介護保険は将来介護が必要になった場合に、介護サービスの料金を1~3割の負担で利用できる安心の制度です。
40歳からの加入が義務付けられており、以降は生涯にわたって介護保険料を支払うことになります。
しかし「実際のところ介護保険料ってどれくらい引かれることになるの…?」と疑問をお持ちの方も多くいらっしゃいます。
「今後の生活のために給料からどれくらい引かれるのか知りたい」
「金額のほかにも、介護保険料が引かれ始めるタイミングも知りたい」
そんな方々のために、今回は介護保険料はいくら引かれることになるのか、引かれるタイミング、払わなくてもいい人はいるのか?まで詳しく解説して行きます!

介護保険料はいくら引かれる?
介護保険料は、本人の年齢や加入している医療保険によって金額や支払い方法が異なります。
- 40歳~64歳で会社の健康保険に加入している場合
- 40歳~64歳で自営業を営んでおり国民健康保険に加入している場合
- 65歳以上の場合
上記のどれに該当するかで保険料の計算が変わるため、本章ではそれぞれの保険料の金額について解説して行きます。
40歳~64歳で会社の健康保険に加入している場合
例えば会社の健康保険を協会けんぽが運営しており、毎月の給料が40万円の方は介護保険料の自己負担分として3,362円を引かれることになります。
下の表は月の給与に応じて、どれくらいの介護保険料がいくら引かれることになるかまとめたものです。
4月~6月における3カ月間の給与の平均額(標準報酬月額) | 介護保険料として新たに負担する金額(月額) |
---|---|
30万円 | 2,460円 |
40万円 | 3,362円 |
50万円 | 4,100円 |
60万円 | 4.838円 |
というのも会社の健康保険に加入している場合、「標準報酬月額」によって介護保険料が決まります。
標準報酬月額とは、保険料(健康保険や介護保険、厚生年金保険)を計算するための基準となる金額です。
原則として4月~6月の3カ月間の給与の平均額をもとに決定し、その年の9月から翌年8月まで適用される仕組みになっています。
この標準報酬月額に介護保険料率を掛けた金額が、介護保険料として徴収されることになるのです。
令和4年度に協会けんぽが定めた介護保険料率は1.64%です。
したがって標準報酬月額が40万円の方が40歳を迎えた場合、介護保険料の自己負担分として3,362円が増えることになるのです。
健保組合の場合は、組合ごとに設定されている介護保険料率が異なりますので、詳しくは加入している組合のサイトなどで確認をするとよいでしょう。
※参照:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
40歳~64歳で自営業を営んでおり国民健康保険に加入している場合
40歳~64歳で自営業を営んでおり国民健康保険に加入している人は、本人の年収に応じて介護保険料の自己負担分として以下のような金額を引かれることになります。
本人の年収(経費を除いた額) | 介護保険料として新たに負担する金額(月額) |
---|---|
400万円 | 8,464円 |
500万円 | 10,447円 |
600万円 | 12,431円 |
700万円 | 14.167円 |
※参照:世田谷区「保険料の計算方法」
というのも国民健康保険に加入している場合は、前年の所得や世帯における被保険者数、資産額などの状況を加味して算出されます。
会社で健康保険に加入している方よりは保険料が高額となっているのは、自営業では会社などが介護保険料の半額を負担してくれないためです。
一般的には、以下の4項目を合算して介護保険料が決定となります。
- 所得割:前年分の世帯所得から基礎控除額33万円を控除した金額に税率を乗じたもの。
- 均等割:所得が0円でもかかる最低限の保険料負担。
- 平等割:1世帯を1つの課税対象として課税される均等割。
- 資産割:固定資産税の金額に税率を乗じたもの。
市町村によって計算方法や料率が異なるので、詳しくはお住まいの自治体に問い合わせるとよいでしょう。
65歳以上の場合
厚生労働省の発表によると、2021~2023(令和3~5)年度における65歳以上の介護保険料の全国平均月額は6,014円です。
しかし市町村によって3,300円〜9,800円という数値が記録されていたりと、大きな差があることが分かるでしょう。
というのも65歳以上の人が支払う介護保険料は、本人の所得や世帯(毎年4月1日現在)の課税状況に応じて決まることになっており、自治体によって算出される金額が異なるためです。
年間の介護保険料は毎年6月に決められており、当月中に自治体から介護保険料額決定通知書が届くため、よく確認してみましょう。
例えば世田谷区の例で見ると、介護保険料は次のようになっています。
保険料段階 |
対象となる方 |
年間保険料額 |
---|---|---|
第1段階 (基準額×0.3) |
・生活保護または中国残留邦人等生活支援給付を受けている方
・老齢福祉年金を受けている方で本人および世帯全員が住民税非課税の方 |
22,248円 |
第2段階 (基準額×0.3) |
本人および世帯全員が住民税非課税で、本人の年金収入額と合計所得金額(年金に係る雑所得金額を除く)の合計が80万円以下の方 | 22,248円 |
第3段階 (基準額×0.5) |
本人および世帯全員が住民税非課税で、本人の年金収入額と合計所得金額(年金に係る雑所得金額を除く)の合計が80万円を超え120万円以下の方 | 37,080円 |
第4段階 (基準額×0.65) |
本人および世帯全員が住民税非課税で、本人の年金収入額と合計所得金額(年金に係る雑所得金額を除く)の合計が120万円を超える方 | 48,204円 |
第5段階 (基準額×0.85) |
本人が住民税非課税で、本人の年金収入額と合計所得金額(年金に係る雑所得金額を除く)の合計が80万円以下で同一世帯に住民税課税者がいる方 | 63,036円 |
第6段階 (基準額) |
本人が住民税非課税で、本人の年金収入額と合計所得金額(年金に係る雑所得金額を除く)の合計が80万円を超え同一世帯に住民税課税者がいる方 | 74,160円 |
第7段階 (基準額×1.15) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が120万円未満の方 | 85,284円 |
第8段階 (基準額×1.25) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が120万円以上210万円未満の方 | 92,700円 |
第9段階 (基準額×1.4) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が210万円以上320万円未満の方 | 103,824円 |
第10段階 (基準額×1.6) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が320万円以上400万円未満の方 | 118,656円 |
第11段階 (基準額×1.7) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が400万円以上500万円未満の方 | 126,072円 |
第12段階 (基準額×1.9) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が500万円以上700万円未満の方 | 140,904円 |
第13段階 (基準額×2.3) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が700万円以上1,000万円未満の方 | 170,568円 |
第14段階 (基準額×2.7) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が1,000万円以上1,500万円未満の方 | 200,232円 |
第15段階 (基準額×3.2) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が1,500万円以上2,500万円未満の方 | 237,312円 |
第16段階 (基準額×3.7) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が2,500万円以上3,500万円未満の方 | 274,392円 |
第17段階 (基準額×4.2) |
本人が住民税課税で、合計所得金額が3,500万円以上の方 | 311,472円 |
(出典:世田谷区の介護保険料額)
高所得の人ほど段階は上がり、年間で支払う保険料の総額は高くなる仕組みになっていることが分かります。
保険料の詳細は自治体によって違うため、お住まいの地域ではどれくらいの金額がかかるかをチェックしておきましょう。

