• 認知症
  • 【公開日】2022-10-17
  • 【更新日】2023-04-20

認知症ケアを正しく知ろう!家庭ができる介護疲れ予防方法も紹介

認知症ケアを正しく知ろう!家庭ができる介護疲れ予防方法も紹介

「もしかしたら家族が認知症かもしれない」「認知症と診断されたけど、進行していて不安」

認知症について理解が深まりつつある中で、このように悩んでいませんか?

認知症の症状についてだけではなく、症状に合わせたケアについて理解できれば不安も解消されるかもしれません。

この記事では以下の点を説明します。

  • 認知症という病気について
  • 4つの認知症についての説明と注意点
  • 認知症ケアの基本や家庭でできる対処法
  • 介護者が心身的な負担を軽減する方法

認知症ケアについて不安な気持ちを解消でき理解を深め、問題解決につながるように詳しくご紹介します。

東京都健康長寿医療センター 脳神経内科 部長
監修岩田 淳
所有資格:総合内科専門医,日本内科学会認定医,日本神経学会認定神経内科専門医・指導医.日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医,日本認知症学会専門医・指導医
専門分野:脳神経内科
職業: 医師
出身組織: 東京大学大学院医学系研究科

東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に従事。早期段階のAD、レビー小体型認知症の診療が専門。2020年4年より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。詳しくはこちら

5問の質問でわかる!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4

認知症という病気について

認知症は病名ではなく、次のような症状が現れ、日常生活に支障をきたす期間が半年以上持続している「状態」をいいます。

  • 「中核症状」新しい物事を記憶できない、自分のいる場所や時間がわからなくなる症状です。ほかにも物事の理解や判断、計画を立てて実施するのが難しくなります。
  • 「行動心理症状」中核症状に周囲との関係性や環境が関わると、周囲とコミュニケーションを取るのが難しくなり、良好な関係性を維持したり築けなくなったりします。

さまざまな原因で脳の細胞が壊れたり萎縮したりダメージを受けたことで脳の働きが低下し、日常生活に支障の出る上記のような症状が出ます。

認知症ケアが必要な4大疾患

認知症を起こす疾患で代表的なものは4つです。

  • 「アルツハイマー型認知症」:最も発症者の多い疾患です。物忘れから病気の始まりが多く、物事の段取りが決められないなど判断力の低下が目立ちます。
  •  「血管性認知症」:脳梗塞などの脳疾患により、脳の神経細胞やネットワークが壊れてしまい本来担っていた脳機能の低下で発症します。
  •  「レビー小体型認知症」:レビー小体という構造物が大脳に蓄積することで発症し、主な症状は幻視や身体のこわばりです。
  • 「前頭側頭型認知症」:前頭葉や側頭葉から萎縮していく認知症で、40歳から64歳の若年期が発症しやすいです。同じ行為を繰り返す様子も見られ、性格が変化したり社会性が欠如したりする恐れがあります。

このように認知症は原因となる疾患によって特性が違うため、対応方法の理解が必要です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳の側頭葉から萎縮が始まり、最終的には脳全体が萎縮してしまう認知症です。症状については以下の通りです。

「症状」

  • 物忘れが起こり、何度も同じことを聞いたり新しいことを覚えたりするのが困難
  • 些細な内容で怒ったり、性格が変わったように見える
  • なぜ自分がここにいるのか、場所について認識するのが困難
  • 時間や日付の感覚がわからなくなる
  • 自発的に活動したり、意欲を持って過ごすのが難しい

「注意点」

  • 感情のコントロールが困難になり不安感が現れるため、事実と異なる発言があっても否定せず受け入れる。
  • 施設入居など急激な環境の変化に馴染めず症状の悪化が起こる可能性がある。

アルツハイマー型認知症は、症状の進行がゆるやかです。認知症の初期段階からの適切なケアが大切になります。

血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの原因により、血管にダメージを受けることで認知症の発症につながります。症状については以下の通りです。

「症状」

  • 記憶障害はアルツハイマー型認知症より症状は軽度
  • 問題を解決したり計画を実行するのが困難
  • 行動面では、意欲の低下や自発性の低下が見られる
  • 精神面では、少しの刺激で泣いたり笑ったりと感情の起伏が激しかったり、抑うつ気分になったりコントロールが困難

