家族が要介護・要支援と認定され、介護保険サービスを受けたい場合にはケアプランを作成する必要があります。しかし初めての介護・支援となる場合には、ケアプランとは何か、作成方法がわからないと、とまどう方も多いのではないでしょうか。この記事ではケアプランの説明から作成方法、アフターフォローまでを説明しています。
ケアプランとは?
ケアプラン(介護サービス計画書)は、要介護・要支援と判定された方が介護保険を利用した介護サービスを受ける時に必要となる、介護の方向性を決める設計図です。利用者・家族・ケアマネジャー・サービス提供事業者等、介護に関わる事方すべての指標となります。
ケアプランがないとどのような形で介護をしていくかの方向性がまとまらず、方向性が定まらない可能性が出てくるかもしれません。介護保険を利用すると介護サービスが所得に応じて1〜3割負担で受けられるため、経済的な負担が軽くなります。
作成が必要な理由
要介護者、要支援者が介護保険が適用された介護サービスを使うためには、ケアプランを作成する必要があります。要介護者と、要支援者ではケアプランの名称を以下のように呼んでいます。
- 要介護者: ケアプラン
- 要支援者: 介護予防ケアプラン
ケアプランは、要介護者または要支援者となる利用者本人、家族、ケアマネジャー(介護支援専門員)、サービスを提供する事業者、医療機関など、介護や支援に関わるすべての方の指標となります。利用者・家族の困りごとを解決に導いてくれる大切な計画書です。
必要な介護サービスは人それぞれ異なります。利用者、介護する家族にとって最も適した介護サービスが受けられるように作成する必要があります。まずは近くの居宅介護支援事業所等に相談しましょう。
3種類のサービス計画
サービス計画は、3種類あります。自宅で介護を受けられるサービス、施設で介護を受けられるサービス、介護にならないよう支援するサービスです。
■居宅サービス計画
要介護認定1〜5を受けた方が対象です。在宅介護の方を対象とした介護サービス全般を示します。
4種類に分けられているので、サービス内容は以下の表を参考にしてください。
サービスの名称 | どのようなサービスがあるのか |
訪問サービス | 訪問介護
訪問入浴介護 訪問介護 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 |
通所サービス | デイサービス(通所介護)
通所リハビリテーション |
短期入所サービス | ショートステイ(短期入所生活介護)
短期入所療養介護 |
その他のサービス | 福祉用具のレンタル・購入費の支給
住宅改修費の支給 |
■施設サービス計画
施設サービス計画書は、要介護1〜5の認定を受けた方が対象となります。在宅ではなく施設を利用した介護サービスを利用するときに必要なケアプランを施設のケアマネジャーが作成します。対象となる施設の種類と介護度は下記の表の通りです。
施設の種類 | 入居可能な介護度 |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 要介護3以上 |
介護老人保健施設 | 要介護1以上 |
介護療養型医療施設
(2024年3月に廃止。その後、介護医療院へと移行。) |
要介護1以上 |
介護医療院 | 要介護1以上 |
介護老人福祉施設は、自宅での介護が難しい場合に入居します。
介護老人保健施設は、在宅介護に戻るための医療手当やリハビリテーションが中心です。
介護療養型医療施設は、比較的重度な方を対象に、医療処置やリハビリテーションを提供します。医療機関としての役割が大きい特色がありますが、介護サービスも実施しています。
2024年3月に廃止が決まっており、その後、介護医療院へと移行されるので注意しましょう。
介護医療院は、2018年4月に法定化された新しい施設です。要介護者の長期にわたる療養生活と生活支援を目的としているのが特徴です。
■介護予防サービス計画
介護予防サービス計画は、要支援1〜2の認定を受けた方が対象です。利用者ができる限り、住み慣れた環境で生活できるように支援していくのを目的としています。家族以外との関わりが減り、孤立しがちな利用者の積極的な社会的参加を推奨していく意味合いもあります。
自宅で受けられるサービス、施設で受けられるサービス、福祉用具の購入やレンタル、自宅をバリアフリーに改修するなどができます。
ケアプランの作成方法は2つのパターン
作成方法は、ケアマネジャーに作成してもらう場合と、利用者本人・家族が自ら作成する場合の2つの類型があります。
利用する3種類のサービスによってフォーマットが異なるので注意しましょう。
要介護の方が、在宅での介護サービスを利用する場合は、居宅介護支援事業者のケアマネジャーにプランを作成してもらえます。施設に入居する場合は、施設のケアマネジャーがプランを作成します。
要支援の方の場合は、まず各市町村に問い合わせましょう。地域包括支援センターに所属するケアマネジャーに作成依頼が可能です。