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介護保険料はどうやって引かれるの?
介護保険料の支払い方法についても、下記の年齢のどちらに該当するかで異なります。
- 40歳~64歳の場合
- 65歳以上の場合
それぞれについて解説して行きます。
40歳~64歳の場合
40歳~64歳は介護保険料の支払い方法についても、本人が加入している医療保険によって以下のようになります。
- 会社の健康保険に加入している場合:健康保険料と一緒に給与天引き
- 自営業で国民健康保険に加入している場合:口座振替もしくは納付書で納付
会社員の場合は保険料率を労使折半し、給与から健康保険料の一部として天引きされることになります。
自営業者は所得等に応じて保険料がきまり、国民健康保険に上乗せして徴収されます。
口座振替で支払うか納付書を利用して役所やコンビニなどで支払うかは、本人が選ぶことができます。
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65歳以上の場合
65歳以上の場合、介護保険料は年金から天引きされることになります。
40歳から64歳までは加入している健康保険料と一緒に給与から支払うことになっていましたが、この支払い方法が変更となるのです。
65歳からは健康保険料は所属する健康保険組合へ、介護保険料はお住まいの自治体へと別々に納めることになるので理解しておきましょう。
65歳以上で介護保険料を支払う場合の注意点
65歳以上の介護保険料は、基本的に年金からの天引きとなります。
しかし本人が1年に受給している年金の額が18万円以下である場合、支払方法が変わるため注意が必要です。
一般的な納付方法である特別徴収と、年金額が18万円以下の場合に行われる普通徴収についてそれぞれ解説します。
特別徴収
年間で受給している金額が年間18万円以上の場合は、特別徴収という方法で支払います。
これは一般的な納付方法であり、年金から天引きされる方法を指しています。
また前述のとおり、年金からの自動天引きを行うには1年程度の準備期間が必要となります。
したがって65歳になった当初は、市区役所・町村役場から送られてくる納付書や口座振替での介護保険料納付となるため、理解しておきましょう。
普通徴収
年間の年金受給額が18万円以下の場合は、普通徴収という方法で介護保険料を納付します。
これは納付書や口座振替などによって支払います。普通徴収の場合は自身で支払いの手続きをしなければならないため、納付忘れに注意しましょう。
また、年金の年間受給額が18万円以下の人だけではなく、年金の受給繰り下げを行った場合も普通徴収となります。

