「認知症の親を施設に入れたいが、費用が払えない」と悩む家族は少なくありません。しかし、施設の種類・費用軽減制度・利用条件を正しく組み合わせれば、お金がない状態でも認知症の家族が施設に入居できる方法は複数あります。
この記事では、認知症でも入居できる施設の紹介、公的な助成制度の活用法含む13の具体的な対策、そして実際に月額費用を9万円から3万円に抑えた体験談を解説します。
認知症でお金がなくても入居できる施設
認知症の方が入居できる施設は複数あり、種類によって費用は大きく異なります。
公的施設である特別養護老人ホームは入居一時金も原則不要です。施設の種類・入居条件・費用の3点を正しく把握することが、費用を抑えた施設探しの第一歩です。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、公的施設のなかで最も月額費用が低く、入居一時金が原則不要な施設です。低所得者向けの公的制度の対象となる施設でもあるため、費用を抑えたい家族にとって最初に検討すべき選択肢です。
特養は介護保険が適用される公的施設であるため、民間施設と比べて月額費用が大幅に低く抑えられています。
多床室(相部屋)を選ぶと月額9~14万円程度となり、入居一時金も不要です。また、「特定入所者介護サービス費」(低所得者の居住費・食費を軽減する制度)の対象施設であることも、費用を抑えたい家族にとって大きなメリットです。条件を満たせば、月額4.4万円程度まで自己負担を減らすことも可能です。
ただし、入居待機期間が数ヶ月〜数年かかる施設も多く、申し込みは早めに行うことが重要です。介護認定が要介護1・2でも、認知症の症状が重い場合には特例的に入居できるケースがあるため、施設に直接確認することを推奨します。
グループホーム
グループホームは、認知症の診断を受けた方を専門に受け入れる施設です。1ユニット5〜9人の少人数で生活するため、認知症の症状に合わせた個別ケアが受けられます。月額費用は特養より高くなりますが、民間施設のなかでは費用を抑えやすい選択肢の一つです。
グループホームは認知症の方を専門に受け入れているため、認知症ケアの専門スタッフが配置されており、症状の進行に合わせたサポートが受けられます。
入居一時金が0円の施設も存在するため、初期費用を抑えたい場合は入居一時金ゼロのプランを持つ施設を重点的に探すことが費用圧縮のポイントです。
ただし、グループホームは「特定入所者介護サービス費」の対象外であるため、低所得者向けの公的制度による費用軽減は特養ほど大きくありません。費用を最優先に考える場合は、特養と並行して検討することが重要です。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは施設数が多く、費用・設備・ケア体制の幅が広いのが特徴です。入居一時金の全国平均は346.1万円と高額ですが、中央値は50.3万円であり、入居一時金ゼロのプランを持つ施設も多く存在します。
費用を抑えるためには「入居一時金0円プラン」を条件として施設検索を行うことが有効です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、賃貸借契約のため入居一時金が不要または少額で済み、初期費用を大幅に抑えられる施設です。介護認定がなくても入居できる施設が多く、認知症の軽度〜中等度の方にとって選択肢になります。
認知症の家族の入居費用を抑える施設の選び方
施設の種別が同じでも、「入居一時金」、「部屋タイプ」、「立地」の3点を変えるだけで月額費用を数万円単位で抑えることができます。入居一時金ゼロのプランを選び、多床室を希望し、地方・郊外の施設を視野に入れることで、費用の大幅な圧縮が可能です。
実際に政令指定都市から隣市の施設に移住することで月額費用を約5万円削減した事例もあります。
入居一時金ゼロの施設を選ぶ
介護付き有料老人ホームなどの民間施設では、入居一時金を0円に設定したプランを選ぶことで、入居時の初期費用を大幅に削減できます。入居一時金の全国平均は346.1万円ですが、0円プランを持つ施設は全国に多数あります。
入居一時金ゼロのプランを選ぶ際は、月額費用との総額比較が重要です。
