親が認知症になった方や認知症になった場合の財産管理などに心配のある方が利用する制度の一つに成年後見制度があります。
成年後見制度とは、認知症や精神上の障害によって意思決定能力が万全ではない方に代わって法律行為を行うことが出来その人の権利や財産を保護することが出来る制度です。
成年後見制度には、①任意後見制度②法定後見制度の二つの種類があります。意思決定能力が衰える前に事前に本人が契約を交わし後見人を自身で選任する任意後見制度、意思決定能力が不十分な方に対して家庭裁判所が後見人を選任する法定後見制度の2種類があります。
認知症高齢者の財産管理などの側面で利点が多い成年後見制度ですが、問題点や「ひどい」といった声があるのも事実です。そこで本記事では、成年後見制度がひどいと言われる理由にフォーカスして解説していきます。

成年後見制度がひどいと言われる8つの理由
成年後見制度がひどいと言われる理由には以下の8つの理由があります。
- 利用者数がまだ少なく、高齢者の需要を満たしていない
- 本人の親族が後見人に選任されないことが多い
- 任意後見制度の利用率が低く、本人の意思が尊重されない
- 後見人による不祥事が絶えない
- 成年後見人に対して報酬が発生する
- 申し立て手続きに手間と費用が掛かる
- 親族間のトラブルにつながることがある
- 相続税対策が出来ない
利用者数がまだ少なく、高齢者の需要を満たしていない
成年後見制度がひどい問われる理由の一つに、利用者数がまだまだ少なく高齢者の需要を満たした制度となっていない点が挙げられます。
というのも、総務省統計局の調査によると2022年9月時点の高齢者人口は3627万人となっている一方で、2018年成年後見制度の利用状況※は218,142人となっており、全体の約0.6%に過ぎないことがわかっています。(※出典:厚生労働省令和元年「成年後見制度の現状」)
背景としては後述するような成年後見制度自体のデメリットが多いことに加えて、そもそも成年後見制度自体の認知度が高くないことも原因の一つとして考えられます。
総じて、高齢者の需要を満たしているとはいえず利用者が増えてこない点が成年後見制度がひどいと言われる理由の一つでしょう。

本人の親族が後見人に選任されないことが多い
成年後見制度がひどいと言われる理由の二つ目は本人の親族が後見人に選任されないことが多い点です。弁護士や司法書士などの専門職が選任されると毎月2~6万円の費用を払わなくてはならない点もひどいと言われているのです。
最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」によると、成年後見制度の創設時である2000年は後見人の選任数全体に占める親族の割合は91%でしたが、2021年は20%までに大幅に減少しています。
背景には、単身世帯や身寄りのない高齢者数の増加によって親族に後見人にふさわしい人物がそもそもいないというケースが増えたことや、親族による不正が多くなってきていることから第三者の専門職が選任されることが多くなってきているのです。
親族が後見人に選任されないと、専門職に毎月費用を支払わなくてはならない点や逆に専門職の汚職に不安をいだいている方も多いという点で成年後見人はひどいとも言われています。
任意後見制度の利用率が低く、本人の意思が尊重されない
成年後見制度がひどいと言われる理由の3つ目は、任意後見制度の利用率が低く本人の意思が尊重されない点であると言えます。
厚生労働省の「成年後見制度の現状」によると、成年後見制度全体の利用者のうち任意後見制度を利用している人は全体の約1.2%の2,516人に留まっており、本人の意思決定能力が衰える前に自身で後見人を選任できる任意後見制度の利用率が低いのです。
残りの内訳としては成年後見の割合が約78.6%、保佐の割合が約15.7%、補助の割合が約4.6%となっており、重度の認知症や精神障害などで本人に判断能力がないとされる場合に適用される後見の割合が多いのも特徴的です。
以上より、本人の意思が尊重されずに後見人の意思が尊重されるケースが多いというのが成年後見制度がひどいと言われる理由として考えられます。
