内閣府の調査によると、在宅介護を希望する人は男女とも7割を超えています。
住み慣れた家で家族と過ごせる環境は心を落ち着かせ情緒の安定につながります。
また、介護者側も大切な家族を自分で世話することができれば安心でしょう。
在宅介護は介護保険サービスや周囲の助けを上手に活用しながら続けることも可能です。ただし、自宅で介護を行う家族には大きな負担となることもしばしばあります。
生活に変化があったり体調を崩したりと予期せず限界がきてしまうことも。
では、在宅介護の限界とは具体的にどのような状況なのでしょうか。
この記事では、どのような状況に陥ったら老人ホームへの入居を検討するべきか、限界を判断するポイントについて、在宅介護エキスパート協会の渋澤和世さんに「在宅介護の限界」や「限界を判断するポイント」についてご紹介いただきます。
在宅介護の限界はどこ?
在宅介護の限界としては、以下の3つのようなタイミングが挙げられます。
- 本人の行動に限界がきた
- 家庭環境に限界がきた
- 医療行為に限界がきた
それぞれについて、詳しく解説して行きます。
本人の行動に限界がきた
本人が自宅での生活を希望する場合であっても、様々な問題により継続は難しいかも、と感じるケースがあります。
一番多い事例は、認知症の進行による問題行動です。
身体状態が悪化し介護度も高く寝たきりに近い方よりも、身体は比較的元気で自由に動くことのできる方に多くみられるのが特徴です。
一つ目は徘徊。
通いなれた道であれば帰れる確率は高くても、子の家に同居など居住地が異なると横道に入った途端に戻れなくなることがあります。
警察から保護の連絡がきた時点で在宅継続は要注意です。私の知人で自宅が川崎なのに親が池袋で見つかったという例があります。
本人はどうしてそこにいるのか説明ができません。まだ首都圏で発見されたから良かったものの大阪まで行っても不思議ではありません。
その家庭では在宅限界と判断し、その後、特別養護老人ホームに入所されています。
二つ目はトイレ問題。
尿意を感じてもトイレに間に合わず、結果的に漏らしてしまうケースや弄便(ろうべん)といって、下着やおむつの中に排泄した便を素手で触り、便を取り出して衣類や寝具、壁などになすりつける行為がでることも。
三つ目は昼夜逆転。
健康な高齢者でも年齢とともに睡眠は浅くなり、途中で何度か目覚めトイレ回数も増えますが、認知症が進むとそのまま部屋の中を夜間徘徊することがあります。
電気をつけ大きな音をたてる、寝ている家族に話しかける・触るなどの行動が現れます。
家族側も睡眠不足が続くと注意力の低下や抑うつなどを引き起こし、ストレスを助長させる恐れがあるので注意が必要です。
介護に生活のほとんどの時間を費やす、仕事に支障が出るなど生活が立ち行かなくなってしまったら、老人ホームへの入居を考えるタイミングともいえます。
家庭環境に限界がきた
ハード面では、家の構造自体が介護に適用できなくなるケースがあります。
高齢になると身体機能が低下し、転倒リスクが高まります。
手すりがついていても階段昇降が難しくなる場合が多くあります。玄関の段差や広さも車いすに対応できそうですか?アパートやマンションの住まいが2階以上である場合も注意してください。
大腿骨骨折などで入院すると、退院後、住み続けることができないリスクがあります。
エレベータがあれば問題ありませんが、ない場合、通所デイサービスなどの送迎に時間や人数を要してしまい症状によっては契約を断られる場合もあります。
ソフト面では、介護される親などが中心の生活となり、他の家族に我慢を強いていることも考えられます。
夫、妻、子世帯の場合、介護される方は夫妻どちらかの親であるため、義理という関係での同居が発生します。
生活にはその家庭それぞれのルールや価値観があり許容範囲も異なります。料理の味付けや洗濯の畳み方、高齢になると加齢臭や失禁などによる介護独特の臭いが家に充満することも。
また、孫の部屋に勝手に入ってモノを持ち出すなどトラブルの種は沢山あるのです。
家族の関係が悪くなってきた、という場合は、在宅介護の限界に達しているサインです。
「そろそろ在宅介護を続けるのが限界」「老人ホームへの入居を検討したいけど、探し方がわからない」というお悩みをお持ちではありませんか?
ケアスル介護では、全国50,000施設の中から、ご希望の条件や必要な医療ケア・お体の状況にあったピッタリな施設をご提案します。
お困りのことがある方は、まずはこちらのフォームから現在のご状況を教えてください。
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医療行為に限界がきた
定期的な通院はできていますか?きちんと薬が飲めていますか?通院忘れや薬の飲み忘れ、反対に一度に沢山飲んでしまうなど病状によっては命に関わります。
医療面で必要なことが自分で管理できているかも大切な要素です。家族が毎日管理できれば良いのですが難しいときもあると思います。
訪問介護を毎日、服薬の時間にお願いするというのも合理的ではありません。
定期的な医療に関する管理が必要な場合は、時として老人ホームの方が安心です。
また、誤嚥性肺炎などをきっかけに、中心静脈栄養(IVH)や胃ろうなどの栄養管理、痰吸引などが必要になることもあります。
在宅医療(訪問診療や往診)を利用しつつ在宅生活を続けることも可能ですが、日常ケアの家族負担が大きくなり働いている場合は介護離職を検討しなければならない、という状況にもなりかねません。
このような場合は、老人ホームや療養型病院(医療療養病床)を検討するタイミングでもあります。
医療ケアが必要な方や、24時間体制の介護が必要な方には介護付き有料老人ホームがおすすめです。
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在宅介護の限界に関するまとめ
在宅介護から老人ホームへの入居に切り替えるタイミングは要介護3というのも一つの目安です。
要介護3は、立ち上がりや歩行、食事、排せつ、入浴の際に全面的な介助が必要な状態で、公的施設である特別養護老人ホームへの入所基準を満たします。
費用が厳しく有料老人ホームに入ることを躊躇された方も比較的安価で入れるため検討しやすくなります。
ただし、介護度はあくまで目安で実際の限界は家庭や個人によって異なります。
介護する側の限界においてはイライラしてきつく当たってしまう、手を挙げてしまうようなら老人ホームも検討しましょう。
介護が長期間になればなるほど、家族の誰かに負担が偏ってしまい、限界を迎えてしまう可能性があることも気に留めておいてください。施設=介護放棄ではありません。その時々の状況に合わせた最良の介護方法を選択できることがベストです。