剤の投与
身体的ケアは、主に痛みによる苦痛を和らげるためのケアを行います。
直接、栄養剤や薬剤を投与し、身体的な苦痛がないように配慮します。
3.病気による追加治療の費用
病状によっては、積極的に身体的ケアを行うケースもあり、それによって追加で費用がかかります。
主に痛みの緩和を目的とする麻薬投与や、食事が取れない場合の経管栄養などです。
終末期医療において、身体的ケアは重要で、全身倦怠感、不眠、疼痛、食指不振などの身体症状は、精神面にも悪影響を及ぼします。
終末期医療において必要な費用です。
4.病院で看取る際の費用
「終末期医療を受ける場所」によっても費用が変わってくるでしょう。
選択肢は主に「病院」「在宅」「施設」で、病院の場合は、主に緩和ケア病棟で終末期医療を行います。
かかる費用は下記の通りです。
- 入院料
- 食事料
- 室料差額
- 自費(おむつ代・病衣)
「入院料」「食事料」は厚生労働省により定められた定額料金を負担します。
【1日の利用料金】
入院期間 | 1割負担 | 3割負担 |
---|---|---|
30日未満 | 5,050円 | 15,150円 |
31日以上60日以内 | 4,510円 | 13,540円 |
61日以上 | 3,350円 | 10,050円 |
前述しましたが、上記の料金は高額療養費制度の対象となるため、一定額を超えた場合は返金されます。
「室料差額」は大部屋とは異なる条件のよい個室を利用した場合にかかる「大部屋との差額」の料金です。
差額ベッド代は高額療養費の対象とはならず自己負担となるでしょう。
また、食事代も高額療養費の対象外です。しかし、医療保険が適用され、所得に応じて1食100円〜460円ほどの負担で済みます。
おむつ代、病衣などの日常生活費も自己負担です。
5.在宅で看取る際の費用
在宅で、看取りを行う場合に費用がかかるサービスは以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
医師による訪問診療費 |
|
看護師による訪問看護費 |
|
介護に関わる費用 |
|
訪問診療、訪問看護は医療保険の対象で、自己負担額は所得に応じて1〜3割負担です。
「介護に関わる費用」は介護保険の対象で、こちらも1〜3割の自己負担で済むでしょう。
また、医療費と介護保険費用は、合算して自己負担額の上限を決める「高額介護合算療養費制度」の対象です。
※高額介護合算療養費制度については後述します。
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終末期医療ケアの費用を少しでも抑える方法
終末期医療に関わる方に対して、「少しでも費用を抑える方法」を解説します。以下の通りです。
- 入院ではなく在宅ケアを選択する
- 制度をうまく活用する
- 分割払いで月々の額を抑える
それぞれ見ていきましょう。
1.入院ではなく在宅ケアを選択する
費用を抑えるために在宅ケアを選択するのも一つの手です。
在宅ケアの場合、以下の費用がかかります。
- 在宅医の往診費
- 訪問看護費
- 薬剤にかかる費用
- 福祉機器レンタル(ベッド、車いす、ポータブルトイレなど)
- 介護サービス費
上記のサービスの多くは、医療保険の対象となるため、1〜3割で利用できます。
また「福祉機器のレンタル」「介護サービス」は介護保険の対象となるため、こちらも所得に応じて1〜3割負担のみでサービスを利用できます。
病院で終末期医療を行った場合、高額療養費制度により、医療に対して自己負担上限がありますが、差額ベッド代や日用品に費用がかかるでしょう。
しかし、在宅の場合はそれらがかかりません。
また、医療保険と合わせて、介護保険を利用する方は「高額介護合算療養費制度」です。
【高額介護合算療養費制度とは】
1年間にかかる医療保険と介護保険の自己負担の合算額が高額であった場合、一部払い戻しをする制度です。
参照:健康長寿ネット
自己負担額は「世帯収入」「70歳未満」「70歳以上」により、上限が決められます。
【年間の負担上限】
世帯収入 | 70歳未満 | 70歳以上 |
---|---|---|
年収約1,160万円以上 | 212万円 | 212万円 |
年収770万~1,160万円 | 141万円 | 141万円 |
年収370万~770万円 | 67万円 | 67万円 |
一般 年収156万~370万円 |
56万円 | 60万円 |
市町村民税世帯非課税 | 31万円 | 34万円 |
市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下) |
19万円 |
参照:健康長寿ネット
あなたがどこに該当するか事前に確認しておきましょう。
2.制度をうまく活用する(多数該当高額療養費)
費用を抑えるためには、前述してきたような制度をうまく活用しましょう。
特に、「高額療養費制度」は重要ですのでこちらで深掘りしていきます。
【高額療養費制度とは】
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
参照:全国健康保険協会
高額医療費制度は所得に応じ、自己負担限度額が変わります。
支給が年(直近12ヶ月)3回を超えた場合は、「4回目以降」から自己負担限度額が引き下げられます。
