口から食べるのが難しくなり、主治医から胃ろう造設を勧められた方。
「年金生活だけど、継続して費用を支払えるのだろうか…」
「胃ろうの費用が大きくなりすぎて、生活に回す年金がなくなってしまうのではないか…」
年金生活で費用面に不安を感じている方は多いでしょう。
この記事では、胃ろう増設後の費用を在宅生活と施設生活に分けて紹介します。胃ろう造設の尊厳についてや介護施設の胃ろう受け入れ状況についても解説します。ぜひ最後までご覧ください。
胃ろうの費用は年金で払える?
始めに年金受給額について解説します。
厚生労働省が公表しているデータをもとに令和4年度の67歳以下の新規裁定者の年金額の例を解説します。国民年金額は、老齢基礎年金として月額(満額の場合)で64,816円。厚生年金は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準額で219,593円です。この厚生年金の例は、平均的な収入(平均標準報酬額43.9万円)で40年間就業した場合の夫婦2人分の給付水準です。
胃ろう造設にかかる費用は、 胃瘻造設術 60,700円と 胃瘻造設時嚥下機能評価加25,000円の合計85,700円かかります。そのほかも、胃ろう造設後には定期的な通院やチューブ類の交換などの費用が必要です。
胃ろうを造設するためにかかる費用は100,000円程度であり、入院にかかった費用と合わせて高額療養費の対象になるため、年金でも支払い可能であるといえます。
※参照:厚生労働省「胃瘻等について①」

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胃ろうにかかる費用
胃ろうにかかる費用について以下の2つのケースに分けて解説します。
- 在宅でかかる費用
- 施設でかかる費用
居住する場所によって費用が違います。それぞれについて具体的にご紹介します。
在宅でかかる費用
在宅生活での胃ろうにかかる費用についての解説です。
個々によって費用面で幅があります。その理由は、胃ろう患者の方の病気の状況やご家族のケア能力に応じて必要なサービスが違う点があるからです。大きな支出項目は、以下の通りです。
- 医療費
- 介護費(訪問看護費用など)
- 栄養剤費
費用は一律ではなく、収入に応じて負担割合が違います。例として、要介護4で2週間に1回の訪問診療、2週間に1回の訪問看護利用では栄養剤費含めて8万円弱です。所得区分が低いと、さらに費用負担は減ります。この額であれば、厚生年金受給世帯での支払いは可能です。
施設でかかる費用
高齢者の入居施設の代表例として、特養(特別養護老人ホーム)に入居する際にかかる費用について解説します。
胃ろうケアは、医療行為に当たるため、従来は医師か看護師しか対応できませんでした。
しかし、平成24年に制度が改正され、研修を受けた介護職員などでも経管栄養対応が可能になりました。そのため、胃ろう患者の方でも施設入居の道が広まっています。
施設でも、在宅同様に医療機関にかかってチューブ交換が必要です。交換には材料費もかかります。材料費は造設の型によりますが、1回あたり7,000円から2万円強かかり、交換手技費用は2,000円です。
訪問看護で対応したものは、所得に応じて費用の1割から3割の支払いが必要です。栄養剤は食費として支払います。ひと月に3万円前後の費用がかかり、医療として処方されます。
これらの金額を合計しても、年金受給額内での利用は可能です。
胃ろうの費用を年金で支払えない時の対処法
支払える額でも急な出費で生活費がかさむ場合もあります。手術によって一時的に出費が増えます。年金で支払えない場合に利用できる制度は以下の3つです。
- 高額療養費制度
- 民間の医療保険
- 生活保護制度
それぞれについて具体的にご紹介します。
高額療養費制度
支払いに対してメリットが大きいのは高額療養費制度です。