入居一時金が高いプランでも、月額費用が低く設定されている場合、長期入居では総額が安くなることがあります。
手元資金が乏しく「まず入居を実現する」ことを優先する場合は0円プランが有効ですが、余裕があれば長期的な総額を施設担当者に確認した上で判断してください。
相部屋(多床室)を選ぶ
特別養護老人ホームでは、ユニット型個室ではなく多床室(相部屋)を選ぶことで月額費用を数万円単位で抑えられます。公的施設の多床室は、費用の面で最も低コストな選択肢です。
特養の多床室とユニット型個室の月額費用の差は、施設によって月2万円〜5万円程度になります。年間に換算すると24万円〜60万円の差になるため、費用を最優先に考える場合は多床室の特養が最も有力な選択肢です。
なお、特定入所者介護サービス費(低所得者の居住費・食費を軽減する制度)は部屋タイプによって軽減限度額が異なります。多床室は居住費の負担限度額が低く設定されているため、低所得世帯の場合は多床室を選ぶことで公的制度の恩恵をより大きく受けられます。
ただし、認知症の症状によっては多床室での集団生活が本人の状態に影響することもあるため、施設の専門家に相談の上で判断してください。
地方・郊外の施設に移る
施設の月額費用は地域によって大きく異なり、都市部から郊外・地方の施設に移ることで月額費用を数万円単位で削減できるケースがあります。
施設を探す際は、家族が住む自治体内だけでなく、車や公共交通機関で1〜2時間以内に面会に行ける範囲を検索対象に加えることが有効です。
グループホームは同一市区町村在住が条件ですが、特養・介護付き有料老人ホーム・サ高住は住所地特例(住民票を新しい施設へ移しても、介護保険の管轄は元の自治体のままになる制度)を活用できる場合があるため、施設と市区町村の担当窓口に確認してください。

認知症の家族の施設入居を実現するために活用したい公的制度4選
施設入居後の費用を抑えるために、必ず確認すべき公的制度が4つあります。これらは申請しないと適用されないものがほとんどです。
特定入所者介護サービス費・高額介護サービス費・高額医療介護合算制度・医療費控除を正しく組み合わせることで、低所得世帯では施設の月額自己負担を数万円単位で削減できます。
特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費は、低所得の方が介護保険施設に入所した際の居住費と食費を軽減する制度です。世帯全員が住民税非課税であるなど一定の条件を満たす場合、施設に支払う居住費・食費が「負担限度額」までに抑えられ、差額は介護保険から補填されます。
・負担限度額認定証は毎年更新が必要です(有効期間は8月1日〜翌年7月31日)。
・配偶者が別世帯に住んでいる場合も配偶者の収入・資産が審査対象になります。
・グループホームはこの制度の対象外です。費用軽減を優先する場合は特養・老健を優先してください。
高額介護サービス費
高額介護サービス費は、1ヶ月間の介護保険サービスの自己負担合計が所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。一度申請すると、それ以降は上限を超えた月に自動で登録口座へ還付されます。
高額介護サービス費は、訪問介護や施設でのケアなど、毎月利用する基本的な介護保険サービスが対象となります。
初回は市区町村の介護保険担当窓口への申請が必要ですが、2回目以降は条件を満たした月に自動で還付されます。
・居住費・食費・日常生活費は高額介護サービス費の計算対象外です。
・介護保険の自己負担分(1〜3割)のみが対象ですが、「福祉用具の購入」「住宅改修費」「毎月の利用限度額を超えた分の全額自己負担」は計算に含まれません。
・同じ世帯内に複数の介護サービス利用者がいる場合は、世帯合算で上限額が適用されます。
高額医療・高額介護合算療養制度
高額医療・高額介護合算療養制度は、1年間の医療保険と介護保険の自己負担合計が上限額を超えた場合に、超過分が支給される制度です。医療費と介護費の両方が高額になっているケースで特に有効です。
この制度は、施設入居中に医療機関への通院・入院が重なるケースで特に効果的です。1年間の医療保険の自己負担と介護保険の自己負担を合算し、所得に応じた年間上限額を超えた分が後から支給されます。
