要介護4とは、介護の必要性を表す要介護度の中でも重度の認定段階であり、日々の生活は寝たきりに近く、自立した生活が難しい状態となります。
そのような状態である要介護4でも車の運転をすることはできるのか気になるという方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、要介護4でも運転することはできるのかについて、また高齢者の移動をサポートするサービスや制度について解説します。
車の運転についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

要介護4でも運転できる?
結論から言うと、要介護4だからと言って運転を禁止されているということはありません。
現行の道路交通法第九十条によると、「介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五条の二第一項に規定する認知症である者」への免許の拒否はあるものの、要介護認定の実施有無並びに要介護認定の結果に関して規制を設けるような規定はありません。
アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう。
介護保険法 第五条の二第一項より部分抜粋
つまり、要介護4の認定を受けた方であっても認知症の症状が見られない、認知症の診断を受けていない方の場合は運転を禁止されることはないでしょう。
ただ、要介護4は重度の要介護状態であり、認知機能の低下が進んでいる場合が多いため、要介護4の認定を受けている方の多くは運転が認められないでしょう。認知症と診断されていない方の場合でも、身体機能の低下から自立してできる動作が少なく、座位を保持していることすら難しい状態とされているため、そのような身体状態を考慮すると、とてもではありませんが運転ができる状態とは言えないでしょう。
これらを踏まえると、「要介護4の認定を受けたからといって運転を禁止されるということはありませんが、要介護4の身体状態を考慮すると運転するのは現実的ではない」と言えます。
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要介護4でも運転免許の更新はできる?
要介護4の認定を受けている方でも、高齢者講習による適性検査及び実車試験に問題がなければ運転免許を更新することはできます。
前述の通り、要介護認定の結果と運転の可否には関係がありません。そのため、要介護4の認定を受けているという理由で免許の更新ができないということはありません。
ただ、75歳以上の方は高齢者講習を受講する前に、認知機能検査を行う必要があります。「時間の見当識」や「手がかり再生」といったテストを行い、記憶力や判断力に問題がないか判定を行います。
また、2022年5月13日に施行された道路交通法の改正により、75歳以上の方で過去3年以内に「一定の違反歴」がある方は、運転免許証更新時に運転技能検査等の受講が義務付けられています。
出典:警視庁:「認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の方の免許更新)」
出典:全日本交通安全協会「道路交通法の改正ポイント」
高齢運転者のリスクも把握しよう
昨今、高齢運転者による事故や事件が多発しているという事実があります。
要介護4の認定を受けている方であっても運転は禁止されていませんが、高齢になっても車を運転することで生じるリスクを無視することはできません。
警視庁の発表によると、2022年における高齢運転者(原付以上を運転する65歳以上の者)の事故発生件数は4,579件であり、事故全体に占める高齢運転者の事故割合は15.2%と算出されています。
高齢運転者による交通事故発生の原因として、脇見や考え事をしていたことによる発見の遅れが約80.6%で最も多いという結果が出ています。警視庁の見解では、高齢運転者は自分では安全運転を心がけているつもりでも、他人から見ると安全運転とは言えないところがあると公表しています。
また、民間企業が行った調査結果によると、年齢が上がるにつれて運転に対する自信が高まる傾向にあり、80歳以上の72%が運転に対して「自信がある」と回答しています。
車の運転は、買い物や通院など生活のために必要不可欠であると考えている人は多いです。しかし、高齢運転者によるリスクも踏まえたうえで、運転し続けるか検討する必要がありそうです。
出典:警視庁「防ごう!高齢者の交通事故!」
高齢者の移動をサポートするサービスや制度
高齢者の移動をサポートするサービスや制度として、以下のものが挙げられます。
- 介護タクシー
- 自治体の外出・移動支援サービス
- 免許返納による特典の活用
それぞれのサービス・制度について詳しく触れていきます。
介護タクシー
介護タクシーとは、要介護者や体の不自由な人など自力での移動が困難な方を対象としたタクシーとなります。
車椅子やストレッチャーのまま乗車できたり、身体介助までサービスに含まれていたりと、重度の要介護状態の方でも安心して利用することが可能です。
また、介護タクシーは訪問介護サービスの1種であることから、介護保険適用範囲内のサービスとなるため、1~3割の自己負担額で利用することも可能です。
介護タクシーは重度の要介護状態の方でも利用できるだけでなく、介護保険によって負担額を抑えることができるため、利用のハードルも低いサービスと言えるでしょう。
自治体の外出・移動支援サービス
高齢者の暮らしを地域で支えるために、自治体が独自で外出・移動支援に取り組んでいることがあります。
前述の介護タクシーは、利用条件が限られていたり、家族の同伴ができなかったりと制限があり、場合によっては利用できないケースもあるでしょう。
一方で、自治体や社会福祉法人などが独自で行っている移動支援サービスは、高齢者のみならず車を持っていない方でも利用できるケースもあるなど、多くの場合で対応可能です。
例えば、北海道の天塩町では、公共交通機関を利用しても片道3時間かかる稚内市への移動を支援するために、相乗り交通事業を行っています。利用者は移動に要したガソリン代や高速代の実費負担のみで済むなど、公共交通機関を利用するよりも費用を抑えられるそうです。
自治体によって取り組んでいるサービスや移動できる範囲は異なります。気になる方は一度お住いの役場で相談してみるといいでしょう。
出典:総務省「天塩~稚内「相乗り交通」取り組み概要」
免許返納による特典の活用
免許を自主返納することにより、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店などから、さまざまな特典を受けることができます。
車のない生活に不安を感じている高齢者も多く、なかなか自主返納後の特典について知られていませんが、公共交通機関や買い物代金の割引を受けることができます。
車の運転をしないという選択も検討してみてはいかがでしょうか。
出典:警視庁「運転免許の自主返納のサポート」
出典:全日本指定自動車教習所協会連合会「運転免許証の自主返納をお考えの方へ~各種特典のご案内~」
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まとめ
本記事では、要介護4の方の運転について解説していきました。
要介護4といった要介護認定の結果と運転の可否については、直接の関係はなく、認知機能の低下が見られない場合には運転することを禁止されてはいません。
しかし、高齢者による自動車事故が問題となっているのも事実です。自動車は日常生活を送るために必要不可欠であると考えている人も少なくないでしょう。
要介護認定を受けても運転し続けるかは、本人の意向や生活環境などによって異なります。運転する本人や家族の意向に沿ってしっかり検討しましょう。