スピーチロックは介護の場面でNG!その危険性と対策を解説

スピーチロックは介護の場面でNG!その危険性と対策を解説

「ちょっと待って!」「○○はやめて!」といった言葉を使っている方は多いのではないでしょうか?

実はこれらの言葉はスピーチロックと言われ、介護の必要がある高齢者についつい言ってしまいがちな言葉なんです。

今回はそんなスピーチロックがどうして問題なのか、どのように対応すればよいかについて解説していきます。

介護を必要としている方がいるご家族や実際に介護をしている家族の方は少しでも参考にしてもらえれば幸いです。

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スピーチロックとは

スピーチロックとは言葉によって身体的、または精神的に行動に制限をかけることで、言葉のロックとも呼ばれています。

介護を必要としている高齢者に向かって、何気なく発している言葉が実は本人の行動や精神面に制限をかけてしまっている状態です。

そして、スピーチロックには明確な線引きがされていないため、一般的な声掛けとの区別が困難であると問題になっています。

ここからはさらにスピーチロックについて深堀していきます。

3つのロック

身体的な拘束 内容
フィジカルロック(身体拘束) 身体を物理的に拘束して、行動を制限すること
ドラックロック(薬物拘束) 薬物の過剰投与や不適切な投与によって、行動を制限すること
スピーチロック(言葉の拘束) 言葉によって身体的、精神的に行動を制限すること

介護の世界の身体的拘束には上記のような3つのロックが存在しています。

物理的に縛るようなフィジカルロックや薬物の投与量によるドラッグロックは形あるものを使用するため、意識しやすいもののスピーチロックは言葉であるため非常に注意しにくいケースが多いです。

実際に何気なく声をかけたつもりでも、本人の行動を制限してしまっていたらスピーチロックに当たります。

まずは自分の発言が本人にどう伝わるのか、適切な伝え方であったかを本人の立場になってみることが大切です。

無意識に使ってしまうスピーチロック

スピーチロックの最大の特徴は無意識に使ってしまっている点です。

実際に手が離せないタイミングで本人から何かを頼まれたり、何か危険なことをしようとしていたりする場合、「ちょっと待って」と言うケースは非常に多いでしょう。

また1人での行動には危険が伴うため付き添いが必要な方に対して、「危ないので1人では動かないでね」と安全のために声をかけたつもりでもスピーチロックになっているケースもあります。

ほかにも理解出来ない行動に対して「どうしてこんなことをするの?」と聞いたことはありませんか?

介護している側はただ質問している認識で聞いていても、本人にとっては禁止されているように受け取ってしまう場合があります。

さらに早く家事をしたいがために、本人に「早く食べて」と急かしてしまうケースもスピーチロックとなるなど、例をあげ始めるとキリがありません。

特に無意識に言ってしまった言葉は、家族であればなおさらより強い口調になりがちです。

ですがどれだけ丁寧で、寄り添った発言であってもスピーチロックをかけているケースは非常に多いです。

そのため、できるだけ具体的な内容を伝えるように意識しましょう。

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スピーチロックの弊害3選

スピーチロックの最も恐ろしい特徴は重度の弊害をもたらす点です。

具体的には行動意欲の低下、認知症状の悪化、ADLの低下と要介護度の重症化の3つが挙げられます。すべてが連動しており、どれほど恐ろしい症状かは理解しておいた方が今後の介護に役立ちます。具体的に3つの重症化症状について解説していきます。

行動意欲の低下

スピーチロックによる大きな弊害の最初の段階として、行動意欲の低下が引き起こされます。

なぜならスピーチロックによって自分がしたいことを禁止・制限されたり、長時間待たされたりすると本人は「無視された」、「拒絶された」といった自分が否定された気分になるからです。

