この記事を最後まで読み終えてもらえれば、特別養護老人ホームの一日の流れとユニット型特養のメリット・デメリットがわかり、自分に合った施設探しに役立ちます。
特別養護老人ホームへの入所を検討している方、ユニット型の特徴を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

特別養護老人ホームの一日の流れ
特別養護老人ホームではおおまかなタイムスケジュールが決まっています。しかし、自由に過ごせる時間も多く、行動の制限は少ないです。
一日の流れをご紹介します。
①起床・着替え・洗面・トイレ誘導
起床時間は入居者によって異なるものの、朝食前に起きている方がほとんどです。起床後は介護スタッフの手助けを得ながら、着替え、洗面、トイレを済ませ、朝食の時間までそれぞれの生活習慣に合わせて自由に過ごしています。
- 食堂でコーヒーを飲みながら新聞を読む
- 自室でTVを観たり、ラジオを聴いたりする
- 一度起床したあと、朝食の直前まで寝て過ごす
- 入居者同士でお喋りをたのしむ
また、認知症などで意思表示や自分でスケジュール管理が難しい方は、職員が声をかけて起床から着替え・洗面・トイレ・朝食へと誘導します。
1日の始まりの様子は体調や気分を表す重要なサインです。スタッフは無理強いすることなく、本人の意思を尊重したうえで、十分な観察をしながら誘導を行います。
②朝食・服薬・口腔ケア
朝食の時間は、午前8時前後です。
基本的に食事を摂る場所は食堂です。体調や気分が優れない方は、状態に応じて居室で食事をする場合もあります。
介護スタッフは必要に応じて食事介助をします。1つのテーブルなど数人を担当し、それぞれの様子に目を配りながら、声かけを行います。
また、インスリン注射や血糖測定、経管栄養などの医療ケアは看護師が対応します。
食後に薬が必要な方には服薬介助をし、口腔内の清潔を保つ口腔ケアを行います。
③入浴
入浴時間は主に日中です。午前もしくは午後のみであったり、性別や入浴の種類によって午前・午後に分かれたりします。夜や就寝前に入浴することはほとんどありません。
入浴する順番は、介護度や入浴後の処置の有無などによって決まります。入浴拒否がみられる入居者には、本人の承諾を得たうえで誘導し、無理強いはしません。
入浴前には改めて入居者の健康チェックを行います。看護師による体温・血圧・脈拍等のバイタルチェック、体調や顔色などの変化、全身状態や肌トラブルなども確認します。
入浴後は下着などを新しく着替え、髪を乾かし、しっかりと水分補給をします。
なお、入浴時間中はスタッフが手薄になるため、レクリエーションやイベントなどは行われません。入居者は食堂や居室で穏やかに過ごし、入浴の順番を待ちます。
④昼食・服薬・口腔ケア
昼食の時間は12時前後です。
朝食と同様、スタッフの見守りや食事介助を受けながら、安全に食事をします。
食後は必要に応じて服薬、うがいや歯磨きなどの口腔ケアを行います。

⑤レクリエーション
午後は、入居者が楽しめるイベントやレクリエーションを行いながら、合間に自由時間を設けています。
レクリエーションは自由参加型なので、必ず参加しなければならないわけではありません。興味のない方や疲れて休みたい方は、自室で休んでも構いません。
レクリエーションでは、身体・認知能力の維持・向上を目指しながら、園芸や工作、映画鑑賞などを楽しめます。
また、地域のボランティアによる楽器の演奏や合唱、書道などを楽しめるイベントも開催されます。
地域の子どもたちが訪ねてきたり、犬と触れ合うドッグセラピーなど、それぞれの施設ではスタッフが趣向を凝らした企画を実施しています。

⑥おやつ・お茶の時間
午後3時頃、おやつと飲み物が提供され、ティータイムを楽しみます。
ひな祭りやクリスマスといった行事では、ひなあられやケーキといった特別なおやつが振舞われる場合があります。和菓子だけでなく、若者向けの洋菓子も入居者からは好評です。