作成を依頼する場合
ケアマネジャーに作成を依頼する場合は、ケアマネジメントプロセスに沿い、プランを決められた手順に沿って作成してくれますので相談しましょう。
ケアマネジャーに作成してもらうメリットは、介護・支援を始めるにあたって、手探り状態の中、手間や時間がかかり作業負担の大きい、作成に関わる一連の流れを介護・支援のプロに任せられる点です。
ケアマネジャーが利用者・家族の悩み、困りごとを分析し、希望に沿ったケアプランを作成してくれます。介護サービス提供者とのやり取りやアフターフォローまで対応してくれるので、初めての介護・支援でも安心して取り組めるのが魅力です。
ケアプランに関わる一連の流れは、利用者・家族との面談により現在抱える悩みの分析作業から始まり、月1の聞き取り調査まで広範囲に渡ります。ケアプランは6か月ごとに見直しされます。
ケアプランは原案を作成した後に行うサービス担当者会議と呼ばれる専門家を交えた会議で、変更・修正がある場合は対応し、利用者・家族から承認が得られれば完成となる仕組みです。
完成した介護サービス提供事業者にも交付され、情報共有がなされます。
ケアマネジャーは介護の中核を担う存在として、利用者・家族にとって頼れる大切な存在です。しかし、人によってどうしても相性がよい悪いは出てくる可能性があります。自分たちにとって相談・話しやすいケアマネジャーを選ぶとよいでしょう。
ケアマネージャーの役割や選び方について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
本人または家族が作る場合
「居宅介護サービス」と「介護予防サービス」に関しては、セルフプランといい、利用者・家族による作成が可能です。「施設サービス」は、施設のケアマネジャーによる作成が定められているため、セルフプランの作成はできませんので注意しましょう。
利用者・家族が作成する場合には、自分たちの住む市区町村の役所へセルフプランで作成する旨を届け出て必要書類をもらうところから始まり、毎月の実績記録の提出までを自分たちで対応します。
セルフプラン最大のメリットは、プランを自分たちの希望通りに作成できる点です。介護に対する知識も深まり、勉強にもなるでしょう。
しかし、プロが作成するわけではないので、デメリットも多くあります。情報を一から集めなけらばならない、自分たちにとって不要なサービスを選んでしまう、逆に必要なサービスを選び漏れてしまう等も起こる場合があるので注意が必要です。不慣れな作業は時間がかかりますし、サービス提供事業者との交渉等、自分たちでの対応が求められます。
ケアマネジャーが行う手続きのすべてを自分たちで漏れなく対応する必要があるので負担は大きいです。そのため、プラン作成の専門家に作成してもらうケースが多いのが現状です。
納得できるケアプランの作成のため、介護保険サービスの次項負担額について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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ケアプラン作成・運用後の注意点
ケアプランをケアマネジャーに作成してもらう場合は、ケアマネジャーに利用者・家族の状況や希望をしっかりと伝える必要があります。ケアマネジャーは、プロであり、介護の知識は豊富ですが、実際にサービスを利用するのは利用者です。できるだけ細かく相談しておくと理想的なプランの作成へと近づけるでしょう。
利用者がどのような介護サービスを求めているのかは利用者や家族でないとわからないのでケアマネジャーに任せきりにせず、積極的に参加を心がけ、ケアマネジャーとの信頼関係を築き上げるとよりよい介護・支援へと繋がります。
作成後の確認時に専門用語が多いなど内容がわかりづらいと感じた場合は、わかりやすい内容で作ってもらいましょう。
ケアマネジャー相談時の注意点
ケアマネジャーに必ず相談しておいた方がいい事柄は、利用者本人の希望、心身両方の健康状態、介護する家族の状況等です。利用者が自分でできるものと介護・支援してほしいものを明確に伝えましょう。家族も仕事と両立希望、家庭環境、日々のスケジュールなど介護・支援の状況はできる限り細かく報告しておきます。
また相談しづらい項目ではありますが、経済的な相談は必ずしましょう。無理なプランを立てるのを防止するためにもできる範囲で伝えておくと安心です。少しでも不安に感じる要素があれば、ケアマネジャーに伝えるようにすると不安の解消に繋がります。積極的に相談しましょう。
また、ケアプランは一度作成したら終わりではありません。利用者・家族の状況や希望等は日々移り変わるので定期的な確認と見直しが必要です。ケアプラン通りに運用されているか確認し、相談事があればケアマネジャーに相談しましょう。
プラン通りに運用されているかの確認が大切
