• 在宅介護
  • 【公開日】2024-04-18
  • 【更新日】2024-04-18

在宅看護と家族支援

在宅看護と家族支援
少子高齢化が進む現代日本において、病気や障がいを持ちながらも、自分らしい暮らしを人生の最期まで送ることができるよう支援するのが「在宅看護」の役割です。今回はその在宅看護と家族介護者への支援についてお話しいたします。
藤尾 祐子 教授
順天堂大学 保健看護学部 在宅看護学
看護師/介護支援専門員
Asian Society of Human Services, 日本看護科学学会, 日本老年看護学会, 日本在宅看護学会
1986年看護師免許を取得し高度急性期病院の救命救急看護に従事。1996年より訪問看護師、介護支援専門員として介護保険サービスに従事。
2003年より介護老人保健施設の管理者を経て、2012年より順天堂大学保健看護学部 在宅看護学の教員となり現在に至る。博士(医療福祉学)。

総人口に占める65歳以上の人の割合を高齢化率といいますが、わが国の2023年度の高齢化率は29.0%と、約3人に1人が高齢者という時代になりました。読者の皆様も、社会生活を送る上で高齢社会を実感されることが多々あるのではないでしょうか。

少子高齢化の社会背景においては、病気とともに生きていかなければならない慢性疾患を発症したり、日常生活に支障をきたす障がいを負ってしまったりと、医療や介護を必要とする人びとがいます。このような人びとは、どこで、どのように暮らしていけばいいのでしょうか。ここに少子化が大きく影響しています。

少子化は、すなわち社会経済活動にかかわる人口の減少を意味します。医療や介護といった社会保障を支える人口の減少により社会保障費は抑制され、医療機関や介護施設に限界が生じてきています。

そこで打ち出された施策が「地域包括ケアシステム」です。「地域包括ケアシステム」とは、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域システム」をいいます。

学生たちに「病気や障がいをもちながら在宅で暮らすとしたら、どのような療養生活を望むか」と聞いたところ、「自分らしく暮らしたい」「できることは自分でしたい」「家族や友だちと過ごしたい」という回答が返ってきました。読者の皆様も同じ思いではないでしょうか。

この自分らしい暮らしが実現できるよう、近年、在宅看護という看護学領域が発展してきました。例えば、在宅で暮らす療養者の生活や治療を支える訪問看護師、疾病や要介護状態を予防する保健師、介護や医療、生活の相談窓口となる介護保険制度のケアマネジャー、地域包括支援センターに従事する看護師や保健師といった多くの看護職者が地域において活動しています。

さて、次に、介護を担う家族介護者について、2022(令和4)年の世帯構造では「単独世帯」が全世帯の32.9%、世帯類型では「高齢者世帯」が全世帯の31.2%と最も多く、このような状況から家族で介護を担うことが大変難しい時代となってきています。

実際に介護を担う家族の調査では、「同居の主な介護者」では「60歳以上同士」が77.1%と老老介護となっています。また介護時間は、介護保険制度の要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多く、介護を担う家族介護者の生活自体もままならない現状が推察されます。

このような中、厚生労働省は2018年に「新たな視点での家族介護者支援施策・事業の推進が急務となってきている」として、「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル~介護者本人の人生の支援~」を示しました。

私自身も2020年度より静岡県三島市の地域包括支援センター機能強化事業に参画し、「家族介護者支援を地域で考える」というメインテーマの下、家族介護者支援の課題やヤングケアラー支援、老老介護の家族介護者支援について、地域住民の方々、保健医療福祉専門職の皆さんと研修会や調査を続けてまいりました。

研修会や調査をふまえて、地域で保健医療福祉専門職が連携して家族介護者の人生を支える必要性を痛感しています。介護は、すべてを家族が担うものではなく、家族介護者にも人生があることを社会全体が認識し支援していく必要があります。

現在、介護を担っておられるご家族、これから担うかもしれないご家族の皆様に、この場を借りて、地域の身近な相談できる窓口として地域包括支援センターがあることを知っていただきたいと思います。

最後に、在宅看護には地域で療養する小児から高齢者まで、すべてのライフステージの療養者を支える役割があることも申し添えます。

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