「家族が認知症かな?」と思ったら、MMSE(ミニメンタルエステート検査)の受診を検討しましょう。この記事ではMMSEとは何か、どんな検査なのか、検査結果の評価、そして家族の心構えなどをご紹介します。
本記事では、MMSEの内容だけでなく、ほかの検査方法の紹介や検査の結果が出たあとのご家族の対応も解説しています。検査前にご覧いただき、今後の対応の参考にしてもらえれば幸いです。
MMSEとは
MMSEは、Mini Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)の略語です。MMSE自体は、1975年米国で開発されました。時間、場所、計算能力など日常生活を送るうえで必要な認知能力を比較的短時間に患者に質問し、認知機能をスコアリング化するもので、現在、世界で最も有名な認知症の初期的な検査です。
MMSEを日本版に改訂した「精神状態短時間検査」と呼ばれるものも開発されています。
MMSE-J
2006年に日本語版が作成されました。しかし当時は、翻訳や日本人向けの対応が適切に行われておらず、標準化も不十分だったのです。そこで、原版を忠実に翻訳し、かつ、日本人に適した内容でMMSE-J(日本版)が完成しています。
そのあと、2018年に保険適用となり、医療機関でも取り扱いが可能となりました。10~15分程度で受診でき、保険点数は80点です。簡易検査なので近くのかかりつけ医で取り扱っている場合もあります。
MMSEでわかること
MMSEでは、設問ごとに検査できる認知機能が異なります。どの項目で減点されているかを確認すると、低下している認知機能を調べられるようになっているわけです。
加齢による物忘れや人の名前や顔が思い出せないようなケースは、認知症でなくともあり得ます。しかし、認知症では単なる物忘れとは異なり、認知機能が低下しているため、簡易な検査で認知機能の把握が必要です。
そして、検査によって算出された点数に加え、ほかの血液検査や画像検査、問診などを組み合わせた総合的な判断によって、認知症かどうかの診断が下されます。
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MMSEの内容について
MMSEは全部で11問です。質問に答えるものが大半で、最後に文章や図形を自由に記入する設問もあります。各質問に配点があり、30点満点です。
No | 設問内容 | 配点 |
1 | 日にちや時間を質問して正確な回答ができるか | 5点 |
2 | 正確に今いる場所を質問して正確な回答ができるか | 5点 |
3 | 正確に言葉を記憶しているかを質問 | 3点 |
4 | 簡単な計算ができるか | 5点 |
5 | 3問目で言った言葉を覚えているか | 3点 |
6 | 付近の物の名前を回答できるか | 2点 |
7 | 相手がいった内容を言い返すことができるか | 1点 |
8 | 3つの口頭指示をその通りに動作できるか | 3点 |
9 | 文字を理解し、指示通りの反応を観察 | 1点 |
10 | 文章の構成能力を確認 | 1点 |
11 | 図形の描写を確認 | 1点 |
合計 | 30点 |
1.日にちや時間を質問して正確な回答が出来るか
例えば「今日は何年ですか」「今日は何月ですか」「今日は何日ですか」「今日は何曜日ですか」「今の季節は何ですか」などを質問し、各問1点ずつ加算します。
2.正確に今いる場所を質問して正確な回答ができるか
例えば、今いる病院の名前や場所(都道府県、市町村など)、今は何階にいるか、ここは何地方なのか(例:近畿地方など)などを質問し、各1点ずつを加算します。
3.正確に言葉を記憶しているかを質問
「サクラ、猫、電車」あるいは「ボール・旗・桜」といった単語を1秒間隔で被験者に伝え、そのあとで繰り返してもらいます。6回を限度に質問を繰り返し、その中で回答できれば、回答できた1つの言葉につき1点加算です。
その後「今の言葉はあとで聞くのでよく覚えておいてください」といい、こちらの設問は終了になります。
4.簡単な計算ができるか
例「100から順番に7を繰り返して引いてください」と質問します。質問された本人が自身で、100-7=93、93-7=86、86-7=79、79-7=72、72-7=65まで間違いなく答えられたら満点です。間違えたり答えられなくなったりすると終了となります。1個正解につき1点のため、間違える前までの点数を加算しましょう。こちらの設問では、記憶力や情報の処理能力を検査します。
5.3問目で言った言葉を覚えているか
