家族の介護に悩んでいる方は多数います。介護のストレスで気分が落ち込んでいたら、まず介護うつを疑いましょう。
うつ病は、専門家による適切な治療が必要で、けっしてそのまま放置してはいけません。たとえ今うつ病でなかったとしても、介護が辛いと感じている方は介護うつへの予防策をとる必要があります。
この記事では、介護うつの原因や症状、予防法などについて解説しています。介護に悩んでいる方はこの記事を参考にしてください。
介護うつとは介護が元で発症するこころの病気
介護うつとは、介護による精神的苦痛や体力的な疲れなどが原因で発症する気分障害の一つで、患うと脳の働きが悪くなります。
うつ病は、「気の持ちよう」「メンタルが弱い」などと考えている方もいますが、気持ちだけで治せるものではなく、必ず専門家による治療が必要です。放置すると、重症化して治療が難しくなってしまいます。

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介護うつの原因となるストレスは多数
介護者は被介護者のあらゆる日常生活の介助をするため、自分のペースで生活するのが難しくストレスになります。さらに、排泄介助や移動の介助、入浴介助などは体力的な負担も大きくなります。
被介護者が認知症の方であれば、意志の疎通が難しく罵声や暴言を浴びせられる場合もあるでしょう。徘徊癖があれば、被介護者からひとときも目を離せません。
介護は家族のうちの一人に負担が集中しやすく、また介護者が孤立しやすい傾向にあります。このように、一人で悩みを抱え込んだ介護者は介護うつに陥るリスクが高くなります。

介護うつのセルフチェック
介護に関わっている方は、定期的にうつ病のセルフチェックを行いましょう。
現在世界の10ヵ国以上で使用されている、簡易抑うつ症尺度度(QIDS -J)では、以下の16の項目をチェックして、うつ病の重症度を計ります。
- 寝付き
- 夜間の睡眠
- 早く目が覚めすぎる
- 眠りすぎる
- 悲しい気持ち
- 食欲低下
- 食欲増進
- 体重減少
- 体重増加
- 集中力/決断
- 自分についての見方
- 死や自殺についての考え
- 一般的な興味
- エネルギーのレベル
- 動きが遅くなった気がする
- 落ち着かない
簡易抑うつ症尺度度(QIDS -J)は、厚生労働省のホームページに掲載されています。チェック内容について判断できない項目が多い場合や、不安な状態が続いている場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
介護うつの5つの症状
うつ病の典型的な症状は、以下の5つです。
- 疲労感が強い
- 夜眠れない
- 食欲がわかない
- 感情の制御ができない
- 気分が落ち込む
うつ病の症状は人によってさまざまで、かならずしも5つの症状が現れるわけではありません。症状だけで判断せず、「不安な状態が2週間以上続いている」場合には、うつ病を疑いましょう。
それでは、各症状について詳しく説明していきます。
1.疲労感が強い
うつ病になると、体力的にも精神的にも疲労感が強くなります。健康な方と違い、常に不安感がつきまとい、休憩時でも緊張して体に力が入ってしまうのが原因です。
日常の生活音や照明、日光などに過敏になる場合もあり、そのストレスでも体力を消耗します。うつ病になって体力が落ちてしまうのではなく、うつ病の症状で通常よりも大きなエネルギーを消費してしまい、結果として疲労感が強くなります。
2.夜眠れない
うつ病になると不眠になる方も多いです。うつ病になるとあらゆる欲求が低下する特徴があり、生きるために必要な欲求である睡眠欲までもが低くなってしまいます。
また、幸せホルモンと言われるセロトニンの分泌が減ってしまうのも、不眠になる理由の一つです。
セロトニンは、睡眠へと誘導するメラトニンを生成する役割がありますが、セロトニンの分泌が減ってしまうとメラトニンの分泌も少なくなってしまいます。
3.食欲がわかない
疲労感、不眠に続いて、うつ病患者には食欲不振の症状が現れやすいです。通常では、何も食べていない状態が続くと血糖値が下がり、脳の中にある摂食中枢が刺激されて食欲を感じます。
しかし、うつ病になると摂食中枢が鈍くなり、食欲を感じにくくなります。飲み物や食べ物を飲み込むための嚥下機能に障害を起こしてしまうケースもあり、そうなると、さらに食欲不振は深刻化してしまうため、早めに医療機関へ相談した方が良いでしょう。
