「最近物忘れがひどくなった」「もしかして認知症かもしれない」自分が高齢になるとこのような不安を抱くもの。そんな時は、一度認知症簡易検査を受けてみるとよいでしょう。
認知症簡易検査には「長谷川式認知症スケール」と呼ばれる認知症疑いのある方専用の検査があり、多くの病院・クリニックで採用され、自宅でも受けられるものです。この記事では検査の概要や質問項目、自宅で受ける際の注意点について解説します。
長谷川式認知症スケールとは?
長谷川式認知症スケールは、認知症疑いの方の診断に用いる検査で、6~10分で行えます。9種類の質問に答えるだけで認知症の疑いが高いかどうか判断できます。検査方法の信頼性が高く、多くの病院・診療所や介護施設で使用されており、検査用紙を印刷すれば自宅でも検査可能です。
検査で使用する物品は身の回りにあるもので完結でき、以下の通りです。
- メモ紙
- ペン
- テストで使用する関連性のない物品(写真・硬貨・消しゴム・リモコン・コップなど)
検査を行う際の注意点もあり、検査方法を誤れば認知症かどうか正しく判定できません。検査方法の説明を行ったあと、注意点の説明を行いますので、検査前に確認してください。
認知症の方の受け入れをしている施設を探しているという方はケアスル介護がおすすめです。
入居相談員にその場で条件に合った施設を提案してもらえるので、認知症対応可能な施設をスムーズに探すことが出来ます。
初めての施設探しで何から始めればよいかわからないという方はぜひ利用してみてください。
ピッタリの施設を提案します
ピッタリの施設を提案します
ピッタリの施設を提案します
長谷川式認知症スケールの質問項目
検査の質問項目を9つ紹介します。質問項目は次のとおりです。
- 年齢
- 日付
- 場所の認識
- 逆唱
- 近時記憶
- 短期記憶
- 語想起・流暢性
出題する順番は上記番号順です。当検査の出題内容は記憶に関するものが多いです。特に4問目と7問目は順番が重要なので間違えのないよう注意してください。問題の出題方法や注意点について説明していきます。
問1.年齢
解答者の現在の年齢を確認します。満年齢を答えられたら1点とします。実年齢±2歳までは許容範囲内です。理由として、解答者の年齢の認識が数え年だったり、テスト実施日が誕生月で誕生日を迎えていないが年齢を加算していたりするからです。
出題者は解答後、免許証やマイナンバーカードなどで正しい年齢を確認しましょう。
問2.日付
今日の日付(月、日)曜日、年をそれぞれ質問します。月、日、曜日、年で各1点とし、すべて正しく答えられたら4点です。一度に全部出題してもよいですし、各項目ごと順不同で出題しても問題ありません。基本ルールとして、カレンダーやスケジュールが確認できる物が側にある場所で質問するのは避けてください。
問3.場所の認識
現在どこにいるか場所について質問します。自宅・病院・介護施設の正式名称でなくても問題ありません。「私の部屋」や「談話室」といった本質的な意味が合っていればOKとしてください。質問に対し即答できれば2点、5秒経っても答えられなければヒントを出し、ヒントを出した後にしっかりと答えられれば1点です。ヒントを出しても答えられなかった場合は0点です。
問4.単語の記憶力
出題する単語を3つ覚えてもらい復唱できるかを見ます。単語は次の1もしくは2のどちらかのグループから選択してください。
- 桜・猫・電車
- 梅・犬・自動車
3つの単語を聞いたあと、各単語が復唱出来たら各1点の3点満点です。思い出せないようでもヒントは出さないでください。答えられない場合は0点です。次の問題に移る前に、あとで覚えた単語を再度尋ねるので覚えておくよう伝えてください。
問5.計算力
5問目は計算力を問います。簡単な計算なので紙やペンは使わず、解答者には暗算で100-7を行ってもらいます。正解である93が問題なく答えられたら、さらに7を引いて正解が答えられるかテストしてください。93が答えられなかった時点で得点は0点となり、問5は終了です。93が答えられたら1点、86が答えられれば2点です。
問6.逆唱
2通りの数字を言い、逆の順番に答えてもらいます。2通りの数字は以下の通りです。
- 6-8-2
- 3-5-2-9
