介護は心身状態の向上や維持を目指すものですが、終末期にはターミナルケアという選択肢もあります。ターミナルケアは死を目前にした人に行われる医療的・介護的ケアであり、最後の瞬間までクオリティオブライフの向上を目指すことが大きな目的です。
穏やかな最期を迎えるためには、ターミナルケアは重要なものであり、介護の終着点として考えておきたい選択肢です。ターミナルケアの内容や利用するメリットなどを知り、どのような場合に必要なのかを知っておきましょう。
ターミナルケアの内容
まずはターミナルケアにどのようなものがあるのか、この内容を知っておきましょう。ターミナルケアの内容としては、次の3つがあげられます。
- 身体的なケア
- メンタル面のケア
- 社会的なケア
これら3つの観点で、終末期のケアを行います。
身体的なターミナルケア
ターミナルケアでは身体面のケアが行われており、これは主に痛みを取り除くことを目的にしています。例えばがんが進行すると全身に痛みが生じることも多く、これを緩和する処置を行うことで、より良い余生を過ごせるようにします。
痛みが強いと平静を保っていられないことも多く、これが精神的なストレスにつながってしまうことも少なくありません。また、痛みによって行動が制限されることもあり、これを防止することが身体的なケアの特徴といえます。
身体的なケアでは、他にも床ずれの防止や食事が取れなくなった人にチューブで栄養を補給したり、胃に穴を開けて食べ物を注入する胃ろうといった方法を取ったりすることもあります。他にも利用者の状態に合わせて、食べやすいミキサー食やソフト食を提供することも、身体的ケアの一環です。
身体機能の向上というよりは、精神的なストレスとならないように機能の維持や状態の緩和を目指すことが、ターミナルケアの重要な役割といえます。
メンタル面のターミナルケア
ターミナルケアを受けている人は、死を目前にして不安や恐怖を抱えていることが多いです。これらによって精神面で不安定になることが多く、このケアを行うこともターミナルケアの重要な目的です。
メンタルケアはQOLの向上における重要なポイントであり、不安や恐怖にいかに寄り添えるかがケアにおいては必要となります。自身の死と向き合うことはもちろん、残される家族に迷惑をかけないか、心配をかけないかなどを不安に思うことは多いです。
不安や恐怖の感情に寄り添うことで精神の安定を維持し、より穏やかな老後を迎えるための対策を行うこともターミナルケアの役割です。
社会的なターミナルケア
介護では費用の問題が発生しやすく、このサポートを行うこともターミナルケアの役割です。ケアを受けるには費用がかかり、経済的な負担が患者の重荷になってしまうこともあります。
社会的な援助をすることもターミナルケアの一環であり、医療ソーシャルワーカーのサポートを受けることもあります。自分の介護のために費用をかけ過ぎてしまうことを申し訳なく感じ、これが精神的な負担になることは多いです。
ターミナルケアはさまざまな観点で行うことが重要であり、社会的、経済的な観点から患者を支えるケアもあることは理解しておきましょう。
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ターミナルケアが受けられる場所
ターミナルケアを利用したいなら、どのような場所でこの介護が受けられるのかを知っておくことが大切です。ターミナルケアを受けられる場所としては、次の3つがあげられます。
- 病院
- 介護施設
- 自宅
これら3つの場所でターミナルケアは受けることができるため、利用者の状態に合わせて場所を選びましょう。
病院
ターミナルケアを実施している施設の1つとして、病院が挙げられます。
病院でターミナルケアを受ける場合は、一般病棟でケアを受ける場合もあれば、ターミナルケアに特化した緩和ケア病棟など受ける場合もあります。
また、入院でターミナルケアを受けることもあれば、外来で受けることもあります。病院によっては緩和ケア外来など、専門の外来を設けているところもあります。
介護施設
ターミナルケアを実施している介護施設はさまざまあり、代表的な施設としては次の3つがあげられます。
- 有料老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
介護施設でのターミナルケアは、医療的な処置をするというよりは、看取りに向けた介護という性質が強いかもしれません
もちろん、施設によっては看護師が常駐していて医療行為が可能だったり、看取り経験が豊富で心身のケアや社会的なケアまで対応していることもあります。そのため、施設ごとの違いはチェックしておき、どこに入居するかを決める際には、念入りに情報収集をしておくことが大切です。
自宅
ターミナルケアは施設を利用するだけではなく、自宅でも行うことが可能です。自宅で行う場合は家族が中心となって看護や介護を行う必要があるため、患者の容体を注意深く観察しておく必要があります。