4.感情の制御ができない
うつ病になると感情の制御が難しくなり、ささいな出来事に敏感に反応して感情を爆発させてしまう傾向がみられます。具体的には「涙が溢れ出して止まらなくなる」「ささいなことで怒りが収まらなくなってしまう」などの例があげられます・
その矛先は他人に向かう場合もあれば、自分に向かう場合もあるでしょう。このような症状は、不安や焦りが脳の処理能力を超えた状態が続いている証拠です。ひどくなれば、日常生活を送るのが難しくなります。
5.気分が落ち込む
うつ病になると、常に気分が落ち込み「楽しい」「心地よい」などプラスの感情を感じられなくなります。今まで好きだった事柄にも興味を持てなくなってしまい、身だしなみにも無頓着になります。
気分が落ち込むときは誰にでもありますが、うつ病の場合はその状態が継続します。マイナス思考が続き、自殺したいと考えてしまう場合もあります。
介護うつになりやすい人の特徴
介護うつになりやすい人には、次のような特徴があります。
- 真面目で几帳面
- 完璧主義で手抜きができない
- 人に相談したり、頼ったりするのが苦手
- 人の気持ちに敏感
真面目で几帳面な方や完璧主義な方は、自分の理想が高く思うようにできないと自分を責める傾向があります。手抜きができないのでストレスの解消ができません。
人の気持ちに敏感だったり、人に相談したり頼ったりするのが苦手な方も注意が必要です。被介護者の気持ちや周囲の人の気持ちを察して落ち込んだり、自分だけで抱え込み孤立しやすい傾向があります。
このような特徴をもった人が、長期間介護によるストレスを受け続けていると、介護うつになる可能性が高いです。
また、経済的な不安がある方や、肉体的負担が大きい方も介護うつを発症しやすい傾向があります。
介護うつの3つの治療方法
うつ病の治療方法は、大きく分けて以下の3つのです。
- 休養をとる
- 薬物を使った治療を行う
- 精神療法を行う
症状に合わせて、これらの方法を組み合わせた治療をおこないます。各治療方法の内容を紹介します。
1.休養をとる
うつ病の治療で一番大切なのは休養です。介護うつになったら、一時的に介護から離れなければなりません。介護サービスを利用したり、家族や親戚の協力を仰いだりして、本人は介護から距離を置きましょう。心身が辛い場合は入院して休養をとるのも一つの方法です。
介護に真剣に取り組んでいる方ほど、休養をとるのに罪悪感を抱きやすい傾向がありますが、うつ病の治療のために必要であると考えましょう。
2.薬物を使った治療を行う
うつ病の症状が、中等症・重症の方については抗うつ薬による薬物治療が行われます。抗うつ剤には種類があり、複数の薬の中から最も効果が期待できるものを探します。
最初は少ない量から飲み始め、副作用の程度をみつつ、有効容量まで量を増やしていくのが一般的な方法です。6〜8週間程度同じ薬を飲み続け、薬の効き目を判定し、その薬を飲み続けるか、ほかの薬に切り替えるかを判断します。
3.精神療法を行う
うつ病の治療には、精神療法として「認知行動療法」が用いられます。認知行動療法とは、医師やカウンセラーとの面談をおこない、「物事が起きたとき」の受け止め方、考え方のバランスを整えていく治療法です。
うつ病の方は、物事の受け止め方が歪んでしまい、必要以上に落ち込んだり、不安になってしまったりします。
認知行動療法では、現実的で幅広い捉え方ができる状態を目指し、患者本人が本来の力を発揮できるように促して、症状の改善を図ります。
介護うつを予防するためには
介護うつは、以下のような点に気をつければ十分予防できます。
- さまざまなサービスを利用する
- 自分の時間を作る
- 人に相談する
- 完璧を目指さない
- 食事・睡眠をしっかりとる
発病する前の予防がとても重要です。具体的な予防方法についてお伝えします。
さまざまなサービスを利用する
介護サービスには、デイサービスやショートステイ、訪問介護や有料老人ホームなどさまざまなものがあります。それらを積極的に利用していきましょう。
デイサービスを利用すれば、日中に自分だけの時間をつくれます。ショートステイを利用すれば、数日〜数週間まとめての休養もとれます。
自分だけで介護をしようと考えないで、使えるサービスは積極的に利用してください。
