「長期療養型病院は施設とは違うの?」
「費用はどのくらいするの?」
施設を検討中の方や長期療養できる病院をお探しの方は悩みながら検討している方もいるでしょう。
費用は病状やADL区分・年齢などによって異なります。また、保険適用のものや保険適用外のものがあるため混乱する方も多いです。
この記事では、長期療養型病院の特徴や費用の内訳について分かりやすくまとめています。支払いが困難になったときに使える制度もご紹介しているので、最後までご覧ください。
長期療養型病院について
医療療養病床とも呼ばれ、療養専用の病床がある病院です。概要について、以下のとおりに解説します。
- 長期療養型病院の目的は長期療養
- 長期療養型病院の利用対象者は慢性期の患者
目的や利用対象者について詳しく解説します。
長期療養型病院の目的は長期療養
目的は病気の状態が安定したあとの医療的ケアや長期間の療養です。
医療法では、病床を5つに分類しています。「療養病床」に該当します。詳細は以下のとおりです。
病床分類 | 入院対象者 |
精神病床 | 精神疾患のある方 |
感染症病床 | 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10 年法律第114 号)に規定する一類感染症、二類感染症(結核を除く)、新型インフルエンザ等感染症及び指定感染症並びに新感染症の患者 |
結核病床 | 結核の方 |
療養病床 | 精神病床、感染症病床、結核病床を除く病院の病床または一般診療所の病床のうち主として長期にわたり療養を必要とする患者 |
一般病床 | 精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床以外の病床 |
療養病床には、医療的なケアが行われる医療療養病床と医療的ケアが必要な要介護者のための介護療養病床があります。

長期療養型病院の利用対象者は慢性期の患者
長期療養型病院の入院対象者は慢性期の方です。
2006年より医療区分が導入されました。医療療養病床では「医療区分」と「ADL区分」で分類します。療養型病院では、医療区分2・3の方が優先的に受け入れられます。医療区分とADL区分は以下で具体的に紹介します。
医療区分は、3段階あります。医療区分3は、スモンの方や医師および看護師の常時監視・管理が必要な状態の方が対象です。医療処置の難易度・必要度も高く、中心静脈栄養や24時間の点滴などが必要です。
医療区分2は、筋ジストロフィーや多発性硬化症、難病の方などが対象です。医療処置の必要度が高く、透析や発熱または嘔吐をともなう場合の経腸栄養、喀痰吸引などが必要です。
医療区分1は、医療区分2・3に該当しない方が対象です。
ADL区分は「ベッド上の可動性」「移乗」「食事」「トイレの使用」の4項目を0~6点で評価し、各項目を点数化します。以下はADL区分の評価表です。
ADL区分の評価
0 | 自立 | 手助け、準備、観察は不要または1~2回のみ |
1 | 準備のみ | 物や用具を患者の手の届く範囲に置くのがが3回以上 |
2 | 観察 | 見守り、励まし、誘導が33回以上 |
3 | 部分的な援助 | 動作の大部分は(50%以上)は自分でできる・四肢の動きを助けるなどの体重(身体)を支えない援助を3回以上 |
4 | 広範な援助 | 動作の大部分は(50%以上)は自分でできるが、体重を支える援助(例えば、四肢や体幹の重みを支える)を3回以上 |
5 | 最大の援助 | 動作の一部(50%未満)しか自分でできず、体重を支える援助を3回以上 |
6 | 全面依存 | まる3日間すべての面で他者が全面援助した(および本動作は一度もしなかった場合) |
合計点数によりADL区分が分類されます。ADL区分は以下のとおりです。
- ADL区分 1 :0~10点
- ADL区分 2 :11~22点
- ADL区分 3 :23~24点
最合計点が高いほどADL区分が高く、介護の必要度も高いです。
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長期療養型病院の費用は施設に比べて安価
高齢者になると介護施設を検討される方も多いでしょう。長期療養型病院と似たような施設に特養(特別養護老人ホーム)があり、比較的体調が安定している方が入居しています。最期まで入居可能な施設です。
長期療養型病院には転院や退院がありますが、終末期の患者や看取りの対応をしている場合もあります。費用については以下のとおりです。
長期療養型病院の1ヵ月あたりの費用の目安
医療区分 1 | 医療区分 2 | 医療区分 3 | |
費用 | 48,450~131,450円 | 60,960円~144,920円 | 68,130円~156,890円 |
参考元:朝日新聞 Reライフ.net つながる。変わる。人生ここから
特養(特別養護老人ホーム)の1ヵ月あたりの費用の目安(要介護5の方が多床室を利用した場合)
施設サービス費の1割 | 約25,200円(847単位×30日=25,410) |
居住費 | 約25,650円(855円/日) |
食費 | 約43,350円(1,445円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます) |
