高齢化が進み、経済的に親を支える子世帯は増えています。中でも入院費の負担は子世帯の生活を圧迫し、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。「万が一、支払いができなくなったら?」「支払いは分割にできるのか?」「支払いは免除してもらえるのか?」など不安は尽きません。
この記事では、入院費の支払いに利用できる公的制度や親の入院費を捻出する方法について解説します。分割払いや医療費ローンを希望する方、支払いを免除してもらいたいと思っている方のための情報もお伝えします。
入院費の支払いを滞ったままにしておくと状況はどんどん悪化し、金銭的にも精神的にも追い込まれてしまうケースも珍しくありません。1日も早く支払いの悩みから解放され、笑顔の毎日を取り戻しましょう。
親の入院費が支払えなくなったら?
入院している親自身はお金の管理ができないため、子どもが代理で入院費の支払いをしているケースが多いのではないでしょうか。親の年金や貯蓄から支払えている間は安心ですが、想定外に医療費が高額になる場合も考えられます。ここでは、支払いが滞るとどのように請求されるのか、最終的にはどのようになるのかについて紹介します。
病院による督促
手術や治療で入院した場合、費用は退院時にまとめて窓口で支払うのが一般的です。退院時に支払いができないと退院できないケースもありますのでご注意ください。入院が長期に及ぶ場合は、毎月1日〜末日までの費用が計算され、翌月の10日前後に窓口で支払います。
支払い期限はある程度の猶予が認められますが、期日までに支払いが完了しなければ病院から請求の電話が来ます。さらに、請求に応じられずにいると督促状が届いたり、職員による訪問を受けたります。このような状況になる前に、病院に相談をしましょう。
保証人による督促
ほとんどの病院は、入院時に身元保証人の設定を求めます。これは支払いが困難になったときに、保証人に入院費を請求するためです。たいていは保証人に迷惑がかからないようにしますが、思いがけず入院費が高額になり支払いが困難になるケースが出てくるかもしれません。
親に支払い能力がないと見なされれば、保証人である子どもに請求がきます。誰しも自分自身の医療保険は準備していても、親の分までは想定外のはずです。しかし、保証人になっている限り、支払い責任は逃れられません。放置しておくとさらに状況を悪化させるため注意してください。
裁判所の介入
患者による医療費の未払いは病院にとって大きな問題です。未払いの件数によっては、病院の経営に悪影響が及ぶ可能性もあります。そのため、数回に及ぶ督促状や保証人への請求が聞き入れられない場合は、民事調停に持ち込まれ裁判所による介入が実施されます。最悪の場合は民事訴訟に発展し、家や家財道具の差し押さえといった強制執行に至ることも想定できます。
訴訟にまでこじれてしまうと、個人での対応は不可能となりますので、訴えられた側も弁護士に相談する必要があります。話し合いの間に入ってもらい、1日も早い問題の解決を図りましょう。ちなみに弁護士に正式に依頼すると、弁護士費用の負担も発生します。
親の入院費が払えない場合の退院や転院
入院が長期に及ぶ場合、費用は退院を待たずに毎月請求されます。室料は1日単位で発生するため支払いができず滞納が続くと、退院や転院を申し受けるかもしれません。病院側としては費用を徴収できない患者を長期で入院させておくよりも、確実に費用を支払ってくれる患者を優先したい考えがあるためです。
とはいえすぐに退院や転院を強いられるのではなく、ある程度の猶予が与えられますので、その間に支払いを完了する努力が求められます。新たに入院先を探したり、自宅療養へ切り替えたりするのはできれば避けたいところです。
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入院費が支払えない時の4つの対処法
親の病状にもよりますが、入院費が高額になり支払いが困難になるケースは少なくありません。民間の医療保険に加入していたとしても、足りなくなる場合が考えられます。そのため、入院費が支払えないときの対処法を知っておくと心強いのではないでしょうか。ここでは、4つのお金の工面方法を紹介します。万が一の際は参考にしてもらえると幸いです。
家族・親族に援助を相談
入院費を工面するために家族や親族に援助をお願いするのは、実はハードルの高い方法でもあります。返済ができない場合は、大切な身内の信頼を失いかねません。お金の工面ができずに困っていると伝え、借用書の作成をしたうえで借りるようにするといいでしょう。
お願いをする際は、対面で誠意のある言葉遣いを選ぶなどの考慮が必要です。通常、年間で110万円を超える資金を贈与すると、贈与税の対象になりますが、医療費は生活費に必要なお金に含められるので、贈与税の対象になる心配はないでしょう。ただし、110万円を超えるような高額な資金を、返済せずに受け取ったままでいると、贈与とみなされる可能性もありますので、注意しましょう。
クレジットカード払いに変更
病院によってはクレジットカードで入院費や治療費の支払いができるところがあります。手元に現金がない場合は、ひとまずクレジットカード払いにするのも1つの方法です。支払い期限が翌月まで引き伸ばせますので、退院したのち、定期預金などを解約するなどの支払い方法を検討できます。