「注意点」

  • 脳の損傷部分により症状の現れ方に違いがある
  • 歩行障害の発生
  • 飲み込みにくくなる嚥下障害の発生
  • 上手く排尿ができない排尿障害の発生

脳血管性認知症は、脳梗塞などを繰り返すと病状が悪化するので、心身面の状況の把握が必要です。

レビー小体型認知症

「レビー小体」と呼ばれるたんぱく質の塊が大脳に出現して、認知機能に障害をもたらします。ほかの認知症に比べて目立った脳の萎縮がみられないのが特徴です。

「症状」

  • 本来ならそこにいないものが見える幻視や、きこえるはずのない音や物を感じてしまう幻覚などが認知症の初期症状で現れます。
  • 夜間の睡眠中に眠りが浅くなり、レム期睡眠行動異常症と呼ばれる問題行動を起こします。
  • 手足の震えや動作がゆっくりとなるなどパーキンソン症状を発症しやすいです。

「注意点」

  • 症状が複雑に現れるため、安心して過ごせる環境を作る必要がある
  • 薬の副作用や効果が強く出やすい薬過敏症により、一時的に症状が悪化する可能性がある

レビー小体型認知症はうつ病やパーキンソン病などと似ており、診断が難しい場合があります。

前頭側頭型認知症

発症年齢は40歳から64歳の若年期に多く、働き盛りの年代も発症する可能性があるのが特徴です。前頭葉(運動・言語・感情を司る部分)と側頭葉(言語・記憶・聴覚を司る部分)が萎縮します。

「症状」

  • 認知症の発症により不適切な言動が増えて気遣いができなくなったり、衝動的な行動を起こしたりなど、人格や行動面が変化します。
  • 言語的な問題点として挙げられるのは、言葉の使用や理解が難しくなる症状や物理的に言葉を出せない症状です。

「注意点」

  • 行動を遮られると怒ったり手が出たりする場合があるため、無理に行動を止めずに見守る
  • 光など外からの刺激に過敏になるため、本人に合った環境整備が必要

発症年齢が若年性になると、認知症の初期段階から症状が重く出るため家族の負担が大きくなりやすいです。

認知症ケアが必要かもしれないと思ったら

家族が認知症かもしれないと思ったら、速やかにかかりつけ医やもの忘れ外来など医療機関の受診が大切になります。受診を急ぐ理由は2つです。

  1. 適切な介護を行うまたは受けるためには、発症している認知症について知る必要があります。個人によって異なる認知症の症状に合わせた対応を早い段階から行うのが大切です。
  2. 早く受診できれば治療も初期段階から開始できます。早い治療は、認知症の進行の抑制や症状を緩和する効果があります。

速やかに治療を始めるためにも、少しでもおかしいと思ったら病院へ受診をしましょう。

認知症ケアとは

認知症の方は、社会生活を含めた日常生活に支障をきたしている状態です。そのような状態に陥ってしまった方に対して、認知症ケアでは日常的な生活支援や介助を行っています。

適切な認知症ケアで対応すれば、認知症の症状を落ち着かせて進行を緩やかにし、自立性のある日常生活を長い期間、営める可能性が高くなるでしょう。そのためにも、認知症ケアは、「基本的な考え方」を心がけ、生活支援や介助を行っていく必要があります。具体的にどのような考え方が基にあるのかを、次項から詳しく見ていきましょう。

認知症ケアの基本

認知症ケアを行ううえで基本的な考え方は「尊厳の保持」です。認知症を患った方が大切にしている自尊心や思想、物や価値観などを尊重し続けてあげられるように接するのが大切です。

尊厳の保持を行うために大切なポイントが4つあります。

  • 本人の行動を理解し、認知症による不安感などに対する心のケア
  • 環境の変化が苦手な認知症患者が安心できる馴染みの人間関係や住環境
  • 症状や状態の変化に合わせて適切な医療機関の受診
  • 判断力の衰えや意思決定が難しい時は高齢者自身の意思を代弁

認知症ケアを実践するときは、上記の点を念頭に置いて対応するのが大切です。

認知症の方への接し方

認知症ケアの基本的な考え方をふまえて適切な接し方を行う必要があります。認知症の方の尊厳を守る接し方のポイントは9つです。

  • 周囲の環境が危なくないか見守りながら認知症の方のやりたい思いを尊重する
  • 認知症の方が物事を理解しやすいように、わかる言葉で一つずつ簡単に話す
  • 本人の間違いを強く否定しない
  • 手を握ってあげるなどスキンシップを取り、感情面で刺激を与える
  • 急がせると感情面が不安定になるため認知症の方のペースに寄り添う
  • できるだけ一人にしないで行動を共にできる環境が必要
  • 急な環境の変化が苦手な認知症の方なので、環境が変わる時は徐々に慣れさせる
  • 身支度に介助を要する場合が多いため、介助者のフォローが必要