また、ほかの入居者と同じものが食べられない方には、入居者の体調や嚥下能力などに合わせて、食べやすい大きさや柔らかさのおやつが用意されます。
おやつの時間を一日のうちで最も楽しみにしている入居者も多いです。
⑦夕食・服薬・口腔ケア
夕食時間は、午後6時前後です。就寝時間や、翌日の朝食時間を考慮して、夕食時間は決められています。
朝食や昼食同様、スタッフによる安全な環境で食事を楽しめるよう配慮されています。服薬、口腔ケアも行います。
夕食後は、食堂でテレビを観たり、居室で本を読んだりしてくつろいで過ごします。
⑧就寝
歯磨き・義歯の洗浄を行ったあとは、就寝の準備をします。パジャマなど就寝着に着替え、トイレを済ませます。トイレ介助やおむつ交換など。、必要に応じてスタッフが対応します。
消灯時間は午後20〜21時頃です。入居者が規則正しい生活を送れるように定められています。
寝つきの悪い方や睡眠が浅い方は、医師に処方してもらった睡眠導入剤を服用することもあります。
また、入居者が夜間を通して安心して眠れるように、職員が見守り巡回を行います。定期的に寝返りを打たせる体位交換や排泄介助を行い、褥瘡を防ぎます。
●特別養護老人ホームの食事
特別養護老人ホームでは、「特別養護老人ホームの設備および運営に関する基準 第十七条」で、入居者の栄養面や健康、嗜好に考慮した食事を提供しなければならないと定められています。
食事の内容は3食ともに、管理栄養士の指導のもと栄養バランスやカロリーに配慮されたメニューになっています。食材の調達等から1ヶ月前には献立も決まりますが、入居者の嗜好やアレルギーなどを考慮したメニューの変更も対応しています。
また、入居者の咀嚼・嚥下能力に応じて、刻み食やソフト食、流動食などの食事形態で提供されています。
旬のものや地元の食材を使ったり、季節を感じるメニューなどで、より食事を楽しめるように工夫している施設が多いです。
また、お正月やクリスマスなど1年を通して折々の季節行事に応じた食事や、寿司職人が来て目の前でお寿司を握ってくれたり、お祭りで屋台が来たりなどのイベント食も楽しめます。
参考 e-GOV 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準
ユニット型特別養護老人ホームの特徴から生活のポイントをチェック
ユニット型は、これまでの従来型に替わり、特別養護老人ホームの主流になりつつある居室タイプです。基本的には1ユニット当たり、10名前後の入居者が生活します。
ユニット型の特徴から生活のポイントをチェックしてみましょう。
①入居者が少ないので個別ケアが充実している
ユニット型は少人数規模であるだけでなく、各ユニットごとに専属のスタッフが配置されています。
入居者と担当スタッフの信頼関係を深めやすく、個々の希望に沿った対応が期待できます。
また、厚生労働省が決めている特別養護老人ホームの人員配置基準によると、入所者数3名に対し、看護職員か介護職員を1名配置(1日8時間勤務)することになっています。
ユニット型では、さらに以下の基準も適用されます。
昼間 | 1ユニットごとに常時1名以上の介護職員か看護職員を配置 |
夜間 | 2ユニットごとに1名以上の介護職員か看護職員を配置 |
また、ユニットごとに常勤のユニットリーダーの配置も必要となります。一人ひとりに寄り添ったケアやサポートが受けられるのは、ユニット型ならではの特徴です。
参考 厚生労働省 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) の報酬・基準について②

②ユニットごとのイベントやレクリエーションを楽しめる
従来型の特別養護老人ホームでは、施設全体であるいはフロア単位で、季節のイベントやレクリエーションを実施しています。
ユニット型の場合は、施設全体のものとは別に、各ユニットごとのイベントやレクリエーションを計画・実施しています。
例えば、下記のようなイベントやレクリエーションが行われています。
- 外食・外出レク
- 納涼祭やお月見
