住みやすい環境の施設を検討する際、介護付き有料老人ホームを頭に浮かべる方もいるでしょう。
介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護施設です。入居者の安全と安心した暮らしのサポートを目的に企業が運営しています。
なお、有料老人ホームの中で唯一、看護師の配置義務が定められているため、医療面のサポートを受けられる特徴があります。
そのため、既往がある方や老後に不安を抱えた方には、心強い施設です。
そうした施設で働く「人」に注目した施設選びも、実はとても大切です。
そこでこの記事では、介護付き有料老人ホームで働く「人」に注目し、入居した際に提供される質の高いケアについて解説します。

介護付き有料老人ホームの人員基準とサービスの質との関係
介護付き有料老人ホームでは、人員配置が介護保険法で定められています。
その比率が時に「3:1」「2.5:1」「2:1」「1.5:1」などと表記されているのを目にした経験はありませんか?
この表記は、各介護施設の施設情報や運営規定に記載されている人員体制を言います。
人員基準を定める背景には、長年の介護現場における「人手不足」や「サービスの質」が関係しているといわれています。人員基準を定め職員の確保が行えれば、施設ごとのサービスの質の差が改善できるといった目的で取り組まれている制度です。
ここでは、介護付き有料老人ホームの人員体制とサービスの質に注目して解説していきます。
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介護付き有料老人ホームの最低人員基準とは
介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームの種類の1つで、ほかには「健康型」「住宅型」の有料老人ホームがあります。
しかし、人員基準が法律で定められているのは、介護付き有料老人ホームのみです。
介護付き有料老人ホームに定められている人員基準は、要支援2以上の入居者3名に対して看護師または介護士を1名配置する「3:1」が最低基準となっています。
そこで、介護付き有料老人ホームとほかの「健康型」「住宅型」の有料老人ホームの人員体制の違いを比較してみましょう。
職種 | 介護付き有料老人ホーム | 「健康型」「住宅型」有料老人ホーム |
管理者(施設長) | 1名(専従) | 1名 |
生活相談員 | 1人以上(常勤換算) | 必要数 |
看護師 | 入居者30人までは1人以上。入居者が50人増すごとに1人追加 | 必要数 |
介護士 | 看護師と併せて要介護者3人に対して1人以上(常勤換算) | 必要数 |
機能訓練指導員 | 1人以上(常勤換算) | ー |
ケアマネジャー | 1人以上(常勤換算) | ー |
入居相談員 | 配置基準なし | 配置基準なし |
事務員 | 配置基準なし | 配置基準なし |
介護付き有料老人ホームと「健康型」「住宅型」の有料老人ホームの人員配置の違いは、提供されるサービスが施設内か施設外であるかが関係しています。
介護付き有料老人ホームでは、施設の職員がサービスを提供する一方で、「健康型」「住宅型」の有料老人ホームでは、個人で外部のサービスを契約し利用しているため、「必要数」といった人員配置になっています。
【参考:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」】
人員基準とサービスの質との関係
介護付き有料老人ホームの人員体制は、要支援2以上の入居者3名に対して看護師または介護士を1名配置する「3:1」が最低基準です。
「2.5:1」「2:1」「1.5:1」などの比率は、手厚いサポートとして「上乗せ介護費」が加算されます。
この上乗せ介護費は、最低基準以上の職員を配置し、入居者に対して通常よりも手厚いサービスが行える環境の介護付き有料老人ホームが加算できる制度です。
例えば、要介護者が60人以上いる場合は、看護師または介護士を24人以上配置している施設が加算対象です。仮に30人に満たない施設であっても、基準に基づいた人数に「+2人」を加えた人数以上の看護師または介護士を配置していれば加算対象となります。
なお、上乗せ介護費は、介護保険の適用外になるため、サービスにかかる費用の全額が入居者の自己負担になります。
また、上乗せ介護費の費用額は、施設で自由に決められるため、一律ではありませんので注意しましょう。
【参考:厚生労働省「特定施設入居者生活介護事業者が受領する介護保険の給付対象外の介護サービス費用について」】
介護付き有料老人ホームの職員の業務内容
介護付き有料老人ホームでは、入居者をサポートするためにさまざまな職種の職員が働いています。
