認知症の周辺症状のひとつに妄想がありますが、対応に困ることが多いですよね。妄想の対象が家族に向かうと、ついイライラしてしまったり、関係性が悪化してしまったりすることもあります。
本記事では妄想を引き起こす原因について説明し、覚えておきたい接し方や心構え、さまざまなパターンの対応法を提案しています。
穏やかな気持ちで介護に取り組むために、ぜひ参考にしてください。
認知症による妄想とは
認知症による妄想とは、現実に起きていないことを真実と思い込むことで、家族や介護者が否定しても修正が不可能な症状をさします。
認知症において妄想は、比較的よく見られる症状です。東京都の調査によると、アルツハイマー型認知症では15~56%、脳血管性認知症では27~60%に妄想が出現するという結果が出ています。
妄想が起きる原因
妄想は、認知症による認知機能の低下が原因なのはもちろんですが、本人の内面にあるさみしさや悲しみ、疎外感や不安などの感情が関係しているといわれています。
そして直接のきっかけになるのが、家族や介護者などのふとした言動であることが明らかになってきました。
認知症になると必ず妄想が起きるのか
認知症の人には妄想が起こりやすいことは前述のとおりですが、すべての人に妄想が起こるとは限りません。
妄想は、認知症の「行動・心理症状(BPSD)」と考えられており、認知症のタイプによっても出やすい症状がことなります。
認知症の「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」にはどのようなものがあるのか、表で見てみましょう。
中核症状 | 記憶障害
見当識障害 理解・判断力の障害 実行機能障害 失語・失認識・失行 |
行動・心理症状
(BPSD) |
失禁・弄便
介護拒否 帰宅願望 妄想 せん妄 睡眠障害 異食 暴力・暴言 幻覚・錯覚 徘徊 不安・抑うつ |
中核症状とは、人によって程度の差はあるものの、認知症になると誰にでも出現する症状をさします。
それに対して行動・心理症状は、中核症状によって二次的に起こる症状をさします。
行動・心理症状は、中核症状をもとにして、本人の性格や環境などによって出現するため、全員に同じように出るものではありません。
家族が対象になりやすい
妄想は、家族や介護者などの身近な人が対象になりやすいといわれています。
本人の持つ不安感と、周囲のふとした言動が重なったときに、妄想が起こりやすいのです。
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代表的な妄想の種類と特徴
認知症の妄想は、さまざまな形で現れますが、一般的によく見られる妄想の種類と特徴について説明します。
妄想が起きる原因や対応のヒントも解説するので、参考にしてください。
物盗られ妄想
認知症で起きやすい妄想として、代表的といえるのが物盗られ妄想でしょう。自分の大事なものが盗まれたと思い込み、身近な人を疑うケースが多く見られます。
見捨てられ妄想
「自分は邪魔な存在で、必要とされていない」という思いが強くなると、家族の外出などのきっかけで、見捨てられたと思い込んでしまいます。
孤独感によって起こる妄想ですが、家族への信頼感が薄れてしまい、悪循環を起こしやすい妄想です。
嫉妬妄想
配偶者に対して、不貞をしているのではないかと疑い、激しい嫉妬心を見せる妄想です。
見捨てられ妄想と同様で、自分は価値がない人間だと思い込んでしまうことで、配偶者が他の異性と駆け落ちをしようとしているなどと思い込んでしまうのです。
迫害妄想
迫害妄想とは、誰かが自分に危害を加えようとしているなど、誰かが自分を攻撃していると訴えるものです。
対象は身近な人の場合もありますが、見ず知らずの人に狙われていると訴える場合もあります。
帰宅妄想
帰宅妄想とは、「家に帰りたい」と訴えるもので、自宅にいる時でも起きることがあります。
帰宅妄想が起きた場合は、家に帰ろうと外に出てしまうことがあるので注意が必要です。
被害妄想
被害妄想は「いじめられている」「無視されている」などの被害を訴えて、自分が被害者だと思い込むものです。
幻視による妄想
幻視とは、ヘビがいる、小さな子どもがいるなど、そこにないはずのものが見えることで、妄想や作話をともなうことがあります。
視覚にまつわる妄想は、レビー小体型認知症に多く見られる特徴的な症状です。
錯視による妄想
錯視とは「見間違い」のことで、丸めた衣類を動物と見間違えたり、壁の模様が人間の顔に見えたりすることをさします。錯視も、レビー小体型認知症の人によく見られる症状です。
妄想への対応法
妄想はさまざまな種類の訴えを起こすため、家族や介護者が対応に困ることも多いでしょう。妄想が起きたときに、どのような対応が必要かをまとめてみました。
対応に必要な心構え
認知症対応において、重要な3つの心構えがありますが、これは妄想についても応用できます。
- 驚かせない
- 急がせない
- 自尊心を傷つけない
絶対にやってはいけない対応
妄想の有無に関わらず、認知症の人にやってはいけない対応とは以下のとおりです。
- 叱る
- 命令する
- 強制する
- 子ども扱いをする
- 行動の制限をする
- 役割を取り上げる
- 何もさせない
認知症介護でストレスがたまったときは
認知症の介護はストレスがたまりやすいものですが、妄想が出現することで家族や介護者の負担はとても大きなものになります。
体力的にも精神的にも負荷がかかり、どのように介護に向き合えばいいのか悩む人も多いことでしょう。
もし認知症の介護でストレスが溜まった際は、自分の身の回りに相談役を見つけておくことが大事です。
親族・家族といった身の回りの人でも構いませんし、地域包括支援センターやケアアドバイザーなど、専門家に相談すると具体的なアドバイスを得られることもあるでしょう。
自分一人で抱え込みすぎると、介護うつやストレス症状の悪化にもつながるので、周りで相談できる人を1人以上作るようにしましょう。
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認知症の妄想対応は支援の使い方がカギになる
認知症で妄想が出現した場合には、介護者の負担をなるべく抑えるように、さまざまな支援を上手に使うことがカギとなります。
認知症介護は終わりが見えにくい側面があり、進行度合いに個人差があるため、第三者に相談しにくい面があります。
介護者が全てを抱え込んでしまわないように、いかに負担を減らすかが重要になります。
認知症のタイプにもよりますが、自分の現状を受け入れたくない気持ちや不安感が、周囲の人の言動をきっかけに妄想に発展することが多いです。詳しくはこちらをご覧ください。
なるべく多くの人から支援を受ける方向で考えましょう。ストレスを感じたら、その場から離れるなど、本人を視界から外すだけでも気持ちが楽になります。対処方法に関しては、詳しくはこちらで解説しています。