超高齢化社会を迎えた日本において、平均寿命は年々右肩上がりになっており、男性が80.5歳、女性が86.3歳と過去最高を更新しました。単に寿命が延びているだけでなく、医療の発達により健康寿命も延びています。
一般的に定年を迎える60歳を過ぎても、老後の暮らしは約20~30年間続く時代になりました。その長い老後期間に、「生涯現役」を掲げて仕事や地域活動に精を出す高齢者が増えています。中でも、ボランティア活動は、就労と並んで高齢者の活躍の場となり、生きがいになっているのです。
高齢者のボランティア活動は、どのような種類があり、活動を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、そんな高齢者のボランティア活動の現状について、詳しく見ていきましょう。
ボランティア活動を行う高齢者の割合
ボランティア活動を行っている高齢者はどのくらいいるのでしょうか。定年後も就労する労働者が増えており、就労まではできなくてもボランティア活動で活躍したい、という高齢者も多いのではないでしょうか。
はじめに、ボランティア活動を行っている高齢者の割合についてご説明します。
60歳以上の参加割合は5割弱
「平成23年高齢者の経済生活に関する意識調査」によると、60歳以上の高齢者で1年間に何らかのボランティアに参加した人は、全体で47.0%(男性51.5%、女性43.0%)となっています。高齢者の2人に1人が、ボランティア活動に参加しているのです。
活動内容の割合は自治会の役員が最も多い
活動内容の割合は、男女とも最も多いのは「自治会等の役員・事務局活動」(男性32.9%、女性24.0%)で、 次いで「地域の環境を美化する活動」(男性20.5%、女性14.4%)、「地域の伝統や文化を伝える活動」(男性14.3%、女性7.2%)となっています。
また、このほかに男性が多く活動に参加しているのは「交通安全など地域の安全を守る活動」や「災害時の救援・支援をする活動」で、対して女性が多く活動に参加しているのは「見守りが必要な高齢者を支援する活動」や「介護が必要な高齢者を支援する活動」となっています。
ボランティア活動の中でも、男性は力仕事、女性は支援活動が参加しやすいようです。
50代後半から60代前半は参加率が低い
50代後半から60代前半は、「参加したい活動がある人」(参加希望率)が60%を超えているのに対して、「過去1年間に参加した人」(参加率)は14~24%低くなっています。
ここから、特に高齢期に入る前の世代では、ボランティア活動に参加意欲があっても、必ずしも実際の活動に結び付いているわけではないことがわかります。
町内自治体や市民団体の活動の一環がきっかけになることが多い
平成23年経済広報センターのボランティア活動への参加きっかけを調査したデータでは、60歳以上がボランティア活動を始めるきっかけとして、「所属する町内自治会、市民団体などの活動の一環」(約35%)が最も多くなっています。
次いで、「友人や家族からの誘い」(約17%)、「ボランティア活動団体の呼び掛け」(約15%)となっており、いずれにしても地域や他者との繋がりがきっかけとなり、ボランティア活動を始めることが多いようです。
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高齢者がボランティア活動を行うメリット
高齢者の生活は、そのほかの世代に比べると睡眠時間と自由時間が多くなっています。特に、70歳以上になると1日の大半を自由時間が占めるようになります。そのため、この時間をボランティア活動に充てる高齢者が多いようです。高齢者がボランティア活動を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、高齢者がボランティア活動を行うメリットについてご説明します。
生きがいを感じることができる
歳をとると人に助けられることの方が多くなりますが、ボランティア活動を行うことで、家族以外の人の世話をしたり、地域に貢献したりなど、人の役に立つことができます。それにより、社会への貢献意識が芽生え、色々な人と交流を深めることで生きがいを持つようになるのです。
内閣府発表の「平成25年高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によると、日常生活に生きがいを感じている(「十分感じている」または「多少感じている」)と回答した人は全体の8割に上りますが、年々その割合は減少傾向にあります。
そのため、ボランティア活動を行うことで、高齢者自身の生きがいに結び付けていくことが大事になります。
健康づくりに役立つ
テレビを見ている世代の中で高齢者が最も多くなっており、これは高齢者が家の中でじっとしている人が多いことを示しています。家の中にいることで、筋力がなくなり足腰が弱くなったり、老人性うつになったりするリスクが上がります。
高齢者にとって、ボランティア活動は外出のきっかけを与えてくれます。そのおかげで運動不足が解消され、同時に気分転換になりストレスも解消されるのです。
地域とのつながりができる
特に、男性は定年まで仕事を勤め上げ、ご近所づきあいをしてこなかった人が多いでしょう。さらに、一人暮らしだと喋り相手がいないので、家の外にコミュニティが必要になります。
ボランティアをすることで、地域の人と交流を深めることができるだけでなく、いざとなったときに協力を仰いだり、孤独死などのリスクを回避することができます。
ポイントを商品や現金に交換できる
賛否両論ありますが、自治体によってはボランティアに参加すると、ポイントが貯まるところもあります。
ボランティア活動の内容は、元気な高齢者が、要介護認定を受けている高齢者に対して、介護支援を行うといったものが中心です。地域福祉を支えてもらうだけでなく、ボランティア活動を行う高齢者自身の介護予防にも繋げてほしいという目的があります。
そして、活動内容によってポイントが付与され、貯まったポイントは商品や現金と交換できます。年間に交換できるポイントに上限を定めている場合が多いようです。
高齢者の参加できるボランティア活動の種類