3問目で言った言葉を覚えているか、少し間を空けても覚えているかを質問します。「先ほど覚えてもらった3つの言葉を思い出してください」回答の順番は問わず、1つ正解ごとに1点加算し、3点満点です。「動物でしたよね」など間接的なヒントを与えるのは問題ありません。
6.付近の物の名前を回答できるかを質問
見た物の名称を正しく答えられるかの検査です。例えば、ペンを見せながら「これは何ですか?」とか、時計を指しながら「あれは何ですか?」などと質問します。2つ質問し、各々1点ずつ配点します。
7.相手がいった内容を言い返すことができるか
文章を記憶しているかを問い、短期記憶と思い出す能力(想起)を検査します。文章は「みんなで力を合わせて綱を引きます」です。ゆっくりはっきりと伝えて、1回目で正確に答えたら1点加算します。
8.3つの口頭指示をその通りに動作できるか
3段階の口頭指示を出し、それが実行できるかを試します。「右手でこの紙を持ってください」、「その紙を半分に折りたたんでください」、「それをわたしにください」と伝えます。それぞれ正確にできたら1点です。
9.文字を理解し、指示通りの反応を観察
紙に書かれた「目を閉じてください」の文章を読んで、そこに記載された通りに実行できるかを確認します。問題なくできれば1点加算されます。
10.文章の構成を確認
どのような内容でもいいので、文章を好きなように書いてもらい、文章の構成能力を確認します。「ここに何か文章を書いてください」と言って書いてもらいます。目安は一文を書けたら1点です(主語と述語から構成された文章が望ましい)。
11.図形の描写を確認
簡単な図を書いてもらい、空間認知力を確認します。
「この図形を正確にそのまま書き写してください」と伝えてください。
2つの五角形の角をそれぞれ5つ書いてあり、2つの五角形が交差していれば1点です。
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MMSEの結果について
MMSEはスクリーニングテストであり、すぐに認知症や軽度認知障害(MCI)と診断されるものではありません。
あくまでも認知機能の低下の早期発見を目的とした検査です。しかし、MMSEの点数の結果が低かかった場合は、医療機関で専門医を受診するのが早期発見、早期治療につながり、認知症の進行を遅らせる可能性が高まります。
検査結果の見方
MMSEによる点数の基準は、次のように定められています。
スコア | 状況 | 取るべき対応 |
21点以下 | どちらかと言えば、認知症の疑いが強い | 速やかに医療機関や専門医で詳しい検査を受けてください |
22点~26点 | 軽い認知症の疑いがある | 専門医などから正確な診断・助言を受けてください |
27点~30点 | 異常なし | それでも不安な場合は専門医等に相談してください |
21点以下の場合は、医療機関や専門医にできるだけ早く相談しましょう。
MMSEのメリット・デメリット
世界中で信頼されている認知症の早期発見を目的としたスクリーニングテストですが、メリット・デメリットがあります。受診前には、事前に検査を受ける目的やその後の対応策なども念頭において、ご家族・被験者の双方がMMSEのメリットを生かしましょう。
メリット
MMSEを受診する主なメリットは4点です。
- ご家族(被験者)に負担をかけずに信頼性の高いものである
- 保険適用となっており、費用や時間をかけずに実施できる
- 検査結果を点数化するなど客観性のある検査である
- 世界で最も有名な検査である
中でも、費用や心身の負担をかけず、信頼性が高いのは大きなメリットになります。
デメリット
一方、主なデメリットは次の4点です。
- 検査の得点は文章理解、記述、描写など被験者の学歴・職歴などに影響を受ける可能性が高い(普段から文章既述等に慣れている方が有利に働く可能性)
- 実際のスクリーニングテストの時間が長いとの指摘がある
- 口頭などでの質問法による検査であり、検査者へのトレーニングが十分でないと結果にばらつきが出る可能性がある(評価者訓練)
- 採点に際し、検査者の主観が入り込む余地も残る
客観性が高いといっても、人間が人間を評価するため検査者による判断がずれる場合もあります。
MMSE以外の認知症テストについて
MMSE以外にもいくつかの認知症のスクリーニングテストがあり、それぞれの検査の目的、検査の所要時間、検査を実施する者の職種あるいは施設の状況に応じて検査を受けましょう。
ここでは、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)、Mini-Cog、MoCA、DASC-21、ABC-DSについて概要を紹介します。
