介護離職を防ぐための術を知っておこう|介護離職の現状とデメリット

介護離職を防ぐための術を知っておこう|介護離職の現状とデメリット

超高齢社会に突入している日本では、家族の介護についての問題を抱えている人は年々増えています。特に介護のために離職する人も年間で10万人前後いて、これを介護離職と呼びます。

介護のために本業を離職することにはさまざまなリスクやメリットがあります。介護離職がどのような影響を及ぼすのか、さまざまな観点から理解を深めておきましょう。介護離職について深く知ることで、自分の家族や親の介護の際に、離職が必要かどうかを判断しやすくなります。

公益社団法人青少年健康センター 理事
所有資格:CFP®,FP技能士1級,総合旅行業務取扱管理者
専門分野:高齢期の資金計画
職業: ファイナンシャルプランナー
出身組織: 駒沢大学大学院

1963年、東京都港区生まれ。 大学1年生のときにフリーライター活動をはじめ、マネーライターを経て、1992年にファイナンシャルプランナーになる。FP資格取得後は、新聞、雑誌、ウエブに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などもおこなう。 ひきこもりのいるご家庭向けに生活設計アドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、教育資金アドバイスをおこなう「子どもにかけるお金を考える会」を主宰している。著書・監修書は、「おひとりさまの大往生 お金としあわせを貯めるQ&A」(主婦の友社)ほか、70冊を超える。プライベートでは、二男一女の母。詳しくはこちら

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介護離職の現状

まずは介護離職における現状がどのようなものなのか、基本的な知識から身につけておきましょう。家族の介護が必要になったからといって、全員が介護のために離職しているとは限りません。離職して介護に専念する人がいる一方で、仕事を続けたまま介護にあたっている人もいるでしょう。

介護離職の現状を正しく把握することで、どのような選択肢があるのかを知ることができ、将来を決める際に役立ちます。

働きながら介護をする世代も少なくない

介護離職という言葉がある一方で、仕事を続けながら介護をしているという人も少なくありません。

介護が必要になる年齢は人によって違いますが、後期高齢者になる75歳以降に必要になるケースが多いでしょう。子どもの年代で考えると、40代の人の親世代はこれらの年齢に該当することから、介護をしている人が増えているのが現状になっています。

親の介護が発生すると同時に、40代はまだまだ働き盛りであり、会社でも活躍を期待させている人も多いでしょう。定年までの期間も長く、離職が難しいと判断して、仕事と介護の両立を目指す人は少なくありません。

介護によるダメージは大きい

離職せずに介護をしている人は増えていますが、介護によるダメージが大きいことは理解しておかなければなりません。介護は身体的にも精神的にも負担がかかりやすく、経済面に影響することもあります。

2012年の「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(平成24年度厚生労働省委託調査)の結果を見ると、介護離職で負担が増えたと回答している人は多く、精神面は約64.9%、肉体面は約56.6%、経済面は約74.9%の人が負担増と回答しています。

介護はする側の労力は大変なものですし、受ける側の気遣いも並大抵のものではありません。場合によっては共倒れになってしまうことも少なくありません。仕事を続けながら介護を両立することも大変ですが、介護離職した場合でも負担が重くなり、心身ともにダメージを受けてしまう場合があることは理解しておきましょう。

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介護離職によって得られるメリット

介護離職によってさまざまな負担が増えたと感じる人は多い一方で、これにはメリットもあります。介護離職をする大きなメリットとしては、次の2つがあげられます。

  • 時間的な融通が付くようになり、精神的に楽になる
  • 介護にかかる費用を削減できる

どのような点がメリットなのかを把握して、介護離職ならではの魅力を知っていきましょう。

精神的に楽になる

介護離職をすることで仕事の負担がなくなり、介護のみに集中できます。そのため、精神的に楽になりやすく、仕事のことを考えなくて済む分、ストレスは減るでしょう。もちろん、介護だけでも心身ともに大変ではありますが、仕事と両立する場合と比較すると、時間の融通を付けやすくなる分、気持ち的に楽になることは確かです。

また、介護に専念できることで、親や家族をほったらかしするといった罪悪感からも逃れられます。仕事に専念して介護をしていないと、介護に時間を割けないことに罪悪感を覚えてしまう人も少なくないからです。

また、介護される側も「必要な介護を受けられていない」という実感を持ち、家族で不仲になってしまうこともあるでしょう。離職して介護に専念できることで、お互いにコミュニケーションを取りやすくなり、見放していない、見放されていないといった点で精神的な負担が減るというメリットもあります。

介護にかかる費用を削減できる

介護は家族で行うだけではなく、介護サービスを利用することも可能です。しかし、介護サービスの利用には費用がかかり、介護離職をすることで介護にかかる費用の負担を削減できることは大きなメリットです。

