災害時における在宅がん患者の看護

災害時における在宅がん患者の看護
吉岡 久美 准教授
九州看護福祉大学 社会福祉学科
看護師・介護支援専門員/教員
日本看護福祉学会、日本看護学教育学会、日本看護研究学会、日本看護学会日本老年看護学会、日本社会福祉学会、日本看護科学学会熊本大学医療技術短期大学部看護学科、オーストラリア公立ラ・トローブ大学健康科学学部看護助産学科高齢者学士編入コースを卒業後、熊本大学大学院保健学教育部博士後期課程で学ぶ。
熊本大学病院で看護師として働くほか、個人病院の師長、訪問看護等を経験し、熊本YMCA学院専任講師を経て九州看護福祉大学教員となる(現職)。
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1.がんの治療を脅かす災害

がんに罹患する人は多く1)、治療方法も進歩することで入院生活を短縮し、生活の質(QOL)を重視しての通院治療をする人が増えました。その日々の生活を脅かす出来事に災害があります。それは近年発生している水害や地震などの自然災害・人為災害・特殊災害・複合災害があります。災害発生時は救命を優先するため、状況次第では避難生活を余儀なくされ、生活が大きく変化し長期化しますが、備えることで対応できることもあります。

 

2. 災害発生時に起こること

1)家屋の損壊と避難生活

災害で家屋損壊の危険性があれば、生命の安全を確保するために避難します。生活必需品のみならず治療に欠かせない薬剤や医療機器を運び出すことができないかもしれません。さらに、避難できたとしても一人に確保できるスペースは限られており、避難当初はプライバシーの確保は難しい状況です。

在宅生活をしているがん患者は、生活環境の変化に伴う体調の変化、避難所運営システムと治療継続への不安、家族以外の他者との関係性によって避難所への避難を躊躇することが報告されています2)生活の場が変わり環境が変わることでの身体的精神的ダメージに加え、治療に関する不安も大きくなります。

2)体調の変化と治療への不安

災害経験のある在宅がん患者は、精神的に不安定になる、睡眠不足が続く、自分の体調等を考える暇がない、疲労が蓄積し集中力低下を自覚、自分だけ特別扱いをお願いできない、薬の副作用が辛い、病気のことを誰にも相談できない、病院と連絡が取れない、疼痛コントロールへの不安・苦痛、治療の副作用の悪化、治療内服薬等の入手方法がないなどを体験していました3)。つまり、生活環境が変わり体調の変化が発生するとともに、治療に関する不安を抱えるものの相談しにくい環境にあるのです。

3.災害時の行動支援と備え

災害が発生したときにすべきこと、準備しておくことを簡単にまとめました。

災害発生時 日ごろの備え
  • 早期の避難で安全確保
  • 受診や治療に関する情報の獲得
  • 身体状況の安定とプライバシー確保
  • 十分な睡眠をとる
  • 感染予防(手洗い 口腔ケア)
  • 避難場所の確認と共有
  • 治療の一時中断が可能か確認する
  • 避難に必要な物品の準備
    • 治療・薬の情報 予備薬
    • ウェットティッシュ 水 マスク
    • 手袋 ゴミ袋

1)早い時期の避難による安全確保と情報収集

災害が発生した場合、避難指示により可能な限り素早く避難所に行きます。避難所には支援物資が届くだけではなく、必要時には災害派遣医療チーム(DMAT)も訪れます。さらに様々な情報を獲得しやすく、薬剤の確保や医療情報も得ることができます

災害時の速やかな避難には日ごろから場所の確認をしておき、看護者や家族などの支援者は避難を促し、安全の確保に努め、情報を獲得しましょう。

2)立ち上がりしやすくプライバシーのある場

血栓予防のためにも周囲の協力を得ながら、足を動かしたり立ち上がりができたりするような空間を確保します。がん患者の方は体調不良に陥りやすいため、プライバシーが確保できる空間を協力してつくりましょう。

3)感染予防

ライフラインの断絶で、身体や周囲の清潔を保つことが困難になりがちですが、手洗いと口腔の清潔は欠かせません。ウエットティッシュマスクなどを常備しておきましょう。また、使い捨ての手袋ビニール袋があれば、手の汚れを防ぐことができるうえ廃棄物の処理にも役立ち、感染の予防となります。がん患者は抵抗力が低下しがちですので、特に感染しやすい状態にあります。災害後の家の片づけなどはご家族やボランティアなどにお願いし、発熱・倦怠感など体調の観察を常に心がけます。

4)セルフケアの低下や生活・治療への意欲低下の防止と情報共有

日々の食料や飲料水の不足、睡眠不足等により体調不良となり、セルフケアができにくくなります。前述したように自らの疾患について人に伝えにくければ、治療中でも優先的に援助を受けにくくなります。今の治療が災害時にしばらく中止していいのか、継続しなければならないのか、主治医に確認しておくとともに、治療の状況(治療の経過、薬物名、投与方法など)・緊急時の連絡先などを記載したものを本人・家族と援助する看護者などで共有しておきましょう。

引用参考文献

1)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei22/厚生労働省

2)宮崎裕子,尾立敦子:地域で生活しているがん患者が災害避難所への非難を躊躇する要因,日本職業・災害医学会会誌,JJOMT,Vol.69.No.5,238-245,2021

3)白田久美子,小林幸恵,丸山智子:がん治療経験者及びがん治療中の患者が災害時に求める支援~Web調査をもとに~,日本看護科学学会学術集会講演集,(43rd.suppl),483,2023

4)濱本千春:在宅療養中のがん患者に災害が及ぼす影響,がん看護,Vol.24,No.3,266-267,2019

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