施設入所高齢者のための家族によるサポート

施設入所高齢者のための家族によるサポート

介護老人保健施設での入所生活を送る高齢者の日常は、多くの場合、病院生活からの移行期にあります。この時期は、家族によるサポートが高齢者の健康維持と生活の質の向上に重要な役割を果たします。ここでは、施設入所高齢者を支える家族が取り組める具体的なポイントを紹介します。

田辺 将也 助教
群馬パース大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
修士(保健学)、理学療法士
日本予防理学療研究会、日本産業理学療法研究会、日本公衆衛生理学療法研究会
群馬パース大学 保健科学部 理学療法学科を卒業後、榛名荘病院にて4年勤務、その後同法人の介護老人保健施設あけぼの苑にて、通所リハビリ・入所リハビリに従事。
2021年より現職。血管機能や身体活動に関する研究の他、産業理学療法の研究を実施。
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目標の共有が重要

施設入所後、できるだけ早期に施設職員と、高齢者が自宅での生活に戻るための条件を明確にすることが重要です。「○○ができれば自宅で過ごすことができる」と具体的な目標を共有することで、リハビリテーションや日々のケアがより目的を持って行われるようになります。

高齢者本人も自身の進捗を理解しやすくなり、同じ目標に向かって取り組む関係性を築くことができます。この過程で重要なことが2つあります。1つ目は、現実的かつ達成可能な目標を設定することです。現状の身体の状況からあまりにも乖離していた場合、モチベーションの維持が難しくなります。最終的に高い目標を目指してほしい場合でも、小さな目標設定から始め、定期的な外出や外泊などを通して進捗を理解することが可能となります。

2つ目は、目標設定を高齢者とともに行うことです。家族と施設の職員だけで目標を決めてしまうと、本人の気持ちや希望が反映されにくく、現在の状況を本人が理解できないまま月日が経過してしまうことがあります。そのため、目標や方針を決定する場に、ご本人にも同席してもらい一緒に納得のいく意思決定ができるように支援することが大切です1。これらのポイントを抑えることで家庭への復帰を見据えた準備が進みやすくなります。

家族できる様々なサポート

施設入所高齢者の健康維持には、家族の積極的な関与が重要です。以下は、家族ができる具体的なサポート方法です。

定期的な面会

高齢者とのコミュニケーションを保つことは、精神的な支えになります。慣れ親しんだ家族との会話は、高齢者の日々の励みになり、入所生活のエネルギーになります。家族からの精神的なサポートと意思決定のサポートは高齢者の生活満足度と関連しているといわれています1。面会の時間に合わせて車いすに乗って過ごすようにすることで、寝たきり予防につなげることが可能です。

車いすでの姿勢のチェック

車いすを使う方であれば、面会の際に適切な座位姿勢を保てるかを確認してみましょう。身体を垂直に保てるかが大切です。身体を左右どちらかに倒した姿勢のまま数時間過ごすことをイメージしていただくと、施設の職員からいくら起きて過ごしましょうと声をかけられても起きる気にならないのではないでしょうか?

自分で姿勢を治せない方の場合、同じ部位に体重が長時間かかり続けることで皮膚に褥瘡が生じることもあります2。ご家族は、面会に来て会話をする際に途中で姿勢がだんだんと崩れてしまっていないか気にかけてみてはいかがでしょうか。

リハビリの専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)がいる施設では、車いすの調整や、クッションの調整により安全で安楽な姿勢をつくることができると思います。面会の際に、姿勢が崩れてしまうことが頻繁に発生する場合は、担当の療法士に相談していただくのが良いと思います。

身体活動を促す工夫

施設では病院に比べてリハビリテーションの時間が限られているため、日常生活の中で身体活動を増やす工夫が求められます。例えば、日めくりカレンダーを作成し日付を更新する役割や、献立をホワイトボードへの転記してもらい他の利用者が読みやすくする役割、他にも花のお世話など、日常の小さな役割を通じて、高齢者が積極的に動く機会を作り出します。役割があることで自己効力感を高めるともいわれています3

病気になる以前からご本人が好きな活動や、ご本人の価値観をよく知っているのは、ご家族です。施設の職員にこれらの情報をお伝えいただくことで、施設内での新たな役割の創出につながることもあります。

運動の習慣化

車いすを使う方は、座位で過ごす時間が長いため下肢筋力の低下に注意が必要です。下肢の筋力トレーニングにより改善が可能4ですが、これはリハビリの時間に実施するのだけでは不十分だと考えられます。ご本人が日課のように、継続できるようになることが重要です。ご家族は、面会の際にどれくらい運動を行えたのかをぜひ聞いていただきたいと思います。

担当の療法士から、自分で運動ができたかを聞かれるだけでは、なかなか継続に至らない方も多くおられます。しかし、ご家族から聞かれてその実施状況について褒められることで、高齢者が自ら運動するモチベーションにつながり運動習慣を身につけることにつながります。

まとめ

家族の支援は、施設に入所する高齢者の健康と生活の質を向上させる上で非常に重要です。これは、身体的な健康だけでなく精神的な満足感を促進し、自信自立心を養うことにも繋がります。家族、職員、高齢者自身が協力して取り組むことで、健康で活動的な施設生活が実現可能になります。

【参考・引用文献】
1)Wang, L., Yang, L., Di, X., & Dai, X. (2020). Family support, multidimensional health, and living satisfaction among the elderly: A case from Shaanxi Province, China. International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(22), 8434. https://doi.org/10.3390/ijerph17228434
2)Arshad, J., Ashraf, M. A., Asim, H. M., Rasool, N., Jaffery, M. H., & Bhatti, S. I. (2023). Multi-mode electric wheelchair with health monitoring and posture detection using machine learning techniques. Electronics, 12(5), 1132. https://doi.org/10.3390/electronics12051132
3)Olsen, C. F., Telenius, E. W., Engedal, K., & Others. (2015). Increased self-efficacy: The experience of high-intensity exercise of nursing home residents with dementia – A qualitative study. BMC Health Services Research, 15, 379. https://doi.org/10.1186/s12913-015-1041-7
4)Lai, X., Bo, L., Zhu, H., & Others. (2021). Effects of lower limb resistance exercise on muscle strength, physical fitness, and metabolism in pre-frail elderly patients: A randomized controlled trial. BMC Geriatrics, 21, 447. https://doi.org/10.1186/s12877-021-02386-5
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