介護サービスにはさまざまなものがあり、例えば訪問介護からデイケアやデイサービスなどの通所サービス、有料老人ホームの施設サービスなどがあげられます。これらを利用することで介護の負担は減りますが、その分費用がかかることは理解しておきましょう。

利用するサービスによって費用は異なりますが、介護期間を通すと数十万円から数百万円程度の費用がかかることは多く、コスト負担は大きいです。介護離職をする場合でも、外部のサービスを利用するケースは少なくありませんが、家族が中心となって介護ができることで、利用できるサービスは最低限に抑えられます。

出費が抑えられることで精神的な余裕を持ちやすく、介護にも集中しやすくなります。また、要介護度や要支援の認定次第では介護保険も利用でき、介護サービスを併用することで、さらに介護費用は削減できます。

介護離職によるデメリット

介護離職にはメリットがありますが、同時にデメリットもあることは理解しておかなければなりません。介護離職によって生じるデメリットは、次の3つがあげられます。

  • メインの収入源を失う
  • 築いてきたキャリアを失う
  • 将来への不安から精神的なダメージを負いやすい

メリットだけではなく、デメリットも把握して、介護離職が自分や家族にとって本当にプラスになるのかを考えておくことが大切です。

メインの収入源を失う

離職をすることでメインの収入源を失うことになり、しばらくは退職金などでしのげても、長期的にみると困窮に陥る可能性がある点は大きなデメリットです。仕事をやめて介護だけに専念すると、勤労収入がなくなってしまい、貯金を切り崩して生活しなければなりません。

親の年金や貯金を使って生活をする場合でも、収入がないことで資金はマイナスになり続け、介護が長引くと預金や老後資金がなくなってしまうこともあるでしょう。また、時間の都合をつけやすいパートやアルバイトをしながら介護を続ける場合でも、年収が大幅に下がることで日々の収支がマイナスになるケースは多くなっています。

自分で介護ができる分、介護にかかる費用は削減できるものの、勤労収入がなくなることで、介護している側の長期的な生活設計を立てにくくなるデメリットは理解しておきましょう。

築いてきたキャリアを失う

離職することで、これまでに築いてきたキャリアを失うというデメリットもあります。親の介護が終わり、仕事に復帰しようと考えた場合でも、以前と同様のキャリアを築けるとは限りません。

ブランクの期間が長くなることで、仮に同じ会社に戻ることができても、役職が下がったり、年収が低くなったりすることは十分に考えられます。つまり、収入が減少することで介護が終わった後の生活が苦しくなることも多く、再就職せざるを得ない場合では、やりたい仕事ができなくなって不満を抱えてしまうこともあります。

復職してから新たにキャリアを築くことは不可能ではありませんが、年齢次第では思い描いていたキャリアに到達できない可能性は高くなってしまいます。やりたい仕事ができなくなってしまうと、これまでの努力が実らなくなり、介護が終わった後の仕事人生に不満を抱えてしまう可能性があることは理解しておきましょう。

特に仕事にやりがいを感じていた人は、復職してからのデメリットは大きく、キャリアを手放すことで介護後の仕事に支障が出る可能性があることは頭に入れておく必要があります。

将来への不安から精神的なダメージを負いやすい

介護に集中できるからといって不安がすべて消えるわけではなく、むしろ将来への不安が精神的なダメージにつながりやすい点は介護離職のデメリットです。介護は長期化することも多く、先の見えづらい生活に不安を覚える人は少なくありません。

特に離職して収入源がなくなると、預金がいつまで持つのか、介護を終えた後の自分の生活がどのようなものになるのかなどを不安に思い、介護する側が精神的に不安定になってしまうこともあります。

また、介護そのものによる精神的な負担も大きく、介護につきっきりになることがストレスになることも少なくありません。将来への不安や介護による精神的な疲労から、介護者自身がメンタル疾患を発症してしまうこともあります。

将来への不安が大きくなってメンタルが不安定になると、介護する人とされる人の共倒れが起きてしまうこともあります。特に仕事を辞めて社会的なつながりが薄くなると、メンタル面での問題を抱えてしまうこともあるため、この点には注意しなければなりません。

介護離職を防ぐためには

ここまでご紹介してきた通り、介護離職にはメリットとデメリットの両方がありますが、人によってはデメリットのほうが大きくなってしまうことも少なくありません。

そのため、仕事はできる限り続けたほうが良く、介護離職を回避することで、介護そのものの負担は大変であっても、長い目で見れば家族全員にとって安定した道を歩める場合もあるでしょう。介護離職を防ぐための方法を知り、介護する側もされる側も、疲労しない道を探すことが大切です。

身の回りにある介護サービスの利用

介護離職を防ぐには、まずは介護保険の制度をきちんと知り、介護サービスを効率的に利用することがおすすめです。サービスの利用には費用がかかるものの、プロに任せることで介護者の負担は大幅に軽減できます。

