老健(介護老人保健施設)の費用は軽減可能?役立つ6つの制度を徹底解説

老健(介護老人保健施設)の費用は軽減可能?役立つ6つの制度を徹底解説

自宅で介護をしている方の中には、介護老人保健施設(以降、「老健」という。)を利用できないか考えている方もいるのではないでしょうか。しかし老健の利用にも費用がかかるため、経済面に不安のある場合には、利用をためらってしまうかもしれません。

ただ、費用負担を軽減できる制度はいくつかあります。本記事では費用負担軽減として活用できる制度について解説します。経済的な面で施設へ入居できるかどうかが不安に感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

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當舎社会保険労務士行政書士法務事務所 所長
監修當舎 緑
所有資格:社会保険労務士,行政書士
専門分野:社会保険
職業: ファイナンシャルプランナー,行政書士

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老健(介護老人保健施設)の費用軽減に活用できる6つの制度

老健でかかる費用を軽減させる制度として、以下6つの減免制度があります。

  1. 高額介護サービス費
  2. 特定入所者介護サービス費
  3. 高額医療・高額介護合算制度
  4. 介護保険負担限度額認定
  5. 医療費控除
  6. 自治体ごとに用意された地域支援事業

以降では、各制度について詳しく解説していきます。

減免制度①:高額介護サービス費

高額介護サービス費の仕組み

老健を利用した際の1か月に支払った自己負担が上限を超えた場合、超過して支払った分のお金が返還される制度です。自己負担上限額は、所得によって以下のように定められています。

区分 負担の上限額(月額)
新設 課税所得690万円(年収1160万円)以上 140100円(世帯)
課税所得380万円(年収770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満 93000円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円(年収770万円)未満 44400円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税 24600円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税(前年の公的年金等収入金額の合計が80万円以下の方等) 24600円(世帯)
15000円(個人)
生活保護を受給している方等 15000円(世帯)

出所:令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます-厚生労働省

高額介護サービス費の支給方法には、本人償還と受領委任払いの2種類があります。一旦入所している介護保険施設に全額を支払い、後日に自己負担上限額を超えた分の費用を返してもらえるのが「本人償還」です。初めに支払う費用は多くなりますが、支払いが可能なのであれば、こちらを選択してもよいでしょう。

施設利用にかかる費用を全額支払うのが難しい方は、受領委任払いが最適です。受領委任払いであれば、初めから施設の会計窓口で自己負担上限額の費用分のみを支払うだけで施設を利用できます。ただし申請には入所する施設の了承が必要なので、利用可能かどうかは、施設に事前に確認しておきましょう。

減免制度②:特定入所者介護サービス費

介護保険施設に入所している方で所得や資産などが一定の基準以下の方に対し、負担限度額を超える居住費と食費が支給される制度です。

区分 対象者 預貯金額(夫婦の場合)
第1段階 生活保護を受給している方 要件なし
世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者 1,000万円(2,000万円)
第2段階 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額(※)+
その他の合計所得金額が80万円以下
650万円(1,650万円)
第3段階(1) 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額(※)+
その他の合計所得金額が80万円超~120万円以下
550万円(1,550万円)
第3段階(2) 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額(※)+
その他の合計所得金額が120万円超
500万円(1,500万円)
第4段階 市区町村民税課税世帯

※非課税年金を含みます。
出所:サービスにかかる利用料-厚生労働省HP

上記に該当する方は、特定入所者介護サービス費による給付を受けることが可能です。利用する場合は介護負担限度額認定を受ける必要がありますので、お住いの市区町村の役所で申請を行ってください。

老健(介護老人保健施設)における支給額(日額)

特定入所者介護サービス費は、負担限度額は所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって異なります。例として、老健を利用する際に支給される費用について、段階別にみていきましょう。

基準額  負担限度額(日額)
 第1段階  第2段階 第3段階 ① 第3段階 ②
食費 1,445円 300円 390円 650円 1,360円
居住費 ユニット型個室 2,006円 820円 820円 1,310円 1,310円
ユニット型個室多床室 1,668円 490円 490円 1,310円 1,310円
従来型個室 1,668円 320円 420円 1,310円 1,310円
多床室 377円 0円 370円 370円 370円

出典:サービスにかかる利用料-厚生労働省HP

上記を見てわかるとおり、段階が低い方が負担限度額は低くなるように設定されています。部屋のタイプによっても費用は異なっています。できる限り安い料金に抑えたい方は、多床室を利用するとよいでしょう。