高額療養費制度は、収入や所得に応じて負担の限度額が設定されています。負担の上限額を超えた金額は、いったん払ったとしても後から払い戻されます。
また継続的な利用が見込まれる場合には、「健康保険限度額適用認定証」を取得することで、最終的な負担額だけを支払えば済むようになります。高額な立て替えも必要ありません。最近では、適用認定証を取得して、最終的な自己負担額だけを支払うパターンが一般的になっています。
民間の医療保険
月々のランニングコストはかかりますが、急な高額出費に備えて民間の医療保険に加入しておくのも有効です。
入院や手術にかかる費用は、手術代や差額ベッド代、食事代、個室代など多岐にわたります。医師から胃ろう造設の手術を勧められたら、民間保険に加入している方は適用条件に合うか確認しましょう。
手術給付金の支払い条件が「健康保険の対象になる手術」としている医療保険に加入している場合、胃ろうの造設手術を受けると手術給付金が受け取れます。また胃ろうを閉じる手術を受けたときも、手術給付金が受け取れます。
会社所定の手術が手術給付金の支払事由になっている医療保険の場合は、約款を確認するか、保険会社に連絡をして確認をしましょう。
生活保護制度
生活保護制度は、生活に困窮して最低限度の生活が困難な場合に利用できます。
生活保護制度が適用になると、公的な健康保険制度からは脱退し、自治体が医療費の全額を支給してくれます。原則として、受診前に医療券を受け取ってから病院に行く必要がありますが、医療券を提出することで医療費の支払いは免除されます。
生活保護は困窮時のセーフティーネットですが、相続などで資産を受け取った場合には、生活保護が停止され、それまでに受け取っていた医療費の返還が必要になるケースもあります。親からの相続が予定されている方は注意してください。
生活保護受給者は、医療費は医療扶助、介護保険料は介護扶助として扶助されるため、全財産が10万円を下回るなど、保険料や医療費の支払いが困難となった際には生活保護の担当課に相談しましょう。
胃ろうの定義とは
胃ろうとは、口から食べ物を食べられなくなったり、困難になったりする場合に栄養補給法とし用いらてれる経管栄養法です。
手術により、胃に穴をあけてカテーテルを通して栄養剤を注入します。胃ろうは、長期的に経管栄養が必要な方への第一選択肢として使用される治療方法です。
胃ろうを造設すると、一生、口から食事が採れないと思う方がいるかもしれませんが、胃ろうを造設した後にリハビリを行うことで、口腔摂取が可能になるケースもあります。また胃ろうの状態にしていても、柔らかいものを少量であれば、口から接種できる方もいます。
胃ろうが必要になる疾患は?
胃ろうが必要になる疾患は、嚥下機能の障害や繰り返す誤嚥性肺炎です。嚥下や摂食障害や意欲の低下として胃ろうが必要になる疾患の代表例は以下の通りです。
- 脳血管障害
- 認知症
- 神経筋疾患食道狭窄
- 食道狭窄
- 頭部顔面外傷
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
低栄養状態が続くと、健康面で生命のリスクが高まるため、注意しなければなりません。
在宅生活で胃ろうとともに暮らす注意点
胃ろうは医療的ケアであるため、ハードルが高く感じてしまう方も多いでしょう。しかし、入院中に指導を受けられ、退院後もサポートを受けられます。以下の注意点を守れば安心して管理できます。
- 嘔吐を防ぐ注入時の姿勢と注入速度
- 乾燥予防のための口腔ケア
- 感染症予防のための清潔ケア
- 皮膚トラブル発生時の対処法
それぞれの注意点について具体的にご紹介します。
①嘔吐を防ぐ注入時の姿勢と注入速度
胃ろうは口から食べる食事と違い、直接胃に栄養剤を注入します。注入時の姿勢は大切です。注入時に上体を30度以上起こさないと栄養剤が逆流して嘔吐や誤嚥します。
注入の速度は、医師から決められた速度を守りましょう。速度が速いと下痢になったり脈が速くなってしまいます。