申対象となる方には、計算期間終了後の冬頃(1月〜2月頃)に市区町村から申請書が届くのが一般的です。ただし、年度途中で引っ越しをした場合や医療保険が変わった場合は通知が届かないことがあるため、申請漏れに注意が必要です。市区町村の介護保険担当窓口に計算方法を確認した上で毎年申請してください。
・計算期間(8月〜翌年7月)が終わってから申請するため、毎年夏以降に申請手続きを行う習慣をつけてください。
・医療保険と介護保険で保険者が異なる場合も、双方で手続きを行うことで合算が適用されます。
・高額介護サービス費と重複して利用できます。両制度を組み合わせることで自己負担をさらに圧縮できます。
参照:高額介護合算療養費制度の限度額-公益財団法人長寿科学振興財団
医療費控除
医療費控除は、確定申告を行うことで施設の介護サービス費や医療費の一部を所得から差し引き、税負担を軽減できる制度です。特別養護老人ホームなど特定の施設では、支払った費用の一定割合が医療費控除の対象になります。

認知症でお金がないときに条件が合えば活用したい制度5選
公的制度に加えて、特定の条件を満たす場合にのみ活用できる5つの制度があります。これらは条件が厳しかったり手続きが複雑だったりするため、適用可否を事前に市区町村の窓口や地域包括支援センターに確認することが必要です。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度は、社会福祉法人が運営する施設を利用する低所得者の介護サービス費・食費・居住費を最大4分の1軽減する制度です。複数の条件をすべて満たす場合に限り適用されます。
この制度は特定入所者介護サービス費と組み合わせて利用できるため、両制度の条件を満たす場合は自己負担をさらに圧縮できます。
ただし、この制度を実施しているのは社会福祉法人が運営する施設に限られ、すべての施設が対象ではありません。
施設を探す際は「社会福祉法人による利用者負担軽減制度の対応施設か」を確認してから入居申し込みを行ってください。市区町村の窓口または地域包括支援センターに対応施設の一覧を問い合わせることができます。
・老健、グループホーム、有料老人ホームはこの制度の対象外です。
・制度を実施している施設は市区町村の窓口に問い合わせると一覧で確認できます。
・特定入所者介護サービス費との同時利用が可能なため、両制度の条件に該当するか合わせて確認してください。
世帯分離
世帯分離とは、住民票上の世帯を分けることで、介護保険料の所得段階や高額介護サービス費の上限額を引き下げられる可能性がある手続きです。同居している子どもと親の世帯を分離することで、親の介護保険料の負担区分が下がるケースがあります。
世帯分離の手続き自体は市区町村役所の窓口で無料で行えます。ただし、世帯分離はあくまで「生活費の財布が別々になった」という実態に基づいて行う手続きです。介護費用の軽減だけを目的とする申請は認められないため、窓口での説明には注意が必要です。
また、「住民票の世帯」と「税金・健康保険の扶養」は別の制度ですが、世帯分離によって「生計が別」とみなされると、子どもの所得税・住民税の扶養控除(老人扶養控除など)が使えなくなり、結果として子どもの税金や国民健康保険料が跳ね上がるリスクもあります。
「親の介護費用は減ったが、世帯全体の出費(子の税金増など)を合計したら損をしてしまった」というケースも多いため、地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険担当窓口に相談し、世帯全体での試算を事前に行うことが不可欠です。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅などの不動産を担保にして生活資金を借り入れる方法です。借り入れた本人が存命中は担保物件に住み続けられ、死亡後に物件を売却して借入金を返済する仕組みです。自宅を売却せずに施設入居費用を確保したい場合の選択肢になります。
リバースモーゲージは自宅を売却せずに施設費用を確保できる点がメリットです。
ただし、社会福祉協議会の商品など「自宅に住み続けること」が利用条件となっているものもあるため、施設入居を目的とする場合は、民間金融機関などが提供する「施設入居資金向け(空き家になっても利用可能)」の商品を選ぶ必要があります。