解答者が聞き取りやすいよう、はっきりゆっくりと数字を伝えます。1番の数字の逆唱に失敗した際、2は行わず得点0点で問6は終了です。1番のみ成功した場合は1点、1・2の両方成功したら2点です。
問7.近時記憶
問4で出題した単語をもう一度答えてもらいます。出題した単語は以下1・2のどちらかです。
- 桜・猫・電車
- 梅・犬・自動車
ヒントなしで答えられた場合は各2点の合計6点、即答できない場合は1単語ずつ順番にヒントを与え、問題なく回答できたら各1点とします。ヒントを出しても答えられなかった場合は0点です。
問8.短期記憶
5種類の物品を見せ、すべて覚えてもらいます。各物品はそれぞれ関連性のない物を選択してください。5種類すべて見せ終わったあと物品を隠し、覚えた物の名前を答えてもらいます。選択する物品の例はこちらです。
例:服・ペン・リンゴ・携帯電話・硬貨
見せる順番と答える順番は違っても問題ありません。名前を覚える際は、本人が名前を理解しているかを確認してください。名前が分かっていないとテストができないので、見せている物の名前を復唱してもらい次へ移ります。回答時間は少し長めに取り、思い出すための時間を設けてください。
問9.語想起・流暢性
本人が覚えている野菜の名前を可能な限り教えてもらいます。配点は以下の表を参考にしましょう。
正答数 | 配点 |
0~5個以内 | 0点 |
6個 | 1点 |
7個 | 2点 |
8個 | 3点 |
9個 | 4点 |
10個以上 | 5点 |
テスト時の注意点は2つです。
- 重複した名前は一度記録用紙に記入し、採点時に省く
- 名前が出なくなり10秒経過した時点で終了とする
以上で出題項目の説明は終了です。
長谷川式認知症スケールの配点表
各問の配点と問題の出し方を表にまとめます。
問題 | 出題の仕方 | 配点 |
問1 | 「○○さんは今いくつですか?」 | 1点:正しく解答できた場合
0点:間違った年齢を答えた場合 |
問2 | 「今日は何年何月何日何曜日ですか?」
もしくは 「今年は何年ですか?」 「今月は何月ですか?」 「今日は何日ですか?」 「今日は何曜日ですか?」 |
各1点:正しい「年」「月」「日」「曜日」が答えられた場合
0点:間違った年月日曜日を答えた場合 |
問3 | 「今いる場所はどこですか?」 | 2点:即座に正しい場所を答えられた場合
1点:ヒントを出し正しい場所を答えられた場合 0点:ヒントでも答えられない場合 |
問4 | 「今から3つの言葉を紹介するので私が言ったあと○○さんも同じ言葉を言ってください」
「紹介した3つの言葉は、あとでまた聞くので覚えていてください」 |
各1点:単語を言えた場合
0点:単語を言えなかった場合 |
問5 | 「簡単な引き算を行ってもらいます。100-7はいくつですか?」
「さらに7を引いたらいくつですか?」 |
2点:93、86両方答えられた場合
1点:93のみ答えられた場合 0点:93と答えられなかった場合 |
問6 | 「私が言う数字を逆から答えてください」
「6-8-2」 「3-5-2-9」 |
2点:両方逆から言えた場合
1点:「6-8-2」のみ逆から言えた場合 0点:逆から言えなかった場合 |
問7 | 「4問目で3つの言葉を覚えてもらいました。その3つの言葉を教えてください」 | 各2点:自ら正答できた場合
各1点:ヒントで正答できた場合 0点:ヒントでも正答着なかった場合 |
問8 | 「今から見せる5つの物の名前を覚えてください。」
「確認のために私が物の名前を言った後、復唱してください。」 「見せた5つの物の名前を教えてください。」 |
各1点:名前が答えられた場合
0点:名前が答えられなかった場合 |
問9 | 「○○さんが覚えている野菜の名前を全部教えてください」 | 0点:5個以内
1点:6個 2点:7個 3点:8個 4点:9個 5点:10個以上 |
出題者は上表の問題の出し方を参考に出題してください。
長谷川式認知症スケールの受け方
長谷川式認知症スケールは病院・診療所で受けられます。病院・診療所で受けたい方は以下5つの診療科を受診してください。
- 精神科
- 脳神経内科
- 脳神経外科
- 老年科
- もの忘れ外来
費用は医療保険が適用されるため、負担割合によって異なります。初診料のほか、負担割合ごとの費用は次の通りです。
