高齢者の部屋はレイアウトが決め手!部屋作りのポイントを解説

高齢者の部屋はレイアウトが決め手!部屋作りのポイントを解説

在宅の高齢者に介護が必要になった場合、住む部屋のレイアウトは生活の質を大きく左右する要素です。

高齢者にとって部屋は1日の大半を過ごす大切な場所であり、部屋が整えば、日々を安心して過ごせるため、家族にとっても介護の負担がなくなる点でメリットがあります。

しかしながら、部屋のレイアウトを変えるにあたって「家具をどうやって配置すればいいのか?」「本人が住み慣れた部屋を変えてしまって本当に大丈夫なのか?」と思う方は多いでしょう。

当記事では、部屋の安全性や快適性を左右するレイアウトのポイントや、高齢者の気持ちに寄り添ったレイアウトの大切さをお伝えします。

この記事を読むことで、高齢者にとって快適で安心な空間を一緒に整えられるようになります。ぜひ最後までご覧ください。

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部屋のレイアウトは高齢者の気持ちを尊重して行う

高齢者にとって、長年住み続けていた家は大切な思い出が詰まった場所です。自分自身で住みやすい家を作り上げてきたため、強い思い入れもあるでしょう。

したがって、家族が部屋のレイアウトを行う際には、本人の気持ちに寄り添った対応が必要になります。

気持ちに寄り添った対応とは具体的に以下の3つになります。

  • 事前によく話し合いをする
  • 不要品の整理は高齢者と一緒に行う
  • 思い出の品は居室に飾る

以下で詳しく説明します。

事前によく話し合いをする

介護する家族の側からすると、すぐに本人に介護が必要な状態ならば「早く介護がしやすい部屋に変更したい」と気持ちが焦ることもあるでしょう。

ただし、本人の意見を聞く前に部屋のレイアウト変更に踏み切ってしまうのは得策とはいえません。

なぜなら若い方と違って、環境の変化に弱い高齢者は住み慣れた室内環境が急に変わってしまうと体調を崩してしまう場合があるからです。

また、「勝手に部屋を変えられた!」と本人が怒ってしまい、家族間の関係が悪くなってしまう場合もあります。

時間に余裕があるならば、レイアウトを変える前に本人とよく話し合いましょう。家族なので距離が近く、話し合いが上手く進まない場合もあると思います。本人に寄り添う

気持ちを忘れずに、忍耐強くコミュニケーションをとりましょう。

不要品の整理は高齢者と一緒に行う

部屋のレイアウトを変更する前に必要になるのが、室内の不要品の整理です。

高齢者の中には、「いつか使うかも?」「もったいなくて捨てられない」といった思いが強く、物を捨てるのが難しくなっている方もいます。若い方にとっては不要だと思うものでも、家の中にある家財道具は、家と同様に高齢者にとって思い入れがあり、思い出がつまった品々かもしれません。

したがって、不要なものの整理は高齢者と一緒に行いましょう。

一緒に整理を行う上での注意点は以下の3つになります。

  • 作業は無理に行わない
  • 作業は高齢者のペースで行う
  • 一度に捨てすぎない

以下で詳しく説明いたします。

不要品の整理は無理に行わない

高齢者の中には、物を捨てるのに敏感になっている方もいます。不要品の整理は無理に行わず、声掛けをして、徐々に本人の気持ちが荷物の整理に向くように促しましょう

不要品を整理する際には、「これいらないよね?」「本当に使うの?」といった、意見を押し付けるような言い方をしないように気をつけましょう。

なぜなら室内に荷物が積み重なっているような状態でも、高齢者はその現状で普通に暮らしており、整理を強要されても余計なお世話に感じてしまうからです。

「無理に捨てなくても大丈夫だからね」「お母さんが、荷物で転んじゃうと危ないから今日はここだけ整理してみようか?」といった、本人を尊重する声掛けを心がけましょう。

不要品の整理は高齢者のペースで行う

不要品の整理は高齢者のペースで行いましょう。事前に整理する約束をしていても、急にやる気がなくなったり、体調の変化で動くのが億劫になったりする場合があります。そのような場合に無理を強いるのは禁物です。