合計 | 約104,200円 |
特別養護老人ホームでは、胃ろうや日中の痰吸引などの日常的な医療ケアであれば対応可能な施設が多いです。しかし、急変時や専門的な医療行為が必要となる場合は対応が難しいです。
費用の内訳はケースごとによって違う
長期療養型病院では医療保険が適応され、ADL区分や所得などに応じて費用が変わります。以下の項目について解説します。
- 入院費の目安について詳しく解説
- 食費は所得によって違う
- 居住費は比較的安く設定されている
医療保険の適用や自己負担により費用の内訳が変わるため注意しましょう。
入院費の目安について詳しく解説
入院費については、入院される方の医療区分・ADL区分によって変わります。特別食や褥瘡対策など個別に必要なケアを受けた場合の医療点数は基本入院費に加算され、入院費の増額もありえます。基本入院費は以下の表のとおりです。
区分 | 医療区分 1 | 医療区分 2 | 医療区分 3 |
ADL区分 1 | 815円 | 1,232円 | 1,471円 |
ADL区分 2 | 920円 | 1,386円 | 1,758円 |
ADL区分 3 | 968円 | 1,414円 | 1,831円 |
参照元:朝日新聞 Reライフ.net つながる。変わる。人生ここから
特別な医療ケアや医療保険が適用されない項目の費用については自己負担なので、注意が必要です。
食費は所得によって違う
入院中の食事代については、全国一律の値段に決まっています。しかし、所得によっては安くなる場合があるため確認が必要です。
区分 | 医療区分 1 | 医療区分 2 | 医療区分 3 |
課税世帯 | 460円 | 460円 | 260円 |
低所得者Ⅱ | 210円 | ||
低所得者Ⅰ | 100円または130円 |
参照元:朝日新聞 Reライフ.net つながる。変わる。人生ここから
長期療養型病院では、入院日数が長くなる傾向があります。住民税非課税世帯の方で過去1年間の入院日数が90日を超える場合は1食につき160円です。
居住費は比較的安く設定されている
居住費の目安は0円~370円と比較的安く設定され、所得に応じた料金設定があります。区分による料金は以下のとおりです。
区分 | 医療区分 1 | 医療区分 2 | 医療区分 3 |
課税世帯 | 370円 | 370円 | 0円 |
低所得者Ⅱ | 370円 | ||
低所得者Ⅰ | 370円 |
参照元:朝日新聞 Reライフ.net つながる。変わる。人生ここから
個室を希望する場合は、個室代が必要な場合があるので注意してください。
自己負担となるものを詳しく解説
医療保険が適用されない項目については全額自己負担です。以下、例としてご紹介します。
- おむつ代:尿取りパッドやおむつなど使用した枚数の金額がかかる。
- 病衣代:リース代は10,000~15,000円程度。病衣を必要としない病院もある。
- 個室代:多床室が基本。個室代は別途必要。個室代の相場は1,000円~3,000円/日。個室代は、病院によって違いがある。
- テレビなどの施設利用料・消耗品費:病院によっては入院時に必要な消耗品(手袋、電池、ティッシュなど)などを病院で購入する場合もあります。テレビカード代や電気代として費用がかかる場合がある。
病院によって少しずつ異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
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長期療養型病院の費用の支払いが困難な時は制度を上手に使おう
費用が高くなってしまい支払いが困難になる可能性があるかもしれません。高額な医療費を支払いつつ、日々の生活を維持するのは大変です。支払いが困難になった際に利用できる制度は以下の通りです。
- 高額療養費制度
- 高額療養貸付制度
- 高額療養費受領委任払い制度
制度を上手に活用しましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヵ月分の上限額を超えて支払った金額を支給する制度です。支給の対象となるのは、保険適用される診療に対して患者が支払った自己負担分です。
食費や居住費などの医療以外でも必要となるものや差額ベッド代、先進医療にかかる費用などの患者の希望で受けるサービスは対象になりません。上限額は年齢や所得によって変わります。
支給申請方法については、加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出または郵送する方法です。支給までに数か月かかる場合があります。
高額療養貸付制度
高額療養費が支給されるまでの間、無利子で貸し付けを行う制度です。対象は健康保険に加入している方です。
申し込みは、「高額療養費貸付金貸付申込書」に必要事項を記入し下記の書類を添付しなければなりません。
- 医療機関(病院等)の発行した、保険点数(保険診療対象総点数)のわかる医療費請求書
- 被保険者証又は受給資格者票等(原本提示・郵送の場合は写し)
- 高額医療費貸付金借用書
- 高額療養費支給申請書
各書類を添付し、全国健康保険協会各支部に提出してください。
高額療養費受領委任払い制度