作成後は、プラン通りに運用されているかの確認が大切です。利用者・家族が希望して作成してもらったケアプラン通りにサービスが提供されているのかどうかは常に確認しておきましょう。
また、希望して作ってもらったプランではあるものの、実際に運用されてみるとイメージと違う、スケジュールに無理がある等、問題が生じるかもしれません。必要なサービスが提供されていないなど気づいた所があればケアマネジャーに報告し、対応してもらいましょう。
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ケアプラン作成後のアフターフォロー
ケアプランは、運用後のアフターフォローが大切です。最低でも月1回ケアマネジャーによるモニタリングでケアプラン通りの介護・支援サービスが受けられているか確認されます。利用者・家族共に希望通りのプランが運用されているか、また生活・介護の状況は日々変化するので、症状が改善、または悪化した等は常に意識し、書き留めて置くなどしてモニタリングの時にケアマネジャーに相談できるようにしておくと安心です。疑問点なども相談し、解消しておくように心がけましょう。
利用状況のモニタリング
提供されるサービスがプランに基づいているか定期的な調査が必要です。ケアマネジャーが、1か月に1回以上、利用者の自宅を訪れて確認します。調査の結果、必要な場合は再度、プランの見直しが実施されます。
1か月に1回ケアマネジャーが以下のような項目を確認します。
- 目標通り達成されているか、その達成度合いの確認
- 家族や利用者の要望や状況に変化がないか
- 要望に対しての満足度の確認、サービス自体に変更の必要がないかの確認
- 策定したプラン内容通りに運用されているか
注意が必要な点は、利用者のみではなく、介護している家族の状況の変化の確認です。介護をしている家族が疲れてしまい、倒れてしまっては利用者・家族ともに辛い状況に置かれてしまいます。また、介護離職等もできる限り避けたいところです。デイサービスやショートステイの利用日数を増やすなど、できる限り家族の負担の軽減できるプランへの変更が望ましいです。
変更・修正への対応
プランを運用していく際に、利用者や家族の要望に変化があった場合は、変更や修正が可能です。変更があった場合は再作成になりますが、以下のリンクにある9つの項目は、「軽微な変更」に該当するので、改めてプランの再作成をする必要はないです。
9つの修正項目は、介護保険最新情報Vol.155にて確認ができるので、一度は目を通して確認するようにしましょう。該当しない項目があった場合には、後述する再作成の対応が必要です。
参考:『介護保険最新情報Vol.155.pdf (wam.go.jp)』
修正については、訂正前の内容が見てわかるように取り消し線を引いて、更新内容を記載します。軽微な変更になった理由を、第1表の余白部分に書きます。変更した「理由」「年月日」「内容」を第5表に書きましょう。変更内容を利用者や家族に確認して、合意したうえで修正完了となります。
再作成への対応
厚生労働省の定める項目「軽微な変更」に値しない変更はプランの再作成をする必要が出てきます。モニタリングをして利用者・家族にニーズの変化があった場合には作成時と同じ手順で再作成をします。
ただし、「再作成」と「軽微な変更」の判断については注意が必要です。「軽微な変更」であると勝手に判断してサービス担当者会議を開催しなかった場合、実際には運営基準に違反していて、介護報酬を返還したケースもあります。該当するかわからない時は、役所に事前に相談するとトラブルを防げますので心がけておくと安心できます。
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一人ひとりに適したケアプランとアフターフォローが必要
ケアプランの作成方法からアフターフォローについて説明しました。介護サービスを受けるために必要なだけではなく、介護に関わるすべての方の指標となる大切な設計図です。
プランの内容は3種類あり、自宅、施設での介護、または支援に分けられています。介護・支援が必要な状況やサービスは、異なるため、一人ひとりにあうように完成させましょう。信頼できるケアマネジャーに作成を依頼し、利用しやすいプランを作成できるといいです。
また、介護する家族の負担をできる限り削減できるプランが好ましいです。家族が介護疲れにより倒れてしまっては、利用者・家族共に辛い状況におかれるでしょう。介護離職を避けるためにも、無理のない介護・支援ができるような状況を作るよう心がけましょう。
介護・支援の状況は日々移り変わっていきます。定期的なプランの見直しをし、常に利用者・家族が適切な環境でサービスを受けられるようにしましょう。
ケアプランに関するよくある質問
Q.ケアプランを作成する場合費用はかかりますか。
A.要介護の認定を受けられた方は、全額介護保険から給付されるため、利用負担は、ありません。
Q.ケアマネジャーの変更は可能ですか。
A.可能です。事業所に相談してください。