自宅にいながら利用できるサービスの1つに、訪問マッサージがあります。訪問マッサージの利用をお考えであれば、訪問マッサージの内容、効果、対象者、費用について知っておくことが大切です。
また、マッサージによって期待できる効果を把握しておくことも重要です。サービスについての理解を深め、訪問マッサージを利用するかどうかを考える際に役立てましょう。
訪問マッサージとは
訪問マッサージとは、国家資格を持った「あん摩マッサージ指圧師」が歩行困難などの理由で通院が難しい方に対して自宅や入居施設を訪問し、マッサージなどを行うサービスです。介護保険は利用できませんが、医療保険を適用することができます。そのため、要介護認定を受ける必要はありませんが、利用するには医師の同意書(診断書)が必要です。
まずは訪問マッサージでは具体的にどのような施術を受けることができるのかについて理解を深めていきましょう。
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訪問マッサージの内容
訪問マッサージでは、具体的にどのような施術が行われるのか、提供される内容についてまずは解説していきます。
「あん摩マッサージ指圧師」が行う施術の種類
「あん摩マッサージ指圧師」の資格を持っている人が行う訪問マッサージの中には、「あん摩」「マッサージ」「指圧」があり、その他に「変形徒手矯正術」があります。
あん摩
あん摩とは、「押す・揉む・さする・なでる・たたく」といった手法で体の不調を改善する手技療法です。主に筋肉内の血流をよくし新陳代謝を促すことで疲労や肩こり、頭痛などの変調を整えます。古代の中国で誕生し日本に渡来した「あん摩(按摩)」は、「おさえること」を意味する“按”と、「なでること」を意味する“摩”の字が組みあわさった言葉です。
東洋医学の考え方に基づいて鍼灸や湯薬とともに発展してきたあん摩術は、主に心臓から遠ざかるよう(体の中心から末梢に向かって)遠心性の刺激を与え、身体の変調を整えて健康増進を図ります。
マッサージ
マッサージは、皮膚に直接刺激を与えることで、主に血液やリンパ液の循環を改善して新陳代謝を促し、循環器や消化器系などの疾患の改善を図ります。
あん摩が東洋由来の施術であるのに対して、マッサージはヨーロッパで生まれ明治以降に日本に持ち込まれた手法です。あん摩と同じく手を使って施術しますが、マッサージは皮膚に直接刺激を与え体の中心に向かって求心性の刺激を加えることで、血液やリンパ液の循環の改善を目指す手技療法です。
指圧
指圧とは、あん摩の中の“押す”方法が日本独自に発展した手技療法です。手指や手のひらを使って全身に定められた“ツボ”と呼ばれる指圧点を押すことで生体機能に作用させ、本来人間に備わっている自然治癒力の働きを促進させることを目的としています。
これらの施術内容は身体の深いところまで刺激を与える可能性があるため、国家資格を持ったあん摩マッサージ指圧師が行う必要があります。
変形徒手矯正術
変形徒手矯正術とは、関節の可動域の拡大と筋力増強の促進、及び症状の改善を目的として行われる徒手術です。
躯幹(体幹)を除く6大関節(肩・肘・手関節、及び股・膝・足関節)に対して行われます。
ただし、マッサージに追加されて行われるものなので、単独に施術することはありません。
期待される効果
訪問マッサージによる「あんま」「マッサージ」「指圧」から期待できる効果としては、次のものがあげられます。
- 血液やリンパ液循環の改善
- 新陳代謝の促進
- 褥瘡の予防
- 関節可動域の改善
- 運動機能の維持や向上
- 疼痛の緩和
- 精神的な安静
- 生活リズムの形成
その他、マッサージによるリラックス効果や、疼痛の緩和によって得られる精神的な安静もあり、生活の質を維持させることに役立ちます。
身体機能だけではなく、精神面でのメリットがある点も魅力で、訪問マッサージにはさまざまな効果が期待できるといえるでしょう。
対象となる利用者
訪問マッサージの対象となる利用者は次の通りです。
- 脳血管障害、頸椎損傷、パーキンソン病、リウマチ、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などによって筋肉に麻痺や萎縮がある、または関節に変形や拘縮がある
- 脊柱管狭窄症による歩行困難や腰痛がある
- 寝たきりや日常生活が困難な症状がある
以上のような身体症状の他に、
- 自力歩行が難しいため、通院が困難な人
- 公共交通機関を使っての自力通院が困難な人
- 医師が必要と認めた人
が対象となります。
基本的には筋力の低下や関節が固まって動かないなど、身体機能に問題がある人が利用できるサービスです。