このようなネガティブな感情を抱くと「どうせ禁止されるから」と思い込み、自分から行動する意欲が低下し始めます。

その結果、認知症状の悪化や寝たきり状態になるなど、恐ろしい重症化を引き起こす負の連鎖にはまり始めます。

なお、重症化の連鎖を防ごうとするあまり、行動意欲が低下している本人に向かって安易に「頑張って」や「動いてみよう」と激励の言葉をかけるのも逆効果で危険です。

コミュニケーションをとる際はまず、行動意欲が低下し始めている本人の意見を傾聴して、否定しないことを意識しましょう。

認知症状の悪化

行動意欲の低下に連動して、認知症状も悪化し始めます。

もともと認知症状がある高齢者の場合、言われたことをすぐに忘れてしまう傾向がありますが、感情が大きく動いた出来事は強く記憶に残ります

特に「無視された」「拒絶された」「怒られた」といった否定されて嫌な気持ちになったことは強く残ってしまうものです。

当然本人も、自分なりの考えや目的があって行動しているので、介護者の都合だけを優先させて理由もなしに否定されると嫌悪感を持つのは当たり前です。

家族など自分自身が信頼を置いている人間から否定的な言葉を浴びせられるのは特に強いストレスとなり、記憶にも強く残るでしょう。

その結果、被害妄想やせん妄につながり、人に対しても強く当たる傾向が出てきます。

ですので、否定して強いストレスを与えないように細心の注意を払って接しましょう。

もし禁止や注意をするときはなぜダメなのかを具体的にして、プライドを傷つけないように優しく伝えるようにしましょう。

ADLの低下、要介護度の重症化

スピーチロックによる行動意欲の低下に連動する症状として最も恐ろしいのがADLの低下と要介護度の重症化です。

ADLとはActives of Daily Livingの略で日本語で「日常生活動作」と訳されます。

具体的には、普段の生活で当たり前に使っている筋肉が衰え始めることをADLの低下と言い、そのままにしておくと、自分1人の力では入浴や排泄、階段を昇ることや最悪の場合、歩けなくなる可能性も出てきます。