すべてを完璧に行うのは難しいです。本人の症状に合わせてできる範囲で取り組みましょう。

家庭でできる認知症ケア

認知症の種別や症状について説明をしましたが、家庭でできる認知症ケアはどういったものがあるのでしょうか。認知症かもしれないと思った時からすでに認知症ケアは始まっているかもしれません。すぐに家族でもできる認知症ケアのポイント「3つ」を知っておきましょう。

認知症ケアを適切に始めるために

認知症の症状は徐々に現れます。そのため、そばにいる家族が気づきやすいのが特徴です。しかし、家族が異常に気付いてから受診に至るまで時間がかかり、2年以上かかっているケースが全体の3分の2に上ります。

認知症は治療を早く始めれば、進行が緩やかになる点がわかっています。家族が症状に気づいてから病院へ受診し、適切な診断を受けると速やかに治療をスタートできます。認知症ケアを適切に始めるためには、病院を受診し、対応における注意点や今後起こり得る症状などの把握が大切です。

安全に生活できる環境を整備

認知症を患う方にとって、日常生活の中には危険がたくさんあります。判断力や理解力が低下するため、道具や設備を安全に使用ができないからです。

日常の中で注意すべき点は以下の通りです。

  • キッチンのコンロ、マッチなど火の元
  • 包丁などの刃物
  • 洗剤や漂白剤なの薬品

これらは認知症を患う方が適切に使用できないと、火災や怪我などが発生する恐れがあります。さらに洗剤や漂白剤などの薬品を誤って飲んでしまう誤飲などの事故も考えられるため、安全に生活できる環境整備は重要です。

認知症ケアを受ける本人の気持ちを尊重

認知症を患う方の中には、発症し始めの時から自分の状態に違和感を感じたり不安に思ったりしている場合があります。認知症は急性的な症状ではなく、徐々にできない部分が増えていく場合が多く、当事者が自覚しやすいためです。

不安感から攻撃的になったり情緒が不安定になったりする場合もあるでしょう。家族としてできるのは、本人の不安な感情に対して寄り添うことです。そして、判断力が低下している本人に代わり適切な環境を整え、質の良い介護サービスを見極める必要もあります。

認知症は理解力が衰えても、感情は残ります。しかし、脳のダメージによってコントロールが難しくなった状態です。慣れた環境や親しい友人、家族に囲まれた生活の継続は、認知症の症状を落ち着かせる大きな要因になります。

介護者自身も精神的負担を自覚する

認知症を患う方の生活を支えたり身体介助を実施したりするのは、介護者にとって心身ともに大きな負担になります。認知症の症状は多岐にわたり、時には人格が変わったような様子もみられ、感情面に注意しながら対応するのは大変です。

目の前の家族の世話に負われ、介護者自身については後回しになってしまい、時には抑うつ状態に陥るケースもあります。

そのようなケースを避けるために以下の方法が有効です。

  • 介護者自身も負担を自覚し適切な介護サービスを利用
  • 認知症の家族をケアする家族同士の交流を持てる場所へ足を運ぶ
  • 介護者が気分転換を図れる機会を作る

認知症を患う家族を支えるためには、介護者が心身共に健康的でなければなりません。

認知症ケアを行う介護者の介護疲れ

自宅で介護を行う介護者は、気の休まらない介護生活に介護疲れが起こり疲弊しやすくなります。核家族化により老々介護や中心となって介護をしている介護者以外に、手を貸せる親類がいないなどの要因があるからです。

また、認知症ケアを行う場合、特有の症状を発症する家族を支えるために介護者の生活に影響が出るのは避けられません。認知症ケアを自宅で無理なく行うためには、家族が介護疲れの予防が重要です。

心のケアの必要性

認知症ケアを行う介護者の心のケアが必要とされるのがわかるのが次の表です。

生活がしづらくなったと感じる理由(複数回答)

生活がしづらくなったと感じる理由

引用:『第5章 認知症のケア 1. 家族の立場から 家族支援を考える

公益社団法人認知症の人と家族の会による「認知症の人と家族の暮らしについてのアンケート」を実施した結果の表です。介護者は認知症ケアを通してストレスや疲労感、自由度の減少などの悩みが確認できます。複数回答となっているため、介護者の悩みは1つに限らないといえるでしょう。