もちろん、上記の症状に当てはまらない人や1人で通院が可能な人でも、医療保険を利用せず全額自己負担であれば訪問マッサージは利用できます。
訪問マッサージの施術時間
訪問マッサージの施術時間は事業者にもよりますが、概ね30分程度のところが多いようです。料金については後程説明しますが、訪問マッサージは一般的なマッサージとは料金体系が違います。単純に施術時間で料金が決まっているのではなく、施術箇所や内容によって料金が決まっています。
そのため、事業者によって時間が変わることが多いので、訪問マッサージを依頼する前に施術時間はどれくらいになるのか確認しておきましょう。
訪問マッサージの頻度
訪問マッサージの頻度は受ける人の身体機能の状態などを医師が総合的に判断して決めますが、機能回復を目的にしている場合は週3回以上の施術が一般的なようです。
また、身体の状況に応じて施術回数の見直しを一定期間ごとに行われます。
訪問マッサージの期間
訪問マッサージは医療保険が適用されるため、医師の同意書が必要です。同意書の有効期限は6ヶ月と決まっています。有効期限を過ぎてなお訪問マッサージの継続を希望する場合は、再度医療機関を受診した上で、新しい同意書を作成してもらう必要があります。
なお、「変形徒手矯正術」の施術には、訪問マッサージと合わせて「変形徒手矯正術」の同意書が必要となります。有効期限は1ヶ月ですので、毎月医療機関を受診する必要があります。
訪問マッサージの料金
訪問マッサージの料金は厚生労働省によって定められており、全国一律の料金体系となっています。具体的には、以下の3つの要素で訪問マッサージの料金は決定します。
- 部位数・施術の内容
- 訪問距離
- 保険者の負担割合
それぞれで、かかる費用について解説していきます。
部位数と施術の内容(同意書の内容)
訪問マッサージの施術には、「あん摩・マッサージ・指圧(以下、「マッサージ」と称す)」と「変形徒手矯正術」の2種類があります。
マッサージを利用した場合は1部位(1単位)350円、変形徒手矯正術を受ける場合は1肢450円が加算されていきます。
例えば、3部位にマッサージを、1肢に変形徒手矯正術を施した場合、
350円×3+450円=1,500円となります。
マッサージの部位は全部で5部位ある
訪問マッサージで施術する体の部位は全部で5部位あります。
- 躯幹(体幹)
- 右上肢
- 左上肢
- 右下肢
- 左下肢
全てで5部位あるので、最大でマッサージ費用は350円×5=1,750円となります。ここに変形徒手矯正術(※)を施すとその分費用が加算されていきます。
変形徒手矯正術とは
変形徒手矯正術とは関節の可動域の拡大と筋肉増強を促し、症状の改善を目的とする施術です。躯幹(体幹)を除いた6大関節(肩・肘・手関節、及び股・膝・足関節)を対象とし、1肢ごとに算定可能です。
変形徒手矯正術は6大関節それぞれに対して費用が加算されていくのではなく、躯幹(体幹)を除いた部位ごとに加算されていくので、最大で4部位(左上肢・左下肢・右上肢・右下肢)となり、費用は最大450円×4=1,800円となります。
なお、変形徒手矯正術はマッサージの加算として取り扱われるので、単独の施術ではなく、「マッサージ」「変形徒手矯正術」両方の同意書が必要です。
訪問距離
訪問マッサージを利用すると往療料(出張費用)が掛かります。往療料の金額は訪問距離が4km以内か4km以上かの2通りです。
4km以内の場合は2,300円、4kmを超える場合は2,550円です(全額自己負担の場合)。
この距離は、地図上の直線距離です。「訪問事業所から自宅までの距離」または「前訪問先から自宅までの距離」のどちらか短い方の距離を優先し算定されます。
なお、介護施設などにあん摩マッサージ指圧師が赴いて複数の人へ訪問マッサージを行う場合、どなたか一人に対して往療料が算定されます。
保険者が負担する割合
訪問マッサージでは「医療保険」が利用できます。そのため、実際の合計金額(施術に対する料金+往療料)に対して、利用者は1~3割を負担します。
負担の割合は、75歳以上の者が1割負担、70歳以上74歳以下のものが2割負担、現役世代又は現役並みの所得がある場合は3割負担となっています。
ただし、心身障害者医療費助成制度を利用した場合は、自己負担なしで訪問マッサージを利用することができます。
料金シミュレーション
最後に、訪問マッサージを利用した場合のすべての支払いパターンを紹介します。まずは、訪問距離が4㎞以内の場合です。
訪問距離4km以内(往療料2,300円)の場合
変形徒手矯正術 0部位 | 1部位(+450円) | 2部位(+900円) | 3部位(+1350円) | 4部位(+1800円) | |
---|---|---|---|---|---|
