九州大学 基幹教育院
大学教員
日本健康支援学会、日本運動疫学会、日本体力医学会、日本地域政策学会
2010年に九州大学大学院人間環境学府にて博士(人間環境学府)、2017年には同大学院医学研究院にて博士(医学)を取得。
その後同年4月より現職、九州大学や福岡県糸島市民を対象とした疫学コホートに従事。世代や組織を超えた連携から学生や高齢世代の運動・健康づくりを推進している。
フレイルとは何か?その認識の大切さ
フレイルとは、年齢を重ねるとともに身体的にも精神的にも活力が低下し、病気の重症化や認知機能の低下が拍車をかけて衰弱していく状態を指します。フレイル状態の人々は病気にかかりやすく、日常生活に支障をきたすリスクが高まります。この段階を見過ごすと、介護が必要な状態に陥る可能性が高くなります。そのため、フレイルの早期発見と予防対策は、特に高齢期に自立した活力ある生活を続けるために極めて重要です。
フレイルチェックシステムの役割とは
フレイルチェックシステムとは、フレイルの早期発見と、適切な予防・重症化予防を促すためのツールです。このシステムを利用することで、本人や家族が簡単にフレイルのチェックを行うことができます。例えば、筋力の低下、疲れやすさ、歩行速度の遅さなど、日常生活の中で感じるさまざまなサインを確認することができます。
このシステムの大きなメリットは、簡単な質問に答え、いくつかの測定を受けることで、フレイルのリスクを自己評価でき、必要に応じて早期に専門家のサポートを受けることが可能になります。
著者らは福岡県糸島市との共同研究事業として、2018年から糸島市内にフレイルチェックが無料で受けられる拠点を運営しています。スタッフが常駐して、60歳以上の糸島市民であれば電話やメール1本で予約でき、フレイルチェックとその後の心身の健康づくりについてお話をしています。
特徴的な点は、単にフレイルチェックをするだけでなく、その後の健康づくりを糸島市内でどのように進めていけるかまでお話していることです。糸島市内にある各種の行政事業、ボランティア団体、運動・スポーツ教室、民間の事業まで、スタッフや協力市民が情報を収集し、運動・スポーツ教室をご紹介するだけでなく、「本人が継続できる、楽しい」と思える活動を大事にして、今後の行動を自己決定することを促しています。
また、フレイルチェックを受けた時点で状態がある程度進んでいる場合は、包括支援センター等の行政機関と連携できるようにしています。
さらに、糸島市内の地域ボランティア団体や自主活動グループと交流を深め、フレイルチェックを受けた人々をご紹介しています。このように、フレイルチェックをきっかけに、地域の人々の仲間づくり、繋がりづくりを進めることで市民の孤立防止と互助を推進していき、フレイル予防や健康づくりがその町や市の文化となることを期待しています。
フレイルチェックで高齢者のQOLを向上させる
フレイルは決して避けられない運命ではありません。適切なチェックと予防策により、多くの高齢者が健康で自立した生活を続けることが可能です。フレイルチェックは、その第一歩となる重要なツールです。多くの自治体では類似の健康度チェックを開催しています。ぜひ、積極的に利用してください。本人だけでなく家族もともに考え、大切な一人ひとりの健康を守り、共に幸せな長寿を目指しましょう。