もちろん、完全に家族だけで看護を行うことは難しいため、医療ソーシャルワーカーに相談して支援を受けたり、訪問介護などのサービスを利用したりすることが大切です。
家族が中心となりながらも、外部の専門家や介護サービスを利用することで、自宅でも質の高いターミナルケアを行うことは可能です。
ターミナルケアのメリット
終末期の高齢者にターミナルケアを行うメリットは、さまざまあります。どのようなメリットがあるかは、ケアを受ける場所によって異なるため、この違いを把握しておくことが大切です。介護施設と在宅ではどのような違いがあるかをチェックして、どこでケアすることが良いのかを考えておきましょう。
病院で受けた場合
例えば痛みなど身体的な苦痛が強い場合、病院であれば薬などでコントロールがしやすいというメリットがあります。
また、病院であれば身体の状態の変化にも対応しやすく、医療面で安心することができます。
介護施設などと異なり医師、看護師、ソーシャルワーカーなどを中心とした多職種による緩和ケアチームなどがあることもあり、さまざまな職種から終末期のサポートを受けることができます。
介護施設で受けた場合
医療関係者や介護職員が常駐している介護施設なら、万が一容体が急変したときでも、スムーズに対応してもらえるというメリットがあります。病気が進行していると、病状が急変することはあり、素早く適切な処置ができることは大きなメリットです。
最初の処置をスムーズに行うことで、その後の容体も安定しやすく、より長くQOLの高い生活が続けられます。また、痛みがひどい、精神的な不安が大きくなったなど、日常生活の問題にも対応してもらいやすく、プロのケアを受け続けることが、QOLの向上につながるケースも少なくありません。
介護ケアをプロに任せることで、家族の負担が減ることもメリットの1つです。そもそも介護はプロでも大変なものであり、家族だけでこれを行うとなると、負担が大きくなってしまうことも少なくありません。
また、付きっ切りの介護によってストレスが増えたり、介護疲れによって共倒れになってしまうこともありますが、施設を利用することでこれを防ぎやすいことも大きなメリットです。
在宅で実施した場合
自宅でターミナルケアを実施するメリットとしては、最期の瞬間を家族で看取りやすいことがあげられます。最期の瞬間を看取りたいと考える人は多く、特に自分の親の場合はできるだけ近くにいたいと思う人は少なくありません。
施設だと最期の瞬間に立ち会うことは難しいですが、在宅看護ならこれがしやすいことは大きなメリットでしょう。また、介護を受ける人も、家族がそばにいることで精神的な安らぎや安心感を得やすいです。
そのため、患者の精神的な安定が見込みやすく、知らない人ばかりの施設で過ごすよりも精神的な安定からQOLが高くなることもあります。
ターミナルケアのデメリット
さまざまなメリットがあるターミナルケアですが、同時にデメリットもあることは理解しておかなければなりません。メリットとデメリットの両方を知ったうえで、どこでターミナルケアをするのか決めることが大切です。
デメリットもメリットと同じで、受ける場所によって異なります。メリットとデメリットの両方を比較し、また患者自身の意思も尊重して、どこでターミナルケアをするのかを考えましょう。
病院で受けた場合
ターミナルケアを病院で受ける場合のデメリットとしては、やや生活の自由が制限される点にあるかもしれません。
在宅などと異なり、病院では消灯・起床時間から食事、入浴にいたるまでルールがあり、どうしても制約が出てしまいます。また、病院という空間は日常とは異なる場所であり、日常生活の延長線上のようにくつろぐことは難しくなります。
嗜好品を楽しんだり、最期に好物を食べたりといった自由な行動が叶わないこともあります。また、面会時間の制約などから、家族が常にそばにいられないこともあります。
介護施設で受けた場合
ターミナルケアを介護施設で受ける場合のデメリットとしては、家族が常にそばにいられないということがあげられます。家族が近くにいないことで、患者自身も精神的な不安を感じやすく、これがメンタル面の不調につながることもあります。
また、介護をする家族も、患者の容体が常にチェックできないことが不安になってしまうことも多いです。容体が急変しても素早く対処してもらえるとはいえ、最期の瞬間に立ち会えない可能性があることは理解しておかなければなりません。
経済的な負担が大きいことも、介護施設でターミナルケアをする場合のデメリットです。介護施設の利用には多くの費用がかかり、ひと月で10万円以上のコストがかかることもあります。
施設によっては入居の際に入居一時金を支払わなければならないこともあり、まとまったお金が必要となるケースも少なくありません。患者とそばにいられない不安はもちろん、経済的なデメリットが大きくなりやすい点は理解しておきましょう。
在宅で実施した場合
在宅でターミナルケアをするデメリットは、ケアにおける家族の負担が大きくなりやすいことがあげられます。終末期は24時間付きっ切りで介護をしなければならないことも多く、これが精神的、肉体的なストレスや疲労につながることも少なくありません。
