介護老人保健施設(老健)は、長期入院からの在宅復帰などを目的として、専門的なリハビリテーションや医療ケアを受けることができる施設です。
公的な介護施設のため、比較的低価格な料金ながら、手厚い医療・介護サービスを利用できることから人気の高い施設のひとつとなっています。
「老健への入所を検討するために、施設の良い点・気になる点を詳しく知りたい」
そんな気持ちをお抱えの方のために、今回は老健のメリット・デメリットについて詳しく解説して行きます。

老健(介護老人保健施設)のメリット・デメリット
老健のメリット・デメリットを一覧表で表すと、下記のようになります。
老健のメリット | 老健のデメリット |
---|---|
|
|
老健の最大のメリットとしては、低価格な利用料金ながら専門的なリハビリテーションが受けられることが挙げられます。
一方で老健の最大のデメリットとしては、在宅復帰を目的としている施設のため、体調に問題が無ければ3か月を目安に退所しなければならないことと言えるでしょう。
次項からはメリット・デメリットの各項目について更に詳しく解説して行きますので、ぜひ参考にしてください。
ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します
老健(介護老人保健施設)のメリット
おさらいになりますが、老健(介護老人保健施設)のメリットとしては以下の4点が挙げられます。
- リハビリテーションが充実している
- 利用料金が他の施設に比べて安い
- 医師・看護師が常駐している
- 要介護1から入所できる
それぞれについて解説して行きます。
老健(介護老人保健施設)のメリット①リハビリテーションが充実している
老健では、在宅復帰を目的としたリハビリテーションを受けることができます。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった専門家の配置が義務付けられていることから、専門性が高いリハビリを受けながら、在宅への復帰を目指せることは大きなメリットと言えるでしょう。
もちろんリハビリのほか、食事や入浴、排泄の介助といった一般的な介助サービスも受けられますので安心です。
老健で受けられるリハビリにはいくつかの種類に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
リハビリの種類 | 内容 |
---|---|
専門家による個別リハビリ |
|
集団リハビリ |
|
生活リハビリ |
|
上記の表からも分かるように、老健では起居動作や生活動作などに関わる機能の回復・維持を目的としたリハビリが充実しています。
また老健のリハビリの実施時間については、1回当たり約20~30分というのが一般的となっています。
ちなみに、リハビリを受けられる頻度についてですが、老健に入所してからの経過日数によって異なり、入所後3か月の間は「1週間に概ね3回以上」リハビリを受けることができます。
一方で、入所後3か月以上経過した場合は、1週間に2回程度」とリハビリを受けられる頻度が減少していきます。
老健の利用を検討しているという方は、把握しておくといいでしょう。
老健(介護老人保健施設)のメリット②利用料金が他の施設に比べて安い
老健(介護老人保健施設)では介護サービスやリハビリが充実していながら、他の施設よりも比較的安価な料金で利用することができます。
老健(介護老人保健施設)の1カ月あたりの費用の目安は8~14万円です。
一般的な有料老人ホームで必要とされる入居金などはかからないため、毎月の居住費、食費、介護保険サービスの自己負担額分、その他加算費用などが主な費用となります。
ちなみに他の介護型の施設と老健の費用相場を比較すると、以下のようになります。
名称【運営】 | 初期費用(入居一時金・敷金) | 月額利用料 |
---|---|---|
特養(特別養護老人ホーム)【公的】 | なし | 5~15万円 |
老健(介護老人保健施設)【公的】 | なし | 6~17万円 |
介護医療院【公的】 | なし | 6~17万円 |
介護付き有料老人ホーム【民間】 | 0~数億円 | 15~40万円 |
グループホーム【民間】 | 0~100万円 | 12~18万円 |
民間の運営である介護付き有料老人ホームの月額利用料は15万円~40万円が相場となっています。
もっとも安い料金で入所できるとされている特養(特別養護老人ホーム)と比較しても大きな差がないことからも、老健の費用は比較的安価であると言えるでしょう。
老健(介護老人保健施設)のメリット③医師・看護師が常駐している
老健では医師・看護師が常駐していることも大きなメリットとして挙げられます。
最近では看護師が日中だけではなく24時間勤務している施設も増えてきており、日常から緊急時まで健康面で安心な環境が整っていると言えるでしょう。
また医師の指導により、施設内でインスリンの注射や在宅酸素などの医療ケアも受けることができます。
具体的な医療ケアについては、以下の通りです。
看護師が行える医療行為 | インスリン注射 | 人工呼吸器の管理 | 在宅酸素療法 |