また、クレジットカードによっては、いったん一括払いで支払った金額を、あとから分割払いに変更できるものもあります。一括で支払うのが難しい場合は、HP上で支払い方法の変更ができないかを確認してみましょう。
またクレジットカードには、リボ払いの機能がついているため、急場しのぎにリボ払いを利用する方法もあります。ちなみにリボ払いとは、月々の返済額を決めて利息と共に返済する方法です。ただしリボ払いでは、利息が高めに設定されており、支払い終了時期の認識もしづらいデメリットがあります。いずれにしても、支払いが滞れば、個人の信用情報に傷がつきますので、注意が必要です。
クレジットカードのキャッシング利用
キャッシングとはクレジットカードの機能のひとつで、カードを通してお金が借りられるサービスを差します。クレジットカードを作ると、キャッシング枠が設定でき、その範囲内であればクレジットカード会社からお金が借りられます。利用できる金額は会社によって異なりますが、一般カードの場合は、30~50万円程度が一般的です。クレジットカードがあれば、ATMですぐに借入ができるので、急な入用があるときには便利なサービスです。
ただしキャッシングでは、分割払いなどに比べて高い利息がつきますので、計画的に利用しなければなりません。また、キャッシングは少額の借入に適した方法です。入院費の請求額によっては賄いきれない場合もあります。
カードローン利用
入院費が支払えない場合、消費者金融のカードローンを利用する方法があります。カードローンはインターネットで申し込みができ、審査も1時間程度と迅速です。審査に通れば、即日でお金が借りられるため、退院が決まってからでも間に合う可能性があります。
カードローンは、返済能力があるとみなされればまとまった金額の借入もできますので、入院費が高額になっても対応できます。とはいえ、将来返済が困難になる可能性もゼロではありません。入院費以上の金額を借りたり、そのほかの費用として余分に借りるのは避けましょう。
親の入院費払えない場合に分割で支払う2つの方法
親の入院費が思いがけず高額になり、想定外の金額を支払わなければならなくなった場合、分割にしたいと思う方も多いのではないでしょうか。無理のない支払い方法を選び、生活に支障が出ないようにしたいものです。ここでは、病院に相談する方法と医療ローンを利用する方法を紹介します。ご自分に合った方法を選ぶ参考にしてください。
親の入院費が払えない場合は分割払い可能か病院に相談
手元に現金がなく、家族や親戚にも頼れない場合であっても、焦ってローンやキャッシングに頼るのは危険です。金融機関に借金をすると高い利息がプラスされ、さらに支払いが厳しくなります。それよりも入院費用について相談できる窓口で医療ソーシャルワーカーに相談してみませんか?
現状を正直に話せば、分割払いに応じてもらえる可能性がありますし、支払い期日を延期してもらえたりするかもしれません。1人で抱え込まず、まずは病院に相談をして、何回払いまでできるのか、月々の支払いはいくらになるのかを尋ねてみましょう。
民間の医療用ローンで分割
何らかの事情があり病院に相談したくない方は、医療ローンを利用してはいかがでしょうか。医療用ローンは銀行、もしくは信販会社が提供しているサービスで、病院と提携しているローン会社を利用するのが一般的です。
保険適用の治療はもちろん、保険適用外の治療に対してもローンが組めるため、美容医療や歯科矯正などにも利用できます。自己負担分を全部ローンにでき、途中で融資額の増額も可能です。しかし、審査は厳しく、利息が10〜15%くらいはかかりますので、利用には注意が必要です。
親の入院費が払えない場合に使える公的制度とは?
日本には医療費の負担を軽くするための制度が設けられています。ここでは各公的制度の申請先や必要書類について紹介します。
制度名 | 概要 | 申請先・必要書類 |
---|---|---|
高額療養費制度 | 1ヶ月の医療費が一定額を超えると利用できます。 | 【申請先】 健康保険被保険者証に記載の協会けんぽ支部、勤務先の健康保険の担当課、国民健康保険など【必要書類】 世帯全員の所得証明書 領収書のコピー 身元確認書類(運転免許証・パスポート等の写し) |
限度額適用認定証 | 設定の上限額以上の自己負担がありません。 | 【申請先】 国民健康保険の場合は、区役所の保険年金担当課【必要書類】 保険証 所得のわかるもの 本人確認書類 申請書 |
高額療養貸付制度 | 高額療養費の8〜9割を無利子で貸す制度です。利用には病院の許可が必要です。 | 【申請先】 国民健康保険の場合は、区役所の保険年金担当課【必要書類】 高額医療費貸付金借用書 高額療養費支給申請書 医療機関(病院等)発行の医療費請求書または領収書 保険証または受給資格者票等 |
高額療養委任払い | 高額療養制度の支給先を医療機関に委任するため、上限額以上の自己負担がありません。 | 【申請先】 国民健康保険の場合は、区役所の保険年金担当課【必要書類】 保険証 印鑑 病院発行の請求書 |
傷病手当金制度 | 3日連続で勤め先を休み、さらに4日目以降も働けない状態に支払われます。 | 【申請先】 健康保険被保険者証に記載の協会けんぽ支部、勤務先の健康保険組合の担当課、国民健康保険の窓口など【必要書類】 傷病手当金支給申請書 療養担当者(医師)の意見書 年金証書のコピー 年金額改定通知書のコピー 休業補償給付支給決定通知書のコピー |