特にHDS-RはMMSEと並んで有名な検査で、類似点や相違点を把握してください。
よく比較される改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは
認知症ついて、9つの設問に答え、その可能性を判断するための初期的な検査の一つで、記憶力、計算力、判断力などが正常に働いているかを簡易的に検査します。
精神科医の長谷川和夫氏がアメリカで精神医学や脳波学などを研究し、1974年に「長谷川式簡易知能評価スケール」を発表しました。1991年に改訂版が出され、2004年に現在の名称に改められました。
検査方法は、検査者が質問をし、被験者がそれに答える形式です。質問内容も、時間、場所、即時再生(聞いた内容をすぐに繰り返す)、計算、記憶など似た質問もあり、やはり30点満点で20点以下が認知症の疑いがあると判定しています。
20点以下のスコアリング結果が出たら、できるだけ早めに専門医等で詳細に調べてもらいましょう。
MMSEとHDS-Rとの類似点や違い
2つの検査は類似点も多いです。
- どちらの検査も所要時間は10分〜15分程度でできる簡易テスト
- 検査項目数はMMSEが11、HDS-Rは9つ
- どちらの検査も30点満点
- 前者のスコアが23点以下、後者は20点以下のスコアなら詳細な検査が勧められる
- 双方とも2018年から保険適用されており、負担の軽い検査
ただし相違点もあります。
-
- HDS-Rが口頭で回答するだけに対し、MMSEは口頭に加え、記述(文章構成力)や図形描写などもある。したがって、後者は言語能力や視空間認知力(見たものの全体像を把握する能力)も確認が可能
- HDS-Rは記憶力をより重要視
- HDS-Rは国内のみで使用されているが、MMSEはグローバルで広く普及しているためノウハウの蓄積も多い
- MMSEは記述や図形描写など手振れなどで検査できない項目もあり、症状に応じてHDS-Rの利用も選択肢として有効
類似点や相違点をよく把握して、状況にあった検査を選んでください。
ほかの検査方法もご紹介
日本老年医学会によると、上記2つの検査以外にも次の4つの検査を提示しています。
テスト名 | 概要 |
Mini-Cog | 2分程度で検査
3語の即時再生、遅延再生と時計描写を組み合わせたもの 2点以下で認知症の疑いを判定 |
MoCA | Montreal Cognitive Assessment(モントリオール認知機能評価)の略
10分程度で検査 視空間、記憶、復唱、見当識ほかをあわせた検査で25点以下だとMCI 軽度認知障害とされる 認知症と糖尿病は併発しやすく、糖尿病の方はこちらが向いていると言われる |
DASC-21 | 地域包括ケアシステムにおける認知症の評価テスト
認知機能と生活機能の低下度合いがどの程度生活に影響を及ぼしているかを判定する 介護職員や医療従事者も実施できる 21の質問項目、所要時間は5~10分程度 |
ABC-DS | ABC Dementia Scale;ABC認知症スケールの略
日常生活動作(ADL)に関するドメインA、認知症の周辺症状(BPSD)に関するドメインB、認知機能に関するドメインCについて同時に評価。検査者が介護者から各ドメインでどのような発見事項がったかなどを聴取して採点 13項目を約10分で評価 |
中には介護士などがご本人の観察を基に評価するものもあります。ご本人の状況なども考慮して選ぶとよいでしょう。
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家族が持つべき検査への心構え
認知症の初期段階では本人も一定の自覚のあるケースもあります。例えば、物事が以前ほどうまくできないケースが増え、物忘れが多いなど。本人と接する方は「家族に言うと負担・迷惑をかける」「テレビの認知症者のようになりたくないし、家族に見せたくない」などの心理も理解したうえで接するようにしましょう。
家族に対しても言い出せず、心で「助けてほしい」「わかってほしい」など思っている場合があるので、寄り添うことが必要です。
検査の結果に一喜一憂せずに、できるだけ普段通りに接しましょう。

検査後の気遣いを大切に
ご本人は気にしていないそぶりを見せても、内心は不安に思っているケースも多く、検査のあと「疲れた?」などの声かけをしたり、検査から話題を広げたり、結果が期待と違っても「歳を取ったら、誰でも物忘れくらいはありますよ」などリラックスさせる状況づくりなどを演出するなどで気遣いを大切にしましょう。検査後のフォローは大事です。
もし家族が認知症の診断を受けたら?