注入開始時に速度を確認しても、認知症の胃ろう患者の方が早めてしまう場合もあるため注入時には注意しましょう。
②乾燥予防のための口腔ケア
口から食べ物を食べなくなると、唾液の分泌量が減ります。唾液の分泌量が減ると、口の中が乾燥して衛生環境が保たれにくくなってしまいます。
また、口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防や食事摂取のリハビリの準備としても有効です。胃ろう造設後の方の多くは、嚥下障害をともなっています。
口腔ケア時も、唾液やうがい液で誤嚥しないように姿勢の保持は大切です。可能であれば座った状態で、誤嚥性肺炎に注意しながら口腔ケアをする必要があります。
③感染症予防のための清潔ケア
胃ろうは、胃に直接穴をあけるため腹部の清潔保持が大切です。注入時の栄養剤の漏れによるろう孔の汚れやチューブが動いて肉芽等を形成する可能性があります。
日々の様子観察は必要です。スキンケア時に、異変があれば訪問看護師か主治医へ相談しましょう。
器具は使い捨てではなく繰り返し使用するので、洗浄して清潔を保ちましょう。大前提として、胃ろうケア前の手洗いは必要です。
④皮膚トラブル発生時の対処法
在宅生活では、施設や病院と違いご本人やご家族で胃ろうの管理をします。注意点を守れば、日々の管理は難しいものではありません。
チューブによる皮膚損傷を起こす場合や胃ろうからの排液が出て、皮膚がただれる場合もあります。必要時、かかりつけ医の指示をもとに対応しなければなりません。
突発的なトラブルが起きてしまった際には、何をどうするべきか分からなくなってパニックになる場合もあるかもしれません。主治医や利用している訪問看護ステーションに対応可能であるのか事前に調べておきましょう。
カテーテルが抜けてしまった時も、医師や看護師の指示のもと対処します。緊急時には駆けつけてくれるところもあります。
延命か尊厳か悩む
胃ろうは、人工的に栄養剤を注入するため延命治療とも呼ばれます。家族には、できるだけ長く生きていて欲しいと願うのは当たり前です。
しかし、ご本人の意思も含まれた決断なのかは、迷う場合もあります。特に認知症で判断能力の低下やコミュニケーションを取りにくい場合は、判断が難しいところです。
判断能力のある間にご自身の意思を示しておく方法があります。「尊厳死宣言書」を公正証書として残しておく方法です。法律のプロが作成するため、意思確認として有効です。
日本では尊厳死や安楽死の法整備がなされていないため、必ず実現するとは限りません。延命治療に関する自分の考え方や意思については、日頃家族や医師と共有しておきたいものです。
低栄養時は褥瘡発生、認知症発症のリスクを高める
嚥下機能が低下すると、食事から必要な栄養を得られなくなり低栄養になるリスクが高まります。食べたり飲んだりした際にむせ込みが激しくなると、食事自体への積極性が阻害されます。低栄養になると以下のリスクが高まります。
- 免疫低下
- 体重減少
- 皮膚状態の悪化による褥瘡の発生
- 認知症発症
低栄養状態が続くと、身体機能低下だけではなく精神面にもつながります。精神面が下降するとうつ状態やADLの低下にもつながる可能性が懸念されています。
リハビリで経口摂取に戻る場合もある
胃ろうを造設したら、一生口から食べたり飲んだりできなくなるのではないかと先入観が先立ってしまいそうです。
しかし、リハビリにより胃ろう状態から経口摂取に戻った方もいます。
口からものを食べる喜びをあきらめずに、希望を持ちながら活力のある生活を送るためにも、経口摂取へ向けて日々過ごしていきたいものです。
在宅生活が難しくなったら施設入所を考える
できるだけ患者の方の希望を叶えるためにも、在宅で過ごさせたいと思う方は多いでしょう。
一方で、家族の介護負担が大きく、介護者の心身がもたなくなってしまっては生活ができなくなってしまいます。