具体的な金額は以下をご覧ください。
【70歳未満の場合】
所得区分 | 自己負担額 | 多数該当の場合 |
---|---|---|
月額83万円以上 | 252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% | 140,100円 |
月額53万〜79万円 | 167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1% | 93,000円 |
月額28万〜50万円 | 80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1% | 44,400円 |
月額26万円以下 | 57,600円 | 44,400円 |
市区町村民税の非課税者等 | 35,400円 | 24,600円 |
参照:全国健康保険協会
【70〜75歳の場合】
被保険者の所得区分 | 自己負担限度額 | ||
---|---|---|---|
外来(個人ごと) | 外来・入院(世帯) | ||
① 現役並み所得者 | 報酬月額83万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
[多数該当:140,100円] |
|
報酬月額53万〜79万円で高齢受給者証の負担割合が3割 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
[多数該当:93,000円] |
||
報酬月額28万〜50万円で高齢受給者証の負担割合が3割 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[多数該当:44,400円] |
||
② 一般所得者
(①および③以外の方) |
18,000円(年間上限14.4万円) | 57,600円
[多数該当:44,400円] |
|
③ 低所得者 |
|
8,000円 | 1.24,600円
2.15,000円 |
参照:全国健康保険協会
ただし健康保険組合から国民健康保険に切り替えるなど、保険者を切り替えた支給回数が通算されなくなるので注意しましょう。
3.分割払いで月々の支払い額を抑える
最近は、医療費の支払いもクレジットカードで対応している病院が増えています。
手元にお金がない場合も支払いが可能で、リボ払いによる分割支払いもできます。
支払いが難しい場合は、そちらも検討しましょう。
ただし、支払いが滞ると信用情報が傷付くため、リボ払いによる利息や引き落としには要注意です。
終末期医療に向けてご家族で準備できること
では、ここからは「これから終末期医療を行う方」に向けて具体的に準備できることを見ていきましょう。以下の通りです。
- 意思決定の委託
- どこで終末期医療(ターミナルケア)を受けるかの希望
- 本人にどのような医療ケアを用意するのか
それぞれについて解説します。
なお、詳細は「終末期に家族ができることとは|ケアの種類や内容、実際の流れまで解説!」でも、解説しているのでよければ参考にしてください。
1.意思決定の委託
終末期の準備として、重要なのが「意思決定」です。
本人が意思決定をできない状況になった時のために、本人と家族間で「どのような最後を迎えたいか?」話し合っておきましょう。
特に、「最後を過ごす場所」「誰と過ごしたいか」「どんな最後にしたいか」は重要です。
本人が意思決定をできない状況になった時に判断を下す「キーパーソン」も事前に決めておきましょう。
また、ケアマネジャーや、医療ソーシャルワーカーから、医療・福祉の情報を得ておき、本人の意思決定を尊重できるような環境を作るのも大切です。
2.どこで終末期医療(ターミナルケア)を受けるかの希望
前述しましたが、終末期医療を行うのに重要なのが「どこで最後を迎えるか」でしょう。
「日本財団 人生の最期の迎え方に関する全国調査」によると77歳〜81歳の高齢者のうち62%が「自宅で最期を迎えたい」と回答しています。
また、絶対に避けたい場所として「介護施設」「子の家」が、合算して80%以上となっています。
何かあった時に、「救急搬送してしまう」「入院となりそのまま亡くなる」ケースもあるため、事前の準備として、どこで最期を迎えるかは、よく確認しておきましょう。
3.本人にどのような医療ケアを用意するのか
理想的な最期を迎えられるように、事前準備として、どのような医療ケアが提供できるかを確認しておきましょう。
終末期医療に関連する医療ケアは下記の通りです。
名称 | 概要 |
---|---|
終末期ケア | 余命少ない方に対する、医療に提供されるケア |
看取りケア | 生活支援を中心に行われる、「最期」に向けたケア |
緩和ケア | 「診断直後」から始まるがん患者へ提供される苦痛を緩和するためのケア |
ホスピスケア | 「治療が望めない時期」からがん患者へ提供される苦痛を緩和するためのケア |
エンドオブライフケア | 看取りや、ターミナルケアを含めた、「その人らしい最期」を迎えるための支援の考え方 |
それぞれ見てみましょう。
①終末期ケア(ターミナルケア)
終末期ケア(ターミナルケア)は、余命が残り少ないと判断された方や、その家族に向けて、「自分らしい生活の質」を保つための支援の総称です。