介護を始めてから生活のしづらさを実感する場合もあり、介護者への心身面のフォローの必要性が分かります。

介護負担を軽減する福祉サービス

認知症ケアを自宅で行う介護負担を軽減するために、いくつかの福祉サービスの利用が必要になります。認知症を患う方は環境の変化が苦手ですが、症状が軽い初期の段階で複数の介護サービスや介護スタッフなど家庭以外の場所に慣れておくと、サービスの利用が緊急的に必要となった場合でも落ち着いて利用できるからです。

認知症の方が安心して利用できる介護サービスは次の3つです。

  • デイサービス
  • デイケア
  • ショートステイ(短期入所生活介護)

デイサービスなどの通所介護は、認知症の方に対して特化したサービスを提供している事業所もあります。ショートステイと呼ばれる短期入所介護は、宿泊を伴うサービスです。定期的に通い、認知症の方も馴染みの場所を自宅以外で持てるため、家族も本人も気が休まる時間を作れます。

認知症ケアをする方が集う場所

認知症の方に対しての介護サービスだけではなく、認知症ケアを行っている介護者や専門職が意見交換や交流を行いケアに役立てられる場所があります。

「認知症カフェ」

  • 全国6000カ所以上にある認知症の方やその家族、専門家や地域の方が集まり一緒にお茶をしたり相談しあったりする場です。

認知症カフェについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

関連記事
認知症カフェは誰でも参加可能!特徴や利用におけるメリットを解説!
認知症カフェは誰でも参加可能!特徴や利用におけるメリットを解説!

「認知症の人と家族の会」

  • 47都道府県すべてに配置されています。相談する内容も家族についてだけではなく、介護者についても相談できる場所です。

「若年性認知症支援コーディネーター」

  • 都道府県や政令指定都市に一人から数人のコーディネーターが配置されています。ほかの認知症では少ない若年性認知症を患う方本人やその家族の相談に乗って支援します。

「認知症本人ワーキンググループ」

  • 毎月東京で開催される認知症当事者が話し合う場です。

住んでる場所を問わず気軽に相談したり参加したりできる場所が多いので、上手く活用していけば介護者の孤独防止にもつながります。

正しい認知症ケアで介護者も精神面を大切にしながら対応しよう

正しい認知症ケアは、まず発症した認知症がどのようなものなのか、そしてどのように進行していくのかをきちんと家族や本人が理解を深めるのかが大切になります。なぜなら、きちんとした知識を持っていれば、判断力が低下した認知症の方の代わりに、介護者が適切な判断をすると質のよい生活を送れるからです。

また、認知症ケアの方法だけではなく、介護者が心身ともに負担が重くなりすぎないような方法を見つけるのも大事です。

介護を受ける認知症の方が介護サービスを受けるように、介護者も認知症カフェなど家族向けの居場所を活用して介護負担の軽減を目指しましょう。

認知症ケアに関するよくある質問

Q.認知症ケアを必要とする家族が別居や遠方にいる場合、どういったことを家族は行う必要があるか。

A.認知症ケアを必要とする当事者がどのくらいの症状があり、生活するうえでどのような問題点があるのかをきちんと理解する必要があります。また、中心となって介護をする人(キーパーソン)を必ず決めておきましょう。介護支援専門員や医師などと連携を行ったり、必要によっては本人の資産を管理しトラブルに至らないようにします。

Q.家族が病院に行った方がいいと思っても本人が拒否する場合がある。どのように対処すべきか。

A.認知症を専門に見てくれる病院に行く前に、もしかかりつけ医がいるのであれば、かかりつけ医から本人へ説明してもらうのがいいでしょう。また「認知症だから病院へ行きましょう」とは伝えず、脳の健康チェックに行きましょうなどというと良いでしょう。

そのほか認知症ケアについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事
脳トレは認知症予防に効果がある?すぐに実践できるおススメ脳トレ10選をご紹介!
脳トレは認知症予防に効果がある?すぐに実践できるおススメ脳トレ10選をご紹介!
関連記事
認知症の方を施設に入れるタイミングは?進行度・きっかけなどを解説
認知症の方を施設に入れるタイミングは?進行度・きっかけなどを解説
5問の質問でわかる!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4
5問の質問でわかる!ピッタリの施設をご提案
プロに施設を提案してもらう