また、将来施設に入るための資金として利用したい場合は、意思能力がはっきりしているうちに契約手続きを済ませておくことが典型的なケースとなります。
ただし、担保物件の評価額が低い場合は融資が受けられないケース、または融資限度額が不足するケースがあります。また、不動産価格が下落した場合は死後の売却代金で借入金を完済できない可能性もあります。
利用を検討する場合は、取扱機関の担当者に物件の評価額と融資可能額を事前に確認してください。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯・高齢者世帯・障害者世帯を対象に、社会福祉協議会が低利または無利子で生活資金を貸し付ける公的制度です。施設入居の一時費用や生活費が一時的に不足した場合の資金として活用できます。
生活福祉資金貸付制度は「贈与」ではなく「貸付」であるため、将来的に返済が必要です。ただし民間のローンと異なり、低利子または無利子で借り入れられる点が特徴です。施設入居の一時金や当面の月額費用が不足している場合に、生活保護の申請前に一時的な資金を確保する手段として活用できます。申請は市区町村の社会福祉協議会で行い、審査には数週間程度かかる場合があります。緊急度が高い場合は「緊急小口資金」の活用も検討してください。
・生活福祉資金は「貸付」のため審査では将来の返済能力(償還の見込み)が厳しく確認されます。
・生活保護を受給する一歩手前の「自立支援」を目的とした制度です。市区町村の福祉窓口に状況を説明して相談してください。
・申請から融資実行まで時間がかかるケースがあるため、資金が必要になる前に早めに相談することを推奨します。
生活保護
生活保護は、収入・資産がなく生活が困窮している方に対して国が最低限の生活を保障する制度です。生活保護を受給することで、施設入居費用(居住費・食費・介護サービス費)のすべてが保護費から賄われ、自己負担が実質0円になるケースがあります。
生活保護を受給している方は、特別養護老人ホームやグループホームへの入居が可能です。
ただし、すべての施設に入居できるわけではなく、「生活保護法指定介護機関」の指定を受けており、かつ保護費の規定内(家賃上限など)で収まる施設を選ぶ必要があります。施設探しの際は「生活保護受給者の受け入れが可能か」を必ず条件に入れて検索してください。
施設入居中に受け取る年金は収入として認定されますが、その分は保護費が調整される仕組みになっており、手元に残る生活費は最低生活費の水準が保証されます。
生活保護の申請に対してためらいを感じる家族もいますが、必要な状況であれば迷わず申請することが重要です。申請は市区町村の福祉事務所で行い、申請から受給開始まで原則14日以内(最長30日)で決定されます。

【インタビュー】お金がなくても認知症の家族が施設に入居できた3つの体験談

ここでは、実際に貯金が少ない状態や低所得の状況から、認知症の家族を施設へ入れた3つの成功事例を紹介します。
制度の内容を理解しても、「本当に自分たちの収入で足りるのか」という不安は拭えないものです。
そこで、制度の組み合わせ方やエリアの選び方など、ここまでご紹介した具体的な戦略がどのように実を結んだのか、その詳細を解説します。ご自身の状況に近い事例を確認し、入居までの具体的なイメージを掴んでください。
体験談①:認知症の父の施設費用が、介護保険制度を活用することで3分の1に
【インタビュー情報】
・実施日:2026年4月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:ハリウッドさん
・入居施設*:特別養護老人ホーム(特養) * 今夏から入居予定
・利用した制度:要介護認定、介護保険負担限度額認定
・月額の施設利用負担額:9万円→3万円
ハリウッドさん:
父は90代で、日時や場所が分からなくなるなどの認知症の症状が進んでいました。一番大変だったのはトイレの失敗で、出ている自覚がないため母の負担も相当なものでした。私はフルタイムで働いているため、平日の日中は母一人に任せきり。このままでは母まで倒れてしまうという危機感がありました。