高齢者は若い方よりも体力が無いので、長時間の作業で疲れてしまう場合もあるでしょう。荷物の整理は休憩をはさみつつ、高齢者の体調を見守りながら行いましょう。

不要品でも一度には捨てない

高齢者が合意の上の不要品でも、一度には捨てないように注意しましょう。一度にたくさんのものが無くなると高齢者は喪失感を感じてしまう場合もあります。

一旦は不要品だと思ってもあとから考えが変わる場合があるので、すぐには捨てずに数日間の考慮期間を作るのもいいでしょう。

また、不要品でも雑に扱われると、悲しい気持ちになるものです。丁重に扱うように注意しましょう。

思い出の品は居室に飾る

高齢者の部屋の不要品を整理すると、家族の写真、昔読んでいた愛読書、日記、仕事で使用していた資料、大切な人から貰った贈り物など「特に思い入れの強い思い出の品」が必ずといっていいほど出てくると思います。

大切な思い出の品は「思い出の品BOX」を作って、高齢者の手が届くところで保管しましょう。そのうちの何点かは、高齢者と一緒に居室の見える場所に飾りましょう。楽しかった思い出を振り返り、日常生活に楽しみを見出すきっかけになります。

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高齢者の部屋に最適な広さとは?

高齢者に必要な広さの目安として、有料老人ホームの居室の広さを見てみましょう。有料老人ホームの一室の最低床面積は13平米=約8.5畳以上と定められており、平均的な広さは17.4平米=約10.5畳です。

有料老人ホームの部屋の中にはトイレや洗面の設備がありますが、一般的に自宅の部屋にはトイレや洗面は備え付けられていませんので、もう少し狭い部屋でも快適に過ごせる可能性が高いです。

以上を踏まえると、6畳から8畳ほどの広さが高齢者にとって最適、と感じやすいといえるでしょう。

参考(厚生労働省「社会福祉住居施設の設備基準」

高齢者の部屋に最適な場所とは?

高齢になると排尿をコントロールする自律神経や、腎臓・膀胱の機能低下により、頻尿になりがちです。歩いてトイレに通える高齢者ならば、部屋の位置はできるだけトイレに近いほうがよいでしょう。

また、部屋は1階のほうが望ましいです。なぜなら、部屋を2階にすると階段の上り下りをする機会が多くなり、転倒のリスクが上がるためです。

さらに、介助者にとっては自分の部屋が高齢者の部屋の隣にあれば、高齢者の様子を知りやすいので安心ですし、介護負担の軽減にもつながるでしょう。

まとめると、高齢者の部屋に最適なのは1階でトイレが近く、介助者の部屋の隣に位置する部屋となります。ただし、部屋の場所を決める際には、高齢者の意見も取り入れることが重要です。

部屋の場所を決める前に、家でどんな生活を送りたいのか?を聞いておきましょう。併せて本人の性格や身体状況を理解しておくのもポイントです。

例えば、本人が活発な性格で、家族とできるだけ一緒に過ごしたい方ならば、本人の部屋は家族が団らんできるリビングの隣がいいですよね?

逆にプライバシーを重んじる性格で、静かにゆっくりと過ごしたい方ならば、本人の部屋はできるだけ静かなリビングから離れた場所が最適になります。

部屋の位置はよく家族で話し合い、介助者と本人がお互いに快適に過ごせる場所にしましょう。

高齢者の部屋のレイアウトにおけるポイント7つ

高齢者と介助者のお互いにとって心地いい部屋のレイアウトを実現するには、以下7つのポイントを押さえておきましょう。

  • 安全性を高めるポイント
  • ベッドに関するポイント
  • 部屋の床面に関するポイント
  • 部屋を使いやすくするポイント
  • 照明を選ぶ際のポイント
  • 部屋の色調に関するポイント
  • 日当たりや換気に関するポイント

ここからは、ポイントの詳しい解説と、高齢者にとってなぜ重要なのかを説明します。

安全性を高めるポイント

高齢者は若い方とは違い、足腰が弱っているためちょっとした段差や物につまづいて転倒する恐れがあります。特に布団やベッドから部屋の入り口までの、高齢者がよく行き来する導線上は配慮が必要です。

