• くらし
  • 【公開日】2024-04-30
  • 【更新日】2024-04-30

介護の働きやすい職場環境づくりと多様化

介護の働きやすい職場環境づくりと多様化

今回は介護の仕事における「働きやすい職場づくり」についてお話しさせていただきたいと思います。

名定 慎也 准教授
神戸女子大学 健康福祉学部 社会福祉学科
社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員etc…
日本社会福祉学会、日本地域福祉学会、日本生活支援学会etc…
兵庫県立大学大学院経営研究科 ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)
高齢者施設や障害者施設など介護の現場で高齢者・障がい者支援に携わる中で、介護の質向上・介護人材育成の重要性を感じ、専門学校専任教員を経て大学で社会福祉人材の育成に努めている。
「介護人材の職務定着」や「介護福祉教育」に関する研究をしている。
約7秒に1人が利用!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4
約7秒に1人が利用!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4
約7秒に1人が利用!
ピッタリの施設を提案します
STEP
step1
1
step2
2
step3
3
step4
4

働きやすい職場づくりが必要な理由

現在、少子高齢化が進みさまざまな業界において、人手不足が問題となっています。「介護サービス業」においてもその波は顕著です。厚生労働省(2021)によると、介護サービス見込み量に基づく介護職員の必要数は、2025年には32万人、2040年には69万人となり、人材不足が指摘されています。公益財団法人介護労働安定センターによる令和4年度介護労働実態調査でも、「介護職員」の不足を感じる事業所の割合は69.3%、「訪問介護員」では83.5%にものぼります。

また介護業界の仕事は、「きつい」「汚い」「危険」「給料が安い」など3Kや4Kの仕事と表現され、「入職率は低く、離職率は高い」とネガティブなイメージをもたれます。しかし、厚生労働省の令和4年雇用動向調査での、全産業の入職率15.2%、離職率15.0%に比べ、「医療・介護」は入職率14.4%、離職率15.3%と大差はありません。現場では、利用者のその人らしい生活を支える仕事に誇りを持つ職員も多く、質の高いチームケアを実践しようと工夫する職場も増えています。

このような背景からも働きやすい職場づくりを行ない、新たな人材確保とともに職務定着を図り、社会のニーズに対応することが求められています。

働きやすい職場を作るための取り組み

そこで働きやすい職場を作るための取り組みについて考えてみます。まずは離職要因に応じた職場の取り組みを見てみましょう。

前掲令和4年度介護労働実態調査によると、直前職(介護関係の仕事)をやめた理由は、「職場の人間関係( 27.5%)」が最も多く、次いで「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満(22.8%)」、「他に良い仕事・職場があったため(19.0%)」、「収入が少なかったため(18.6%)」、「自分の将来の見込みが立たなかったため(15.0%)」と続きます。

それに対し、事業所は早期離職防止や定着促進の取り組みとして、「残業を少なくする、有給休暇を取りやすくする(70.7%)」、「本人の希望に応じた勤務体制にする(70.1%)」等の労働条件の改善、「職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化(55.4%)」等定期的なミーティング、意見交換会、チームケア等を工夫し、その効果を報告しています。

収入や将来性の問題については、介護職員処遇改善加算(国の介護職員賃改善施策)とともに、事業所独自のキャリアアップ・収入アップの仕組みを作る組織も多くなっています。その他、人材不足の対応として、外国人労働者の雇用や雇用年齢制限の引き上げを行うとか、職務負担の軽減対策として、ICT機器・福祉機器・介護ロボットの活用等務の効率化を推進し、一人ひとりの負担軽減を図るなど、職員が安心して仕事ができる環境、働きやすい職場が目指され取り組まれています。

「働きやすい職場環境づくり表彰」と「介護分野における生産性向上」の取り組み

厚生労働省は、介護職員の労働環境改善推進を目的に、令和5年度より「介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰」を創設し、職員の待遇改善、人材育成及び介護現場の生産性向上への取り組みに優れた介護事業者を表彰しています。令和5年度の働きやすい職場環境づくり表彰取組事例集によると、表彰された事業所(経営者)は新しい取り組みを始める際に、

▶目的や意義、伝えたいことは一度では伝わりにくいので、折を見て繰り返し伝える。

▶現場と距離を近く保ち、目的意識や進め方の共通認識を持つため、常日頃から意識してコミュニケーションを取る。

ことを大切にしていました。また、現場のマネジメント層は、新しい取り組みを進めていく際に、

▶職員同士の意見交換・対話を行うための仕組みを意図的に作る。

▶職員の困りごとは放置しない。すぐに対応する誠実な姿勢を持つ。

ことを大切にしていました。

表彰された事業所は、職員の帰属意識が高まり、組織の結束力も向上するようです。小さな工夫が職場を変え、それを実感できれば、仕事に対するやりがいや、仲間、職場に対する愛着も高まり職務定着の促進につながると考えられます。

さらに、厚生労働省は「介護分野における生産性向上ポータルサイト」を開設し介護の生産性向上の取り組みを推奨しており、介護サービスにおける生産性向上のための7つの取り組みとして、①職場環境の整備、②業務の明確化と役割分担、③手順書の作成、④記録・報告様式の工夫、⑤情報共有の工夫、⑥OJTの仕組みづくり、⑦理念・行動指針の徹底を必要とし、その取り組みについて説明しています。

生産性向上によって生まれた時間・余裕を活用することで、職員のスキルアップや多様な働き方に向けた制度の設置等、職員が働きやすい職場環境を作るための取り組みを行い、人材の確保・定着に繋げていくことを期待しています。

まとめ

ビジネス界においては、従業員満足度(ES)を上げる取り組みが、顧客満足度(CS)に相関し、企業の業績向上につながると言われています。介護業界においても、働きやすい職場作りの取り組みからうまれる職員の心身のゆとりは、利用者の満足のいく支援につながることでしょう。そして、利用者の笑顔がさらに職員の充実感と意欲の向上に好循環を与えることができると考えます。

これからの超高齢社会を支える介護の現場のさらなる充実のため、働きやすい職場環境作りの取り組みは必要不可欠です。

老人ホームの
知りたいことがわかる
種類を診断 料金を診断 空室を確認
老人ホームの
知りたいことがわかる
種類を診断 料金を診断 空室を確認