■「この画面にある制度は、うちも使えますか?」
当初、施設の費用は月額10万円以下に抑えたいと考えていました。ネットで「介護 助成金」などのキーワードで必死に調べました。
ただ、制度の仕組みや申請方法の説明は非常に煩雑でした。そこで、平日に有給休暇を取り、役所へ。
「この画面にある制度は、うちも使えますか?」
スマホの検索画面をそのまま窓口の方に見せて、そこから相談が始まりました。
その後は、介護認定員の方に家に来てもらい、主治医に意見書を書いてもらう……。このプロセスは想像以上に手間がかかり、有給を何日も使いましたが、ここが踏ん張りどころでした。
結果、要介護3が認定され、さらに世帯の所得状況に応じた『介護保険負担限度額認定』を受けられることが分かりました。これを利用することで、当初9万円ほどと見積もっていた月額費用が、最終的に約3万円まで抑えられる目処が立ったんです。
■「ショートステイ」をステップにした施設選び
父は施設に入ることを嫌がっていましたが、「嫌だったらやめていいから」と説得し、まずは1年前からショートステイ(2泊3日など)を定期的に利用しました。
母が体調を崩した時の避難先としても、父が施設に慣れるための準備期間としても、この『慣らし期間』は非常に有効でした。
いくつかの施設を見学しましたが、中には清潔感やスタッフの対応が合わないところもありました。予算の範囲内で、かつ父が穏やかに過ごせる場所をケアマネジャーさんと相談しながら探し、この夏、ついにショートステイで通い慣れた特養への正式入居が決まりました。
■「相談すれば、どうにかなる」という安心感
介護認定の手続きやおむつ代の助成申請など、確かに平日の役所対応は大変です。でも、一度つながってしまえば、金銭面でも労力面でも驚くほど楽になります。
「お金がないから無理だ」と一人で絶望しないでください。まずは自治体の福祉課へ行き、「予算はこれくらいしかない。でも家で見るのは限界だ」と正直に相談してみてください。きっと、その予算内で親も自分たちも守れる方法を一緒に見つけてくれるはずです。
体験談②:生活保護を受給し、認知症の父の特養の施設費用が0円に
【インタビュー情報】
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:佐藤さん(仮名)
・入居施設:特別養護老人ホーム(特養)
・利用した制度:生活保護
・月額の施設利用負担額:0円
佐藤さん:
「年金がなくて貯金もない。そんな中で親が認知症になり、私自身も病に倒れた時は、まさに八方塞がりでした。」
父は長年自営業で無年金だったため、老後の蓄えが全くありませんでした。当時は長男と同居していましたが、兄は介護も金銭面もノータッチ。私たち夫婦が必死に工面していましたが、私がコロナで入院し、仕事ができなくなったことで介護が難しくなってしまいました。父の認知症も進み、お財布にお金を補充しても『誰かに盗られた』と一日中探し回ったり、トイレが間に合わず失敗を繰り返したり……。母もがんで闘病しており、まさに家族全員がボロボロの状態でした。
■「手すりの相談」が、生活保護と施設入居への転機に
実は、最初から生活保護や施設を考えていたわけではないんです。きっかけは母のケアマネジャーさんから『包括センター(地域包括支援センター)に繋がっておくと良いですよ』と勧められたことでした。
最初は玄関の手すりをつける相談で行ったのですが、担当の方が私たちの状況を親身に聞いてくださり、『お父様を単独世帯にすれば生活保護が受けられ、負担ゼロで特養に入れる可能性がある』と提案してくれました。
ただ、高齢で要介護5の父が借りられる物件がなかなか見つからず、1年以上探し回りました。また、当時は兄が父と同居していたのですが、生活保護を受けるには父が『単独世帯』になる必要があったんです。
最終的に知人の倉庫として使われていた建物を借りて世帯分離ができ、そこからは生活保護がすぐに認められ、医療面でも水頭症の手術やリハビリ病院への転院など、包括センターの全面的なサポートを受けることができました。
■「絶望的な通知」の後に届いた、一本の電話
特養の申し込みはしていましたが、区から届くのは『あなたの待ち順位は何番目です。この半年で入居できたのは数人です』といった、絶望感しかない通知ばかり。一体いつ入れるのかと、先の見えない不安に押しつぶされそうでした。