そもそも介護のすべてを家族だけで行うことは難しく、必要に応じてプロに委託したほうが、介護者とされる人両方にとってプラスになることも少なくありません。

自宅への訪問サービスから通所の介護サービス、施設への入居など、介護サービスにはさまざまな種類があるため、利用者の状態に合ったものを選びましょう。適切な介護サービスを見つけるには、ケアマネージャーに相談してみることがおすすめです。

サービスの種類ごとの特徴や費用の違いを調べ、介護の専門家からアドバイスを受けることで、適切な介護サービスのプランを組み立ててもらいましょう。

老人ホーム等の施設サービスを検討したいという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護は、約5万件の施設情報を掲載しているため幅広い選択肢から検討することが可能です。

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信頼できる周りの人間に相談

介護の問題は周りに相談できずに自分1人で抱えてしまい、精神的に疲労してしまうことも挙げられます。できるだけ1人ですべての問題を抱え込まず、信頼できる周囲の人に相談することも大切です。家族や親族はもちろん、友人や知人にも相談してみることで、問題を軽減してもらえる可能性もあります。

特に介護に取り組んでいる人がいる場合は、その人に相談して情報を共有しておくことがおすすめです。他の人がどのように介護に取り組んでいるのかを知ることで、視野が広がり多様な選択肢を見つけられることもあります。

また、同じく介護に取り組んでいる仲間を見つけることで介護における不安も相談しやすく、精神的な負担も減らすことができます。

公的な相談窓口を利用

介護における問題は自分1人で抱えず、さまざまな人に相談することが大切です。周囲の人に相談することが難しいなら、公的な相談窓口を利用すると良いでしょう。介護に関する相談先は多数あり、主なものとしては次の施設や機関があげられます。

  • 地域包括支援センター
  • 社会福祉協議会
  • 保健所
  • 役所の介護保険担当窓口など

公的な相談窓口を利用することで、介護に関する問題は解消しやすくなります。利用者の状態に合ったサービスを紹介してもらえるだけではなく、利用できる制度を教えてもらえたり、介護サービス事業者に対する不満やクレームなどを受け付けてもらえたりもします。

職場で介護への理解をしてもらう

仕事と介護を両立させるには、職場に介護への理解を示してもらうことも大切です。親の介護をしていることを職場に伝えておき、可能な限り仕事や時間に融通をつけられるようにしておきましょう。

企業によっては介護のための休職制度があったり、時短勤務ができたりすることもあります。また、介護に理解を示してくれる職場なら、急なトラブルや呼び出しがあった際にも早退しやすかったり、他の人に仕事を任せられたりすることもあります。

職場からの理解があると仕事と介護の両立がしやすくなり、困ったことがあれば同僚や先輩、上司などにも相談しやすくなります。もちろん、介護で仕事の融通をつけてもらえる分、感謝の気持ちを伝えたり、時間に余裕がある際には積極的に仕事に取り組むなどして、折り合いをつけることも重要です。

ただ職場の人にサポートしてもらうだけではなく、自分も日ごろから感謝の気もちを表す努力をしたり、何らかの形で仕事に貢献できる、良好な人間関係を築くなどの努力をすることで、理解を示してもらいやすくなります。

企業の制度を利用する

仕事と介護の両立を図るには、企業の制度を有効活用することも重要です。勤め先ではどのような制度があるのかを調べておき、それを利用して仕事と介護の両立を目指しましょう。

「介護休業制度」の利用で介護に集中

介護休業制度がある企業なら、必要に応じてまとまった期間休職できます。対象となる人の介護のために、家族1人につき年間通算で93日まで休みを取れることが、介護休業制度の特徴です。

  • 配偶者
  • 父母
  • 子ども
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

これらの関係性がある人の介護に対して、年間通算93日まで休みを取れるだけではなく、3回にわけて休暇を取得できます。

介護休業制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

介護と仕事の両立のために勤務時間を短縮

介護休業制度とは別に、時短勤務の制度が利用できる場合もあります。時短勤務ができるほか、利用者の都合に合わせて勤務時間を変更できるなど、制度を利用することで仕事と介護の両立を図りやすくなります。

連続する3年間のあいだに2回以上時短勤務の制度は活用できるため、介護が必要な人の状態に合わせて、自身の仕事のサイクルを調整することがおすすめです。

介護離職をしなくても仕事と介護は両立できる

家族の介護のために離職する人は少なくありませんが、仕事と介護の両立は不可能ではありません。実際のところ、仕事を続けることで金銭的な不安は少なくなり、将来の生活基盤の崩さなくてすみます。

介護離職をすると介護に専念できる一方で、介護する側の精神的、肉体的な負担は増えてしまいます。介護サービスや企業の制度を賢く活用しながら、介護離職を防いで仕事と介護の両立を目指しましょう。

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