老人ホームから徘徊した場合の責任は?徘徊理由や対策に関しても紹介

老人ホームから徘徊した場合の責任は?徘徊理由や対策に関しても紹介

老人ホームに預ける理由の中に、認知症が原因の徘徊がひどく面倒が見きれないといったものがあります。

ただ、老人ホームに預けたとはいえ徘徊がぴたりとなくなるわけではありません。むしろ家に帰りたいといった気持ちから、今まで徘徊をしなかった方まで徘徊を行う場合があります。もし、老人ホームから徘徊をしたために事故にあった場合、その責任は誰が負うのでしょうか?徘徊をする方を老人ホームに預けるとき、どうしても気になると思います。

本記事では、老人ホームで徘徊した先で事故が起きた場合、誰が責任を負うのか老人ホームはどんな対策を行っているのかなどについて紹介していきます。

親が徘徊をして困っている方、老人ホームへの入居を検討している方必見です。

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デイサービスセンターここから阿品 管理者
所有資格:理学療法士
専門分野:リハビリ、生活支援
職業: 理学療法士

2006年に理学療法士免許を取得し、愛知県の西尾病院で臨床経験を詰み、訪問リハビリにも携わる。同病院で認知運動療法を学びながら学会発表も行う。愛知・東京の病院で臨床経験を詰み、東急病院ではグループ施設の老人ホームで機能訓練指導員を兼務する。2014年に地元広島に戻り、デイサービスセンターここから阿品の機能訓練士として勤務。2021年より管理者に着任する。様々な施設・形態でのリハビリ・生活支援経験を生かして地域高齢者の健康維持に取り組む。詳しくはこちら

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老人ホームから徘徊した先で何かあった際の責任

老人ホームに入居している方が、徘徊して事故に巻き込まれ怪我をしたり、最悪の場合死亡してしまった場合、責任の所在はどこになるのでしょうか?徘徊を許した老人ホームが責任を負うと思っている方も多いかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

徘徊の状況によっては、老人ホームには責任がないとされる場合があるのを知っておきましょう。

老人ホーム側が損害賠償責任を負うケース

徘徊によって発生した事態に対して、老人ホーム側が損害賠償責任を負うかどうかは、徘徊した状況によって変わります。今までにも徘徊歴があり、徘徊に対する安全対策ができていなかった場合は安全配慮義務違反になるかもしれません。

もし、安全配慮義務違反が認められれば、老人ホーム側が損害賠償責任を負います。

安全配慮義務違反になるかどうかは、徘徊の可能性を認知していたか、徘徊を阻止するためにどんな対策をしていたかが重視されます。

複数の高齢者を見守っている介護施設において、100%高齢者の徘徊を防ぐのはかなり難しいのが現実です。しかし当然、徘徊が起こっても仕方がないといった認識ではありません。

徘徊が起きないための対策は必須であり、安全措置対策が十分に行われていなかったと判断された場合は、徘徊先での事故などの責任は老人ホーム側になります。

老人ホーム側が損害賠償責任がないとしたケース

利用者が徘徊した状況や身体能力、徘徊経路などによっては、老人ホーム側に損害賠償責任がないとされるケースもあります。例えば、徘徊した方の身体能力的に徘徊の予想ができなかった場合、老人ホーム側に責任は無いと判断される場合が多いです。

また、家族から徘徊の可能性が提示されていなかった場合は徘徊の想定できなかったと判断されます。そのため、老人ホーム側に責任はありません。

それだけではなく、家族が意図的に徘徊の可能性を施設側に伝えていなかった場合、家族の方に損害賠償責任が生じる場合があります。十分に安全対策が行われたうえでの徘徊だったと判断されれば、老人ホーム側に損害賠償責任がないとされるケースもあります。

責任の範囲

老人ホームが負う責任の範囲は、「徘徊を通常、予想ができるか」が大きな分かれ目となります。責任は主に「徘徊」をした事実と、徘徊した先で起きた「出来事」の2つに分けて責任が問われます。