国民健康保険では「高額医療費貸付制度」に代わり「高額医療費受領委任払い制度」を利用できる市区町村もあります。
各市区町村の国民健康保険加入者で、医療費が高額なため医療費を支払いつつ生活の維持が困難な方が対象です。支払いが特に困難でない方の場合は利用できないので注意が必要です。
各市区町村によって変わりますので、お住いの市区町村に確認してください。
長期療養型病院の3つのメリット
長期療養型病院のメリットは以下の3つです。
- さまざまな専門職の配置
- 施設に比べて比較的費用が安価
- 病院内に併設されている安心感
それぞれについて詳しくご紹介します。
さまざまな専門職の配置
職員の人員配配置は、医療法に基づいて決められています。介護が必要な方が多いため、人員が手厚く配置されています。長期療養型病院の人員配置は、以下のとおりです。
一般病床 | 療養病床 | |
医師 | 16:1 | 48:1 |
歯科医師 | 16:1 | 16:1 |
薬剤師 | 70:1 | 150:1 |
看護師および准看護師 | 3:1 | 4:1 |
看護助手 | ー | 4:1 |
栄養士 | 病床数100以上の病院に1人 | |
診療放射線技師、事務員そのほかの従業員 | 適当数 | |
理学療法士
作業療法士 |
適当数 |
さまざまな専門職が配置されているため、療養中も安心です。
施設に比べて比較的費用が安価
長期療養型病院は医療保険が適用となっており、医療区分やADL区分、所得などによって費用は変わります。
特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保険施設)などの施設は介護保険の適用が可能です。介護度や部屋のタイプなどによってかかる費用が変わってきます。
長期療養型病院の場合は、支払いが困難な時には制度を活用できるため、比較的安価に利用できるといえるでしょう。
病院内に併設されている安心感
長期療養型病院は病院内に併設されています。万が一、状態が急変してもすぐに対応が可能です。さまざまなスタッフが常駐しているため目が届きやすい環境といえるでしょう。
介護施設では医師が常駐している場合でも、病院のような設備がない施設が多いです。急変に対応するまでに時間がかかる状況もあります。設備面や配置されている人員面から長期療養型病院は安心感があるといえます。
長期療養型病院の3つのデメリット
長期療養型病院のデメリットは以下の3つです。
- 転院や退院を求められる
- レクリエーションやイベントはほとんど開催されない
- 生活援助サービスはない
それぞれのデメリットについて詳しくご紹介します。
転院や退院を求められる
長期療養型病院は、医療的ケアが必要な慢性期の方が対象です。そのため、医療的ケアの必要がなくなれば退院しなければなりません。
入院期間は一般病床では約2週間ほどが目安です。療養病床は病状や医療機関によって違いますが、3~6カ月が目安です。
厚生労働省の病院報告(平成30年4月分概数)によると「医療療養病床の平均在院日数は141.8日」です。必ずしも、最期まで入院できるわけではない点に注意しましょう。
レクリエーションやイベントはほとんど開催されない
長期療養型病院は、医療が必要な方が長期間療養するための病床です。医療や療養がメインのためレクリエーションやイベントはほとんど開催されません。
施設のような生活の場ではないので、お楽しみ目的のイベントなどを求める方は注意しましょう。また、施設に比べ交流機会も少ないでしょう。
生活援助サービスが少ない
長期療養型病院に入院中も「在宅にいるような生活をしたい」と思う方もいるかもしれません。
在宅であれば、掃除や洗濯、調理など要介護者の日常生活で必要な援助を介護保険で利用が可能です。日常生活を送るうえで、要介護者の困りごとをサポートしてくれます。
長期療養型病院でも掃除や洗濯、調理などは行っています。しかし、個別に時間をかけてサポートしてくれるわけではありません。
また「実際に施設を見てみないと生活のイメージができない…」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
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医療的ケアが必要なら長期療養型病院を施設選びの選択肢の一つに
病気の治療が落ち着いたら、在宅や施設、長期療養型病院などさまざまな選択肢があります。もし酸素療法や透析などの医療的ケアが必要な場合は、長期療養型病院を選択肢に入れてみてください。
施設と比較し手厚い人員で、医療的ケアを受けられます。また、医療保険適用になり、支払いが困難なときの制度もあり万が一支払いで困ってしまった場合も安心です。
長期療養型病院の費用やメリット・デメリットを確認したうえで、最適な施設選びを行ってください。
ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談すると適切に対応してもらえます。詳しくはこちらをご覧ください。
病院によっては支払いの期日に猶予を設ける、分割払いに対応してくれるところもあります。一度、病院に相談してみましょう。意図せずに高額となり困らないように、事前確認が大切です。詳しくはこちらをご覧ください。