認知症の家族が「お金がない」状況でも費用軽減の工夫や助成制度の利用で、施設入居が可能です。そして、実際に入居を実現した方もいらっしゃいます。
一方、認知症の家族を施設に入れたいと考えていても、「月々の支払いが難しい」、「貯金が底をつきそう」といったお金の不安から一歩踏み出せないのが実情だと思います。
介護保険制度や自治体の支援を正しく理解し、適切な施設選びを行うことで、低所得や資産が少ない状態でも入居できる可能性は十分にあります。
本記事では、認知症の家族が「お金がない」状況でも施設に入るための13の具体的な対策を解説します。実際に入居を実現した方々の体験談や、万が一お金が底をついた時のリアルな現実までを網羅しました。
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お金がないときに認知症の家族の施設入居を実現するための対策13選

ここでは、お金がない中で認知症の家族が施設入居を検討するときに使える対策を13個紹介します。
多くの方が利用できる方法から、条件が合えば利用できる方法まで幅広く解説します。
【早見表】お金がないとき、認知症の家族が施設に入れるようにするための対策13選
- 施設選びやプランに関する対策
- 相部屋(多床室)の選択
- 入居一時金0円プランの活用
- 公的施設への優先入居
- 介護移住と地方選定
- 必ず検討すべき公的な助成制度
- 特定入所者介護サービス費(補足給付)
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 医療費控除の確定申告
- 条件が合えば有効な制度
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
- 世帯分離
- 資産を活用する対策
- リバースモーゲージ
- 生活福祉資金貸付制度
- 最終手段としての公的支援
- 生活保護の受給
施設選びやプランに関する対策
認知症の方は、国や地方自治体が運営する「公的施設」と、民間が運営する「民間施設」の両方に入居できます。
入居できる施設種としては、以下の4つが挙げられます。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護医療院
- 介護付き有料老人ホーム
- グループホーム
- サービス付き高齢者住宅(サ高住)
「お金がない」という不安がある場合、まずは費用を抑えやすい公的施設を検討するのが一般的ですが、認知症の症状や身体状況によっては民間施設の方が適しているケースもあります。
「施設=高い」というイメージがあるかもしれませんが、実は選択肢や制度を組み合わせることで、月々の負担を大幅に抑えることが可能です。
①相部屋(多床室)の選択
特別養護老人ホーム(特養)と介護医療院は、低所得者向けの国の減免制度である特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)の対象施設です。
特養や介護医療院などで個室ではなく相部屋(多床室)を選ぶことで、毎月の居住費を大きく抑えることができます。
各施設の詳細について詳しく知りたい方は、以下のコラム記事もご覧ください。
②入居一時金0円プランの活用
特養などの公的施設はそもそも入居一時金が不要です。
民間施設でも初期費用0円のプラン(月払い方式)を選ぶことで、手元にまとまったお金がなくても入居可能です。ただし、月額費用が高くなる傾向があるため、長期的な資金計画が必要です。
③公的施設への優先入居
特養などの公的施設は費用が安いですが、原則「要介護3以上」という条件があり、待機者が多くすぐには入れないことが一般的です。
入居予定者の介護状況をこまめに報告したり、複数施設へ登録したりして待機期間を短くする工夫が必要になります。
④介護移住と地方選定
施設費用は地域差が大きく、地方は東京などの都市部に比べて月額費用が数万円安くなる傾向があります。
費用を抑えるために地方の施設を選ぶのは有効ですが、家族が面会に行きにくくなるなどのデメリットがあります。
都道府県別のの介護施設の費用相場について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
必ず検討すべき公的な助成制度
多くの方が利用できる可能性がある、具体的な減免・還付制度として、以下の4つが挙げられます。
- 特定入所者介護サービス費(補足給付)
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算療養費
- 医療費控除の確定申告
国の制度を知っているかどうかで、支払額は「月々数万円」単位で変わります。ここでは、それぞれの制度の概要、特徴を見ていきましょう。
⑤特定入所者介護サービス費(補足給付)
⑦高額医療・高額介護合算療養費
参照:高額介護合算療養費制度の限度額-公益財団法人長寿科学振興財団
⑧医療費控除の確定申告
