自宅にいながら利用できるサービスの1つに、訪問マッサージがあります。訪問マッサージを利用したいなら、どのようなサービスが受けられるのか、いくらくらいの費用がかかるのかを知っておくことが大切です。
また、マッサージによって期待できる効果を把握しておくことも重要です。サービスについての理解を深め、訪問マッサージを利用するかどうかを考える際に役立てましょう。
訪問マッサージとは
まずは訪問マッサージがどのようなサービスなのか、基本的な理解から深めていきましょう。サービスの内容や期待できる効果など、知っておきたいポイントは数多くあります。
また、どのような人が利用できるのかや、間違いやすい訪問リハビリとの違いなども把握して、訪問マッサージについての正しい理解を持ちましょう。
サービス内容
訪問マッサージでは、あんまマッサージや指圧がサービスとして提供されています。あんまマッサージや指圧などは利用者の体に体重をかけてツボを刺激していくものであり、専門知識がない人が行うと、体に害を与えてしまうことも少なくありません。
そのため、サービスを提供しているのは専門知識や技術を持ったスタッフであり、信頼できるマッサージサービスが、訪問マッサージでは受けられると考えましょう。
ひとくちにマッサージといってもさまざまな種類がありますが、一般的に知られているアロママッサージなど、リラクゼーション目的のものは訪問マッサージに該当しません。
あくまでもツボを刺激するあんまマッサージや指圧が主なサービスとなっており、それ以外の内容は提供されていないことを理解しておく必要があります。
期待される効果
訪問マッサージによるあんまマッサージや指圧から期待できる効果としては、次のものがあげられます。
- 血液やリンパ循環の改善
- 精神的な安静
- 関節可動域の改善
- 炎症の改善や鎮痛
- 運動機能の維持や向上
- 生活リズムの形成
指圧によって体を刺激することで、血液やリンパの流れを改善して、心身ともに健康を目指します。マッサージによるリラックス効果によって精神的な安静が得られることも多く、身体機能だけではなく、精神面でのメリットがある点も魅力です。
また、関節の可動域を広げることができたり、炎症の改善や鎮痛などの作用が期待できることもあります。他にも身体機能の向上に伴う運動機能の維持や向上、さらに心身ともの健康を目指すことで生活リズムを形成するなど、訪問マッサージからはさまざまな効果が期待できるといえるでしょう。
訪問マッサージ師の資格
専門的な知識や技術を必要とする訪問マッサージでは、「あん摩マッサージ指圧師」という資格を持った人のみ、サービスを提供できます。これは国家資格であり、正しい知識や技術を持った人がマッサージを行っているという点が、安心できるポイントでしょう。
対象となる利用者
訪問マッサージでは対象となる利用者が定められており、それは次の条件に該当する人です。
- 脳血管障害や頸椎損傷などによる筋麻痺がある
- パーキンソン病やリウマチによる拘縮がある
- 脊柱管狭窄症による歩行困難や腰痛がある
- 寝たきりや日常生活が困難な症状がある
基本的には筋力の低下や関節が固まって動かないなど、身体機能に問題がある人が利用できるサービスです。訪問マッサージは外出が難しく、通院ができない人に向けられたサービスであるため、1人での通院が難しい人が、対象になると考えましょう。
もちろん、上記の症状に当てはまらない人や1人で通院が可能な人でも利用自体は可能ですが、この場合は費用が通常よりも高くなるため、この点には注意が必要です。
訪問リハビリとの違い
自宅で受けられるサービスはさまざまあり、訪問マッサージ以外では訪問リハビリというものがあります。訪問リハビリとマッサージには明確な違いがあるため、これを把握しておくことが大切です。それぞれのサービスの違いを知ることで、利用者にはどちらが適しているのかを正しく判断しましょう。
訪問リハビリとは
そもそも訪問リハビリとはどのようなサービスなのか、基本的な概要から把握しておきましょう。訪問リハビリは自宅で医療的なケアが受けられるサービスであり、あん摩マッサージ指圧師ではなく、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などがサービスの提供を行います。