- ひな祭りやお花見、クリスマス会
- 入居者の誕生日会
施設全体で行われるイベントよりも、ユニットごとのイベントは気軽に実施でき頻度も多いです。施設全体で行うのが難しい、外出・外食レクにも対応できます。
また、少人数規模で行うので、入居者一人ひとりの性格や状態に合わせることができます。
入居者一人ひとりが楽しめる内容となっているのは、ユニット型ならではの魅力です。
③他の入居スタッフ職員と交流しやすい
ユニット型は全室個室で、居室の前に共有のリビングスペースが設置されています。
居室を出てすぐリビングに行けるので、共有スペースに人が集まりやすい構造となっています。ほかの入居者やスタッフとコミュニケーションを取りやすく、良好な人間関係を築きやすい環境になっています。
また、居室にひきこもりがちな入居者に対しても、物理的に距離が近いので、スタッフは声をかけやすく、リビングに誘ったり、イベントやレクリエーションの参加を促すことができます。。居室にいる入居者にとっても、居室にいながらリビングの雰囲気を感じ取ることができるため、たとえレクに参加できなくとも、孤独感を味わうことが少ない環境になっています。
自宅にいるような気持ちで、くつろいで快適に過ごせるのも強みです。
ユニット型特別養護老人ホームのメリットも知っておこう
ユニット型は、従来型にはないメリットが多いです。
ユニット型のメリットを詳しく理解し、希望する目的や条件に合っているか、チェックしてみましょう。
①孤独感を感じることなくプライバシーを確保できる
従来型の、特に多床室は、複数の人が同じ部屋で生活しています。カーテン等で仕切られているだけなので、プライベートな空間を確保するのが難しい構造です。
それに対して個室は、入居者一人ひとりのプライバシーが守られます。音漏れや周囲の視線を気にする必要がありません。自室での様子が周囲に漏れることはなく、施設にいながら、個人の時間を満喫できます。他人と接する時間が長すぎたり、不慣れな人間関係で気疲れしたりしないようにコントロールすることが可能です。
従来型にも個室はありますが、リビングから離れて配置されているため、逆に何の音も聞こえず不安や孤独感を感じることがあります。
一方ユニット型は、リビングが隣接しており、常に人の気配を感じながらプライバシーを保てるというメリットがあります。また、自室に引きこもってばかりになってしまうリスクも少なく済みます。
②設備が新しい場合が多い
従来型に比べて、ユニット型は設備が新しい場合が多いです。
2002年度から国がユニットケアを推進した結果、ユニット型の新設数が増加しました。新しく建てるほかに、従来型をユニット型に建て替えている場合もあります。
新設された施設では、最新の介護用入浴機器やIT機器などを導入しており、入居者が快適に過ごすための環境が整備されています。
また、それによってスタッフの介護負担も減るので、より質の高い介護サービスを受けられるのがユニット型の魅力です。
新しい設備が整った環境で、快適に生活したい方はユニット型の入居を検討するとよいでしょう。
③空室が多く入居しやすい
特別養護老人ホームは終身で入居でき、比較的費用が安いので人気が高く、入居待ちで数年かかる場合もあります。
しかし、ユニット型は従来型に比べて空室があることが多く、比較的入居しやすいです。空きが多い理由は下記のとおりです。
- 費用が高い
- 新設される特別養護老人ホームはユニット型が多く、従来型の数が増えていない
- 従来型をユニット型に建て替えている施設もあり、従来型の数が減っている
近年、ユニット型特別養護老人ホームは増えています。
従来型の空きが出るまで待てない方や、特別養護老人ホーム以外の施設への入居は考えておらず予算が許す方は、ユニット型を入居候補先に入れるとよいでしょう。
ユニット型特別養護老人ホームのデメリット
ユニット型はメリットが多い一方で、デメリットもあります。ユニット型のデメリットを詳しく解説していきます。
メリット・デメリットを十分検討したうえで、ユニット型への入居を検討しましょう。