補助金制度の詳細についてはこちらのコラム記事もご覧ください。
条件が合えば有効な制度
⑨社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
低所得者向けに、社会福祉法人が運営する施設(特養など)で利用者負担を軽減する制度です。
すべての施設で実施しているわけではないため、実施している施設を探す必要があります。
参照:社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担額軽減制度-埼玉県
⑩世帯分離
親と子の世帯を分けることで、親の住民税を非課税にし、上記の減免制度を受けやすくする方法です。
しかし、国民健康保険料の負担が増えるなどのデメリットもあるため、事前の確認が必要です。
資産を活用する対策
⑪リバースモーゲージ
自宅を担保に金融機関から融資を受け、本人の死亡後に自宅を売却して返済する仕組みです。自宅の評価額の50%〜60%の融資が受けられ、自宅を手放さずに現金化して施設費用に充てられます。
万が一死亡時まで完済できなかった場合は、自宅を売却し返済に充てます。
自宅の相続を考えていない方に向いています。
⑫生活福祉資金貸付制度
低所得の高齢者世帯が、一定の居住資産(不動産)を担保に生活資金の貸付を受ける制度(長期生活支援資金)です。
施設利用時に使用できるのは、福祉費(福祉資金)で、介護サービス利用費、有料老人ホーム等の入居費(一時金)など、一時的な資金が必要な場合に貸付を受けられます。
お住まいの市区町村の社会福祉協議会が相談窓口となります。
最終手段としての公的支援
⑬生活保護の受給
収入や資産が完全になく、親族からの援助も難しい場合の最終手段です。
生活保護を受給しながら老人ホームに入居する場合、施設の費用が扶助の範囲内に収まるかどうかの確認や承認を福祉課から得る必要があります。
そのため、入居の候補が固まってきた段階で、お住まいの自治体の福祉課(生活保護の担当窓口)にも必ず相談するようにしてください。
認知症の方がお金がない中で施設に入るためにまずやるべき3つのこと
1. 本人の収入、預貯金、要介護度を整理する
施設選びや利用できる費用の減免制度は、本人の要介護度や収入、預貯金額によって大きく左右されます。
まずは正確に現状を把握し整理しましょう!
2. 地域包括センターに早めに相談する
地域包括センターは、介護や医療、福祉など、生活全般の相談窓口です。
保険師や看護師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門家が、ご家族の要介護度、金銭状況などを踏まえて、利用できる施設や制度についてアドバイスがもらえます。
参照:認知症で困った時、ここに相談! – 独立行政法人 地域医療機能推進機構 東京高輪病院
3. 介護移住も含めて候補を広げる
都市部の施設は費用が高く待機者も多い傾向にあります。
同じ県内でも地価の安いエリアへの介護移住や、低価格な民間施設も並行して検討することも費用を抑えるための方法の一つです。
【インタビュー】お金がなくても認知症の家族が施設に入居できた3つの体験談

ここでは、実際に貯金が少ない状態や低所得の状況から、認知症の家族を施設へ入れた3つの成功事例を紹介します。
制度の内容を理解しても、「本当に自分たちの収入で足りるのか」という不安は拭えないものです。
そこで、制度の組み合わせ方やエリアの選び方など、ここまでご紹介した具体的な戦略がどのように実を結んだのか、その詳細を解説します。ご自身の状況に近い事例を確認し、入居までの具体的なイメージを掴んでください。
体験談①:認知症のご家族が介護保険制度を活用し、介護費用を抑えられたハリウッドさんのご家族
【インタビュー情報】
・実施日:2026年4月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:ハリウッドさん
・入居施設*:特別養護老人ホーム(特養) * 今夏から入京予定
・利用した制度:要介護認定、介護保険負担限度額認定
・月額の施設利用負担額:9万円→3万円
ハリウッドさん:
父は90代で、日時や場所が分からなくなるなどの認知症の症状が進んでいました。一番大変だったのはトイレの失敗で、出ている自覚がないため母の負担も相当なものでした。私はフルタイムで働いているため、平日の日中は母一人に任せきり。このままでは母まで倒れてしまうという危機感がありました。
■「この画面にある制度は、うちも使えますか?」
当初、施設の費用は月額10万円以下に抑えたいと考えていました。ネットで「介護 助成金」などのキーワードで必死に調べました。
ただ、制度の仕組みや申請方法の説明は非常に煩雑でした。そこで、平日に有給休暇を取り、役所へ。
「この画面にある制度は、うちも使えますか?」
スマホの検索画面をそのまま窓口の方に見せて、そこから相談が始まりました。