これらリハビリの専門家が身体機能向上のための動作指導を行うことが、訪問リハビリの大きな特徴といえるでしょう。マッサージではなく、リハビリをメインとしたサービスの提供が訪問リハビリです。
2つのサービスの相違点
訪問マッサージとリハビリでは、サービスを提供する人が持っている資格が異なります。訪問マッサージでは、サービスの提供者はあん摩マッサージ指圧師の資格を持っていますが、訪問リハビリの場合はこの資格を持っている人はいません。
対して訪問リハビリでは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの有資格者であり、資格が違う点からスタッフが持っている知識や技術、受けられるサービスが異なることは理解しておきましょう。
また、訪問リハビリでは介護保険と医療保険の両方が適用できますが、訪問マッサージは介護保険が適用できません。医療保険のみ適用可能となるため、この点は覚えておく必要があります。
さらに保険を適用したサービスの利用にあたっては、訪問リハビリでは医師による指示書が必要ですが、訪問マッサージでは医師による診断書や同意書が必要であり、書類の種類が異なる点も大きな違いです。
訪問マッサージのメリットと注意点
サービスについての理解を深めるには、訪問マッサージならではのメリットを把握しておくことが大切です。メリットを知ることでサービスの魅力が深掘りでき、これによって訪問マッサージがどのようなものか、詳細まで把握できるでしょう。
また、注意点についても知っておくことが大切です。メリットと注意点の両方を理解することで、利用時に不満を抱えないようにしましょう。
メリット
次の3つが、訪問マッサージを利用するメリットです。
- 自宅で施術を受けられる
- 医療保険が適用できる
- リハビリよりも身体的な負担が少ない
訪問マッサージは外出が難しい人に向けたサービスであるため、自宅にいながら施術が受けられます。高齢者に向けたマッサージサービスは数多くありますが、その中でも訪問マッサージは外出の必要がないため、体が動かせない人でも利用できる点は大きなメリットです。
また、サービスの利用には医療保険が適用できるため、安価で施術を受けられる点もメリットといえます。もし介護保険サービスを別途利用していて、月額の上限を超えている場合でも、医療保険を適用することで保険の範囲内の自己負担でサービスを受けられます。
つまり、少ない自己負担でマッサージを受けられるため、金銭的な負担を軽減できる点は、大きな魅力といえるでしょう。他にもリハビリと比較すると、利用者の身体的な負担が少ない点も訪問マッサージのメリットです。
リハビリは機能回復訓練であるため、高齢者にとってはつらい内容となってしまうことも多いです。マッサージならリラックスしながら受けられるため、負担も少なく長く続けられます。
リハビリでは心身ともに負担が大きくて続けられなかったという人は、訪問マッサージに切り替えて身体機能の向上を目指すことも1つの方法です。
注意点
訪問マッサージを利用する際の注意点としては、次の点があげられます。
- 医療保険を適用するには医師の診断書や同意書が必要
- 症状や疾患が対象外の場合は全額自己負担
訪問マッサージは医療保険が適用できますが、これを利用するには医師による診断書や同意書が必要です。これらの書類がなくてもサービス自体は利用できますが、保険の適用対象外となって全額自己負担しなければならない点は注意しなければなりません。
また、対象となる症状や疾患がある人でないと、保険の適用はできず、費用は全額自己負担となります。誰でも訪問マッサージのサービス自体は利用できるものの、状況次第では保険適用外となる場合があることは理解しておきましょう。
訪問マッサージの利用概要
実際にサービスの利用を検討しているなら、訪問マッサージの利用概要を知っておきましょう。把握しておきたいポイントとしては、次の4つがあげられます。
- 費用
- 訪問リハビリとの併用について
- 利用の流れ
- 訪問マッサージ業者の選び方
これらのポイントを把握しておくことで、訪問マッサージについての理解がさらに深められます。
費用