検査後に、医療機関で詳しい診察で、認知症と診断された場合、家族は本人との従来通り接しましょう。
また、よい感情を残すようなコミュニケーションの取り方も重要です。相手は良かった時より、「すぐに怒る、怖い、だから嫌い」などの感情を覚えやすい状態となっています。高圧的な言い方や、あれこれ説明するよりも、穏やかに笑顔で接する心がけを大事にしてください。
認知症が進行してくると、動作も緩慢になり、物忘れが激しくなり周囲もイライラするときもありますが、相手のペースにあわせるなど割り切って接していきましょう。
認知症の診断前でも、相手が「認知症かな?」と感じれば、信頼関係、穏やかに接する、相手のペースにあわせる、などの接し方は役立つはずです。
ご家族が「介護うつ」を避けるためには
いくら「寄り添って接する」といっても、ご自身が疲労やストレスで消耗してしまって、「介護うつ」に陥っては元も子もありません。介護うつを避けるためにもストレス対策をしっかり練ってください。以下は一例です。ご自分にあった対策を講じてください。
「相談できる相手を作る」
まわりの家族や友人など悩みを聞いてもらえる間柄の関係を作っておきましょう。口に出して、愚痴をいうだけでも気は晴れます。
「ショートステイに預ける」
ショートステイとは、短期的に施設に入所し介護・支援が受けられるサービス。認知症者を一時的に預けて、旅行などでリフレッシュしましょう。
「介護施設(認知症高齢者グループホーム等)への入居を検討する」
プロの介護士に任せる方法。グループホームでは同じ認知症患者との共同生活になるので、お互い連帯感が生まれやすく、施設では症状に応じた対応を行うので、落ち着いた生活が送れます。
認知症の方が入居できる介護施設について知りたい方は、こちらをご覧ください。
認知症の方が入居できる施設や入居までの準備と心構えなど解説
認知症の可能性があればすぐにMMSEを受けよう
認知機能の低下を自覚するようなとき、あるいは、家族にそのような症状が目立ったらMMSEを受けましょう。検査は比較的短時間で医療機関で受診できます。
検査の目的は、認知症の疑いがあるかをスクリーニングするためのものです。検査の結果が思わしくなければ、早めに認知症の詳しい検査を受けてください。
早め早めの対応が、認知症の進行を遅らせるのに有効です。
検査のあとはリラックスした雰囲気を作って、被験者をいたわってあげましょう。
MMSEに関するよくある質問
Q: MMSEは必ず医療機関で受診する必要があるのでしょうか?
A:できるだけ専門家に相談しましょう。検査自体はクリニックやかかりつけ医などでも実施できる場合もあります。しかし、認知症は早期発見が何よりカギとなるため、認知機能の低下が気になったら、まず専門家に相談してみることをお勧めします。
Q:長谷川式とMMSE、どちらがいい?
A:高齢による手振れなどの機能障害がなければ、文章構成や図形描写などより検査項目が多岐にわたるMMSEをお勧めします。MMSEの方がグローバルで認知されているので、結果のデータ蓄積も進んでいると考えられます。
そのほか認知症の検査やその後の対応、日常のヘルスケアについて知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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