徘徊に関して予想ができたとしても、必ずしも責任に問われるとは限りません。

認知症が軽度で危険を認識できる状態で事故が起きてしまった場合、老人ホーム側は事故を予見できなかったとして責任には問われません。

ただ、認知症が進み危機管理能力が低下している方であれば、事故を予想できたとして責任を問われる可能性があります。

徘徊状況や、徘徊した方の認知能力によって責任の所在は変動します。

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高齢者が老人ホームを徘徊する理由

老人ホームから徘徊してしまう方は多いです。では、なぜ高齢者は老人ホームから徘徊してしまうのでしょうか。なにも高齢者は、意味もなく徘徊しているわけではありません。

徘徊する理由は人それぞれですが、ほとんどの場合徘徊する理由が明確にあります。

  • 認知症の症状の一つ
  • 施設が気に入らない

ここでは、徘徊をしてしまう理由で多い上記の2つをご紹介します。

認知症の症状の一つ

認知症の症状の一つで徘徊をしている方の場合、「徘徊しよう」といった意思があるわけではありません。私たちから見ると、施設を徘徊している状態に見えるかもしれません。

ただ、本人の中には、外へ出る明確な理由や目的地がはっきりと存在している場合がほとんどです。

しかし認知症なので外に出るまで理由や目的地が明確に存在していたとしても、長続きしない、覚え続けられません。徘徊するから老人ホームや今の環境に何か不満がある、何かから逃げたいわけではありません。

ある日突然何かを思い出したように施設から出てしまう可能性があります。

逆に、毎回同じ時間帯に徘徊を行う方もいます。そういった方は、仕事に向かうつもりだったり夕飯の買出しに行くつもりだったりなど、今までの生活リズムが関係しているかもしれません。

施設が気に入らない

認知症ではない方が徘徊する理由で最も多いのが、入居している施設や施設の人間関係に問題があったり、気に入らなかったりする場合です。そういった方は家に帰りたい、施設から逃げたいといった気持ちで徘徊をしてしまいます。

特に、他人の世話になりたくないプライドの高い方や、集団生活に馴染むのが難しい方に多いです。このような方は認知症を患っておらず、しっかりとした思考力を持っています。そのため、スタッフに見つからない場所や時間帯を狙って徘徊を行います。

施設や施設の人間関係が気に入らないといった理由であれば、その方が居心地のいい施設を見つけられれば徘徊をしなくなる場合が多いでしょう。なぜ徘徊するのか、何が嫌なのかを一度じっくりと話し合ってみましょう。徘徊をする原因に対して適切な対応を行えば徘徊はなくなるはずです。

また、入所直後は入所したこと自体を認識していない場合も多く、施設に慣れるまではより注意が必要です。

老人ホームが行っている徘徊対策とは

老人ホームでは1人のスタッフで複数の高齢者の対応を行うのが通常です。そのため、人の目だけでは徘徊を100%防ぐのは不可能です。しかし、高齢者が徘徊をしてしまうと、事故や事件に巻き込まれてしまう可能性もあります。

老人ホームでは仮に徘徊が発覚しても、すぐ対処できるようにさまざまな対策を行っています。ここで紹介するのは徘徊を防止する対策と徘徊後の対策の2つです。

顔認証システムの導入

認知症患者の徘徊が多い時間帯は、買い物や仕事に出かけるなど、施設入居前に出かける習慣のあった日中に多くみられます。しかし、スタッフの多くは介護に忙しく、業者の出入りなどもあり常に徘徊をしそうな方がいないか監視を行うのは難しいでしょう。

そこで導入されているのが、顔認証システムです。

あらかじめ入居者の顔を機械に登録しておき、顔を登録した方が玄関から出ようとすれば職員へすぐに通知が行きます。このシステムは、顔を登録していない方が玄関を通ってもスタッフに通知が行くものもあり防犯にも利用されています。

ただし、問題点としては顔認証システムが設置されている玄関以外からの徘徊防止にはなりません。

徘徊後の対策を整える

最もいいのは、高齢者が施設から出る前に徘徊の予兆に気づき徘徊を防止することです。しかし、どんな最先端なセキュリティを使っていても徘徊を100%防止するのは不可能でしょう。

そのため、徘徊させない対策だけではなく、徘徊が発覚してからどれほど早く気づいて事故が起きる前に発見できるかが徘徊対策として重要です。

  • 高齢者の靴や服にGPSタグを忍ばせておく
  • 施設の住所や電話番号を服のタグなどに書いておく
  • 施設周辺や警察など地域全体に事情を説明し見守り体制を作っておく など

最近ではGPSタグも小さく、精度も高いものが販売されています。

徘徊してしまった場合。居場所を早期に特定するには有効でしょう。

ただ、高齢者の中にはうまくGPSタグを外したり、タグの付けたものを置いていったりするため万能ではありません。また、徘徊した際に、周辺住民へ聞き込みが行えるように写真の用意や毎日の服装チェックも重要です。

