世帯分離とは、同居している親子が、住民票上1つの世帯を2つ以上の世帯に分けて、親子別世帯にすることです。親の世帯所得が減ることにより、行政から低所得者向けの援助を受けられる可能性があります。
援助の内容には、介護費用の軽減をはじめ低所得者向けの給付金なども含まれており、金銭的に大きな助けになる可能性があります。
しかしその一方で「さまざまな費用が軽減されるのは分かったけど、実際いつのタイミングから費用負担が減るの?」と疑問をお持ちの方も多いです。
そんな方々のために、今回は世帯分離で所得が減ることによって利用できる軽減制度ごとに、適用のタイミングを詳しく解説して行きます。

世帯分離はいつから適用される?
世帯分離は、お住まいの自治体の担当窓口に必要な書類を提出することで行うことができます。
では、実際に住民票上の世帯が分かれるタイミングや、各制度ごとの費用負担が軽減される場合のタイミングはいつなのかを解説して行きます。
住民票上の世帯が分かれるのは「手続きを行った日」から
住民票上の世帯が分かれるタイミングは、「手続きを行った日」からとなります。
自治体に「世帯変更届」を はじめとする必要書類を提出した時点で、住民票上の世帯が分かれます。
介護費用の軽減は制度によって異なる
世帯分離によって所得が減ることによる介護費用軽減のタイミングは、制度ごとに異なります。
例えば介護保険サービス費の自己負担割合が変更される場合は、翌月の1日からです。
世帯分離で所得が減ることによって、軽減できる可能性のある費用項目(制度名)としては、以下のようなものがあります。
- 介護保険サービス費の自己負担割合
- 高額介護サービス費の自己負担上限額
- 高額医療・高額医療合算療養費制度の年間負担限度額
- 介護保険施設の居住費と食費(特定入所者介護サービス費)
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世帯分離による費用軽減はいつから適用される?
それぞれの項目ごとに、費用が軽減や給付となるタイミングを解説して行きます。
介護保険サービスの自己負担割合
介護保険の自己サービス費の利用者負担割合が変更となるタイミングは、世帯分離をした翌月の1日からです。
例えば10月15日に世帯分離を行った場合は、11月1日より新しい世帯所得に応じた自己負担割合が適用となります。
逆に言えば10月15日に世帯分離をした場合、10月31日まではこれまでと同じ自己負担割合となりますので、理解しておきましょう。
世帯分離を行った場合は、前年度の1月~12月までの所得が計算し直され、翌月1日までに変更後の介護保険負担割合証が交付されることになります。
世帯分離後の所得状況により、自己負担割合が下げられることもあるため、発行された介護保険負担割合証をよく確認してみましょう。
(出典:厚労省「介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて」)
高額介護サービス費の負担上限額
高額介護サービス費における介護保険サービスの負担上限額が変更となるタイミングも、世帯分離をした翌月の1日からです。
例えば10月15日に世帯分離を行った場合は、11月1日より新しい所得区分に応じた負担上限額が適用となります。
世帯分離をすることで親世帯が住民税非課税世帯となる場合は、介護サービス費の負担額の上限を24,600円ほどにまで抑えられるケースもあるため、大きな助けになるでしょう。
高額介護サービス費における所得区分は、以下のようになっています。
区分 | 負担の上限額(月額) | |
---|---|---|
市町村民税課税世帯 | 課税所得690万円(年収約1160万円)以上の65歳以上の人がいる世帯 | 140,100円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満の65歳以上の人がいる世帯 | 93,000円(世帯) | |
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) | |
市町村民税非課税世帯 | 合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円を超える方 | 24,600円(世帯) |
合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下の方・老齢福祉年金を受給している方 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
|
生活保護を受給している方 | ー | 15,000円(世帯) |
介護保険施設の居住費と食費(特定入所者介護サービス費)
特定入居者介護サービス費によって、介護保険施設の居住費と食費における負担上限額が変更となるタイミングに関しても、世帯分離をした翌月の1日からです。
例えば10月15日に世帯分離を行った場合は、11月1日より新しい所得区分に応じた負担上限額が適用となります。
特定入居者介護サービス費を利用の要件は、介護サービスを受ける本人の世帯全員が住民税非課税であることと預貯金等が一定以下の場合となります。
実際どのくらいの負担上限額となるのかについては、世帯の所得額や配偶者の有無、預貯金等の資産額、 利用する介護施設の居室のタイプによって変動します。
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世帯分離の適用時期における注意点
世帯分離には所得に応じて介護費用などを軽減がある一方で、負担が増えることもあります。
具体的には国民健康保険料が上がる可能性があったり、子の会社による扶養手当・家族手当が支給されなくなる などがあります。
本章では以下の注意点について、順番に解説して行きます。
- 国民健康保険料が高くなることがある
- 扶養手当や家族手当が支給されなくなる
- 役所での手続きが煩雑になる
国民健康保険料が高くなる
世帯分離によって国民健康保険料が変更となるタイミングは、「申請日以降で最も近い4月1日」となります。
例えば、2022年10月15日に世帯分離を行った場合は、2023年4月1日より前年度の所得に応じた保険料が適用されるようになります。
国民健康保険に加入している世帯が、世帯分離を行う際には注意が必要です。
国民健康保険料は4月1日時点の世帯構成を加味して保険料が決められるため、年度の途中に世帯分離を行っても年度内は再計算されないのです。
また、一般的には世帯分離を行うことで子の世帯と親の世帯で別々の保険料が必要になるので、世帯ごとに負担する「平等割」と呼ばれる保険料が設定されている市区町村では、 国民健康保険料は高くなる可能性があります。
しかし、国民健康保険料は「前年の収入」「加入者人数」「世帯主の年齢」などを基準に決められており、また自治体によって保険料率も異なるため、一概には言えないので確認が必要です。
扶養手当や家族手当が支給されなくなる
子の会社の健康保険に加入している場合で、 扶養手当や家族手当が支給されなくなるタイミングは、会社によって異なりますので確認が必要です。
また世帯分離によって子の扶養から外れることにより、健康保険組合関連のサービスを利用することもできなくなるため注意が必要です。
役所での手続きが煩雑になる
親子で2世帯分の事務手続きが必要となるタイミングは、世帯分離を行った当日からです。
役所の窓口で「世帯変更届」を提出したときから、親の世帯の手続きと子世帯の手続きが必要になります。
また、 親が身体的な問題などで自分で手続きができない場合は、「委任状」を書いてもらうことになるため気を付けておきましょう。
まとめ
世帯分離によって住民票上の世帯が変わるのは、「世帯分離を行った当日」です。
そのほか介護費用を軽減できる制度が適用されるタイミングは制度ごとに異なりますが、基本的に世帯分離を行った「翌月の1日」からである場合が多いです。
世帯分離後に所得状況が再計算され、世帯が低所得であると判断された場合は、さまざまな負担軽減が期待できるでしょう。
また世帯分離の際には、国民健康保険料が高くなる可能性や、扶養手当や家族手当が支給されなくなるなど注意点を把握しておくことも大切です。
世帯分離をすることで、所得が減り、介護費用の軽減に意識が向きがちですが、世帯分離をして減った所得の中で生活ができるのか、足りない場合は預貯金で賄えるのかを見極めることが大切です。世帯分離は、生計を別にするための仕組です。生計を別にして生活が成り立つかも、確認しましょう。