介護難民の原因と対策について|国の今後の方針についても解説

介護難民の原因と対策について|国の今後の方針についても解説

日本では年々社会の高齢化が進んでおり、将来介護を必要とする高齢者の数も増加傾向にあります。その一方で介護サービスを行う人や施設の数が追いつかず、介護が必要であるにも関わらず十分な介護を受けることができない方も増えています。

今回は介護難民の背景や、今後起こりうること、さらに介護難民問題に対する具体的な対応策について解説していきます。

東北大学ナレッジキャスト株式会社,村田アソシエイツ株式会社,東北大学スマート・エイジング・カレッジ 特任教授
専門分野:シニアビジネス、高齢社会国際比較論
職業: 実業家,社会学者

99年にアクティブシニア、スマートシニア市場の到来を予言したわが国シニアビジネス分野のパイオニア。シニアの特性や行動を踏まえた独自の視点と分析を基に、中高年女性フィットネス「カーブス」、NTTドコモ「らくらくホン」、日本発の非薬物認知症療法である「学習療法」の米国輸出など日本を代表するシニアビジネスの成長や商品の開発に大きく貢献。多くの民間企業の新事業開発・経営に参画し、常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。高齢社会研究の第一人者として国内外の高齢者住宅事情に詳しく、老人ホーム選び、相続トラブル、認知症による生活トラブルなどの予防法と対処法をテーマ横断的にわかりやすく整理した「親が70 歳を過ぎたら読む本」(ダイヤモンド社)は6刷を超えるロングセラーとなっている。詳しくはこちら

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介護難民とは?

高齢者が増える社会で大きな問題となっているのが、「介護難民」と呼ばれる介護が必要であるにも関わらず病院でも自宅でも十分な介護を受けることができない人の増加です。

その中でも特別養護老人ホームへの入居待機者の数が特に多く、2019年には29万人を突破しています。

これらの方々の中には、十分な介護支援を受けられず将来の介護の見通しすら立たず、老老介護や重介護度の要介護者を在宅介護で見ることを余儀なくされるといった事例も増えています。

参考:厚生労働省「介護分野をめぐる状況について

 

あわせて知りたい「2025問題」とは

「2025年問題」とは、人数の多い団塊の世代(1947年1月1日から1949年12月31日までに生まれた人)が75歳を超えることで医療や介護のニーズが劇的に増え、現状の医療・介護体制が危機的状況に陥るとされる問題です。

実は75歳は私たちの健康状態のターニングポイントです。例えば、入院で治療を受ける「受療率」は75歳を過ぎると急増します。また、「認知症有病率」も75歳を過ぎると急増することがわかっています。

日本の高齢化率(総人口に対する65歳以上の割合)は29.1%(22年9月現在)で世界一であり、国連による定義「超高齢社会」の高齢化率21%をはるかに超えています。参考までに監修者は、高齢化率が28%を超えた社会を「超々高齢社会」と呼んでいます。高齢化率は2025年に30%に達すると推定されています。

多くの高齢者が、たとえ介護が必要になったとしても安心した老後生活を送ることが必要です。そのためには、今のうちに介護難民に関する知識を深め、できるだけ早いうちから介護難民にならないための対策を講じておくことが必要です。

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介護難民が増える原因

ここでは、介護難民が増える具体的な原因を4つ説明します。

高齢者の増加

介護難民が増える理由の一つめは、高齢者数の増加です。内閣府「高齢社会白書(平成28年版)」によれば、日本の総人口は減少しているのにもかかわらず、65歳以上の高齢者は2040年まで増加します。

高齢者が増えると、一定の割合で要介護者も増えます。前述の通り、特に75歳を過ぎると要介護になる割合が急増します。

現状の少子化が続く限り、今後は多くの高齢者を、減っていく若者が支えなければならなくなります。人的物的両方の側面から、高齢者を支えるシステム作りが必要になってくるでしょう。

介護施設の不足

理由の二つめは、介護施設自体は増えているものの、介護施設利用者の数が急増しているため追いついていないことです。

今後さらに介護施設の利用者数が増えてくることから、介護施設の不足は顕著になっていくでしょう。

介護人材の不足

理由の三つめは、介護施設で働く従業員をはじめ、介護に携わる人材が不足していることです。介護労働安定センターの調査では、約60%の事業所が「従業員が不足している」と回答しています。

介護施設で行う仕事は想像以上に過酷であり給与レベルも十分でないとされることから、一般に介護人材の確保は容易ではありません。介護人材が十分に確保できないため、施設運営ができずに要介護者を受け入れられない場合も少なくありません。