支援の対象者に、疾患などの制限はありません。
医療を軸に、「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つが提供されます。
②看取り取りケア
看取りケアでは、在宅や施設で、余命が残り少ないと判断された方に向けて、身体的な支援を行います。
身体的、精神的な苦痛を緩和し、人としての尊厳を維持しながら、最期に向けて生活支援を行います。
終末期医療(ターミナルケア)と似ていますが、看取りケアでは、日常生活のケアが中心で積極的な医療行為は行いません。
③緩和ケア
緩和ケアは、「診断直後」から始まるがん患者への「身体的」「精神的」な苦痛を緩和するためのケアで、「通院」「入院」「在宅療養」の3つの場で受けられます。
サービス提供は「がん診療連携拠点病院」を中心とした病院で行われており、医師、看護師、薬剤師、リハビリ職、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどの専門職種がチームで、患者へアプローチします。
④ホスピスケア
ホスピスケアとは、がん患者を対象にした苦痛を緩和するためのケアです。
緩和ケアと似ていますが、大きく違いはありません。
異なるのは、ケアがはじまる時期で、緩和ケアは「がん発症直後から終末期まで」なのに対して、ホスピスケアは「治療が望めない時期から終末期まで」を対象にしています。
⑤エンドオブライフケア
誰でもいつかは訪れる命のおわりについて考える人が、最期までその人らしく生きられるように支援するケアです。
終末期ケア(ターミナルケア)に次いで生まれた新しい考え方で、死期が近い人だけではなく、死を見据えた人を幅広く対象としているのが特徴です。
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医療ケアごとにかかる費用
最後に医療ケアに対する費用を以下に分けて解説します。
- 終末期ケア(ターミナルケア)
- 緩和ケア
- ホスピスケア
- 看取りケア
それぞれの費用についてみていきましょう。
1.終末期ケア(ターミナルケア)
前述しましたが医療費については、原則70歳以上の自己負担額は1ヵ月の上限が5万7,600円、外来に関しては1万8,000円となっています。
上限額は、所得水準によって異なりますが、月数万円に収まるのが一般的です。
なお、入院時の差額ベッド代や日常生活費はそれ以外の出費となるため、そこから利用に応じた金額が必要です。
2.緩和ケア
緩和ケア病棟の入院費用は、利用する日数によって変わり、負担割合は1〜3割です。
1割負担で、30日入院した場合は「1日5000円×30日」でおよそ15万円前後で、高額療養費制度の対象となるのであとで払い戻しがあります。
また、主に負担となるのが病室代でしょう。
1日あたりの金額は下記です。
- 1人室/8,018円
- 2人室/3,044円
- 3人室/2,812円
- 4人室/2,562円
※参照:厚生労働省
1人部屋で30日過ごした際には、約24万円が必要です。
医療費控除の対象となるケースもありますが、多くの場合は同意して入院となるため、それも難しいでしょう。
3.ホスピスケア
ホスピスケアは緩和ケア病棟か施設で行われており、緩和ケアと同等の金額が必要です。
介護施設では、医療ケアが少ないため、医療費はかかりませんが、「居住費(家賃)」「管理費」「食費」に加えて「介護保険サービス費」などが必要です。
4.看取りケア
施設で看取りを行った場合は、国が決めた金額がかかります。
施設の種類や、条件に応じて金額は変わります。
例として老健(介護老人保健施設)の金額を記載しますのでご参照ください。
条件 | 1日あたりの自己負担額 |
---|---|
死亡日以前31日~45日 | 80円 |
死亡日以前4日~30日 | 160円 |
死亡日前日~前々日 | 850円 |
死亡日 | 1,700円 |
参照:カイポケ
ただし、施設側が人員・ケアの基準を満たして、看取りケアを行った場合の金額です。
5.エンドオブライフケア
「エンドオブラフケア」は「最後までその人らしく生きられるようにするケアの考え方」です。
詳細な金額はなく、緩和ケア、ターミナルケアなど、どのようなケアを選ぶかで費用は変わります。
まとめ:終末期医療の費用はサービスによって変わる
本日は下記をまとめました。
- 終末期医療は高額療養費制度の対象となる
- 金額は提供するケアによって異なる
- 費用を抑えるには制度の活用や在宅ケアを選択するとよい
終末期医療は金額面に加えて精神的な負担も大きいです。
本人が満足いく最期を迎えられるように、家族全員で取り組みましょう。
意思決定の委託や、どこで終末期医療(ターミナルケア)を受けるかの希望を本人に聞くこと。ほかにも、ご家族目線から、本人にどのような医療ケアを用意するのかについても話し合っておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
実際にかかる費用は300万円前後とされていますが、医療保険の適用で自己負担は3割です。また制度を活用することで、高額な医療費になることはないので安心してください。詳しくはこちらをご覧ください。