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  • 【公開日】2024-04-02
  • 【更新日】2024-04-03

成年後見制度はどのように活用をするべきか、その概要と活用方法

成年後見制度はどのように活用をするべきか、その概要と活用方法

成年後見制度は、ご本人やご家族にとってもメリットが大きい制度といえます。家庭裁判所から選任された成年後見人等(主に法定後見人を指します)は、預貯金の管理や各種機関などの契約手続きなどをご本人の代わりに行い、未然に不利益になることを防ぎます。一方では、成年後見人等に費用が掛かるなどのデメリットもあるといわれています。

今回は、成年後見制度の概要と活用方法について皆さんと考えていきたいと思います。では、成年後見制度について確認していきましょう。

堀 善昭 教授
武庫川女子大学 心理・社会福祉学部 社会福祉学科
社会福祉士・精神保健福祉士
日本社会福祉学会・日本地域福祉学会・日本成年後見法学会
同志社大学総合政策科学研究科 博士課程(後期課程)修了。社会福祉法人に勤務をし、高齢者福祉施設の運営に携わったのち、2011年4月より武庫川女子大学の教員として勤務。成年後見制度や高齢者問題を中心に研究および社会的活動を行う。現在の社会的な活動としては、各市町村における日常生活自立支援事業契約締結審査会、社会福祉施設整備法人審査会、高齢者保健福祉計画委員会の委員を務める。
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成年後見制度の概要

成年後見制度は、認知症や障害などの理由で、ひとりで決めることに困難や不安をおぼえた方々(以下:ご本人といいます)を後見人等が法的に支えます。

成年後見制度には法定後見任意後見があり、法定後見は、判断能力が低下した後に、家庭裁判所に成年後見人等を選任してもらいます。法定後見は、ご本人の判断能力低下が著しい順に成年後見、保佐、補助といった三つの区別がなされています。つまりご本人の判断能力低下が著しければ著しいほど本人の法律行為の幅は小さくなり、成年後見人等の権限が大きくなります。

また任意後見制度は、判断能力が低下する前に、本人があらかじめ指定した人(任意後見人)に「本人のかわりに対応してほしい」ことを取り決めておく制度です。取り決める内容は公正証書によって取り交わしておき、判断能力が低下した際は、任意後見人が予め契約した内容を履行することになります。なお任意後見人の活動は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点から開始されます。

ちなみに成年後見制度は、民法、任意後見契約に関する法律、後見登記等に関する法律に基づく制度で2000年より開始されました。この2000年は、介護保険法の制度施行と同時期です。介護保険制度は、介護サービスを自己選択・自己決定・自己責任の元、契約によって利用することになりました。契約を行うためには、判断能力に不十分さが残る人々には不向きであり、それらを補完する意味で成年後見制度が必要となりました。また成年後見制度は法務局に登記をして公示することになったのに対し、2000年以前の禁治産・準禁治産制度では戸籍に記載されていました。

そもそも成年後見人等の業務は、主に財産管理と身上保護です(身上監護ともいう)。もちろん任意後見人も財産管理や身上保護を契約上で決めておけば対応できます。では成年後見人が行う業務について述べていきたいと思います。

①財産管理

財産管理とは、ご本人の財産内容を把握して、成年後見人等が財産を適正に管理します。適正に管理する財産の内容は、預貯金・不動産管理・年金・税金・社会保険・保険金・遺産分割・訴訟などの受取や支払い等多岐にわたります。成年後見人等は、ご本人のために収支のバランスを考え財産管理を行い、適正な期間ごとに家庭裁判所へ報告をし、厳正に対応します。

②身上保護(身上監護)

身上保護とは、ご本人の生活や健康の維持および療養に関する支援を行うことです。具体的な支援としては、ご本人の住居確保・生活環境の整備・施設や病院の入退(院)契約を行うことです。ただ、ご本人を引取って同居する行為、食事や介護などを成年後見人等が自ら支援する事実行為は行いません。

上記①、②を成年後見人等は業務として行いますが共通事項として、ご本人の意思を尊重し、かつ心身の状態と生活状況を配慮しなければならないとされ、常に成年後見人等は善管注意義務を負うことになります。ちなみに善管注意義務は、略語で正式には、善良な管理者の注意義務という意味です。