導線上の床には無駄な物を置かないようにし、電化製品のケーブル類なども束ねて部屋の隅に這わせるようにしましょう。

また、地震が発生した際には、タンスなどの大きな家具は倒れる場合があり非常に危険です。大きな家具はL字金具や突っ張り棒で動かないようにしっかりと固定しておきましょう。

さらに、大きな家具が部屋の入り口付近や避難口の近くにあると、倒れた際に避難の妨げになります。大きな家具は避難経路から離れた場所にレイアウトしましょう。

ベッドに関するポイント

高齢者にとって、布団からの起き上がりは負担になる場合があります。高齢者の足腰が弱ってきたならば、寝床を布団からベッドに交換しましょう。

ベッドは高齢者がベッドの端に座った際に、両足がしっかりと床につく高さが理想です。ベッドが高過ぎると足が浮いてしまい、高齢者はしっかりと踏ん張って立ち上がれません。逆に低過ぎると、腰が曲がりすぎてしまうため、体に余計な負荷がかかってしまいます。

通常のベッドからの起き上がりが難しくなってしまった高齢者の方には、介護ベッドを設置しましょう。なぜなら介護ベッドには「背上げ」や「足上げ」といった、ベッドから起き上がったり、立ち上がったりする動作をサポートする機能があるからです。

寝たきりの高齢者は部屋での生活が多くなり、1日の大半をベッドで過ごすため、介護ベッドのレイアウトには特に配慮が必要です。

具体的には、介護ベッドは大きな窓の脇など、高齢者がベッドの上から外の景色を眺めて、気分転換が図れる場所に設置するのがよいでしょう。

部屋の床面に関するポイント

高齢者の部屋には畳敷きの床面よりも、フローリングが貼られた床面のほうが向いています。その理由は下記の通りです。

  • 畳敷きの床面の和室は、入り口でスリッパを着脱する機会も多くなるため、高齢者にとっては転倒のリスクが高い。
  • フローリング貼りの床面ならば、車いすを使った際に、畳の床面のように沈みこまないため、車いすが扱いやすい。
  • 畳敷きの床面は畳を傷つけてしまうため、ベッドやタンスなどの大型の家具の設置に配慮が必要だが、フローリングは設置がしやすい。
  • 高齢者が和室で生活した場合、畳生活になり、畳からの立ち上がるのに足腰に負担をかけるが、洋室だと椅子生活になるので、立ち上がりを楽に行える。

このように畳敷きの和室よりも、フローリングが貼られた洋室のほうが高齢者にとって多くのメリットがあります。

部屋を使いやすくするポイント

古い木製のタンスは引き出し自体が重く、引いたり、押したりといった動作に力が必要になるため、高齢者にとって使いづらい場合があります。

高齢者の収納には金属のレールが付属していて、開け閉めが簡単なタンスや軽量なプラスチック製のタンスを選びましょう。

また、高齢になると関節の可動域が狭くなり、腕を真上に挙げる動作が難しくなるため、高い場所にある物が取りづらくなります。そのため、日常でよく使用するものは低い位置に収納したほうがよいでしょう。

さらに、日常でよく使用する物は高齢者の手が届く場所に置く配慮をしましょう。具体的には、サイドテーブルの活用がおすすめです。

ベッド脇にサイドテーブルを設置すれば、ベッドに寝ころんだ状態からでも、飲み物や本などを掴めます。ベッドに端座位になれば、食べ物を置いて食事もできるでしょう。

照明を選ぶ際のポイント

80歳以上の高齢になると程度の差こそあれ、100%の方が白内障を患うとされています。

白内障になると、暗い場所が見えにくいため若い方よりも明るさが必要になりますが、直接光を見た場合には非常にまぶしく感じます。

したがって、高齢者の部屋は単純に明るければ良いというわけではありません。そのため、高齢者が光を直視する状況を避けるためにも、間接照明を利用しましょう。

間接照明の光を、天井面や壁面に光を当て、やわらかい光にすれば、まぶしさを軽減できます。また、白内障になると、すぐに明暗の差には順応できません。夜間、明るい部屋から暗い廊下を通ってトイレに移動する際に、あたりがよく見えずに転倒する恐れがあります。

