人材不足の深刻化と若者の介護離れに打開策はあるのか

人材不足の深刻化と若者の介護離れに打開策はあるのか

若者の介護離れによる介護職員の人員不足が深刻化している。今回は、その現状と打開策について考察する。

中村 英三 教授
長野大学 社会福祉学部 社会福祉学科
博士(社会福祉学)
社会福祉法人法延会(養護老人ホーム静山荘・児童養護施設軽井沢学園)理事、軽井沢町社会福祉協議会理事
東洋大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程修了。
社会事業、地域福祉、施設運営を専門として研究を行う。
「わかりやすい社会福祉」や、「社会福祉(高齢者福祉・児童福祉・地域福祉)」、「認知症ケアの方法と実践」などをテーマに高校生や一般向けの講義も行っている。
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訪問介護員の人材難が更に加速

現在の訪問介護の現場は、想像以上に厳しい状況にある。2023年7月、こんなニュースが飛び込んできた。「ヘルパーの有効求人倍率、過去最高15.53倍 訪問介護の人材不足が更に悪化(厚労省)」

求人倍率とは、企業からの求人数を求職者数で割ったものだ。求人倍率15.53倍とは一人のヘルパーを15、16社の介護事業所で取り合っている状況である。

そもそも介護職に応募する求職者がわずかなのだから、ハローワークに求人を出したからと言って、人材を確保できる可能性は限りなくゼロに近いのが現状である。

求職者の数が伸び悩む理由とは

介護関係職種全体で見ても求人倍率3.71倍(2023年度)の厳しい数字であり、介護に関わる多岐の職務においても人材が確保できていないことがわかる。

特に、ヘルパーとして訪問介護で働くには10科目130時間の「介護職員初任者研修」などの修了が必要であり、さらに職務の負担の肥大労働時間に対する給与が見合っていないなどの声が多く、結果として求職者の数が伸び悩む状況に陥っている。

ヘルパーの高齢化に拍車

厚労省の調査結果によると、2021年10月時点でヘルパーの平均年齢は54.4歳である。実際にはヘルパーの4人に1人が65歳以上高齢者であり、70歳以上も12.2%と1割を超えている。

単独訪問がほとんどであるヘルパーの場合、在宅には起き上がり機能の付いた離床サポートのベッドはあっても、ベッドから立ち上がるための介助機器類は装備されないケースがほとんどである。

これは、ヘルパーの平均年齢を考えれば、腰痛等によるリタイアリスクが極めて高い。介護事業所としてはヘルパーの人材不足を解消するための方策に頭を抱える。多少どころか大いに難点がある人物であっても採用せざるを得ない状況も考えられる。

制度の中で動いている介護の現場では、利用者の人数に対する従事者の必要最低人数を確保する必要があるからだ。

2024年度の介護保険制度改定で見直された処遇改善とは

国は、雇用の促進と定着を急務ととらえ、2024年度の改定で処遇改善加算をさらに見直した。介護職員処遇改善加算とは、職場環境整備や賃金改善を行うために必要な資金を国から事業所へ支給する制度である。2024年度に2.5%、2025年度に2.0%の介護現場で働く人のベースアップへつながるよう加算率を引き上げた。

施設の体制や従事者のキャリアなどを加味することで支給され、その分を従事者の給与に反映することができる。新加算による賃金改善の配分対象は「介護職員を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分すること」を原則としつつ、事業所内での柔軟な配分を認めている。

これにより、給与面はもとより職場環境等のソフト面やハード面の改善も含まれ、介護職員のやりがい・働きがいの醸成につながることが狙いである。

福祉を目指す若者を受け入れる大学の役割

人材不足は大学の社会福祉学科への志願者の減少の深刻化としてあらわれている。あまりの少なさに社会福祉士の養成をとりやめる大学も相次いでいるという。それでも、大学は福祉を目指す若者を育てるため、その環境を存続するための取組みに奔走している。

介護職離れが深刻となった現在、外国人の労働者に頼り、介護へ導入する取り組みも進んでいる。言葉を壁を乗り越えてコミュニケーションがとれる優秀な外国人を育てること自体は賛成である。

しかし、私たち自身が家族や地域を守り、未来へと受け継いでいくことが本来であると気づくべきである。大学は将来の介護事業を担っていく次の世代を輩出することが責務であり、大学で福祉教育を受けた若者には、充実して働けるための将来が用意されていることが必要だ。

教育機関や国がそれぞれの立場で急務を求められたこの社会問題は、まさに正念場を迎えている。

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