成年後見制度の最近の動向

最高裁判所事務総局家庭局『成年関係事件の概況—令和5年1月~12月』によると成年後見関係事件の(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件を指します)、申立件数は合計で40,951件(前年は39,719件)であり、対前年比約3.1%の増加となっています。後見開始の審判の申立件数は28,358件(前年は27,988件)であり、対前年比約1.3%の増加となっています。保佐開始の審判の申立件数は8,952件(前年は8,200件)であり、対前年比約9.2%の増加となっています。補助開始の審判の申立件数は2,770件(前年は2,652件)であり、対前年比約4.4%の増加となっています。任意後見監督人選任の審判の申立件数は871件(前年は879件)であり、対前年比約0.9%の減少となっています。

また、成年後見制度の利用者数として、成年後見制度全体の利用者数は249,484人(前年は245,087人)であり、対前年比約1.8%の増加となっています。成年後見の利用者数は178,759人(前年は178,316人)で  あり、対前年比約0.2%の増加となっています。保佐の利用者数は52,089人(前年は49,134人)であり、対前年比約6.0%の増加となっています。補助の利用者数は15,863人(前年は14,898人)であり、対前年比約6.5%の増加となっています。任意後見の利用者数は2,773人(前年は2,739人)であり、対前年比約1.2%の増加となっています。このように申立件数及び利用者数は、多い順に後見、保佐、補助、任意後見の順となっています。

皆さんは上記の申立て件数や利用者数を見て、「多い」という印象を持たれたのではないでしょうか。しかしながら、わが国の利用者数は、国際的にみて実際は約6分の1程度に過ぎないとされており(新井 2017)、本来なら総人口の1%、つまりわが国では約120万人に成年後見制度の利用が相当とされています。また先ほど確認した申立件数では、任意後見監督人選任以外は、対前年比増加となっています。

わが国の社会状況でもある高齢化などの要因により、成年後見制度利用の増加傾向が見えています。これに加え、国の施策として 「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(以下、成年後見制度利用促進法とします。)が平成28年4月に公布、同年5月に施行されたことも要因の一つと考えられます。

成年後見制度利用促進法とは

成年後見制度利用促進法は、地域共生社会実現にむけて必要な法律といえます。地域共生社会は、厚生労働省「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討PT」報告として「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」が示され(平成27年9月)、翌年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に地域共生社会の実現が盛り込まれました。

そもそも地域共生社会とは何でしょうか。厚生労働省の地域共生社会のポータルサイトによると、「地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を指します」と述べられています。つまり、たとえ認知症や障害をもったとしてもその人らしく暮らす社会を目指すことになります。

この地域共生社会実現に向けた一つの手段として、この成年後見制度利用促進法も発足しました。成年後見制度利用促進法第1条には「この法律は認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより財産の管理又は日常生活等に支障がある者を社会全体で支え合うことが、高齢社会における喫緊の課題であり、かつ、共生社会の実現に資すること及び成年後見制度がこれらの者を支える重要な手段であるにもかかわらず十分に利用されていないことに鑑み(以下省略:下線筆者))とあります。認知症や障害を持ったとしても成年後見制度を利用してその人らしく暮らすことが結果的に地域共生社会につながっていくと示されています。では、成年後見制度を用いる場合、どのような場面が想定できるのか、具体的に事例を確認しましょう。

成年後見制度を使うべき事案

最高裁判所事務総局家庭局『成年関係事件の概況—令和5年1月~12月』によると主な申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約が最も多く、次いで、身上保護となっています。預貯金の解約と身上保護に関する事例を確認してみましょう。なお、以下の事例は今回新たに作成したものです。

80歳代女性のAさんは歩行の不安定に加え、認知症の症状が出ており要介護3です。Aさんは、以前に申込みを終えていた介護付有料老人ホームの入居を決めました。そこでAさんは遠方に住む娘に対し、入居一時金を支払うため娘に現金出金をお願いしました。

後日娘は、通帳と印鑑を預かり銀行へ出向くと銀行の窓口担当者から、「Aさんは、これまで通帳や印鑑紛失が度々ありました。その際、Aさんと同席していたケアマネ―ジャーから認知症との情報を得て、後日銀行口座の凍結をしました。」とのことでした。さらに銀行からは、「口座凍結がなされているため家庭裁判所に成年後見制度の申立を行うよう」助言がありました。助言をもとに娘は成年後見制度の申立を家庭裁判所に行い、約三ケ月後に第三者後見人である社会福祉士が成年後見人として選任されました。社会福祉士は、銀行にてAさんの成年後見人の届出をし、同時に身上保護の業務である介護付有料老人ホームの契約を行いました。

上記事例において、選任時と後の成年後見人の動きについて補足をします。まず成年後見人が選任する際、審判書はAさん本人と成年後見人の社会福祉士に届きます。審判書が届いてから2週間以内に不服申立てがされない場合は、後見等開始審判の法的効力が確定します。一方では、審判に不服がある場合、申立て人や利害関係者は、この2週間以内に不服申立ての手続きを取ることになります(即時抗告といいます)。