施設内で働いている職員の職種や業務内容は、介護付き有料老人ホームで提供されるサービスの質に大きく関係し、入居者の方の満足度にも影響を与えます。
また、施設によっては、上乗せ介護費が加算される場合もあるので、費用を支払う入居者にとって、施設で働く職員について理解するのはとても大切です。
そこで、介護付き有料老人ホームで働く職員について紹介します。
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施設のトップである「管理者」
施設長とも呼ばれる管理者は、施設の責任を担う職員です。
管理者が日々行っている業務は、以下のような内容です。
- 職員の採用や教育
- 人事労務
- 請求管理
- 入居者やご家族への対応
- コンプライアンス対応
- 地域や外部機関との連携
- 建物や設備の管理
管理者の主な業務は、運営やマネジメントなどの管理業務が挙げられます。管理者は施設経営の責任者として、高齢者の介護における知識や経験がある方が配置されます。
入居者の方が暮らしやすい環境を作るのはもちろん、施設で働く職員の働きやすさも考慮しながら、施設運営を行う施設を代表する職員です。
なんでも相談「生活相談員」
生活相談員は、別名「ソーシャルワーカー」と呼ばれています。入居者やご家族の相談役でもあり、地域や外部関係者の窓口になるケースが多い職種です。
生活相談員が日々行っている業務は、以下のような内容です。
- 入居者やご家族の相談対応
- 地域や外部機関との連携
- 入所・退所の手続き
- 施設内の連絡や調整
- コンプライアンス対応
- 援助計画などの作成
施設によってさまざまな業務も担う生活相談員は、「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」のいずれかの資格を有する方となります。
入居者の健康を守る「看護師」
入居者の健康管理の責任を担う看護師は、医療従事者である看護師にしかできない医療行為を行います。
看護師が日々行っている業務は、以下のような内容です。
- 入居者の健康管理
- 医師の指導に基づく医療行為(喀痰吸引や経管栄養、酸素療法の管理など)
- 配薬準備や与薬
- 通院や入退院、診察のサポート
介護付き有料老人ホームには、医師が常駐していないため、入居者の健康を守るのに看護師は欠かせない存在です。
入居者の健康状態はさまざまで、病状に応じた医療ケアは、医師の指示や指導に基づき、看護師が対応するのが基本となります。
入居者を一番近くで支える「介護士」
介護士は、施設の基本となる身体介護や生活援助を行う、入居者にとって一番身近で接する時間が多い職員となります。
介護士が日々行っている業務は、以下のような内容です。
- 身の回りのお世話
- 食事、入浴、排泄などの身体介護
- 食事や入浴の準備
- 居室の掃除や環境整備
介護士は、入居者が安心した生活を送れるようにサポートする業務を中心に行い、さまざまな職種と連携をとりながら働く職員です。
また、施設によっては資格がなくても介護士として働いている方もいます。
健康維持や機能向上を図る「機能訓練指導員」
機能訓練指導員は、入居者の身体機能の向上や健康維持のためのリハビリの指導をする職員です。
介護付き有料老人ホームに配置する人員は、下記の表にある8つのいずれかの資格を保有している方に限ります。
必要な資格 | 業務内容 |
理学療法士 | 運動療法や物理療法を使った、運動機能の改善や機能訓練を行う |
作業療法士 | 立つ、歩くなどの日常動作の基本の動きの改善や機能向上を図る |
言語聴覚士 | 言語訓練や嚥下障害の方に口腔機能の改善や向上を図る |
柔道整復師 | 骨や筋肉などの身体損傷の痛みの緩和や機能回復を図る |
看護師・准看護師 | 医療従事者として、健康管理や病気のリスク管理、医療ケアを行う |
あん摩マッサージ指圧師 | マッサージや指圧療法などを実施し、身体ケアを図る |
鍼灸師 | 体の痛みや機能の改善を鍼灸施術を通して実施
※ただし、鍼灸師以外の機能訓練指導員がいる介護施設での半年以上の実務経験が必要 |
介護付き有料老人ホームにおいて、1人以上の人員を配置するように定められている機能訓練指導員は、保有する資格に応じたスキルを活かし、入居者の心身のケアや機能向上に向けた支援を行う職員です。
しかしながら、機能訓練指導は常に必要ではないため、勤務内の多くは一般の介護士同様に入居者の方と接しています。
【参考:厚生労働省「特定施設入居者生活介護」】
入居者のイメージを具体化する「ケアマネジャー」
ケアマネジャーは、入居者が施設内で安定した生活を送るためのプランを考えます。
