特定入所者介護サービス費とは?対象・要件・申請方法をわかりやすく解説!

特定入所者介護サービス費とは?対象・要件・申請方法をわかりやすく解説!

介護施設の費用負担軽減に役立てられる「特定入所者介護サービス費」。経済的な不安があり施設入所を躊躇している方の中には、気になっている方も多いかもしれません。しかし「どんな制度なのかよくわからない」「気になっている施設は、制度の対象に入っているのかな?」など、疑問を抱えている方もいるでしょう。

そこで今回は、特定入所者介護サービス費について概要から対象となる施設までわかりやすく解説します。手続きに関しても併せて紹介するので、介護施設の利用費用軽減をしたい方はぜひ参考にしてください。

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在宅介護エキスパート協会 代表
所有資格:AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士,社会福祉士,宅地建物取引士
専門分野:在宅介護,老後資金,介護施設全般
職業: 社会福祉士,宅地建物取引士,ファイナンシャルプランナー

NEC 関連会社(現職)でフルタイム勤務の中、10 年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。両親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど福祉に直接的・間接的に関係する資格を取得。その経験や知識を多くの方に役立てていただけるよう「在宅介護エキスパート協会」を設立、代表を務める。詳しくはこちら

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特定入所者介護サービス費とは

特定入所者介護サービス費は介護施設等に入所する方の所得や資産等が一定の基準以下だった場合に、食費や居住費を軽減してもらえる制度です。

介護施設に入所して介護を受ける場合、介護サービス費を1~3割負担する必要があります。それに加え、食費や居住費の負担も発生します。そのため、食費や居住費を合わせると年金や預金の取り崩しでは追い付かないのではと不安になる方も少なくないでしょう。

特定入所者介護サービス費では、食費と居住費の負担を軽減できるよう所得に応じた自己負担限度額が設定されています。この限度額を超える金額に関しては支払わなくてよい仕組みになっています。そのため、特定入所者介護サービス費を利用すれば、経済的な不安を抱える方でも安心して施設での生活を送れるようになるでしょう。

ただし少しでも負担を減らしたいがために、所得の申告などを偽って不正に受給した場合、それまでに支給された額の納付に加え最大2倍の加算金の納付を求められる可能性があります。そのため、費用負担軽減のために嘘の申告はしないようにしてください。

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特定入所者介護サービス費の対象施設

特定入所者介護サービス費は、すべての施設で利用できるわけではありません。支給対象となっているのは、以下7つの施設です。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は支給対象外です。また、通所サービスである通所介護や通所リハビリ、訪問サービスである訪問介護等でも支給は受けられないので注意しましょう。ここで、上記に挙げた施設がどのようなものかを順に解説していきます。

介護老人福祉施設(特養)

介護老人福祉施設は要介護3以上の高齢者を対象とした施設で、特別養護老人ホーム(特養)とも呼ばれています。身体介護から生活支援・機能訓練など、幅広いサービスを24時間受けられるため介護度の重い方でも安心して暮らせる施設です。

近年では、従来型の個室(旧型)に対し、ユニット型(新型)と呼ばれる居室タイプが増え、さらに手厚いサービスが受けられるようになりました。そのうえ比較的安価で利用でき、終身利用も可能であるため終の棲家として注目を集めています。

しかしその一方で入所希望者が多く緊急度の高い方の優先的な受け入れを行っているため、実際に入所できるまでに数カ月~数年待ちとなっている方も珍しくありません。そのため、入所を希望する方はできる限り早い段階で入所の申し込みをするとよいです。

また、要介護1~2の方は自治体からの特別な許可が無ければ入所できない点に注意が必要です。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は介護が必要な高齢者の在宅復帰を支援するための施設で、対象者は主に退院直後の要介護度1以上の方となっています。在宅での生活に向け、機能訓練に重きを置いたサービス提供が特徴的な施設です。

在宅復帰するまでの中間施設としての役割を担っているため、入所期間は基本的に3~6ヵ月程度と短くなっています。原則終身利用はできないので、終の棲家になる施設を探している方には不向きといえるでしょう。入所金などの初期費用は不要なので、特養同様に利用料金は安価となっています。そのため、在宅復帰もしくは別の施設へ入所するまでの一時的な利用を検討している方でできる限り費用を抑えたい方には最適といえます。

介護療養型医療施設

身体介護に加えて医師および看護師による医学的管理、理学療法士等による機能訓練を提供している施設です。対象者は、医学的管理が必要な要介護1以上の方となっています。手厚い医療・介護ケアとリハビリを受けられるのは魅力的ですが、レクリエーションやイベントなどは充実していない施設が多いとされています。そのため、入所後もできる限りイベントやレクリエーション活動などを通して楽しい毎日を送りたいと考えている方には不向きといえるでしょう。

また、現在は入所可能となっていますが、介護療養型医療施設は将来的に廃止される予定となっています。今後は介護医療院や介護療養型老人保健施設などに転換する方針となっているので、入所後にほかの施設への転居を考えなければならない点に注意が必要です。