介護保険料はいつから引かれる?
介護保険料は40歳から支払うことになり、65歳以降も年金からの天引きという形で生涯に渡って支払うことになります。
しかし「具体的に40歳の何月から支払うの?」「65歳のいつから年金から介護保険料が天引きになるの?」と疑問をお持ちの方も多いです。
本章では、介護保険料を支払う具体的なタイミングを解説します。
- 40歳のいつから支払いが始まる?
- 65歳以上でいつから年金からの天引きになる?
40歳のいつから支払いが始まる?
介護保険料を支払い始める具体的なタイミングは、「40歳の誕生日前日を含む月」からです。
例えば、誕生日が5月1日の方と5月2日の方とでは、支払い開始日は以下のように異なります。
40歳の誕生日 | 支払い開始月 |
---|---|
5月1日 | 40歳の誕生日前日は4月30日。誕生日前日を含む月が4月のため、支払いは4月から。 |
5月2日 | 40歳の誕生日前日は、5月1日。誕生日前日を含む月が5月のため、支払いは5月から。 |
上記からわかる通り、1日生まれの方は誕生日月の前月からの支払いとなるため注意が必要です。

65歳以上でいつから年金からの天引きになる?
65歳以上で介護保険料の支払い方法が変わるタイミングも、「65歳の誕生日前日を含む月」からとなります。
65歳の誕生日 | 支払い開始月 |
---|---|
5月1日 | 65歳の誕生日前日は4月30日。誕生日前日を含む月が4月のため、年金からの支払いとなるのは4月から。 |
5月2日 | 65歳の誕生日前日は、5月1日。誕生日前日を含む月が5月のため、年金からの支払いとなるのは5月から。 |
しかし年金からの自動天引きを行うには、半年から1年程度の準備期間が必要です。
したがって65歳になった当初は、市区役所・町村役場から送られてくる納付書や口座振替での介護保険料納付となります。
介護保険料の年金からの自動天引きが始まるタイミングは、65歳なった翌年の4月・6月・8月・10月(誕生月により異なる)からとなります。

介護保険料を払わなくていい人はいる?
介護保険は満40歳以上の国民すべてに加入義務のある保険です。
満40歳になればたとえ無職であっても、保険料の支払い義務が発生することになります。
しかし、ただし健康保険の扶養に入ってる場合や生活保護の受給者など、一部介護保険料の支払いを免除される場合があります。
- 専業主婦などの被扶養者
- 生活保護受給者
- 市町村から減免措置を受けた人
それぞれについて詳しく解説して行きます。
専業主婦などの被扶養者
専業主婦などを含め、健康保険に加入している「40歳以上65歳未満」の被扶養者の方は介護保険料を支払う必要がありません。
「40歳以上65歳未満」の被扶養者の介護保険料は、健康保険組合内で負担することになるため支払う必要がないのです。
また病気などの都合で働けない・無職で収入がないなどの理由を問わず、親や配偶者の扶養に入っている方も介護保険料を支払う必要がありません。
しかし専業主婦などの被扶養者であったとしても、65歳以上となると介護保険料は年金からの天引きとなりますので、理解しておきましょう。

生活保護の受給者
生活保護を受給している方は、介護保険料の支払いが免除されます。
通常の場合、40歳以上65歳未満の介護保険料は医療保険料の上乗せとして納めますが、生活保護を受けた場合は医療保険自体を脱退することになります。
したがって、医療保険料を払うことがなくなるため、介護保険料を支払う義務も免除されるのです。
また、65歳以上の生活保護受給者に関しても、介護保険料は生活保護費の生活扶助費によって賄われるため自己負担はありません。
市区町村から減免措置を受けた人
所得の著しい困窮などがあり市区町村から「生活の維持が困難である」と判断された方は、介護保険料の支払いを減免できる場合があります。
具体的に減免となる要件としては、以下のようなものが挙げられます。
- 著しい収入減があった場合
- 災害で大きな被害を受けた場合
- 低所得者で生活が難しい場合
以上の何らかの事情で介護保険料を納付することが困難な場合は、早めに市区町村の窓口で相談することがおすすめです。
介護保険料の納付が困難な方は、申請に基づいて6カ月以内に限り徴収の猶予や減免が受けられる場合があるため、覚えておきましょう。