別名「介護支援専門員」とも呼ばれるケアマネジャーの日々の業務は、以下のような内容です。
- ケアプランの作成や調整
- 介護保険の給付管理
- 介護サービス事業者との連携や調整
- 施設内のサービス提供の観察
ケアマネジャーは、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、介護支援専門員証を取得した方が配置されます。
入居者が施設で有意義な生活を送るために、何が必要なのかを考えたり、入居者やご家族の意向を具体化してさまざまな職種と連携できるプランを考えたりする職員です。
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介護付き有料老人ホームの人員基準における注意点
介護付き有料老人ホームの人員基準は、サービスの質とも関係しているため、高品質なサービスの提供を求める方は、人員基準を重視した施設選びがポイントです。
しかし、人員基準を重視した施設選びには注意すべき3つの点があります。
- 夜勤の人員基準は、「3:1」より少なくてもOK
- 介護士や看護師は「常勤」でなくてもよい
- 手厚いサポートの「上乗せ介護費」が加算される場合がある
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
夜勤の人員基準は「3:1」より少なくてもOK
介護付き有料老人ホームの人員基準である「3:1」は、24時間体制で職員を1名配置するといった意味ではありません。
施設の多くは、1日の中でも食事や入浴といった人手を要する時間帯である日勤帯に多くの職員を配置し、夜間帯は少人数で対応する勤務体制をとりながら職員の調整を行っています。
介護士や看護師は「常勤」でなくてもよい
介護士や看護師は必ずしも「常勤」でなくてよいとされています。施設内の稼働が忙しい時間帯にのみ勤務するパートやアルバイトでも勤務が可能です。
そのため、子育てや親の介護などと両立して働けるので、時間に制限がある方でも働きやすい環境といえるでしょう。
また、決まった時間に同じ職員がサービスを提供してくれるといった点は、入居者の方も安心できるポイントに繋がります。
手厚いサポートの「上乗せ介護費」が加算される場合がある
介護付き有料老人ホームでは、介護サービスを手厚くサポートするのに力を入れている施設が多くあります。
高品質なサービスを目的に人員基準の「3:1」を超える職員を配置しているため、「上乗せ介護費」が必要です。
なお、上乗せ介護費は介護保険の適用外になるため、サービスにかかる費用は全額自己負担になります。
また、上乗せする介護費用は施設側が自由に決められるため、入居を検討する施設のパンフレットや説明会などで確認するようにしてください。
より手厚い介護サービスを提供している施設をお探しの方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
ケアスル介護では、入居相談員が施設ごとに実施するサービスやアクセス情報などをしっかりと把握した上で、ご本人様に最適な施設をご紹介しています。
「身体状況に最適なサービスを受けながら、安心して暮らせる施設を選びたい」という方は、まずは無料相談からご利用ください。
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施設設備と同じように人手にも目を向けよう
介護付き有料老人ホームでは、6人の違った職種の方が勤務しながら、入居者の生活をサポートしています。
「3:1」の人員基準が介護法で定められていますが、必ずしも24時間体制で職員を配置しなくてはならない訳ではありません。
今もなお、介護の現場での人手不足は深刻な問題です。
厚生労働省は、人員基準の緩和で業務の効率化を検討しています。具体案として、テクノロジーを活用した介護ロボットや見守りシステムの活用で、入居者の生活をサポートする日もそう遠くはないかもしれません。
入居先を検討される場合には、日々の生活をいかに有意義に過ごせるかが大切です。
そのためには、介護付き有料老人ホームで働く人と、提供されるサービスの質に目を向けてみるのもよいでしょう。
毎日3人に対し1人の職員を配置しなくてはならない訳ではなく常勤換算です。例えば、常勤の勤務時間が週40時間の施設であれば40時間勤務の人間を1と計算します。パートで週20時間勤務の方は0.5と計算します。詳しくはこちらをご覧ください。
介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)ならば、夜勤配置は1名以上となります。詳しくはこちらをご覧ください。