毎日、健康に暮らすためには、食事・睡眠・運動の3つの要素が必要ですが、この中で、高齢者が美味しく食べて健康に暮らすための「食事」についてお話したいと思います。
狩野 恭子 助教
戸板女子短期大学 食物栄養科
管理栄養士、介護職員初任者研修終了
日本栄養改善学会、日本栄養士会
女子栄養大学を卒業後、公立病院にて栄養指導業務に従事。
聖徳大学助手、二葉栄養専門学校助教を経て十文字学園女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻修士課程を修了後、
戸板女子短期大学食物栄養科着任、現在に至る。
戸板女子短期大学 食物栄養科
管理栄養士、介護職員初任者研修終了
日本栄養改善学会、日本栄養士会
女子栄養大学を卒業後、公立病院にて栄養指導業務に従事。
聖徳大学助手、二葉栄養専門学校助教を経て十文字学園女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻修士課程を修了後、
戸板女子短期大学食物栄養科着任、現在に至る。
食事計画の3つのポイント
- 食べる・噛む・飲み込む力 を確かめてみましょう
- 指や手が麻痺して箸が上手く使えない、入れ歯が合わなくてよく噛めない、むせてしまってすぐ咳き込むなどはありませんか?
- 好みの料理 や 嫌いな料理 を書きだしてみましょう
- 好きなものは美味しい、嫌いなものは不味いので、無理強いせずに食べるのが良いですが、血圧・血糖・コレステロールなどの値が高ければ、味付けや材料を選んで工夫しましょう。
- どんな環境で食事をしたいのか 聞いてみましょう
- 高齢者は、様々な経験をしています。個々のプライドをリスペクトし、良い食事環境作りを心がけましょう。
フレイルや低栄養状態を予防する
皆さんはフレイルという言葉を聞いたことがありますか。
体や心の衰えから脆弱(ぜいじゃく)になった状態で、栄養状態が悪い(低栄養状態)高齢者の多くが、このような段階を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられています。食欲不振や活動量の低下によって食事量が減ると低栄養状態になります。早期に発見し、適切な介入をすることが、生活機能の維持・向上を図ることにつながります。
フレイルや低栄養状態に陥らないためには、散歩や簡単な体操、趣味やボランティアなどの社会参加を行うことや食事に気を付けることが大切です。
- 3回きちんと食事 をする
- 一日に必要な栄養量は3回の食事で摂れますから欠食すると低栄養状態になります。1回の食事には30~45分位かけてゆっくりよく噛んで食べましょう。
- 卵、肉、魚の内 必ず1つは毎回 食べましょう
- おにぎりやバナナだけで済ませてしまう食事は、お腹が一杯になるだけで栄養的な食事ではありません。主食(米・パン・麺など)、おかず(主菜・副菜)、汁を揃えましょう。
- 食べやすくするための工夫
- 食材の選び方
- 軟らかい部位の肉(ロース、バラ、ささみなど)を使用する。
- 魚は骨を取り除くまたは骨抜きの魚/卵/大豆製品/菜っ葉は葉先/芋類/
- 調理法の工夫
- すりおろす/ペースト状にする/野菜の繊維を直角に切る/食材を刻む/軟らかく煮る/片栗粉やコーンスターチを使用しとろみをつける。
- 食材の選び方
高齢者にとって必要な栄養素
高齢者では体重を減らさないためには、十分なエネルギーの確保が必要となり、また筋肉量を低下させないためにたんぱく質の摂取が重要となります。さらに骨粗鬆症の予防のためにビタミンDの摂取も必要です。
エネルギーの確保には炭水化物、たんぱく質、脂質が必要です。炭水化物や脂質は、体の中でおもに体温を保ち、活動の源になります。たんぱく質は、おもに筋肉や血液、内臓を作ります。
-
- 炭水化物の多い食品;ごはん、パン、麺、芋類、砂糖など
- たんぱく質の多い食品;肉類、魚類、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品など
- 脂質の多い食品;油、バター、生クリーム、ナッツ類、ばら肉、マヨネーズなど
- ビタミンDの多い食品;鮭、鮪、鰻、しらす干し、まいたけなど
様々な食品を組み合わせて摂取することで、エネルギーとたんぱく質が充足され、フレイル予防にもつながります。全体的な食事量が不足したと感じた時には、エネルギーが高い間食を取り入れることで体重減少を防ぐことができます。
一例を紹介します。みなさんも作ってみてはいかがでしょうか。
<料理例>黒ゴマプリン(3個分)
- 黒ねりごま 50g(大匙3強)
- 牛乳 120g
- 砂糖 20g(大匙2強)
- 生クリーム 30g(大匙2)
- ゼラチン 3g
- 水(ゼラチンをふやかす分) 20g
- ホイップクリーム 15g(大匙1)
- 黒すりごま 少々
【参考・引用文献】
1)フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント 一般社団法人日本老年医学会
2)食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防事業|厚生労働省 2024年4月8日閲覧
3)八訂食品成分表2024 女子栄養大学出版
4)日本人の食事摂取基準|厚生労働省 2024年4月15日閲覧
5)渡邉早苗他 福祉・保健・医療のための栄養ケア入門 ―多職種連携の栄養学― 建帛社 2019年
1)フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント 一般社団法人日本老年医学会
2)食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防事業|厚生労働省 2024年4月8日閲覧
3)八訂食品成分表2024 女子栄養大学出版
4)日本人の食事摂取基準|厚生労働省 2024年4月15日閲覧
5)渡邉早苗他 福祉・保健・医療のための栄養ケア入門 ―多職種連携の栄養学― 建帛社 2019年