都市部での問題は更に深刻化

理由の四つめは、東京や大阪周辺などの都市部で高齢者が急増していることです。都市部には高度成長期に職を求めて地方から移住してきた団塊の世代の人が多く居住しています。

しかし、都市部においては、増加する高齢者を受け入れる介護施設(特に特別養護老人ホーム)の数はいまだに十分ではありません。高齢者の数は増加する一方であることから、今後さらなる介護難民の増加が懸念されています。

介護難民を防ぐための対策

今後将来的にはさらに高齢者が増え、介護難民の問題は今以上に深刻度が増していくことが予想されます。今後介護難民の増加を防ぐためには、いったいどのような対策を講じていく必要があるのでしょうか。

介護難民にならないためには、自分達で予防策を立てることも大切です。ここでは、介護難民を防ぐための具体的な対策を6つ紹介します。

介護に関する情報収集をしておく

介護が必要になってから介護に関する情報を収集するのは、遅きに失する恐れがあり注意が必要です。介護が必要でない時から、介護に関するあらゆる情報を収集しておくことをおすすめします。

たとえ現時点で介護の必要がなくても、実際に介護になったらどのような支援を受けることができるのか把握しておくことが大切です。

居住している地域の福祉施設やケアサービス、公的な介護支援サービスの中身を把握しておくことも重要です。また、将来入居する介護施設の目星を付けておいても良いでしょう。複数の候補を立て、身近な施設が満室で入居できなかったとしても、第二候補や第三候補を選択できるように準備しておきましょう。

入居するための十分な資金を集める

介護施設に入居するためには、一定額の資金が必要になります。介護施設には、初期費用がかからず月々の費用も安くなっている所から、数千万単位の初期費用や毎月数十万円の費用がかかる施設まで様々です。

費用が安い施設は一様に入居希望者が多く、資金に限りがあると選べる介護サービスは限られることから注意が必要です。

将来介護施設に入居することを視野に入れて、早い段階から施設に入居するための十分な資金を集めておくことをおすすめします。

国からのサポートを受ける

国からのサポートを積極的に活用する方法があります。とりわけ介護難民対策として国が打ち出した「地域包括ケアシステム」はおすすめです。

「地域包括ケアシステム」は、地域の支援サービスが一丸となりケアすることにより高齢者が自宅にいながら安心して介護支援を受けることができる環境づくりをコンセプトとしています。

さらに「地域包括ケアシステム」は、地方自治体にある地域包括支援センターが中心となって運営を行っています。地域包括支援センターでは様々な介護サービスを行なっていることから積極的に活用することをおすすめします。

家族のサポートを受ける

高齢者同士が介護を行う老々介護も深刻化しつつあります。高齢者夫婦が自分達だけで問題を抱えるのではなく、家族のサポートを受けることも必要になるでしょう。

事前に家族ときちんと話し合い、介護が必要になった際は具体的にどのような家族のサポートを受けるのか、決めておくと良いでしょう。

完全に家族が介護に専念するではなく、訪問介護やデイケアなど、在宅介護であっても利用できる介護サービスを上手に利用できれば、介護施設に入らなくても満足度の高い介護を受けることは可能です。

要介護にならないように予防的な生活習慣にする

日頃から健康に気を使い要介護にならないように予防的な生活習慣にすることが一番の対策です。

要介護になる原因は、男性は第一位が脳卒中、第二位が認知症、女性は第一位が認知症、第二位が高齢による衰弱、骨折転倒、関節疾患です。認知症の約3割が脳血管性疾患、つまり脳卒中なので、要介護にならないためには脳卒中の予防が最重要です。

脳卒中のほとんどが動脈硬化から生じます。動脈硬化を進行させる主要因は、①高血圧、②糖尿病、③脂質異常症、④肥満です。

これらは酒の飲み過ぎ、食べ過ぎ、喫煙、運動不足、ストレスなどから起きる、いわゆる生活習慣病です。

したがって、生活習慣病の改善が要介護リスクを下げる、つまり介護難民リスクを下げることになります。

高齢になった際も自分のことを自分でできる体力を維持するために、日頃から健康に関する意識を高めて定期的にトレーニングしておくことが重要です。

まだ元気なうちからジムに通う習慣を作り、自治体やボランティア団体などが主催する高齢者の健康をテーマとしたイベントや講座に積極的に参加すると良いでしょう。

老人ホーム等への入居待ちを回避する方法

将来的には高齢世帯の過半数以上が単身世帯もしくは高齢者夫婦となることが予想され、在宅介護の場合には、高齢者同士の介護や認知症の方同士の介護の可能性が懸念されています。