生活保護制度 | 健康で文化的な最低限度の生活を守るための制度で、医療扶助もあります。 | 【申請先】 お住まいの区の福祉事務所(各区役所保護課)【必要書類】 マイナンバー 直近3か月分の収入証明書 全通帳 公共料金の領収書 |
医療費控除 | 同一世帯の医療費が10万円(所得が200万円未満の場合は所得の5%)を超過した場合、確定申告で超過分を申請できます。 | 【申請先】 管轄の税務署【必要書類】医療費控除の明細書 源泉徴収票 確定申告書 マイナンバーなど本人確認書類※医療費の領収書の添付は不要だが、5年間の保存義務あり。 |
手続きに時間がかかるものもありますので、できれば早めに申請を済ませておきましょう。
親の入院費が払えない際に自己負担額を減額する方法
親の入院費が払えない場合は、まずは病院の医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。同時に、親が加入している医療保険がないかを確認したり、差額ベッド代がかかっている部屋に入院している場合は、6人部屋などに移動させてもらうなどの方法があります。この2つを見直せば少しは自己負担額を減らせるかもしれません。ここでは、医療保険に加入している場合の請求方法や差額ベッド代の見直しについて説明します。今すぐにでもできますので、参考にしてください。
親の医療保険をチェック
親が民間の医療保険に加入している場合、入院給付金や手術給付金などが受け取れます。しかし、親が加入を忘れていたり、子どもが加入を知らなかったりすると保険の活用ができません。給付金の請求は3年経つと無効になってしまうため、早めの確認が必要です。
民間の医療保険に加入している場合、給付金の申請は本人が行わなければなりません。もし、難しい場合は指定代理請求特約を利用し、子どもが代理で請求できるよう申告しておきましょう。また、給付金が出る日数は契約によって異なります。何日分の給付が受け取れるのかも確認しておく必要があります。
差額ベッド代の見直し
個室から4人までの少人数用の部屋に入院していると、差額ベッド代がかかります。差額ベッド代は保険診療の対象外で、全額自己負担です。大部屋の差額ベッド代はかかりませんので、見直してはいかがでしょうか。入院するときに差額ベッド代は払えないと伝えておくと、大部屋を手配してもらえます。
ただし、病状が重篤・感染が疑われるなどの理由で、本人が希望しないにもかかわらず個室の利用を指定された場合は差額ベッド代が発生しません。大部屋に空きがなく、病院側の都合で個室になった場合は差額ベッド代の支払いに同意が必要です。同意しない場合は、入院を拒否されるケースもあります。
施設探しで悩んでいる方はケアスル介護に相談しましょう。ケアスル介護でしたら、約5万件の介護施設情報を掲載しているため、条件に合った老人ホームが探せます。もちろん無料で相談できます。退院後の老人ホーム探しは、ケアスル介護に相談しませんか?
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親の入院費が払えない場合に利用できるリバースモゲージとは?
入院費を捻出する方法として、リバースモゲージがあります。リバースモゲージとは自宅を担保としたシニア向けの融資です。自宅の評価額の50%〜60%の融資が受けられ、入院費や老後の資金に充てられます。金銭的に余裕があるときに返済をすることもでき、万が一死亡時まで完済できなかった場合は、自宅を売却し返済に充てます。自宅の相続を考えていない方に向いています。
融資金は、一括で受け取るタイプのほか、分割して受け取るタイプ、必要な時にその都度受け取れるタイプなど、リバースモーゲージを扱っている金融機関ごとにさまざまです。用途は自由とするリバースモーゲージもあるほか、住宅関連の資金以外には使えないとするリバースモーゲージもあります。また、リバースモゲージはすべての人に向いている融資方法ではありませんし、返済ができなければ、将来的に家を手放すことになるため、利用する前に相続人である子どもたちとの話し合いが必要です。
親の入院費は無理のない支払い方法を見つけましょう
親の入院費が支払えない場合、家族や親族からお金を借りたり、医療用ローンを組んだりとさまざまな方法があります。どこにも借りる先がなければ、クレジットカードのあとから分割払いの機能を利用したり、キャッシングやカードローンの利用も可能です。ただし、利息が高いため返済が滞らないよう計画的な利用が必要になります。また、入院費だけに限らず老後の費用を補充するために自宅を担保に融資を受けるリバースモゲージについても理解しておくといいでしょう。
分割払いは病院によって対応が異なります。まずは相談をして、分割払いに応じてもらえるか確認をしてください。対応が不可能な場合は、クレジットカードの分割払いを利用する方法もあります。詳しくはこちらをご覧ください。
高額療養費制度とは、定められた上限以上に支払った医療費は後日払い戻し申請をすると返金される制度です。しかし、一旦は請求書通りの金額を支払う必要があります。一方、限度額適用認定証は上限以上の医療費は請求されないため、超過分の手出しをする必要がありません。窓口での自己負担額が少なく済むので助かります。詳しくはこちらをご覧ください。