人材不足を補うために介護の未来を選び取っていく

人材不足を補うために介護の未来を選び取っていく
今回は、少子高齢化の進行が進む日本で、これから進化を遂げる未来を選び取っていくためのお話しをいたします。
竹並 正宏 教授
九州栄養福祉大学 食物栄養学部 食物栄養学科
日本介護福祉学会・福岡県介護福祉学会・日本観光学会
1956年、福岡県生まれ。岡山大学大学院文化科学研究科博士課程単位取得。韓国大邱大学校大学院・台湾国立師範大学に留学。
知的障害者施設・身体障害者施設・老人福祉施設勤務後、高校教諭を経て、現在、九州栄養福祉大学食物栄養学部食物栄養学科教授。
専門分野:障害者福祉、介護福祉教育、アジアの社会福祉

現在の日本において、少子高齢化の進行、医療・保健・福祉における国民のライフスタイルの多様化、これらのニーズに対応する介護人材の一層の充実が求められている。

しかし、現状では少子化が進む中で、労働力人口が減少している日本の人口構造の変化により、さまざまな問題が発生すると懸念される2025年問題における介護分野の状況を鑑みてみる。内閣府が公表している資料では、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2,180万人、65~74歳の前期高齢者人口が1,497万人に達すると予測されている。

国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上となるとされている。介護現場の状況を見てみると、他の産業と比べ離職率が高く、人手不足が生じて、3Kと言われるようにきつい、汚い、給料が安いというイメージが、若者の職業志向を大きく変化させていることが考えられる。

更に厚生労働省では、2040年を展望した社会保障・働き方改革本部を設置して、検討を進めている。2040年は、団塊ジュニア世代が65歳を超え、従って現役世代が急減する新たな局面を迎える。その中の医療・福祉サービス改革で、ロボット・AI・ICT(情報通信技術)の実用化推進と掲げられている。

その背景には増大する要介護者や障害者数を踏まえ、2040年以降に働き手が減少した社会課題を勘案すると、ロボットや情報通信技術の整備・活動を通じて、医療や保健や介護の連携強化と効率化、かつ質の高い介護サービスの提供や労働環境の改善に取り組まなければならない。

その結果、必然的に介護現場の人手不足を捕捉し、介護者の負担も軽減できるとして、介護ロボット(情報を感知し判断し動作する技術を有して知能化された機械システムで、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器)への期待は高まっている。

種類としては、ぬいぐるみ型、装着型、人型などがある。ロボットの分野で最もイメージしやすいのは、一般家庭にも普及している清掃ロボットだが、近未来ではセキュリティや案内ロボットも増え、その多くがタイヤやローラーなどを使い移動するため、段差で躓くという欠点があるが、日々開発は進歩している。

将来的には行動範囲は人間と遜色ないものになると考えられ、その他にも対話を任せられるコミュニティロボットや人間が装着し動きを補助するスーツ型ロボットやにおいで尿と便を区別し感知するセンサーも開発されてきて、こうしたロボットが介護労働の負担を大幅に軽減してくれるし、直接的な介護作業についてはロボットが行い、介護職員は入居者との触れ合いや心のケアに専念する。

こうした社会では、介護は人の手で行うものという意識も変わり、介護ロボットに心の機能は必要ない。なぜなら排泄介助される時に恥ずかしくないからという意見もあり、ロボットに介護されるほうがむしろ快適と考えられるようになると予測される。

未来の社会は不確かではあるが、私たちは間違いなく年を取っていく。介護がすべての人にとって自分自身のことであるという認識を広げ、これから一層の進化を遂げる未来を選び取っていくことが重要である。

【参考・引用文献】
1)田中文佳:介護ロボット及びICT利用者の動向と介護福祉士養成の視座, 東筑紫短期大学研究紀要 第53号,220, 2022.
2)北川ナツ:介護する人・される人のきもちがわかる本,朝日新聞出版,177,2021.
3) 三津村直貴:AIのしくみ,翔泳社, 172,2022.
4)厚生労働省:第1章平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容.
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/1-01.pdf 2024.4.9アクセス
5)臼井貴紀:介護とロボットの未来を考えるロボットにできること・人にできること.
https://ai-carelab.tryt-group.co.jp/article/future-of-care-robot/ 2024.4.9アクセス
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