---|---|---|---|
中心静脈栄養 | 褥瘡(じょくそう)ケア | ストーマの貼り替え | |
経管栄養(胃ろうなど) | 痰の吸引 | 導尿・バルーンカテーテルの管理 | |
医師が行える医療行為 | 注射・点滴 | 人工透析 | 診察及び経過の観察 |
応急処置 | 処方箋の発行 | ||
介護職員が行える医療的ケア | 体温測定 | 血圧測定 | 軟膏の塗布 |
湿布の貼付 | 軽い傷への処置 | 内服薬を飲むときの介助 | |
目薬の点眼 | 座薬の挿入 | 鼻腔に薬を噴射するときの介助 | |
研修を受けた介護福祉士が行える医療行為 | 喀痰(かくたん)吸引 | 経管栄養 |
入居者の持つ症状や持病にも幅広く対応できる体制が整っていることは、老健のメリットと言えるでしょう。
老健(介護老人保健施設)のメリット④要介護1から入所できる
要介護1から入所できることも、老健のメリットの1つとして挙げられます。
低価格で手厚い介護サービスを受けられる施設を探している方々とって、老健と特養(特別養護老人ホーム)が選択肢となることが多いのですが、特養は要介護3以上という入所条件があります。
さらには特養は地域福祉的な意味合いから介護度の高い方の入居を優先する傾向があるため、入居難易度が高く入居待ちの期間が数年発生することもあります。
一方で老健は要介護1から入所が可能であり、特養よりも入居者の入れ替わりが早いことから長い待機となるケースはあまりありません。
したがって、比較的入居の難易度が易しいことも老健のメリットのひとつと言えるでしょう。
ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します

ピッタリの施設を提案します
老健(介護老人保健施設)のデメリット
老健のメリットが分かったところで、ここからは老健のデメリットについても詳しく解説して行きます。
- 3ヶ月を目安に退所しなければならない
- レクリエーションなどの余暇活動が少ない
- これまでのかかりつけ医を受診できなくなる
それぞれについて理解を深めておきましょう。
老健(介護老人保健施設)のデメリット①3ヶ月を目安に退所しなければならない
老健の最大のデメリットとしては、本人が在宅復帰できると判断された場合、3ヶ月を目安に退所しなければならないことでしょう。
というのも老健の本来の目的は在宅復帰と在宅療養支援を行うことであるため、3~6ヵ月ごとに退所審査が行われることになっているのです。
また、平成24年度の介護老人保健施設(老健)の介護報酬の改定※によって在宅復帰率やベッドの回転率が高い施設に対して、より多くの介護報酬が振り込まれる仕組みへと変わってきています。
したがって、老健に長期間入所することは難しくなってきていると言えるでしょう。
しかし、もちろん3か月が経過しても「本人の体調では在宅復帰を行えない」と判断されれば、引き続き老健で生活することができます。決して強制的に退所させられることはないため、ご安心ください。
老健(介護老人保健施設)のデメリット②レクリエーションなどの余暇活動が少ない
レクリエーションなどの余暇活動が少ないことも、老健のデメリットのひとつとして挙げられます。
一般的な有料老人ホームでは、趣味や娯楽を楽しむためのレクリエーションが充実している傾向にありますが、老健では有料老人ホームほどの娯楽は望めません。
老健ではレクリエーションの代わりにリハビリが充実しており、在宅復帰のために時間の余白をリハビリに当てる必要があるためです。
老健がレクリエーションを提供してくれないというよりは、リハビリテーションを優先するためにレクリエーションが少なくなっていることを理解しておきましょう。
老健(介護老人保健施設)のデメリット③これまでのかかりつけ医を受診できなくなる
老健のデメリットとして3つ目に紹介するのは、これまでお世話になっていたかかりつけ医の診療が受けられなくなることです。
というのも公的介護保険制度の関係で、入所者の診療は施設に常駐している医師が行わなければいけないと定められているのです。
したがって、入所するまで長い間お世話になっていたかかりつけ医がいたとしても、入所後には常駐している医師からの診療しか受けられなくなります。
担当医師が変わって不安に感じる方も多いと思いますが、きちんと医師同士でこれまでの診察状況や症状の情報を共有しているので問題はありません。
それでも気になる点があれば、入所相談の際に施設側に相談してみるとよいでしょう。
老健のメリット・デメリットについてのまとめ
老健の最大のメリットとしては、低価格な利用料金ながら専門的なリハビリテーションが受けられることが挙げられます。
一方で老健の最大のデメリットとしては、在宅復帰を目的としている施設のため、体調に問題が無ければ3か月を目安に退所しなければならないことと言えるでしょう。
今回は老健のメリット・デメリットについて解説しましたが、老健は在宅復帰を目指してリハビリに励みたい方にとっては最高の環境のひとつです。
本記事をお役立ていただき、今後の施設選びの疑問や不安を解消できていたら幸いです。