減免制度③:高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算療養制度の仕組み

同一の医療保険の世帯内で医療保険と介護保険の両方に自己負担が発生した場合、合算後の負担額が決められた上限額を超えた場合に軽減できることがあります。決められている限度額を500円以上超えると、医療保険者へ申請し、超過分を支給してもらうことが可能なのです。

世帯収入ごとの負担限度額は、以下になります。

               負担限度額(世帯単位)
75歳以上 70~74歳 70歳未満
介護保険+後期高齢者医療 介護保険+被用者保険または国民健康保険
年収約1,160万円 212万円
年収約770~約1,160万円 141万円
年収約370~約770万円 67万円
~年収約370万円 56万円 60万円
市町村民税世帯非課税等 31万円 34万円
市町村民税世帯非課税

かつ年金収入80万円以下等

本人のみ 19万円
介護利用者が複数 31万円

出所:サービスにかかる利用料-厚生労働省HP

対象者が加入している医療保険や所得によってによっても保険給付は変動するので、自分の世帯ではいくら支給を受けられるのかよく確認してください。

減免制度④:介護保険負担限度額認定

老健の利用には、「介護保険負担限度額認定」と呼ばれる減免制度も活用可能です。減額される費用は主に居住費と食費で、所得に応じた減額を受けられるようになっています。

居住費(1日に支払う居住費の上限)
区分 従来型個室 多床室
第1段階 生活保護を受けている方
住民税非課税で老齢福祉年金を受給している方
490円 0円
第2段階 市町村民税世帯非課税で本人の課税年金収入額が年額80万円以下かつ他の収入がない方 490円 370円
第3段階 市町村民税世帯非課税で、第1・第2段階以外の方 1,310円 370円
第4段階 第1~第3段階以外の方 1,700円 450円
食費(1日に支払う食費の上限)
区分
第1段階 生活保護を受けている方
住民税非課税かつ老齢福祉年金を受給している方
300円
第2段階 住民税非課税世帯であり、かつ本人の課税年金収入額が年額80万円以下で他の収入もない方 390円
第3段階 住民税非課税世帯で、第1・第2段階以外の方 650円
第4段階 第1~第3段階以外の方 1,670円

出所:「介護保険負担限度額認定について」-医療法人社団慶勝会

減免制度⑤:医療費控除

医療費控除とは、該当する年の1月1日から12月31日までの1年間で、自分や家族が合計10万円を超える医療費を支払った場合、超過分を所得から控除できる制度です。(※所得が200万未満の場合は、所得の5%を超えた時に申告が可能)

老健は、看護・医学的管理下にて介護や機能訓練などを行う施設です。医療法以外では病院や診療所として規定されているため、施設利用にかかる費用(介護費・食費・居住費など)は医療費控除の対象となる費用といえます。

医療費控除について、対象となる費用項目や減免額、申請方法などについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

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減免制度⑥自治体ごとに用意された地域支援事業

自治体によっては、地域支援事業として老健などの介護施設を利用する際に活用できる減免制度を用意しているケースもあります。ただ、生計困難者が経済的な理由によって必要な介護を受ける機会を制限されることのないよう、無料または低額な料金で老健を利用させる事業(東京都の場合)などのように、無条件で制度が利用できるわけではありません。

紙おむつの無料支給や福祉器具のレンタル、介護に必要な物の購入代金の助成など、自治体ごとに制度の内容は異なっています。詳しい内容を知りたい方は、お住いの自治体の福祉窓口に問い合わせてみましょう。

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老健(介護老人保健施設)の費用を軽減できる制度はたくさんある

老健は、「在宅復帰」を目指すための施設です。利用にかかる費用に関しては減額できる制度や条件はさまざまですので、利用したい施設があるものの費用負担が心配な方は、今回紹介した制度の活用を検討するとよいでしょう。自治体によっては紙おむつの無料支給や福祉器具のレンタル、介護に必要な物の購入代金の助成など、特別な減額制度を準備しているケースもあります。まずは、お住いの自治体に相談してみるとよいかもしれません。

老健はどのくらいの期間利用できるのでしょうか?

原則3~6ヶ月と定められており、3ヶ月ごとに入所者の状態を判断する討論会議が施設内で開かれ、入所継続の可否が決定されます。入所者の状態が回復していない、家庭の事情ですぐには帰宅できないなど入所継続できるケースもあるので、不安な方は施設に相談してみるとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。

自治体ごとに設けられている介護施設利用支援制度は、どうしたら利用できるのでしょうか?

まずは、お住まいの地域にある市役所の福祉課へ問い合わせてください。主に紙おむつなどの介護必需品の無料支給、介護に必要な物の購入費用の助成などが行われているので、上手に活用し経済的な負担が軽減できるようにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

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