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自分の時間を作る
介護している方は、意識して自分の時間を作りましょう。介護から離れて、自分が「好きだ」「楽しい」と感じられる行動が心のゆとりにつながります。
自分の時間が充実すれば、被介護者に優しくできたり、ささいな出来事で悩まなくなったりと介護自体にもプラスに働きます。
また、自分の時間を作るには、家族の協力が不可欠です。家族にも介護に参加してもらい、一人ひとりの負担をなるべく減らしましょう。
人に相談する
介護は責任が重く精神的に大きな負担がかかるため、一人だけで抱えるのは危険です。ケアマネジャーに相談するのはもちろん、家族や友人にも相談して胸の内を聞いてもらいましょう。
たとえ介護に直接関わらない方であったとしても、話を聞いてもらえるだけで気持ちは楽になります。中には、同じような経験をした方から、よいアドバイスをもらえるかもしれません。
介護している状況を隠そうとする方もいますが、自分だけで思い悩むのは絶対に避けましょう。
完璧を目指さない
完璧な介護などありません。完璧を目指すと、できない部分に目がいってしまい自分を否定してしまいます。それは自信喪失にもつながり、落ち込みやすくなってしまうでしょう。
家族や被介護者に対しても完璧を求めると、関係が悪くなってしまいます。介護は60点くらいを心がけましょう。少し手を抜くくらいがちょうどよいです。
食事・睡眠をしっかりとる
食事の内容は、メンタルに大きく関わるのでバランスのとれた食生活を心がけましょう。
例えば、タンパク質が不足するとセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の材料が不足します。菓子パンや菓子類などの超加工食品が、メンタルヘルスに悪影響があるといったデータもあります。
また、睡眠不足はうつ病のリスクを高めるので注意しなくてはなりません。夜間の介護が必要な場合でも、時間を見つけて少しずつ睡眠をとったり、被介護者の睡眠薬の服用を主治医に相談したりして、睡眠時間を確保しましょう。
介護についての相談場所
介護が始まったら、家族や親戚、友人だけでなく、「自治体」や「地域包括支援センター」に相談しましょう。
相談すれば、その時々の状況に応じた専門的なアドバイスが聞けます。利用できるサービスも紹介してもらえ、これからどのようにして介護をおこなっていくのかの道筋がみえてきます。
自治体
地域の市区町村の役場には、高齢者専用の窓口があり、要介護認定の申請や介護保険制度の利用手続きが可能です。
要介護認定を申請すると、自宅にて被介護者本人との面接調査が実施され、非該当・要支援1・2、要介護1〜5のどれかに認定されます。
認定されれば、利用できる介護サービスに申し込めるようになります。そのほかにも、介護の疑問や悩みなどの相談にものってもらえるでしょう。
地域包括支援センター
各地域には、地域包括支援センターがあります。地域包括支援センターは、高齢者の生活支援を目的としている施設です。
ケアマネジャーや社会福祉士、保健師などが在籍しており、利用できる介護サービスや日常生活支援、介護保険や要介護認定に関する相談に無料で対応しています。
高齢者だけでなく、家族からの相談にも応じているので、介護になりそうだと感じたら、早めに地域包括支援センターに相談しましょう。
介護を一人で抱え込んではいけない
介護をしていると、精神的にも肉体的にも大きく消耗します。介護うつを患ってしまう方は多く、自宅で介護をしている方の1/4が介護うつともいわれています。
うつ病が進行すると、治療期間が長くなり、本人の負担も家族の負担も大きくなってしまいます。介護うつに陥らないためには、悩みを聞いてくれる相談者の存在や、介護に関わらない時間の確保などが必要です。
介護サービスを積極的に利用し、家族同士で協力しあって、一人ひとりの負担を減らしましょう。また、うつ病の症状が少しでも現れた場合には、速やかに医療機関に相談してください。
介護うつにまつわるよくある質問
Q1.うつは気の持ちよう?
うつ病を発症した方は、脳の変化によって脳がうまく働かない状態になっています。けっして気の持ちようではありません。適切な治療が必要です。
Q2.介護うつは治るの?
きちんとした治療をすれば、半分以上の方が寛解します。ただし、時間をかけた確実な治療が必要です。無理をすると再発する可能性もあります。