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老人ホームからの徘徊頻度を下げる方法

老人ホームから徘徊を何度も繰り返していると、退去をお願いされてしまう可能性があります。

徘徊を繰り返さないためにはなぜ施設から出てしまうのか、しっかりと話し合い、理由がわかればその理由に応じた対策をすれば徘徊はなくなるでしょう。徘徊をするのは、高齢者なりの理由やタイミングがある場合が多いものです。

徘徊理由がわからない場合は、徘徊頻度を下げるためにどのような対策が有効なのか、老人ホーム側と話し合いを行いましょう。

一緒に出掛ける

もし徘徊を見つけた場合すぐ施設へ連れ戻してしまうと、帰るのを嫌がられたり、不満が残ってしまったりします。少し一緒に散歩をしてみるといいでしょう。

施設へ帰りたくないなどはっきりとした意思がある場合に、無理矢理連れ戻してしまうとまた徘徊を繰り返してしまう可能性が高いです。多くの場合は歩いているうちに意識が別に移ってしまい、目的が分からなくなって落ち着いてきます。

そのタイミングで「施設に帰ろう」といった声かけに素直に応じてくれる場合があります。また、一緒に歩いていると何が目的で徘徊したのか理由が見つけられるかもしれません。

適度な運動を入れる

同じ場所(施設内)にずっと居続けるのは誰であってもつらいものです。適度な運動を行い充実感や達成感を味わってもらったり、外に出かけて気分転換を行う機会を用意したりすると徘徊衝動が抑えられるかもしれません。

日中の運動として、近くの公園へラジオ体操をしに行くのも有効な手段です。歩くことで足腰を鍛えられ、介護予防にもつながるでしょう。また、施設の外でラジオ体操などをしていれば、近所の高齢者も参加するかもしれません。外部の方との交流も新しい刺激となってくれるでしょう。

外出できる場所を作る

もともと室内より、外が好きといった理由で施設を徘徊してしまう方もいます。また、人が集まっている場所が苦手で、時には一人になりたい方もいらっしゃるでしょう。そういった方のために、施設内に安全な場所があるのであれば、施設の庭など自由に出歩ける場所を作ってみるとよいでしょう。

室内が嫌な場合の気分転換や運動能力の維持、今はどこにいるのかといった地理感覚を鍛えられるなどメリットは多くあります。

また、運動能力の維持は介護予防に、地理感覚は脳を活性化させるため認知症の進行予防も期待できるでしょう。

集中できる趣味などに取り組む

何もすることがなく、何も楽しくない状態は誰でも苦痛を感じるものです。自分はここにいなくてもいいのでは?と考え、居場所を求めて徘徊してしまう場合があります。

集中して手を動かす作業や、楽しいと思える趣味を日々のイベントなどに取り入れてみましょう。好きなことができたり、一つの物事に集中できれば、徘徊する気持ちが生まれにくくなります。

また、楽しい趣味ができる場所=自分の居場所と思ってもらえれば、施設から徘徊する理由がなくなるかもしれません。

老人ホームから徘徊するには理由と目的がある

高齢者はただ理由もなく、徘徊しているわけではありません。徘徊をする場合には、しっかりとした理由や目的がある場合がほとんどです。まずは、徘徊の理由に気付いてあげられるようにすると、徘徊させないための対策などもしやすいでしょう。

高齢者が徘徊してしまうと、状況などによっては老人ホーム側が損害賠償責任を負う場合もあります。もちろん、老人ホームは徘徊が起きないように、仮に徘徊が起きてもすぐに発見できるようにさまざまな対策を行っています。

ただ、あまりにも徘徊が激しい場合は老人ホームから退去をお願いされてしまうかもしれません。

徘徊頻度を下げるためには、徘徊する理由と目的を理解し、それに合った対処をする必要があります。

徘徊防止の為とはいえ、本人の合意なしに鍵をかけて閉じ込めた場合、身体拘束とみなされ、虐待にあたる場合も考えられます。

適度な運動を促し、徘徊に意識がいかないように趣味などをしてもらうといいでしょう。楽しい趣味ができる場所=自分の居場所だと思ってもらえるような工夫をするのも一つの方法です。

老人ホームから徘徊するのには理由と目的がある点を理解して、ご本人に寄り添った適切な対処をしましょう。

老人ホームからの徘徊に関するよくある質問


入居者が徘徊し事故が起きた場合だれが責任を負うの?
安全配慮義務に違反していたと判断された場合は、施設側が責任を負う必要があります。それ以外のケースでは、ご本人もしくはご家族の責任と判断されることが多いです。詳しくはこちらをご覧ください。

なぜ徘徊してしまうの?
主な理由として、「認知症の症状」「施設が気に入らない」の2つが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
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