介護医療院

介護医療院は、介護療養型医療施設と同様に医療的なケアが充実しているのが特徴的な施設です。将来的に廃止予定となっている介護療養型医療施設の後継として2018年4月に創設されました。

対象者は、医学的管理が必要な要介護1以上の方です。医師の配置については介護療養型医療施設に相当するⅠ型で入所者48人につき1人、老健に相当するⅡ型には入所者100人につき1人の配置が義務付けられています。医師、看護師だけでなく、薬剤師や栄養士の配置もあります。

看取りやターミナルケアの提供も行われており終身利用も可能であるため、終の棲家として利用できる施設を探している方に最適といえるでしょう。

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

定員29名以下の特別養護老人ホームで、地域密着型施設サービス計画をもとにサービスの提供が行われています。サービス内容は身体介護・生活支援・機能訓練など、特養とほぼ同じです。

利用できるのは、原則要介護3以上かつ施設と同じ市区町村に在住の方となっています。しかし、要介護1~2の方でも入所を認めてもらえるケースもあるので、入所を検討している方は各市区町村窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。

特定入所者介護サービス費の適用要件

特定入所者介護サービス費の適用要件には、対象施設への入所以外にも収入や資産などの条件があります。なお、適用要件は度々見直しが行われています。これまで特定入所者介護サービス費の利用ができていた方も、要件の変更により利用できなくなる可能性がある点に注意が必要です。

2022年12月現在の適用要件は、以下の通りです。

  • 本人が介護認定を受けている
  • 本人とその同一世帯の人全員が市町村民税非課税者
  • 本人の配偶者(世帯別も含む)が市町村民税非課税者
  • 本人の預貯金等合計金額が単身で1,000万円以下、配偶者がいる場合2,000万円以下

所得によって負担上限額が次の4段階に分けられています。。

4つの利用者負担段階に分かれる

具体的には4つの利用者負担段階に分かれており、それぞれの所得状況と資産要件を満たす場合に対象となります。

負担段階 所得状況 資産要件
第1段階 生活保護等を受給している方
世帯全員が住民税非課税の老齢福祉年金受給者
単身 1,000万円以下

夫婦 2,000万円以下

第2段階 世帯全員が住民税非課税で、年金収入を含む所得が80万円以下の方 単身   650万円以下

夫婦 1,650万円以下

第3段階(1) 世帯全員が住民税非課税で、年金収入を含む所得が80万円超120万円以下の方 単身  550万円以下

夫婦 1,550万円以下

第3段階(2) 世帯全員が住民税非課税で、年金収入を含む所得が120万円超の方 単身 500万円以下

夫婦 1,500万円以下

参照元:特定入所者介護(介護予防)サービス費(補足給付)-福岡県庁

所得と資産要件のどちらも満たしている方が対象です。どちらか一方のみしか該当しない場合には支給対象外となるので、自身の家庭が該当するかどうかよく確認してください。

資産の種類は

適用要件の資産に含まれるものには、以下の5つが挙げられます。

  • 預貯金(普通・定期等)
  • 有価証券(株式・国債・地方債・社債等)
  • 金銀(積立購入を含む・購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属)
  • 投資信託
  • 現金(タンス預金)

生命保険、自動車や腕時計、宝石など時価評価額の把握が困難な貴金属、絵画、骨とう品等は対象外なので覚えておきましょう。

特例減額措置の対象になる可能性もある

ここまで紹介した対象要件を満たさない方でも、食費や住居費の負担が重いと特別に判断される場合は「特例減額措置」の対象となるケースがあります。

例えば高齢者夫婦世帯などで片方が介護保険施設に入所し、その食費や居住費を負担するために入所しなかった方の生活が困難になるケースなどの場合が挙げられます。この特例については自治体への申請が必要で、条件も細かく定められているため該当するかどうか確認したい方は管轄の自治体に問い合わせてみるとよいでしょうす。

特定入所者介護サービス費で利用者が支払う負担限度額

利用者が支払う負担限度額は、利用者負担段階や施設の種類により金額が異なります。ここでは、特養と老健を利用した場合の負担限度額を紹介します。

特養等の場合

特養を利用した場合に利用者が支払う負担限度額は、以下の通りです。※( )はショートステイの場合

ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 従来型個室 多床室 食費
基準費用額 2,006円 1,668円 1,171円 855円 1,445円
第1段階 820円 490円 320円 0円 300円
第2段階 820円 490円 420円 370円 390円(600円)
第3段階(1) 1,310円 1,310円 820円 370円 650円(1,000円)
第3段階(2) 1,310円 1,310円 820円 370円 1,360円(1,300円)

参照元:サービスにかかる利用料-厚生労働省

基準費用額とは、介護保険施設を利用する際の食費と居住費の基準となる金額のこと。基準費用額と負担限度額の差額が補足給付されるため、利用者は支払う必要がありません。個室や多床室など住環境の違いにより、自己負担額が異なるので注意してください。