特に都会では特別養護老人ホームへの入居待ちの時間が長くなる傾向があることから、できるだけ入居待ちの時間を短くし、入居待ち自体を回避する対策を講じることが大切です。

ここでは、特別養護老人ホームへの入居待ちを回避する方法を具体的に2つ紹介します。

病院やサービスの利用

特別養護老人ホームの多くは、系列の病院や社会福祉法人によって運営されています。そのため、特別養護老人ホームと同じ系列の病院や介護サービスを利用すると、介護サービスの状況について把握しやすくなります。

その結果、特別養護老人ホームの空き情報などを把握しやすくなるでしょう。

新しい施設への申し込み

待機することなく特別養護老人ホームに入居したいのであれば、今後開設が予定されている新設施設への入居の検討をおすすめします。

介護関係者や介護施設とのつながりを作り、できるだけ多くの特別養護老人ホームに関する情報を入手しましょう。新しい施設の情報を得ることができたら、早めに問い合わせを行い、入居を申し込むことをおすすめします。

スムーズに入居したいという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護は、約5万件の施設情報を掲載しているため入居待ちのない施設を探すことも可能です。

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介護難民に対する今後の国の方針

今後増加するであろう介護難民に対して現実的に国が進めている介護対策としては、「介護施設や介護職員の増加サポート」や「外国人介護職員や介護ロボットの導入」、「都心部など介護難民が顕著な地域の高齢者の地方への移住サポート」などがあげられます。

介護に必要な費用の問題も存在します。利用者が大きな経済的負担を受けないように、様々な対策が進められています。

ここでは、国が進める3つの介護対策の具体的な中身について解説していきます。

介護施設や介護職員の増加サポート

「介護施設や介護職員の増加サポート」とは、介護未経験者に対する入門的研修制度を創設し、研修受講後は実際に働く介護施設とのマッチングまでを一体的に支援したり、介護を知るための体験型イベントを開催したりします。

また、介護職員の労働環境の改善策として、「介護職員処遇改善加算」が創設されています。この加算は、算定した金額を介護職員の処遇改善や労働環境改善の財源にすることが定められています。

外国人介護職員や介護ロボットの導入

在留資格「介護」の創設に伴う介護福祉士国家資格の取得を目指す外国人留学生等の支援や、広く一般に介護事業所による導入が可能となるような支援を行っています。今後介護に関わる職員の数が減少することが予想され、海外から積極的に人材を確保しています。

さらに介護ロボットの導入も積極的に進めており、具体的には移乗支援や移動支援、排せつ支援、見守り、入浴支援の5つの支援に対応できる専用型ロボットの開発に力を注いでいます。

都心部など介護難民が顕著な地域の高齢者の地方への移住サポート

都心部から離れ、高齢者が希望する移住先で自立して暮らせる拠点の整備に取り組む自治体を財政面、人材面で支援する制度作りに取り組んでいます。自治体の中には魅力的な特典や手厚いサポートを整備して、積極的に都会からの移住者を受け入れる体制を取っている地域もあるようです。

さらに様々な自治体が、今後多くの高齢者を受け入れるための体制作りを行い都市部からの移住を受け入れ、地域の活性化を図っています。

介護難民は身近な問題

今後日本の総人口は徐々に減少していく一方で、高齢者の比率は増加し2025年には3人に1人が高齢者という時代が訪れます。介護難民の問題は今後徐々に顕在化し、十分な介護支援を受けることができない高齢者も増えていくことでしょう。

介護難民に関しては様々な問題をはらんでおり、政府や民間、個人がそれぞれ工夫して取り組んでいかなければならない大きな問題だと言えます。

今回の記事を参考にして、ぜひ介護難民の問題を身近なものと捉え、自分ができることから1つ1つ取り組んでみてはいかがでしょうか。

介護難民が増える原因は?

介護難民が増える原因としては、以下のようなものが挙げられます。①高齢者の増加 ②介護施設の不足 ③介護人材の不足詳しくはこちらをご覧ください。

介護難民を防ぐための対策は?

介護難民を防ぐための対策としては、以下のようなものが挙げられます。①介護に関する情報収集をしておく ②入居するための十分な資金を集める ③国からのサポートを受ける ④家族のサポートを受ける ⑤要介護にならないように予防的な生活習慣にする詳しくはこちらをご覧ください。

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