しかし、要介護度が『5』になり、リハビリ病院で待機している間に認知症の症状が進んだことで、優先順位が急上昇したようです。ある日突然、『順番が回ってきました』と連絡があり、第一希望ではありませんでしたが、即決しました。
■「親だから自分でやらなきゃ」という呪縛を解いてほしい
正直、最初は『生活保護を受けるなんて……』という抵抗もありました。でも、相談窓口の方は本当に親身になって、『おむつ代まで助成が出ますよ』と具体的に教えてくれました。恥ずかしがらずに、もっと早く相談することが大事だと思います。
今は、特養で穏やかに過ごす父に会いに行くのが楽しみです。家で介護していた頃は、ついイライラして『なんでできないの!』と怒鳴ってしまうこともありましたが、今は心に余裕を持って優しく接することができています。
今、お金がなくて絶望している方に伝えたいのは、『親だからといって、自分たちだけで全てを背負わなくていい』ということです。世の中には、私たちが知らないだけで助けてくれる制度がたくさんあります。まずは地域包括支援センターなどの窓口へ行き、今の苦しい状況を正直に話してみてください。そこが、新しい生活への第一歩になるはずです。
体験談③:負担だった特養の施設費用が、隣町へ引っ越して入居することで5万円軽減に
【インタビュー情報】
・実施日:2026年4月
・形式:オンラインインタビュー
・お名前:ゆきころさん
・入居施設:特別養護老人ホーム(特養)
・月額の施設利用負担額:約13万円 → 約8万円
ゆきころさん:
「住み慣れた街を離れるのは勇気がいりましたが、エリアを広げたことで、父の症状に合うケアと、家族が無理なく支払い続けられる環境のどちらも手に入りました。」
父の異変は、車の運転や「満腹感が分からず少年のように食べ過ぎる」といった行動から始まりました。検査の結果は「レビー小体型認知症」。幻覚や徘徊がひどくなり、神戸市内の特養に入居しましたが、症状が重すぎて「これ以上は手に負えない」と退所を求められてしまったんです。当時は月13万円ほどの費用がかかり、自営業をしていたために年金の少ない父の施設利用料私と姉で不足分を援助していました。費用を抑える方法は模索していましたが。。。
■精神科病院への入院が、スピード入居の鍵になった
行き場を失った父は、適切な受け入れ先があった三田市の精神科病院に一時入院することになりました。そこで驚いたのは、病院専属の相談員さんの対応スピードです。
個人で施設を探していた時は何年も待つのが当たり前だと思っていましたが、病院で入居について相談すると、診断書の準備なども非常に早く、なんと3ヶ月も経たないうちに三田市内の特養への入居が決まりました。
■エリアを広げるだけで、月額費用が5万円もダウン
新しく決まった三田市の特養は、以前と同じ「特養」でありながら、費用は月額約8万円にまで下がりました。月5万円もの差は大きく、おかげで私たちの援助は不要になり、父の年金だけで全額賄えるようになったんです。神戸から三田までは、電車で1時間から2時間ほど。最初は「遠くへ追いやるような申し訳なさ」という葛藤もありました。でも、今の父はそこを「自分の家」として落ち着いて過ごしています。面会は月に1回と決め、行けない時はZoomでのオンライン面談で顔を合わせています。孫たちが顔を見せると、父がとてもにこやかになるのが救いです。
■「プロの繋ぎ」を信じて、一人で抱え込まないで
今、お金の不安で絶望している方に伝えたいのは、病院や自治体のプロに、今の困窮状況を正直に話して頼ってほしいということです。
私たちだけでは、「病院の相談員さん経由なら早く決まる」ことも、「隣の市ならこれほど安くなる」ことも分かりませんでした。自分たちだけでスマホを握りしめて悩むより、知識を持つ人に頼ることで、金銭的にも労力面でも、必ず今の苦しみから抜け出す道が見つかります。
3名のインタビューから分かるように、地域包括支援センターなどプロに相談するというアクションを起こすことから解決の糸口が見つかります。
ぜひプロの力を頼って、親も自分たちも守れる方法を探してみてください。
認知症の方を施設に入れたい後にお金が底をついたときにどうなる?