高齢者の部屋の入り口や、トイレまでの導線上の廊下には人感センサー機能のついた照明を設置するなどして、明暗の差を少なくしましょう。

部屋の色調に関するポイント

白内障やほかの疾患によって、高齢になると、黒とグレー、青と水色などの色の濃淡の差が識別しにくくなります。さらに、見えにくい色、見えやすい色にも傾向があり、見えにくい色はブルーやグレーなどの寒色系、見えやすい色は赤やオレンジなどの暖色系の色です。黄色は暖色系ですが例外で、見えにくい傾向があるため注意が必要です。

高齢化して色調が変化すると、色の差が識別できなくなり、転倒事故につながります。しかし、部屋全体が寒色系の色で合った場合には、高齢者に冷たい印象を与えてしまうでしょう。

対策として、下記のような工夫をしましょう。

  • 段差がある部分の床に、目印になるように赤いテープを貼る
  • 家具や調度品に茶色やベージュなどの暖色系の落ち着いた色を使用する
  • 室内の要所要所にピンクやオレンジなどの明るい暖色を用いる

明るい暖色を利用して事故を防止し、高齢者にとって視認性がよく明るい印象を与える部屋作りを心がけましょう。

日当たりや換気に関するポイント

高齢者の部屋はできるだけ窓が多く、換気がしやすい部屋にしましょう。窓が多ければ自然光を多く取り入れられるため、部屋の中が明るい雰囲気になります。高齢者が日光に当たる機会も増えるため、日向ぼっこをして健康維持にもつながるでしょう。

また、窓を全開にして空気の流れができれば、湿気の少ない快適な空間になります。窓を開けるだけでは、空気の流れが悪ければ、エアコンや扇風機を利用して換気を促しましょう。

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介護保険でリフォームの補助が受けられる

レイアウトの変更だけで高齢者にとって使いやすい部屋にならない場合は、部屋のリフォームも考慮に入れましょう。要介護1以上の認定を受けていれば、部屋のリフォームにかかった費用の内、介護保険によって最大18万円の補助が受けられます。

部屋のリフォームの一例は以下になるので、参考にしてください。

  • 足が不自由でも部屋の中を自由に動き回れるように、部屋の入り口や導線上に手すりを設置した。
  • 転倒のリスクを下げて自由に出入りができるように、入り口の段差を解消した。
  • 車いすが使いやすいように床を畳からフローリングに交換した。
  • 通風や日当たりをよくするために窓を設けた。

暖房器具に関する工事など、介護保険ではカバーできないリフォームがあるため、注意が必要です。詳しく知りたい場合には、担当のケアマネージャーに相談してみましょう。

参考(厚生労働省「介護保険における住宅改修」

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家族全員が納得できる部屋のレイアウトを実現しましょう

家族にとっては介護がしやすく、高齢者にとっては居心地の良い部屋にするには、レイアウトを行う前に、家族が高齢者の気持ちに寄り添って、辛抱強くコミュニケーションをとる必要があります。

高齢者は若い方とは違い、身体的にさまざまな問題を抱えています。ご紹介したレイアウトのポイントを押さえて、高齢者にとって安全な部屋作りを実現しましょう。

部屋のレイアウトを変えたくても、家中が物で溢れていて、どこから手を付けていいのかがわかりません。

“家におすまいの高齢者は、物によって安心を得ているのかもしれません。または、長年の生活の中で物をため込んでしまい、高齢者自身もどこから手を付けていいのか解らないのかもしれません。

いずれにせよ、高齢者が「物に関してどのように考えているのか?」を知るために、根気よく話を伺う必要があります。

荷物の整理が家族にとって手に余る場合は、片づけ専門の業者に頼る方法もありますよ。詳しくはこちらをご覧ください。”

母の足腰が弱ってしまい、なんとか自力で起き上がり杖をついて自宅の中を歩いている状況です。本人の負担を軽減する解決法はありますか?

“居室を洋室に変更、もしくは床を畳からフローリングの床にリフォームを行い、ベッドや椅子を部屋に設置すれば、負担を軽減できます。

机や椅子は、ベッドから居室の入り口までの導線上に設置するのがいいでしょう。高齢者が椅子や机につかまって、伝い歩きができるので、移動の際の補助用具としても代用できます。詳しくはこちらをご覧ください。”

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