①従来型と比べて費用が高い
下記の表の通り、ユニット型は従来型よりも月額利用料が2〜4万円ほど高くなります。
●居室タイプ・介護度別月額利用料(介護サービス費・居住費・食費)(30日・1割負担の場合)
従来型多床室 | 従来型個室 | ユニット型個室的多床室 | ユニット型個室 | |
要介護1 | 86,190円 | 95,670円 | 112,950円 | 123,090円 |
要介護2 | 88,230円 | 97,710円 | 114,990円 | 125,130円 |
要介護3 | 90,360円 | 99,840円 | 117,180円 | 127,320円 |
要介護4 | 92,400円 | 101,880円 | 119,250円 | 129,390円 |
要介護5 | 94,410円 | 103,890円 | 121,260円 | 131,400円 |
ユニット型の費用が高くなる理由は、個室で居住費が高くなるためです。また、人員配置も厚くなるため介護サービス費も高くなります。
②ユニットごとの雰囲気が合わない場合がある
ユニットによって、雰囲気がそれぞれ違います。各ユニットごとに専属されているスタッフと入居者の性格や男女比などが異なるためです。
活発にレクリエーションに取り組むユニットもあれば、穏やかに過ごすユニットもあります。
そのため入居後に、「雰囲気が合わない」と感じるケースもあります。
もしユニットの雰囲気が合わずなじめない場合、できるだけ早くスタッフに相談しましょう。ほかのユニットに空きがあれば、移動できる場合があります。
ユニット型なら、人間関係での悩みやトラブルが生じても、ほかの施設に移らずに済むので安心です。
ユニット型特別養護老人ホームが向いている人
入居後に「思っていたイメージと違う」と後悔しないように、入居者本人のニーズに合っているか、把握しておきましょう。
ユニット型が向いている方の特徴は以下の通りです。
- 個別に合わせた手厚いケアを受けたい
- ほかの入居者や職員と良好な人間関係を築きたい
- イベントやレクリエーションが活発な施設を選びたい
- 自分らしい生活を続けたい
- できるだけ新しい建物や設備を希望している
- なるべく早く特別養護老人ホームに入居したい
ユニット型ならば、ほかの入居者やスタッフとコミュニケーションを取りやすいので、良好な人間関係を築きやすいです。また、プライバシーが確保でき、自分らしい生活を重視している方にも向いています。
終身で入居する施設だからこそこだわりたいという方は、ユニット型への入居を検討してみてはいかがでしょうか。
ユニット型の特徴を把握したうえで特別養護老人ホームを選ぼう
ユニット型特別養護老人ホームは、従来型と同様、食事や入浴の時間といったおおよそのスケジュールが決まっています。
しかし自由時間が多く、プライバシーが確保できる個室が完備されているので、自分らしい生活を送れます。
また、ユニットごとにスタッフが配置されており、手厚いサポートやケアを期待できるのは、ユニット型ならではの魅力です。
居室を出てすぐ共有スペースのリビングに行けるので、気軽に他の入居者やスタッフとコミュニケーションをとることもできます。
ユニット型での生活が向いていると感じた方は、前向きに入居を検討してみましょう。
ユニットケアとは、自宅に近い環境で他の入居者との共同生活をしながら、入居者一人一人の個性や生活リズムを尊重する介護手法です。特別養護老人ホームのユニット型では、入居者10名前後を一つのユニット単位として、入所者の個別性に合わせた介護を提供します。介護が必要になっても、自宅のような生活を続けるのに役立ちます。詳しくはこちらをご覧ください。
ユニット型は従来型と比べて空室数が多く入居しやすいです。ただし、特別養護老人ホームの入居で優先されるのは、介護度や緊急度です。入居申し込み後に、施設内で行われる判定会議で、入居可能と判断された場合、入居ができます。詳しくはこちらをご覧ください。