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  • 【公開日】2024-04-23
  • 【更新日】2024-05-01

深刻化するホームヘルパー、ケアマネジャー不足による在宅ケアの危機

深刻化するホームヘルパー、ケアマネジャー不足による在宅ケアの危機
最近、全国のあちこちで、ホームヘルパー(訪問介護員)やケアマネジャー(介護支援専門員)の不足によって、「社会福祉協議会が実施している訪問介護事業所が廃止され、町内に訪問介護事業所がなくなった」、「介護認定を受けてもケアマネジャーが見つからなくて介護サービスを受けられない」など、ホームヘルパーやケアマネジャー不足に関する深刻な声を聞くことが多くなりました。
今回は人手不足による現状から、その改革について解説します。
宮城 孝 (みやしろ)教授
法政大学現代福祉学部福祉コミュニティ学科
地域福祉論(コミュニティソーシャルワーク、地域包括ケアシステムなど)
日本地域福祉学会副会長、NPO法人日本地域福祉研究所理事長、厚生労働省安心生活創造事業検討委員会委員、中野区基本構想審議会委員、その他、地方自治体や社会福祉
協議会などの地域福祉関連の委員会委員長、住民組織のアドバイザー等多数。
日本社会事業大学、神戸山手女子短期大学、東海大学を経て、現在に至る。
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人材不足の現状

公益財団法人 介護労働安定センターによる「令和4年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」によりますと、ホームヘルパーの人材の「不足感」のある事業所は、83.5%と非常に高い比率となっており、介護に関する職種の平均66.3%と比較しても高くなっています。このことは、ホームヘルパーの人材不足が広く全国に及んでいることを示しています。一方、ケアマネジャーも同じく「不足感」のある事業所は、37.7%となっています。この比率は、5年間で6.8%高くなっており、ケアマネジャーの人材不足が近年徐々に深刻化している傾向を示しています。

厚生労働省の調査結果によりますと、2023年7月に、ホームヘルパーの有効求人倍率が過去最高の15.53倍となったことが報告されています。また、2021年10月時点でホームヘルパーの平均年齢は54.4歳であり、ヘルパーの約4人に1人、24.4%が65歳以上であり、70歳以上も12.2%と1割を超えており、他の介護職員やケアマネジャーなど関係職種の中で最も平均年齢が高いことが報告されています。今後、引退するヘルパーが増加することにより、その人材不足が一段と加速されることが非常に危惧されます。また、ケアマネジャーの平均年齢は、53.0歳であり、50歳以上が6割弱を占めています。有効求人倍率も4.19倍と高くなっており、各事業所が新たな人材の確保に苦しんでいる実態を表わしています。

求められる根本的な人材確保策に向けた改革

前出の調査によると、労働条件等の悩み・不安・不満等(複数回答)について、ホームヘルパーは、「人手が足りない」が、47.6%、「仕事内容のわりに賃金が低い」が33.1%、「健康面の不安がある」が32.9%と高くなっています。ケアマネジャーは、「仕事内容のわりに賃金が低い」が44.1%、「精神的にきつい」が38.0%となっています。

これまで政府は、いわゆる団塊の世代が全て75歳以上となる2025年を目標として、医療と介護に関するサービスを一体的に提供し、重い要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けられるようにする「地域包括ケアシステム」を推進してきました。その2025年までも1年足らずとなっており、2040年頃まで高齢化がさらに進み、団塊の世代の介護需要が大きく増加する時代を迎えます。特に東京などの大都市圏などで介護需要が高まることが見込まれます。

政府は、これまで介護人材の確保のために、介護職員の給与水準アップを目的に「介護職員処遇改善加算」など、様々な施策を導入してきています。特に施設の勤続10年以上の介護福祉士には、月額8万円相当の賃上げがされるなどの効果がでていますが、ホームヘルパーやケアマネジャーには、その施策の効果が十分に反映されていないことは、その人材不足の深刻な現状からも明らかであります。

制度があってもサービス無しとならないために

この4月に3年に一度の介護事業所への介護報酬の様々な改定が行われました。この改定がホームヘルパーやケアマネジャーの人材不足の改善につながるかどうか注視していく必要があります。また、日々在宅ケアの現場で奮闘しているホームヘルパーやケアマネジャーの方々の現場の要望に添った人材確保策について、根本的な改善がなされる必要があると考えます。「介護保険制度があって、介護保険料を払っていても、必要なサービスを利用できない」ことが現実とならないためにも、広く国民的な議論がなされることが待ったなしの状況にあると言えます。

【参考資料】
公益財団法人 介護労働安定センターによる「令和4年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」
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