世帯分離をすると介護保険料の自己負担割合が下がったり、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設の居住費・食費が減額されたりすることがあります。
一方で、世帯分離によって親などが扶養から外れ、扶養控除が受けられなくなったり、国民健康保険料が増えたりすることもあります。そこで本記事では、世帯分離をすることによって今まで扶養していた親は扶養から外れるのか、また外れることでどのような影響があるのかについて解説します。

世帯分離をすると扶養から外れる?
本章ではそもそも扶養とは何かから、税法上の扶養、健康保険上の扶養について解説していきます。
そもそも扶養とは
そもそも扶養とは、自分の収入で生計を立てることが出来ない家族や親族に経済的な援助を行うことを指します。扶養する人を「扶養者」、扶養される人を「被扶養者」と呼びます。
また、親を扶養に入れる場合、一言で扶養といっても「所得税の扶養」と「健康保険の扶養」の2種類が考えられます。被扶養者の条件によっては、健康保険の扶養には入れるものの所得税の扶養には入れないという場合や、逆に所得税の扶養には入れるけれど健康保険の扶養には入れないという場合もあります。
所得税の扶養に入っていると、所得税を計算する際に扶養控除として一定額が所得から控除できるので、控除分に応じて所得税額が減ります。また、健康保険の扶養に入っていると、例えば子供が勤務先の健康保険に加入していて親が扶養に入っている場合、親(75歳未満)は自分で健康保険料を払わずに健康保険に加入できます。
所得税の扶養の場合
国税庁によれば、所得税の扶養親族に該当する人の範囲には「納税者と生計を一にしていること」という要件があります。一方で、住民票の考え方では「世帯とは、居住と生計をともにする社会生活上の単位である」となっています。「同じところに住んでいても生計は別々なので」という理由で世帯分離したのであれば、「納税者と生計を一にしていること」という要件には当てはまりません。ですから、世帯分離したのであれば本来、所得税の扶養親族には当たらないと考えられます。
ところが、所得税は「所得税法」、住民票は「住民基本台帳法」と別々の法律に基づいています。そのため、扶養親族に該当するかどうかは、住民票上で同世帯かどうかとは別という考えもあり、世帯分離した後も所得税の扶養親族から外していないケースがあるようです。
健康保険の扶養の場合
勤務先の健康保険の場合、親を扶養に入れる要件は「主として被保険者に生計を維持されている人 」かどうかです。
【親が被扶養者になるための収入要件】
年間収入130万円未満(60歳以上は180万円未満)でかつ、
- 同居の場合:収入が扶養者の収入の半分より少ないこと
- 別居の場合:収入が扶養者の仕送り額より少ないこと
を満たしていること
したがって、収入要件を満たし定期的に仕送りしている実績などを証明できれば、世帯分離した後でも親を健康保険の扶養に入れることが不可能とは言えないでしょう。ただ、全国健康保険協会では「社会通念上妥当性を欠くこととなると認められる場合には、その具体的事情に照らし保険者が最も妥当と認められる認定を行う」としているので、必ず認められるとは限りません。
また、収入要件などを満たして扶養に入ったとしても、親が75歳になると後期高齢者医療制度に加入して保険料を負担することになります。
なお、国民健康保険には扶養という考え方がありません。世帯分離することで保険料の合計負担額が増えるケースも考えられますが、世帯分離した後も国民健康保険の同じ世帯にとどまることは考えられません。
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世帯分離で扶養から外れたらどうなる?
世帯分離をすると税法上の扶養や介護保険上の扶養から外れるのかについて解説しましたが、ここからは扶養から外れたらどうなるのかについて解説していきます。
所得税の扶養から外れたらどうなる?
所得税の扶養から外れた場合、70歳以上の親の場合は老人扶養親族として48万円(同居の場合は58万円)の所得税控除をうけられなくなります。 (参考:国税庁「No.1180 扶養控除」)
そのため、70歳以上で同居の親が扶養から外れると、子供の所得にかかる所得税率が10%の場合は年に5万8000円、20%の場合は11万6000円多く所得税を納めることになります。
健康保険の扶養から外れたらどうなる?
社会保険上の扶養から外れた場合、75歳未満の親を扶養している場合は親の国民健康保険料の支払いが必要になります。というのも、健康保険では扶養家族の人数に関係なく、給与額(標準報酬月額)に応じて保険料が決まっているからです。
また、扶養手当や家族手当をもらっている場合も同様に手当てを受け取れなくなる可能性があります。

世帯分離で扶養から外れるか事前に把握しよう
本記事では世帯分離をした場合に親が扶養から外れるのかどうかについて解説してきました。
扶養には所得税上の扶養と健康保険上の扶養の2種類あるため、それぞれ扶養から外れたらどうなるかを確認しておく必要があります。
世帯分離しても扶養から外れないケースはあるようですが、「同居でも生計が別々なので」という理由で世帯を分けるのですから、一般には所得税の扶養も健康保険の扶養も外れることになります。世帯分離で負担が増えることがあるかもしれませんが、それでも世帯分離が必要か、よく検討したうえで手続きするようにしましょう。
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世帯分離をすると一般には所得税の扶養も健康保険の扶養も外れることになります。世帯分離で負担が増えることがあるかもしれませんが、それでも世帯分離が必要か、よく検討したうえで手続きするようにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険上の扶養から外れた場合、75歳未満の親を扶養している場合は親の国民健康保険料の支払いが必要になります。というのも、健康保険では扶養家族の人数に関係なく、給与額(標準報酬月額)に応じて保険料が決まっているからです。詳しくはこちらをご覧ください。