マッサージ 1部位(350円) | 2,650円 | 3,100円 | 3,550円 | 4,000円 | 4,450円 |
マッサージ 2部位(700円) | 3,000円 | 3,450円 | 3,900円 | 4,350円 | 4,800円 |
マッサージ 3部位(1050円) | 3,350円 | 3,800円 | 4,250円 | 4,700円 | 5,150円 |
マッサージ 4部位(1400円) | 3,700円 | 4,150円 | 4,600円 | 5,050円 | 5,500円 |
マッサージ 5部位(1750円) | 4,050円 | 4,500円 | 4,950円 | 5,400円 | 5,850円 |
訪問距離4km以上(往療料2,550円)の場合
変形徒手矯正術 0部位 | 1部位(+450円) | 2部位(+900円) | 3部位(+1350円) | 4部位(+1800円) | |
---|---|---|---|---|---|
マッサージ 1部位(350円) | 2,800円 | 3,350円 | 3,800円 | 4,250円 | 4,700円 |
マッサージ 2部位(700円) | 3,250円 | 3,700円 | 4,150円 | 4,600円 | 5,050円 |
マッサージ 3部位(1050円) | 3,600円 | 4,050円 | 4,500円 | 4,950円 | 5,400円 |
マッサージ 4部位(1400円) | 3,950円 | 4,400円 | 4,850円 | 5,300円 | 5,750円 |
マッサージ 5部位(1750円) | 4,300円 | 4,750円 | 4,200円 | 5,650円 | 6,100円 |
費用例
以下のケースでの費用例を紹介します。
- 訪問距離4km以内
- 脳卒中の後遺症で右片麻痺の人が、麻痺側の上肢・下肢にマッサージを受ける
- 関節に変形徒手矯正術を施す
(350円+450円)×2=1,600円
4km以内なので、往療費2,300円
合計して3,900円となります。
利用を検討している人は、利用シミュレーションを用いて、費用を計算してみることをおすすめします。
訪問リハビリとの併用も可能
訪問マッサージと訪問リハビリの併用は可能であり、利用者の身体状況に合わせて、サービスを組み合わせることができます。マッサージによるさまざまな効果を期待するだけではなく、身体機能の回復訓練も受けたい場合は、リハビリとの併用を考え主治医(医師)とケアマネジャーに相談してみましょう。
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訪問マッサージの利用の流れ
訪問マッサージを利用するには以下の4ステップで利用を進めていきます。
- 訪問マッサージを行っている事業者(所)を決める
- 初回カウンセリングを受ける
- 同意書を依頼する
- 施術の開始
それぞれのステップについて解説していきます。
訪問マッサージを行っている事業者を決める
まずは訪問マッサージを行っている事業者に問い合わせをして、初回カウンセリングを受ける日程を調整します。
「あん摩マッサージ指圧師」や事業者(所)を選ぶときは、医師やケアマネジャーに相談することをおすすめします。google検索で「(エリア名) 訪問マッサージ」などで検索することもできます。
初回カウンセリングを受ける
初回カウンセリングでは、「あん摩マッサージ指圧師」が自宅に実際に訪問して利用者の健康状態や希望、家族の要望等の聞き取りをします。その際、事業者によっては体験マッサージを実施しているところもあります。
聞き取りと無料体験マッサージが終わり、料金体系や今後の利用の流れなどの説明を受けた上で、満足できる内容であれば申し込みをしましょう。
同意書を依頼する
訪問マッサージを利用するには医師に同意書を書いてもらう必要があります。訪問マッサージにおいては「筋麻痺・筋萎縮がある方、または関節拘縮がある方」「身体的要因だけでなく、社会的要因も含めて公共交通機関を使っての自力通院が難しい方」が対象となっているので、単なる健康維持や予防のための利用の場合は同意書を書いてもらえないことがあることに注意しましょう。
同意書作成の手続きは基本的には事業者側が行ってくれます。同意書の発行は依頼から数日で発行されることがほとんどですので、すぐに訪問マッサージを利用することが可能です。
なお、同意書の有効期限は6か月間と決まっています。有効期間を過ぎて施術を継続する場合は再度医師の同意を得る必要があることに注意しましょう。同意書の再発行を希望する場合は、事業所が発行した施術報告書を持参のうえ、医療機関を受診しましょう。
施術の開始