訪問診療や訪問看護の事業所数が増え、24時間対応型の事業所も整備されつつある状況ではありますが、多くの場面で家族による介護を必要とします。訪問介護や短期間のショートステイを利用すると介護負担を軽減できるでしょう。
しかし、家族だけの介護では対応できない場合もあります。在宅での介護が難しくなった場合は、医療や介護体制が整った施設入所を検討してみましょう。ケアマネジャーや市区町村に相談すると医療職・介護職からなるケアチームで施設への入所などを検討してもらえます。
胃ろうで利用できる介護施設
高齢者の入所施設として代表的な特養(特別養護老人ホーム)と老健(介護老人保健施設)は受け入れは可能です。胃ろう手術前に、近隣の受け入れ可能施設の情報を頭に入れて準備しておきましょう。
胃ろう管理は医療行為です。従来は、医師や看護師しか本来対応できませんでした。
しかし、ニーズ拡大を鑑みて厚生労働省通知により医療的ケアと解釈し、研修を受けた介護職員などにも胃ろう管理が可能となりました。胃ろう管理対応可能スタッフの拡大により、胃ろうの方の施設入所の間口が広がっています。
現状は介護人材難であり、すべての介護施設で受け入れ可能とはなっていません。看護師や研修を受けた介護士が居ても、人員体制が整っていないと断られてしまう場合もあります。
年金生活者でも利用料を支払える?
施設入所で胃ろうにかかる費用は、医療費や介護保険負担分、栄養剤費などです。
医療費は、高額療養費制度を利用して出費を抑えられます。介護費負担分は、収入や所得に応じた負担割合が適用されます。自身が何割の負担に該当するのか事前に調べておきましょう。また所得と資産の少ない方は、施設での食事代と居住費が軽減される補足給付も受けられます。
栄養剤は、医療から処方される場合と、ほかで購入し食費扱いになる場合があるので事前に入居施設に確認が必要です。処方か食費扱いかによって使用する制度が違います。
また「予算内で納得のいく施設を探したい」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
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急な変化に備えて日頃から話し合いをしよう
老化や病気により嚥下機能に障害が起こり、胃ろう造設が必要になる場合もありますが、多くは徐々に嚥下機能が低下して胃ろう造設に至ります。
胃ろうを勧められてから、急に意思確認をしても心の準備が間に合わない状況かもしれません。嚥下機能低下が見られたら、あらかじめ話をしながら意思確認をしておきましょう。
胃ろうのメリット・デメリットについても主治医に確認したうえでの検討が必要です。胃ろうは先の命にかかわるデリケートな問題でもありますし、本人の尊厳の問題にもかかわるので、時間をかけてゆっくりと患者の方が答えを出すのを待つ気持ちも大切です。
ご本人の気持ちだけではなく、家族の介護体制を把握したり、地域の医療連携体制も調べておかなければなりません。
年金でも胃ろう費用は大丈夫!抱え込まないで生活しよう
年金の額と胃ろうにかかる費用や、費用負担軽減の制度について解説しました。
在宅で胃ろうの方を受け入れる際の注意点も紹介しましたが、費用や胃ろう管理など悩みや不安は尽きないかもしれません。しかし、いずれの問題も、知識があれば対応できます。
年金生活でも胃ろうにかかる費用をは支払うことはでき、在宅での介護も不可能ではありません。
在宅介護を続けていくと、気が付いたら介護者がストレスを抱えてきつい状態になってしまう場合もあるでしょう。その際にはケアマネジャーを中心としたケアチームに頼り、サポートの利用を検討しましょう。
医師の指示に沿って行えば可能です。介護する親族がいない場合は、胃ろうに対応してくれる入所施設を検討したほうが安心できます。詳しくはこちらをご覧ください。
介護保険や健康保険には、収入に応じて負担を軽減してもらえる制度が設けられているため、胃ろうの費用を負担するのは不可能ではありません。詳しくはこちらをご覧ください。