一概にボランティア活動といっても、様々な種類があります。体力に自信のない高齢者でも行えるボランティア活動はたくさんあるのです。
ここでは、高齢者のボランティア活動の種類についてご説明します。
介護施設での利用者の補助
介護施設で、利用者の話し相手になったり、食事の配膳を手伝ったり、レクリエーションのサポートを行います。直接感謝の言葉をもらえることが多いので、やりがいにも繋がりやすいでしょう。
また、先にも述べたように自身の介護予防にも繋がりますし、将来自分がお世話になるかもしれないスタッフと顔見知りになることもできます。
地域ぐるみでの子育て支援
地域ぐるみの子育てを目的として、「ファミリーサポートセンター」では、有償ボランティアを行う約10万人の会員のうち3人に1人が60歳以上となっています。学童保育のアシスタントや学習塾までの送り迎えなど、保育園や小学校の終わったあとの預かりや送迎を行っています。
なお、内閣府の調査では、高齢者のうち三世代世帯(孫と同居)は、2007年には18.3%だったのが、2017年には11.0%と年々減少傾向にあります。このように、今の高齢者は子供や孫と過ごすことが減っているので、子育て世代と関わりをもてるのは貴重な機会になるでしょう。
新薬の有効性を試す治験
まだ発売されていない新薬の有効性を確認するボランティア活動です。もちろん、摂取するのは国が安全性を確保したもののみです。
調査期間中は入院が必要な場合もありますが、診査時以外は自由に過ごすことができます。治験内容によっては、たとえば2泊3日入院で2回試験なら8万円前後と、高額な協力費が貰える場合もあります。
社会教育施設のガイド
博物館、美術館、動物園、図書館などの社会教育施設でガイドをします。特に資格は必要ないので、アートが好き、動物が好きといった気持ちがあれば挑戦できます。趣味がはっきりしていて、憧れていた仕事とマッチすれば、楽しんですることができます。
公園や海などの清掃活動
日本各所で定期的に行われている清掃のボランティアです。早起きな高齢者が集まるので早朝から行われることが多く、自然に触れることができるので、気分転換にもなります。地域貢献と、目に見える形での成果があるのでやりがいがあるでしょう。
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高齢者がボランティア活動に参加する場合の注意点
高齢者の誰もが、すぐにボランティアができる状態というわけではありません。新しいことを始める前に、体力面や心構えを確認する必要があるでしょう。
ここでは、ボランティア活動に参加する場合の注意点についてご説明します。
体力面を考慮する
高齢になると、自分が思っているよりも体力が落ちている場合があります。無理をし過ぎると、急に休むことになって周囲に迷惑がかかってしまったり、自身の健康状態も損なわれてしまいます。自分のキャパシティをしっかり把握して、できる範囲でのボランティア活動に参加しましょう。
協調性を大事にする
高齢になると、自分のやり方に固執して周りに合わせづらくなります。特に、現役時代に役職に就いていたりすると、その傾向が強くなるようです。
ボランティア活動は団体活動なので、何よりも協調性が大事です。あくまでも初心者として、周囲と協力していく姿勢を忘れないようにしましょう。
怪我や病気が心配なら保険に加入する
ボランティア活動中に起こった怪我や病気に対して保険金が支払われる、ボランティア保険というものがあります。特に高齢者だと、ボランティア活動中に転倒してしまった、熱中症になったなどのトラブルに見舞われることがあるので、心配な場合は加入を検討しましょう。
地域のボランティア活動の場合、社会福祉協議会などで手続きすることができます。
高齢者のボランティア活動に関するQ&A
高齢者のボランティアについて、おおよその理解は深まったでしょうか。
最後に、高齢者のボランティア活動に関してよくある疑問を解決していきます。
参加資格はある?
ボランティア活動に参加するための資格などは、一切必要ありません。もちろん趣味や特技があれば、それを活かせるボランティア活動もありますが、まずは役に立ちたいという気持ちがあればOKです。
自分のできる範囲内で人の役に立つことができるのが、ボランティア活動の醍醐味なのです。
どこに申し込めばいいのか?
介護施設でのボランティア活動の場合は、随時募集していることが多いので、施設に直接問い合わせてみましょう。どんなボランティアがあるのか聞いてみたい、紹介してほしいといった場合は、活動したい人と利用したい人の橋渡しを行っている、社会福祉協議会、NPO法人、地域包括支援センターなどで相談できます。
また、自分で調べたいというときは、インターネットで情報を収集することも可能です。
辞めたくなったときは?
ボランティア活動を辞めたくなったときは、所属する団体や施設に早めに連絡を入れましょう。ボランティア活動はあくまでも主体性をもって善意で行うことです。仕事のように強制力はないので、自分の意思を抑えてまで、無理して続ける必要はありません。
老後のボランティアで生き生きとした生活を送ろう
世の中には、高齢者にもできることで、人手を欲しているところはたくさんあります。今後、ボランティア活動を行う高齢者は、地域福祉を支えていく中心的な存在となり得るでしょう。
また、一人暮らしや夫婦のみの世帯が増えている中、孤独に陥っている高齢者が多いのが事実です。ボランティア活動は、そんな高齢者自身の生きがいにも繋がるのです。
今からでも遅くありません。何か始めてみたいと思っている人は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
高齢者が行っているボランティアとして最も割合が多いのは、「自治会等の役員・事務局活動」(男性32.9%、女性24.0%)で、 次いで「地域の環境を美化する活動」(男性20.5%、女性14.4%)となっています。詳しくはこちらをご覧ください。
高齢者がボランティアを行うメリットとしては以下ような点が挙げられます。①生きがいを感じることができる ②健康づくりに役立つ ③地域とのつながりができる ④ポイントを商品や現金に交換できる詳しくはこちらをご覧ください。