サービスの利用には費用がかかるため、これについての理解を深めておくことが大切です。知っておきたいポイントとしては、通常の利用料と保険適用の可否、自由診療の場合のコストなどがあげられます。これら3つを把握して、費用面について詳しくなっておきましょう。
利用料
料金は体の部位ごとに決められており、1局所につきいくらと費用が変動します。局所とは次の5つであり、マッサージをしてもらう部位が増えるほど、料金も高くなると考えましょう。
- く幹
- 右上肢
- 左上肢
- 右下肢
- 左下肢
また、訪問マッサージでは指圧師に自宅まで来てもらうため、この往復の交通費も費用として計算されます。交通費がいくらかかるかは事業所の場所と自宅までの距離によって事なり、距離が遠いほど費用は高くなると考えましょう。
保険の適用
訪問マッサージは医療保険の適用が可能であり、医師による診断書や同意書がある場合や、症状の疾患該当するケースでは、健康保険証の自己負担割合でのサービスの利用となります。
自己負担割合は収入は年齢などの要件で異なり、1~3割と変動します。また、障害者受給者証を持っている人は助成を受けられるため、コスト負担はさらに軽減できるでしょう。
自由診療
医師による診断書や同意書がない場合や、保険適用外となる疾患や症状を持っている人、外出や通院が可能な人でも、訪問マッサージの利用は可能です。この場合は医療保険の適用対象外となるものの、自由診療でサービスが受けられます。
つまり、医療保険による自己負担割合の軽減がないため、費用が全額自己負担となることは覚えておきましょう。コストが高くても訪問マッサージを受けたいという人は、自由診療で利用することも選択肢の1つです。
訪問リハビリとの併用について
訪問マッサージと訪問リハビリの併用は可能であり、利用者の身体状況に合わせて、サービスを組み合わせることがおすすめです。マッサージによるさまざまな効果を期待するだけではなく、身体機能の回復訓練も受けたい場合は、リハビリとの併用を考えましょう。
リハビリは医療保険だけではなく、介護保険の適用も可能であるため、それぞれ保険適用の範囲内でサービスを受けることで、費用負担は軽減できます。
利用の流れ
実際に訪問マッサージを受ける際には、まずは医師に相談する必要があります。医師にサービスを利用したい旨を伝えて、診断書や同意書など必要な書類を作成してもらいましょう。
書類をもらったならケアマネージャーに相談して、おすすめのサービス業者を紹介してもらいます。ケアマネージャーはケアプランの作成や管理をする専門知識を持った人であり、わからないことは積極的に質問しておくことがおすすめです。
ケアマネージャーに相談して利用先の事業者を決めたなら、予約を取って定めた日時から訪問マッサージの利用開始となります。
訪問マッサージ業者の選び方
訪問マッサージを利用するなら、業者の選び方も知っておくことが大切です。業者を選ぶ際には、まずは医療保険が適用できるかをチェックしておきましょう。保険の適用外となると、利用時のコストが高くなってしまうため、これは必ず確認しておかなければなりません。
業者を選ぶ際には、自分でネットで情報を収集することはもちろん、ケアマネージャーにも相談しながら、どの業者が良いのかを確認してもらいましょう。また、本人とも話し合うことが大切であり、どのような施術を受けたいのかは、家族と共通認識を持っておく必要があります。
マッサージを中心としたサービスを求めるのか、リハビリに近い内容で施術をしてもらうのかで、利用すべき業者は異なるため、要望は必ず確認しておきましょう。また、お試しで利用ができる業者なら、まずはそれを受けてみて、サービスの良しあしを判断することもおすすめです。
訪問マッサージは利用希望者が多い
訪問マッサージは介護サービスの中ではあまり知られていませんが、利用希望者は多く、人気のサービスです。また、医療保険の適用が可能であるため、低コストで受けられる点も大きな魅力でしょう。
実際に利用を考えているなら、どのような施術内容を求めるか、また、どの業者を利用するかを考えておくことが大切です。業者によって提供しているサービス内容の詳細が異なることは多く、業者選びで失敗すると不満を抱えてしまうことも少なくありません。
サービスの概要を知ることはもちろん、費用や業者の選び方といった細かいポイントも把握して、訪問マッサージの利用を検討しましょう。