その後は、介護認定員の方に家に来てもらい、主治医に意見書を書いてもらう……。このプロセスは想像以上に手間がかかり、有給を何日も使いましたが、ここが踏ん張りどころでした。
結果、要介護3が認定され、さらに世帯の所得状況に応じた『介護保険負担限度額認定』を受けられることが分かりました。これを利用することで、当初9万円ほどと見積もっていた月額費用が、最終的に約3万円まで抑えられる目処が立ったんです。
■「ショートステイ」をステップにした施設選び
父は施設に入ることを嫌がっていましたが、「嫌だったらやめていいから」と説得し、まずは1年前からショートステイ(2泊3日など)を定期的に利用しました。
母が体調を崩した時の避難先としても、父が施設に慣れるための準備期間としても、この『慣らし期間』は非常に有効でした。
いくつかの施設を見学しましたが、中には清潔感やスタッフの対応が合わないところもありました。予算の範囲内で、かつ父が穏やかに過ごせる場所をケアマネジャーさんと相談しながら探し、この夏、ついにショートステイで通い慣れた特養への正式入居が決まりました。
■「相談すれば、どうにかなる」という安心感
介護認定の手続きやおむつ代の助成申請など、確かに平日の役所対応は大変です。でも、一度つながってしまえば、金銭面でも労力面でも驚くほど楽になります。
「お金がないから無理だ」と一人で絶望しないでください。まずは自治体の福祉課へ行き、「予算はこれくらいしかない。でも家で見るのは限界だ」と正直に相談してみてください。きっと、その予算内で親も自分たちも守れる方法を一緒に見つけてくれるはずです。
体験談②:生活保護を受給し、特養にゼロ円で入居・生活された佐藤さんのご家族
【インタビュー情報】
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:佐藤さん(仮名)
・入居施設:特別養護老人ホーム(特養)
・利用した制度:生活保護
・月額の施設利用負担額:0円
佐藤さん:
「年金がなくて貯金もない。そんな中で親が認知症になり、私自身も病に倒れた時は、まさに八方塞がりでした。」
父は長年自営業で無年金だったため、老後の蓄えが全くありませんでした。当時は長男と同居していましたが、兄は介護も金銭面もノータッチ。私たち夫婦が必死に工面していましたが、私がコロナで入院し、仕事ができなくなったことで介護が難しくなってしまいました。父の認知症も進み、お財布にお金を補充しても『誰かに盗られた』と一日中探し回ったり、トイレが間に合わず失敗を繰り返したり……。母もがんで闘病しており、まさに家族全員がボロボロの状態でした。
■「手すりの相談」が、生活保護と施設入居への転機に
実は、最初から生活保護や施設を考えていたわけではないんです。きっかけは母のケアマネジャーさんから『包括センター(地域包括支援センター)に繋がっておくと良いですよ』と勧められたことでした。
最初は玄関の手すりをつける相談で行ったのですが、担当の方が私たちの状況を親身に聞いてくださり、『お父様を単独世帯にすれば生活保護が受けられ、負担ゼロで特養に入れる可能性がある』と提案してくれました。
ただ、高齢で要介護5の父が借りられる物件がなかなか見つからず、1年以上探し回りました。また、当時は兄が父と同居していたのですが、生活保護を受けるには父が『単独世帯』になる必要があったんです。
最終的に知人の倉庫として使われていた建物を借りて世帯分離ができ、そこからは生活保護がすぐに認められ、医療面でも水頭症の手術やリハビリ病院への転院など、包括センターの全面的なサポートを受けることができました。
■「絶望的な通知」の後に届いた、一本の電話
特養の申し込みはしていましたが、区から届くのは『あなたの待ち順位は何番目です。この半年で入居できたのは数人です』といった、絶望感しかない通知ばかり。一体いつ入れるのかと、先の見えない不安に押しつぶされそうでした。
しかし、要介護度が『5』になり、リハビリ病院で待機している間に認知症の症状が進んだことで、優先順位が急上昇したようです。ある日突然、『順番が回ってきました』と連絡があり、第一希望ではありませんでしたが、即決しました。
■「親だから自分でやらなきゃ」という呪縛を解いてほしい
正直、最初は『生活保護を受けるなんて……』という抵抗もありました。でも、相談窓口の方は本当に親身になって、『おむつ代まで助成が出ますよ』と具体的に教えてくれました。恥ずかしがらずに、もっと早く相談することが大事だと思います。
今は、特養で穏やかに過ごす父に会いに行くのが楽しみです。家で介護していた頃は、ついイライラして『なんでできないの!』と怒鳴ってしまうこともありましたが、今は心に余裕を持って優しく接することができています。
今、お金がなくて絶望している方に伝えたいのは、『親だからといって、自分たちだけで全てを背負わなくていい』ということです。世の中には、私たちが知らないだけで助けてくれる制度がたくさんあります。まずは地域包括支援センターなどの窓口へ行き、今の苦しい状況を正直に話してみてください。そこが、新しい生活への第一歩になるはずです。