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介護保険料を滞納してしまったら?
介護保険料は滞納した場合、ペナルティが課されるため注意しなければなりません。
老後の生活を安心して過ごせるように、知識として知っておくことが大切です。
介護保険料を滞納した場合の延滞金・督促料
まず、介護保険料を納付期限までに支払わずに20日を経過すると市区町村から支払い督促状が届きます。
そして督促状の納付期限に遅れると督促手数料と延滞金が加算されることになるため、注意しましょう。
延滞金と督促量の計算は市区町村によって異なりますが、一般的には以下の割合・金額で加算されています。
ペナルティ内容 | 金額 |
---|---|
督促料(1回あたり) | 100円 |
延滞金(翌日~1ヶ月未満) | 年4.3%~14.6%増加 |
延滞金(1ヶ月以上) | 年14.6%増加が一般的 |
また介護保険料を1年以上滞納すると、督促料・延滞金以外にも追加でペナルティが延滞期間別に課されます。それぞれ期間別の追加のペナルティについて解説していきます。
1年以上滞納してしまったら
介護保険料の支払いを1年以上滞納すると、介護保険適用のサービスを利用する場合でも、一度全額自己負担しなければなりません。
もし1割負担で1,000円の保険料を支払っている場合は、サービス利用時に1万円を支払い、後から給付を受けることになります。
最終的には支払った保険料は戻ってくるものの、一時的に自己負担となるため、介護サービスを利用するために自己資金を用意しておかなければならないことは覚えておきましょう。
1年6ヶ月以上滞納してしまったら
滞納期間が1年6ヶ月以上になると、介護保険を利用した場合のサービス費用を全額自己負担することに加え、給付される金額の一部または全部が差し止めとなります。
1年以上滞納の場合なら、1割負担で1,000円なら一時的な負担金額は1万円となり、後で9,000円の費用が戻ってきます。
しかし、1年6ヶ月以上の滞納だと、9,000円全額が返金されず、後からもらえる給付額が差し止めとなるため注意しなければなりません。
また、さらに長期間滞納を続けると、差し止め分から介護保険料の滞納分を差し引くことになります。
滞納分をすべて支払うことで差し止め分は手元に戻ってきますが、滞納期間が長くなることで、本来戻ってくるはずの分が、滞納分の支払いに充てられるため注意しましょう。
有効期限の2年以上滞納してしまったら
2年以上の滞納をすると、自己負担割合を引き上げられます。
そのため、本来なら安く済むはずの介護サービスの費用が、高額になってしまうため注意しなければなりません。
また通常の場合は介護サービスの負担金額が多いとき、高額介護サービス費という制度によって利用限度額を超過した分の払い戻しが受けられます。
しかし長期間介護保険料を滞納していると、この制度の利用も停止となってしまい結果的に自己負担する介護費用は高額となるのです。
以上のように滞納期間が長くなることで自己負担の割合が増えるだけではなく、利用する介護サービスや制度の幅が狭くなってしまいます。
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まとめ
介護保険料でいくら引かれるのかは、本人が40歳~64歳か65歳以上のどちらに該当するかによって金額が異なります。
参考までに40歳で協会けんぽの医療保険に加入しており、標準報酬月額が40万円の方は介護保険料として3,362円の自己負担が増えることになります。
一方65歳以上の健康保険料の全国平均月額6,014円です。しかし市町村によって3,300円〜9,800円という数値が記録されていたりと、大きな差があることが分かるでしょう。
以上のように介護保険料で引かれる具体的な計算方法は、加入している健康保険やお住まいの地域の自治体によっても変わってくるため、よく確認してみることがおすすめです。
将来に渡って安心して生活できるよう、これから起こるお金の変化はしっかりと把握しておくことが大切です。
介護保険料は、本人の年齢によって金額や支払い方法が異なります。65歳以上の健康保険料の全国平均月額6,014円です。しかし市町村によって3,300円〜9,800円という数値が記録されていたりと、大きな差があります。詳しくはこちらをご覧ください。
参考までに40歳で協会けんぽの医療保険に加入しており、標準報酬月額が40万円の方は介護保険料として3,362円の自己負担が増えることになります。詳しくはこちらをご覧ください。