- 3割負担:240円
- 2割負担:160円
- 1割負担:80円
自宅で検査する場合は以下の点に注意してください。注意点を守らずに検査すると、実際よりも悪い結果が出たり、本当は認知症の方がよい点数が出たりします。本検査は優れた検査方法ですが、使い方を誤ると認知症かどうかの切り分けができません。
自宅で検査する場合は注意点を理解したうえで行いましょう。注意点は次の4点です。
- 静かな場所で行う
- 問題が聞こえるか確認する
- 短期間で複数回行わない
- 本人の承諾を得て検査する
順番に説明していきます。
静かな場所で行う
長谷川式認知症スケールを自宅で行う際は、テレビを消し音楽をかけずに集中できる環境をつくります。可能であれば、出題者と回答者の二人だけの空間を確保したうえで検査するとよいでしょう。理由は、ほかの方が邪魔をしたり、テレビや音楽によって解答者が検査に集中できず、記憶力や認識力が低下したりなど、正しい検査結果が出ないからです。
認知症簡易検査は「もしかしたら認知症かもしれない」といった疑いを明確にするために行います。正しく検査できない場所で行っても意味がありません。検査自体は10分程度で終わるので、回答者が集中できる環境に整えてください。
問題が聞こえるか確認する
長谷川式認知症スケールは出題者が口頭で出題します。そのため、出題者の声が回答者にはっきり聞こえていないと検査できません。検査を開始する前に回答者に声の大きさが問題ないか、聞こえ方が大丈夫か確認が必要です。
高齢者の中には声の大きさだけでなく話すスピードにより聞こえ方が変わる方もいます。出題者の座る位置にも留意してください。補聴器を装着しており、右耳もしくは左耳が聞こえやすいと言われる場合もあります。そんな時は対面ではなく隣り合う形で座り、解答者が答えやすい状態にしてから検査を始めてください。
短期間で複数回行わない
長谷川式認知症スケールは問題数が9問と少なく、問題内容も簡単に作られており、毎回出題内容が一緒です。短期間に何度も検査を行うと出題内容を覚えてしまい、検査結果が本来の結果よりも良くなってしまいます。
検査後に病院を受診する際は、自宅で検査を行った旨を医師に伝えましょう。その理由は自宅で検査した直後に病院で再び検査をした場合、結果が良ければ、認知症を否定されるかもしれないからです。
毎回出題内容が変わる検査ではないので、短期間に複数回検査しても結果に信憑性はありません。厚生労働省が定めた診療報酬では、病院・クリニックで行った認知症簡易検査の請求は3ヶ月に1回と決められています。自宅で同じ方に長谷川式認知症スケールを行う場合の目安として、3ヶ月に1回をサイクルに行いましょう。
本人の承諾を得て検査する
長谷川式認知症スケールを行う前に、本人の了承を得る必要があります。検査を受ける方が認知症の心配をしていないのに、急に認知症の検査をされれば機嫌を損ねたり不信感を抱かれたりする可能性があるためです。
検査を行うには事前に、身近で生活している者の視点から認知症の可能性がある旨を話し、了承を得てから行いましょう。解答者をだましたり嘘をついたりしてまで検査するのは避けてください。
検査結果が悪い状態で病院やクリニックを受診すれば、認知症の検査だったと本人に気付かれてしまう可能性もあるでしょう。本人が強く拒否するのであれば検査は行わず、後日また話し合いの場を設けてください。
当検査は無理に行う必要はありません。家族が認知症の兆候に気づいた場合は、直接病院やクリニックを受診し早期発見に務めるのが大切です。
長谷川式認知症スケールの注意点
注意点としては、検査を受けた結果が悪かった=認知症の可能性が高いと判断できる点です。長谷川式認知症スケールは認知症かどうかを決定づけるための検査ではありません。あくまで簡易的な検査であり、点数の高さにより認知症の度合いがわかるものです。
検査を受ける本人の精神状態や、検査を受ける姿勢によって結果は変わります。長谷川式認知症スケールはあくまで認知症かを計測するための簡易検査です。認知症かどうかを判断するには、医師の問診や血液検査・MRIやCTなどの画像診断などを行ってください。
長谷川式認知症スケールの結果が20点以下は認知症かも?