介護疲れによって共倒れになったり、高齢者の虐待が起きたりするケースもあるため注意が必要です。介護される側も家族に迷惑をかけて申し訳ないと思ってしまう場合があり、両者ともにストレスを抱えてしまう場合があることも覚えておきましょう。
また、施設を利用するよりは在宅のほうがケアにかかるコスト負担は軽減しやすいですが、これも利用する介護サービスや医師の往診の頻度によって異なります。
在宅介護でも訪問介護のサービス利用や医師の往診が増えることで、結果的に経済的な負担が大きくなることも多いです。施設の利用料金が不要になるとはいえ、ケース次第では在宅介護のほうが高額なコストがかかってしまう場合もあることは覚えておきましょう。
ターミナルケアを受けられる施設を検討しているという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護は、約5万件の施設情報を掲載しているため幅広い選択肢から検討することが可能です。
「施設選びで妥協したくない」という方は、ご気軽に活用ください。
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ターミナルケア以外の選択肢
最期を迎える患者のケア方法は、ターミナルケアだけが選択肢となるわけではありません。他にもさまざまなケアの方法はあり、主な選択肢は次の3つです。
- 看取りケア
- 緩和ケア
- ホスピスケア
実際にはこれらのことばが厳密に分けて使われるわけではなく、病院や介護施設によっては同じような意味で使われていることもあります。ここではそれぞれのケアの大まかな考え方を理解することで、ターミナルケア以外にも最期の瞬間を迎える方法を知り、その人に合ったケアを実施しましょう。
看取りケア
在宅と介護施設の両方で行えるケアとして、看取りケアがあります。看取りケアは患者に安らぎを与えることが大きな目的であり、精神的な面でのサポートを重視しています。
看取りケアは専門的な技術や知識というよりはは不要であり、最期の瞬間まで思いやりを持って接し、少しでも精神的な安らぎや安心感を与えることが大きな目的といえます。
そのため、家族だけで看取りケアを行うことも状況によっては可能です。患者の言葉に耳を傾け、積極的にコミュニケーションを取ったり、日常生活における身体介助を行ったりすることも立派な看取りケアといえます。
医学的なアプローチが難しい状況でも看取りケアを実施することは可能であり、患者の精神状態の安定に重きを置くことが重要と考えましょう。
緩和ケア
病気が進行していて全身に痛みがある、苦痛があるなどの場合には、これらを取り除く緩和ケアを実施します。緩和ケアはエイズやがん患者などに行うことが多いケアであり、医学的なアプローチで苦痛の除去を目指します。
緩和ケアは身体的な苦痛への対処が得意な点が特徴であり、苦痛の除去によって精神的な安定も実現させる点もポイントです。身体的な苦痛の除去については専門的な知識や技術が必要となるため、家族のみで行うことは難しく、医療機関や医療関係者が常駐している介護施設で行うと考えましょう。
家族と離れなければならないケースが多いですが、患者自身の苦痛を和らげることができるため、特に痛みがひどい場合などは緩和ケアを選ぶことがおすすめです。
ホスピスケア
緩和ケアに似たものとして、ホスピスケアがあります。ホスピスケアも基本は緩和ケアと同じで、病気による痛みや苦痛を取り除くことが大きな目的です。苦痛の除去によって穏やかに最期の瞬間を迎えられることが特徴であり、医療機関によってはホスピスケア専門の病棟を持っていることもあります。
また、ホスピスケアに特化した施設もあり、いわば緩和ケア専門の施設が、ホスピスケア施設と考えても良いでしょう。最期の瞬間まで施設で過ごすため、家族との時間は取りづらくなりますが、面会を行うことは可能です。
そのため、近隣の施設に入居しているなら、家族ともコンタクトを取りやすいです。もちろん、在宅のように24時間一緒にいられるわけではありませんが、患者の苦痛を取り除くことができ、かつ家族の介護の負担も軽減できることは大きなメリットといえます。
ターミナルケアで穏やかな最期を迎えよう
病気の進行や体力の低下などで、治療による改善が難しいケースは少なくありません。この場合には無理に治療をして患者に苦しい思いをさせず、心身面でのケアを重視して、苦痛を取り除くことも多いです。
ターミナルケアは穏やかに最期の瞬間を迎えるためのケアの1つであり、残された時間のQOLの向上を最大の目的にしています。自宅や病院、介護施設で受けられるターミナルケアは、受ける場所によってメリットとデメリットが異なります。
それぞれを比較することはもちろん、どこで最期を迎えたいか、本人の意思を尊重することが大切です。また、ターミナルケア以外の選択肢もあるため、本人と相談しながら、どのようなケアが望ましいのか、最適な方法を考えていきましょう。