体験談③:政令指定都市からの施設移住で月額費用を抑えたゆきころさんのご家族
【インタビュー情報】
・実施日:2026年4月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:ゆきころさん
・入居施設:特別養護老人ホーム(特養)
・月額の施設利用負担額:約13万円 → 約8万円
ゆきころさん:
「住み慣れた街を離れるのは勇気がいりましたが、エリアを広げたことで、父の症状に合うケアと、家族が無理なく支払い続けられる環境のどちらも手に入りました。」
父の異変は、車の運転や「満腹感が分からず少年のように食べ過ぎる」といった行動から始まりました。検査の結果は「レビー小体型認知症」。幻覚や徘徊がひどくなり、神戸市内の特養に入居しましたが、症状が重すぎて「これ以上は手に負えない」と退所を求められてしまったんです。当時は月13万円ほどの費用がかかり、自営業をしていたために年金の少ない父の施設利用料私と姉で不足分を援助していました。費用を抑える方法は模索していましたが。。。
■精神科病院への入院が、スピード入居の鍵になった
行き場を失った父は、適切な受け入れ先があった三田市の精神科病院に一時入院することになりました。そこで驚いたのは、病院専属の相談員さんの対応スピードです。
個人で施設を探していた時は何年も待つのが当たり前だと思っていましたが、病院で入居について相談すると、診断書の準備なども非常に早く、なんと3ヶ月も経たないうちに三田市内の特養への入居が決まりました。
■エリアを広げるだけで、月額費用が5万円もダウン
新しく決まった三田市の特養は、以前と同じ「特養」でありながら、費用は月額約8万円にまで下がりました。月5万円もの差は大きく、おかげで私たちの援助は不要になり、父の年金だけで全額賄えるようになったんです。神戸から三田までは、電車で1時間から2時間ほど。最初は「遠くへ追いやるような申し訳なさ」という葛藤もありました。でも、今の父はそこを「自分の家」として落ち着いて過ごしています。面会は月に1回と決め、行けない時はZoomでのオンライン面談で顔を合わせています。孫たちが顔を見せると、父がとてもにこやかになるのが救いです。
■「プロの繋ぎ」を信じて、一人で抱え込まないで
今、お金の不安で絶望している方に伝えたいのは、病院や自治体のプロに、今の困窮状況を正直に話して頼ってほしいということです。
私たちだけでは、「病院の相談員さん経由なら早く決まる」ことも、「隣の市ならこれほど安くなる」ことも分かりませんでした。自分たちだけでスマホを握りしめて悩むより、知識を持つ人に頼ることで、金銭的にも労力面でも、必ず今の苦しみから抜け出す道が見つかります。
3名のインタビューから分かるように、地域包括支援センターなど知識を持つ方に相談するというアクションを起こすことから解決の糸口が見つかります。
ぜひプロの力を頼って、親も自分たちも守れる方法を探してみてください。
認知症の方を施設に入れたいのにお金が底をついたときにどうなる?
最後に、最も不安な「もし払えなくなったら?」という疑問にお答えします。
強制退去になるのか?
結論から言うと、即座に強制退去にはなりません。
費用を滞納した場合、まずは入居者本人へ確認があり、その後、契約時に立てた身元引受人(連帯保証人)へ請求がいきます。
身元引受人も費用を立て替えることができず、支払いの見通しが立たない状態が続くと、契約解除の予告を経て「退去手続き」へと進むのが一般的な流れです。
お金が無くなったとき猶予期間は?
施設ごとに異なりますが、高齢者という事情が考慮され、一般的には1〜3ヶ月(80〜90日)程度の猶予期間が設けられることが多いです。
この期間に、次にどうするか(安い施設への転居や生活保護の申請など)の対策を立てることになります。
相談先はどこか?
お金が底をつきそうだとわかった時点で、滞納する前にすぐ相談することが何より重要です。
施設のスタッフ(生活相談員)やケアマネジャー
一番の相談窓口です。施設側も生活を守るための対応を考えてくれるため、支払い期限の延長や分割払いの相談に乗ってくれるケースもあります。
市区町村の福祉窓口・地域包括支援センター
減免制度が使えないか、あるいは生活保護を受給できないかの相談ができます。
要件を満たせば、生活保護を受給して費用が全額カバーされる施設(特養や一部の民間施設)に転居することも可能です。
ケアスル介護では、認知症の方が入居・受け入れ相談可能な施設をお探しいただけます。
まとめ:お金がなくても認知症の家族が施設に入居できる方法はあります!
お金がないときに認知症の家族を施設に入居させるための対策を13個解説しました。
また、実際に助成制度や移住で月額の費用を抑えた方の体験談をご紹介しました。
まずは、お住いの地域包括センターに相談してみましょう。体験談にもあったように、相談することが初めの一歩です!