さらに寝たきり状態になるリスクも非常に高いので、一般的にはADL低下に伴って、要介護度も向上すると言われています。

そして、一度ADLが低下して要介護度が重症化すると、どれだけリハビリを行っても、以前のように1人で生活できていた頃に戻るのは非常に難しいです。

ADLの低下による寝たきりや動けなくなるといった最悪の状態を防ぐには、長期的な運動や他人とのコミュニケーションが非常に大切になってきます。

そのため、どれだけ家事や仕事で忙しくても、必ず毎日散歩や一時間会話の時間を設けるなどの対策が重要です。

スピーチロックの対策・3選

恐ろしい弊害をもたらすスピーチロックの対策として考えられるのが、「言い換え」、「クッション言葉を使う」、「メラビアンの法則を意識する」の3つです。

具体的にわかりやすく解説していきますので、日常生活でも取り入れてみてください。

実際に使えるようになると、本人のさまざまな病状の悪化防止につながり、健康寿命にも変化が出てきますので、1つずつ確認していきましょう。

言い換える

代表的なスピーチロックの対策としてあげられるのが「言い換え」です。

何気なく言ってしまう「ちょっと待って」や「そこにいて」なども言い換えることでスピーチロックから外れるため、覚えておくとよいでしょう。

よく言ってしまいがちなスピーチロックの言い換えを下の表にまとめましたので参考にしてください。

【スピーチロック言い換え表】

言い換える前の言葉 言い換えたあとの言葉
ちょっと待って! 「○分ぐらい待てますか?」

「○○するので△分待ってもらえますか?」

1人でそこから動かないで! 「○○頃に来るから、ちょっと待っててもらえる?」

「△△する用事が入ったから、○○分ほど待っててくれる?」

どうしてそんなことするの? 「危ないので今度から一緒に○○しよう」

「どうしたの?」

食べちゃダメ! 「それよりもこのお菓子を食べない?」
早く食べて!早く飲んで! 「もうお腹いっぱい?」

「今日はあまり水分を取ってなくて心配だからもう少し水を飲める?」

「食べたいものでいいからもう一口食べない?」

一般的にスピーチロックになりにくい言い換えとして、ただ優しい口調に変化するだけでなく、どうしてそうしてほしいのかの理由まで述べるとよいです。

また、待ってもらう場合には、具体的な数字で伝えると本人も理解しやすくなりスピーチロックには当たりません。

クッション言葉を使う

2つ目の対策として、クッション言葉を意識して使用することも効果的です。

クッション言葉を伝えたい内容に挟むだけで、相手に与える印象を大きく和らげられたり、気遣いの気持ちが伝わったりと、不意なトラブル回避が容易になります。

ほかにも場面に適したクッション言葉を使い分けれると、自分の思いを的確に伝えられ、絶大な効果が望めます。

そこで具体的にクッション言葉として活用できる言葉を下の表にまとめましたので、参考にしてください。

【効果的なクッション言葉まとめ】

クッション言葉をはさむ場面 効果的なクッション言葉
お願いするとき 「恐れ入りますが」

「お手数をおかけしますが」

「大変申し訳ございませんが」

質問するとき 「差し支えなければ」

「もしよろしければ」

「失礼ですが」

お願いを断るとき 「申し訳ございませんが」

「心苦しいですが」

「せっかくですが」

意見・反論するとき 「僭越ながら」

「おっしゃることも重々承知しておりますが」

「差し出がましいようですが」

やめてほしいことや苦情を伝えるとき 「失礼かもしれませんが」

「厳しいことを伝えるようですが」

「大変申し上げにくいですが」

メラビアンの法則を意識する

スピーチロックの3つ目の対処法として、メラビアンの法則を意識することも有効です。

メラビアンの法則とはアルバート・メラビアンが提唱したコミュニケーションの概念で、「人と人とのコミュニケーションにおいて話し手のどのような情報が聞き手の印象に影響するか」を調査した研究によるものです。

この研究で、聞き手の印象に大きな影響を与えるのは「言語情報」、「視覚情報」、「聴覚情報」のうち「視覚情報」と「聴覚情報」が93%を占めていることがわかりました。

つまり自分の印象の9割が、表情や仕草などの視覚でわかる情報と、声の大きさや明るさなどの聴覚情報による部分で決まっているのです。

もちろんスピーチロックとなってしまう内容を伝えるのはリスクですが、笑顔やジェスチャー、相手を威圧しないような優しい口調と話すスピードを意識すると印象が変わります。

また、着てる服や髪型も大きく影響するため、優しい雰囲気を醸し出す服装と髪型を取り入れるのも有効です。

これらの非言語的な要素を意識するだけで、同じ内容であってもスピーチロックを避ける手段となります。

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まとめ|スピーチロックをなくすには相手を意識する

スピーチロックは、無意識で何気なく発した言葉によって本人に身体的拘束をかけてしまう恐ろしいものです。

またどこからがスピーチロックとなるのかの線引きが曖昧で、解決が非常に難しい問題となっています。

ですが、今回紹介したスピーチロックの対策を参考に、本人の立場に立って考えると、印象は大きく変えられます。

もし自分たちの力だけでは不安で、安心して介護を任せられる方法がないか考えているなら、プロの力を借りることも手段の1つです。

解決が難しい悩みでも、介護を楽にするためのサポートを提案してもらえるでしょう。

スピーチロックに関するよくある質問

Q.実際にこんなに禁止されているの?

A.実際にスピーチロックをなくす活動がされています。3つのロックのうちの一つの身体拘束のロックを廃止にしようとする身体拘束廃止委員会が現在スピーチロックも廃止しようと活動しています。

Q.どうして介護にかかわる方がスピーチロックを禁止されているの?

A.スピーチロックによる弊害が出てしまうのが高齢者です。そのため本人と関わる機会のある介護職の方に焦点が当てられています。いずれ子どもにも禁止されるようになるでしょう。

そのほか、在宅介護についての知識や日常のヘルスケアについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

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