後見人による不祥事が絶えない
成年後見制度がひどいと言われる4つ目の理由としては、選任された後見による不祥事が絶えず被害額が大きいことが理由とされています。
最高裁判所の調査によると令和3年の後見人による不祥事の被害総額は約5億3千万円となっており、うち専門職の被害総額が約7千万円となっています。被害総額がピークだった平成26年と比較すると数は少なくなっていますが、依然として被害を受ける人がいるのも事実です。
出典:最高裁判所「後見人等による不正事例(平成23年から令和3年まで)」
以上より、後見人による不祥事が絶えないのも成年後見制度がひどいと言われる理由と考えられるでしょう。
成年後見人に対して報酬が発生する
成年後見制度がひどいと言われる理由の5つ目は、成年後見人に対して報酬が発生する点です。
親族以外の第三者が成年後見人に選出された場合は報酬として管理する本人の財産額に応じて月2~6万円の報酬を支払わないといけない他、成年後見監督人が選任された時は成年後見人の報酬とは別に月1~2万円しはらわないといけません。
また、本人が多数の収益不動産を所有している場合など、身上監護において困難な事情がある場合は、成年後見人の報酬の50%の範囲内で相当する報酬を追加で支払わないといけないのもデメリットです。
このように、親族以外の後見人が選任された場合は毎月のランニングコストがかかり続けるのも成年後見制度がひどいと言われる理由と言えるでしょう。
申し立て手続きに手間と費用が掛かる
成年後見制度がひどいと言われる理由の6つ目は、申し立て手続きに手間と費用が掛かることです。
成年後見人を申し立てる際には申し立て手数料以外にも戸籍謄本や住民票、医師の診断書などを所得する費用が掛かります。具体的には以下のような費用が掛かります。
- 申立手数料(収入印紙):800円
- 郵便切手:3,700円
- 戸籍謄本:450円
- 住民票:300円
- 医師の診断書:6,000~10,000円
- 成年後見人登記手数料(収入印紙):2,600円
- 医師の鑑定料(家庭裁判所が必要と判断した場合のみ):5~10万円
あくまでも申し立て手続きの際の費用は初期費用なので、ずっと掛かるわけではありませんがそれでも費用が掛かるのは事実です。
また、後見申し立てから後見登記まで数カ月の期間がかかるのもひどいと言われる理由として考えられるでしょう。

親族間のトラブルにつながることがある
成年後見制度がひどいと言われる理由の7つ目は、親族間のトラブルにつながることがある点です。
親族同士の関係性が良好ではない場合や、実際に介護をしていない兄弟が成年後見制度の申し立てを提案してきた場合など、成年後見制度を申し立てる理由などを巡ってトラブルになることもあります。
実際によくある例としては、成年後見人として選任された親族が財産を横領しているのではないかと疑われるというケースです。上述したように、親族による不祥事が多いのは事実ですがあくまでもマイノリティに過ぎません。
以上のように、実際には不祥事などはないのにもかかわらず別の親族から横領などの疑いをかけられるなどのトラブルが発生する可能性があるのもひどいと呼ばれる理由の一つでしょう。
相続税対策が出来ない
成年後見制度がひどいと言われる理由の8つ目は相続税対策が出来ないことです。
そもそも成年後見制度は本人の財産などにマイナスの被害を被らないように、代理で親族又は専門職が財産管理などをする制度のため相続税対策の生前贈与などを行うことが出来ません。
他にも養子縁組などを行うこともできず、成年被後見人は意思能力がないとみなされているので本人の利益にならないような贈与は無効となってしまうのです。
以上より、成年後見制度を利用すると相続税対策が出来なくなることがひどいと言われる理由と考えられるでしょう。
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成年後見制度が本当にひどい?メリットも紹介
成年後見制度はひどい点ばかりではなくメリットももちろんあります。ここではメリットに絞って紹介していきます。
- 後見人が預貯金や不動産の売買ができる
- 不当な契約を取り消せる