次に、選任後の成年後見人は、Aさんと娘さんとの面談を行います。成年後見人は、Aさんおよび娘さんとの信頼関係を構築しつつ、生活ニーズを把握します。仮に法的何らかの課題があればその対応をおこないます。今回の事例であれば、通帳から現金を出金する件と介護付き有料老人ホームの入所契約となります。特に入所契約時には、重要事項の説明を介護付き有料老人ホーム職員(以下、施設職員とします)から説明受けることになりますが、成年後見人は、Aさんにわかりやすく伝えつつ、Aさんの要望を施設職員に伝えます。

また介護付き有料老人ホームでは、場合によって提携する医療機関との契約締結も必要となる可能性があります。その際も成年後見人は、Aさんや施設職員の要望や医療情報を聞き、医療関係者に対して医療行為について確認し契約締結を行うことが求められます。仮にAさんが入院する場面においても成年後見人は同様の対応を取ります。

ただ、成年後見人等は、上記のように入院契約は行えますが、手術などの医療に関する同意はできません。また介護や医療に関するサービスを受けるためには、介護保険や医療保険の加入が必要となりますが、これらの各種保険についても成年後見人が市町村などに出向き、申請手続きを行います。

このように成年後見人は、生活・医療・介護・福祉など、あらゆる事柄に気を配りながらご本人を支援します。その際は、ご本人の希望・心身の状況・生活の様子を踏まえ、関係機関との契約や支払いを行います。

また今回の事例では専門職が就任しましたが、親族が就任する場合においてかつ財産が大きい場合は、後見支援預金などの手続きも必要となります(後見制度支援預金とは,本人の財産のうち,日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を後見制度支援預金口座に預け入れる仕組みのことです。通常の預貯金と異なり、後見制度支援預金口座に係る取引(入出金 や口座解約)をする場合には,あらかじめ裁判所が発行する指示書を必要とします)。

以上のことから成年後見人が選任されるとご本人にとっては、安心して生活ができることになりメリットが大きいといえます。

まとめ(成年後見制度のデメリットと今後)

最後にまとめとして、成年後見制度のデメリットと今後の動向を述べたいと思います。

成年後見制度のデメリット

まずデメリットとして、主に3点あります。

1点目は、親族以外の成年後見人等が就任する場合、事前に成年後見人等との相性が読み取れない点にあります。成年後見人等の選任時において、特に第三者の後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士、その他専門職、市民後見人等)が就任する場合、審判確定後に初めてご本人や家族と出会うことになるため、ご本人との相性は事前に計ることが難しいといえます。また、一旦成年後見人等が選任されますと交代や中途の取り止めはほぼできない状況です。

次に2点目としては、第三者の後見人として専門職が付く場合は、報酬費用がかかることになります。報酬費用は、家庭裁判所がご本人の財産に応じて家庭裁判所が決定します。ただ、成年後見制度の申立て費用や報酬については、市町村において補助対応となる可能性(成年後見制度利用支援事業)があるため、これらの費用がご本人の口座から支出しない場合もあります。

最後に3点目としては、積極的な資産運用ができません。特にご本人が大きな財産を持っている場合は、財産の有効活用の面から考えても成年後見制度が妨げになる場合があります。

成年後見制度の今後の動向

上述のデメリットに関する内容もありますのでその動きを紹介します。2024年2月公益社団法人商事法務研究会「成年後見制度の在り方に関する研究会報告書」に成年後見制度の動きが詳細に記述されました。

この報告書の概要は

①本人にとって適切なタイミングで必要な範囲及び期間で利用する成年後見制度の導入
②本人の判断能力を基準とする現在の後見類型(成年後見、保佐、補助)の在り方の検討
③成年後見人等の柔軟な交代

などがあげられています。他にも成年後見人等の報酬や任意後見制度の在り方なども記載されています。

この報告書をうけ、小泉法務大臣が法制審議会に諮問する旨述べています。今後は、デメリットにもあった内容である成年後見制度が不要となれば終了すること、またご本人の状況に合わせて後見人を交代できる仕組み、さらには上記①~③その他、などの検討がなされます。

これまで成年後見制度の活用について皆さんと確認してきました。成年後見制度は、現時点でも生活課題を改善できる素晴らしい制度ですが、ご本人やご家族にとってより一層メリットが大きい制度になるよう現在も模索されています。また、ご本人を中心とした意思決定支援の対応が成年後見人には求められています。今後も成年後見制度の動向に注目していただければと思います。

【引用・参考文献】

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