医師の同意書を確認できたらいよいよ施術が始まります。初回カウンセリングの内容や医師の指示を基づいて治療方針・施術回数などの計画が立てられ実施されます。
1回当たりの施術の時間は概ね30分程度です。場合によってはそれよりも長くなることがあります。
訪問マッサージの事業者の選び方
訪問マッサージを利用するなら、事業者の選び方も知っておくことが大切です。
ここでは具体的な事業者の選び方を紹介していきます。
毎回、施術するあん摩マッサージ指圧師が替わらないか
訪問マッサージの事業者を選ぶ際は、毎回、施術するあん摩マッサージ指圧師が替わらないかをチェックしておきましょう。
施術を受ける方が特に高齢の方であれば毎回施術する人が替わることがストレスの原因にもなりかねません。また、施術している最中に痛みや凝りなどの要望を伝えていたとしても、別のあん摩マッサージ指圧師に替わることでそれが伝達されないまま毎回マッサージを受けることになります。
また、事業者によっては国家資格のない学生や無資格の整体師に施術させている悪徳業者もあります。そのため、施術の際は毎回国家資格の免許を確認してから利用するようにしましょう。
施術回数を多くするようにすすめていないか
訪問マッサージはリラクゼーションマッサージではなく、治療目的の医療マッサージとなります。そのため、医師の同意書などをもとに施術内容を決めていきますが、事業者によっては売り上げを立てるために週に5回以上など必要以上に多くマッサージをすすめてくるところもあります。
施術回数があまりにも多い場合などは担当のケアマネジャーや医師に施術内容について相談し、場合によっては事業者の変更を検討しましょう。
ケアマネジャーや医師との連携を取れているか
訪問マッサージを利用する際は、担当している医師・看護師やケアマネジャー、ソーシャルワーカーなどとの連携が必要不可欠です。
しかし事業者によってはこういった関係者との連携をあまりとらず、患者さんの症状や心理状態などを把握せずに施術を続ける事業者もあります。
訪問マッサージの事業者によっては積極的にケアマネジャーとコミュニケーションを取ってくれるところもあるので、ホームページや口コミなどを確認し事前にチェックしておきましょう。
訪問マッサージでよくあるトラブルに注意
訪問マッサージでよくあるトラブルとしては、主に料金関連のトラブルがあります。それぞれ具体的なトラブル例について紹介していきますので、訪問マッサージを利用する前に十分確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。
往療料に注意
訪問マッサージはあん摩マッサージ指圧師が自宅に赴いて施術をするため、全国一律で往療料が定められています。「訪問事業所から自宅までの距離」または「一つ前の訪問先から自宅までの距離」が4㎞以内か4km以上かで決められます。
基本的には、どちらか距離の短い方を優先し算定されますが、事業者によっては対応が異なる場合がありますので、必ず事前に確認しましょう。
例えば、訪問事業所から自宅までの距離が4km以内なのに、一つ前の訪問先から自宅までの距離が4km以上だった場合に、往療料を高く算定する事業所があるのです。
施術部位に注意
訪問マッサージの料金は、医師の同意書(診断書)による施術部位数と内容によって変動します。同意書の有効期限は6ヶ月ですので、有効期限を過ぎてなお訪問マッサージの継続を希望する場合は、再度医療機関を受診して新しい同意書を作成してもらう必要があります。再受診した結果、医師の診断により施術部位数と内容に変更があれば、料金にも違いが出てきます。
また、厚生労働省によって全国一律で定められている料金体系は改定されることがありますので、今までと同じ内容だから今までと同じ料金ということにならない可能性があります。
以上のように、訪問マッサージの料金は「往療料」「施術部位数と内容」「厚生労働省の料金体系の改定」によって変動する可能性があるということを把握しておきましょう。
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訪問マッサージは利用希望者が多い
訪問マッサージは、利用希望者が多く、人気があります。また、医療保険の適用になるため、自己負担が全額の1~3割で受けられる点も大きな魅力でしょう。
実際に利用を考えているなら、どのような施術内容を求めるか、また、どの訪問マッサージ事業者を利用するかを考えておくことが大切です。事業者によって提供しているサービス内容の詳細が異なることは多く、業者選びで失敗すると不満を抱えてしまうことも少なくありません。
サービスの概要を知ることはもちろん、費用や事業者の選び方といった細かいポイントも把握して、訪問マッサージの利用を検討しましょう。