老健の場合

老健の場合、利用者が支払う負担限度額は以下の通りです。※( )はショートステイの場合

ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 従来型個室 多床室 食費
基準費用額 2,006円 1,668円 1,668円 377円 1,445円
第1段階 820円 490円 490円 0円 300円
第2段階 820円 490円 490円 370円 390円

(600円)

第3段階(1) 1,310円 1,310円 1,310円 370円 650円

(1,000円)

第3段階(2) 1,310円 1,310円 1,310円 370円 1,360円

(1,300円)

参照元:サービスにかかる利用料-厚生労働省

特養の場合と同様、個室や多床室など部屋タイプの違いにより、自己負担額が異なる点に注意しましょう。

実際の軽減効果

ここで、実際に特定入所介護サービス費を利用した場合、どの程度の軽減効果を得られるのかみていきましょう。以下は、1ヶ月(30日)あたりの軽減額をまとめたものです。

ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 従来型個室(特養等) 従来型個室(老健等) 多床室(特養等) 多床室(老健等) 食費
第1段階 35,580円 35,340円 25,530円 35,340円 25,650円 11,310円 34,350円

(34,350円)

第2段階 35,580円 35,340円 22,530円 35,340円 14,550円 210円 31,650円

(25,350円)

第3段階(1) 20,880円 10,740円 10,530円 10,740円 14,550円 210円 23,850円

(13,350円)

第3段階(2) 20,880円 10,740円 10,530円 10,740円 14,550円 210円 2,550円

(4,350円)

例えば第1段階に該当する方がユニット型個室を1か月間利用した場合の軽減額は(2,006円-820円)×30日=35,580円です。個室や多床室など部屋タイプの違いにより金額は異なりますが、1カ月あたり居住費で最大3.5万円、食費で最大3.4万円の負担軽減になることがわかります。

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特定入所者介護サービス費の申請手続き

特定入所者介護サービス費の制度は自動的に適用されるわけではありません。本人または代理人が住所地の市町村窓口に申請し、負担限度額認定を受ける必要があります。

認定を希望する方は、市区町村の窓口に申請書と必要書類を添えて提出します。郵送での申請も可能な場合がありますが、取扱いが異なる場合もあるため住所地の市町村にお問い合わせください。

申請が承認されると「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。認定証を介護施設の窓口に提示すると、負担軽減が受けられます。承認されても施設の窓口に提出をしなかった場合には、減額の対象になりません。

申請に必要なもの

市区町村への申請の際に必要なものは、以下の通りです。代理人が申請を行う場合は、委任状のほかに代理人の本人確認書類が必要です。

  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 印鑑(本人及び配偶者のもの)
  • 本人及び配偶者の資産が確認できるものの写し(直近2ヶ月以内に記帳された預金通帳や定期預金証書等でお持ちのすべてのもの)
  • 証券会社や銀行の口座残高がわかるものの写し(投資信託・有価証券等がある場合のみ)
  • 借用証明書の写し(負債がある場合のみ)
  • 申請者の本人確認資料(運転免許証・健康保険証等)
  • 申請者のマイナンバーが確認できるもの(通知カード・マイナンバーカード等)

預貯金等の通帳などの写しに関しては申請日の直近2ヵ月分の残高ページのほか、金融機関名・口座番号・口座名義人の氏名などが記載されたページの写しの提出も必要となるので漏れがないように揃えましょう。

認定書の有効期間

認定書の有効期限は、8月1日から翌年の7月31日までの1年間です。8月を過ぎてから申請した場合は、申請を受け付けた日が属する月の初日から有効となります。月を遡っての適用は原則行われないので、注意しましょう。

有効期限後も引き続き特定入所者介護サービス費を利用したい場合は、更新の手続きが必要です。自動更新は行われないので、更新日が近づいてきたら、忘れずに手続きを行うようにしてください。

特定入所者介護サービス費を理解し、負担軽減に役立てよう

特定入所者介護サービス費は、介護保険施設等に入所する方の食費や居住費(滞在費・部屋代)の負担が軽減される制度です。施設の種類や資産状況などにより減額される金額は異なりますが、毎月数万円程度の負担軽減が期待できます。

ただし利用には、本人及び配偶者・同一世帯の所得・資産が一定の基準以下であるなどの条件があります。また、特定入所者介護サービス費はどの施設でも適用されるわけではありません。サ高住や有料老人ホームなどは対象外となっているので、自身が利用したい施設が対象となっているのかどうかよく確認が大切です。

制度を上手に活用し、安心な施設入所ができるようにしましょう。

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特定入所者介護サービス費とはどんなものですか?

特定入所者介護サービス費は、介護保険施設等に入所する方の食費や居住費(滞在費・部屋代)の負担が軽減される制度です。制度を利用するには、市町村窓口に申請が必要なので、気になる方は市町村窓口に相談してみましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

特定入所者介護サービス費の基準にはどんなものがありますか?

所得と資産に関する基準が設けられています。主な対象は住民税非課税世帯で、資産の基準は500万~2,000万円以下となっています。詳しくはこちらをご覧ください。

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