施設入居後に費用の支払いが困難になった場合でも、即座に強制退去になるケースはほとんどありません。多くの施設では1〜3ヶ月程度の猶予期間が設けられており、その間に生活保護への切り替えや公的制度の追加申請で入居継続を実現できたケースがあります。重要なのは「支払いが難しくなった」と感じた時点で、すぐに施設と行政窓口に相談することです。
強制退去になるのか?
結論から言うと、即座に強制退去にはなりません。
費用を滞納した場合、まずは入居者本人へ確認があり、その後、契約時に立てた身元引受人(連帯保証人)へ請求がいきます。
身元引受人も費用を立て替えることができず、支払いの見通しが立たない状態が続くと、契約解除の予告を経て「退去手続き」へと進むのが一般的な流れです。
お金が無くなったとき猶予期間は?
施設ごとに異なりますが、高齢者という事情が考慮され、一般的には1〜3ヶ月(80〜90日)程度の猶予期間が設けられることが多いです。
この期間に、次にどうするか(安い施設への転居や生活保護の申請など)の対策を立てることになります。
・施設の生活相談員に支払い困難の状況を正直に伝える。
・市区町村の福祉事務所に生活保護の申請可否を相談する(相談だけでも申請が強制されることはない)。
・高額介護サービス費・特定入所者介護サービス費など、まだ申請していない制度がないか介護保険担当窓口で確認する。
・生活福祉資金貸付制度(社会福祉協議会)で一時的な資金の借り入れを検討する。
相談先はどこか?
施設費用の支払いが困難になった場合の相談先は複数あります。状況に応じて適切な窓口に相談することで、退去を回避するための具体的な解決策が見つかります。
相談先が複数あって迷う場合は、まず「施設の生活相談員」と「地域包括支援センター」の2か所に連絡することを優先してください。
施設の生活相談員は入居者の生活を継続させるためのサポートを担っており、行政窓口への橋渡し役も務めます。
地域包括支援センターは介護に関するあらゆる相談を無料で受け付けており、個別の状況に応じて利用できる制度と次の行動を整理してくれます。
「どこに相談すればいいか分からない」という場合は、まず地域包括支援センターに電話するだけで、適切な相談先を案内してもらえます。

まとめ|お金がなくても認知症の家族が施設に入居できる方法はあります!
「認知症の家族をお金がない状況で施設に入れる」ことは、低コストな施設の選択・公的制度の活用・条件付き制度の組み合わせによって実現できます。月額4.4万円から入居できる特養への申し込み、特定入所者介護サービス費や高額介護サービス費の申請、そして必要に応じた生活保護の受給申請を組み合わせることで、費用負担を大幅に圧縮した入居を実現した事例が複数あります。一人で悩まず、地域包括支援センターまたはケアスル 介護のアドバイザーへの相談が、解決の出発点になります。