長谷川式認知症スケールを行い、総合結果が20点以下だった場合は、認知症の可能性が高くなります。点数が低くなればなるほど重症度が増す傾向にあります。20点以下と診断された方は、一度医療機関で診てもらうとよいでしょう。
平成20年より全国の都道府県が主体となって、認知症疾患医療センターの設置を行っています。認知症疾患医療センターでは、認知症の相談や認知症の診断を行っています。2019年4月時点で449箇所設置(※出典 厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」)されており、各都道府県のホームページで医療機関を検索可能です。
東京都の場合、「東京都認知症疾患医療センター」と検索すると、検索結果に医療機関にかかわるサイトが一覧表示されます。かかりつけ医や最寄りに認知症専門外来がない地域の方は、検索結果一覧に表示された医療機関へ相談し、今後の対応策を決めるとよいでしょう。
認知症は早期発見によって進行を遅らせたり、本人が判断できるうちに今後の準備を進められたりと対策が可能な病です。仮に認知症では無かったとしても、別の病気が発見される場合もあります。早めに受診して得られるメリットは大きいですから、まずは医療機関へ問い合わせてみましょう。
認知症の検査でかかる費用はいくら?知っておきたいサービス利用の話
認知症の方を施設に入れるタイミングは?進行度・きっかけなどを解説
認知症の方を施設に強制入所させても良い?嫌がる原因から対処法まで徹底解説
ピッタリの施設を提案します
ピッタリの施設を提案します
ピッタリの施設を提案します
長谷川式認知症スケールを活用し認知症の切り分けを行おう
長谷川式認知症スケールは信頼度の高い検査です。認知症かどうかを見分けられ、病院・クリニック・自宅で簡単にできます。注意点を理解し正しく検査すれば認知症の可能性を調べられます。
認知症は、早期発見で症状進行を緩やかにでき、現在の状態を長期間維持可能です。最近の行動から認知症が疑われる方は、一度検査を実施し、認知症の早期発見に努めましょう。
長谷川式認知症スケール以外に以下の5種類があります。①Mini-Cog ②MoCA(Montreal Cognitive Assessment)③地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート ④ミニメンタルステート検査 ⑤ABC認知症スケール 日本老年医学会では、上記の検査の中でもMini-Cog、ミニメンタルステート検査、長谷川式認知症スケールが信頼性が高いため推奨しています。検査方法は日本老年医学会のホームページを確認してください。詳しくはこちらをご覧ください。
長谷川式認知症スケールはあくまで簡易検査です。点数があまりにも悪かったからといって認知症確定ではありません。認知症と診断するにはCT・MRI等の画像検査や血液検査、医師の問診が必要です。自宅で検査を行った時の気分や体調、環境によって検査結果は異なりますので、10点以下は認知症の可能性が高いと状態と捉えましょう。認知症は早期発見が大事ですので、検査結果が悪かった場合は一度専門外来で医師に診てもらうことをおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。