- 親族の使い込みを防げる
後見人が預貯金や不動産の売買ができる
成年後見人に選任されると本人の預貯金や不動産の売買契約や登記を行える点がメリットと言えるでしょう。
というのも、やはり認知症となると人によっては浪費癖で高い買い物をしてしまったり、気が付いたら不動産の売買を進めてしまっていたなどの金銭的な被害を被ることも少なくありません。
そこで成年後見制度を利用することで、本人名義の通帳やカードを成年後見人が管理し、入出金や振り込み作業を行う他、不動産の売買や登記などを行うことが出来ます。
デメリットもある成年後見制度ですが、やはり人によっては金銭的な被害を被るリスクをヘッジできる点がメリットと言えるでしょう。
不当な契約を取り消せる
成年後見制度のメリットの2つ目は不利益な契約を取り消すことが出来る点です。
不利益な契約とは、訪問販売で健康食品を大量に買ってしまった場合や何社もの新聞社と購読契約をしてしまったなどが該当します。
こういった認知症の方の判断能力が低下している際にしてしまった不利益な契約は成年後見人に選任されると本人の代わりに契約を取り消したり代金の請求をすることが出来ます。
したがって、成年後見制度のメリットの二つ目は不当な契約を取り消すことが出来る点であると言えるでしょう。
親族の使い込みを防げる
成年後見制度のメリットの3つ目は、親族の使い込みを防ぐことが出来る点です。
在宅介護をしている場合などで介護者が本人の財産を不当に使い込んでいる場合などでは、成年後見人が就くことでその使い込みを防止することが出来ます。
介護をしていない親族からすると遺産相続分の財産が減る可能性があるので、在宅介護をしていない家族が成年後見制度の申し立てをするというケースも少なくありません。
このように、親族自身の使い込みを防ぐために第三者の後見人に管理を依頼するというケースもあるのです。
成年後見制度以外の選択肢として家族信託も検討しよう
成年後見制度以外の選択肢としては、近年では家族信託が注目されています。
家族信託とは、自分で財産を管理することが出来なくなった場合に自分の財産の管理をする権限を家族に与えることを言います。具体的には、「委託者」「受託者」「受益者」の3つの立場で契約を結んで財産管理を行います。
例えば、認知症を患っている委託者である父の財産を受託者である子供が管理し、受益者を認知症を患っている父に設定するなどが一般的によくあるケースです。
成年後見制度とは違い、親族が中心となって財産管理をするので積極的な相続税対策や財産管理を行うことが出来るのがメリットと言えます。任意後見人などによる財産管理では裁判所の監督の下で行うことになるので、実際には家族の理想通りに運用することはできないというのが現実的な問題です。
したがって、以上のようなケースにおいて成年後見制度以外の選択肢として家族信託が注目されています。
成年後見制度は結局ひどい制度なの?
成年後見制度は後見人が必ずしも親族となるわけではない点や相続税対策を行うことが出来ないという側面があるため、ひどいと言われることがあるのも事実です。
ただし、預貯金の管理や不利益な契約の取り消し、そして親族の使い込みを防止することが出来るというメリットがあるのも事実です。
したがって、家族形態や本人の収入額によっても利用するかどうか個別に判断するのがポイントと言えるでしょう。成年後見制度以外にも家族信託という選択肢も近年注目されているため、家族信託の利用も検討してみましょう。
成年後見制度は後見人が必ずしも親族となるわけではない点や相続税対策を行うことが出来ないという側面があるため、ひどいと言われることがあるのも事実です。ただし、預貯金の管理や不利益な契約の取り消し、そして親族の使い込みを防止することが出来るというメリットがあるのも事実です。詳しくはこちらをご覧ください。
成年後見制度以外の選択肢としては、近年では家族信託が注目されています。家族信託とは、自分で財産を管理することが出来なくなった場合に自分の財産の管理をする権限を家族に与えることを言います。具体的には、「委託者」「受託者」「受益者」の3つの立場で契約を結んで財産管理を行います。詳しくはこちらをご覧ください。