ご家族が胃ろうで特養へ入居を考えている場合、胃ろうなどの医療処置が必要でも入れるのか、費用は高いのかなどが、気になるのではないでしょうか。
この記事では、胃ろうなどの経管栄養が必要な方でも特養へ入居できるのか、入居した場合の費用支払いのシステムなどについて解説します。
胃ろうで特養に入居する費用の目安や、費用負担を軽減する制度までわかりますので、胃ろうで特養を検討する際にぜひお役立てください。

胃ろうがあっても特養(特別養護老人ホーム)へ費用負担なく入所できる?
「胃ろう」について耳にしてはいるけれど、実際どのようなものかわからない方へ向けてここではまずは「胃ろう」について簡単に説明します。
胃ろうは、口から十分に栄養を摂れない方が、栄養を摂るためのシステムです。胃に開けた穴にチューブを通して、胃に栄養を直接流し込みます。
胃ろうを作るためには、入院して、手術が必要です。胃ろうを作ったあとも、定期的に医療機関を受診して、バルーン(胃ろうのチューブを固定する部分)やチューブの交換などの処置を受ける必要があります。
胃ろうが作れたら、1日3回の食事時間に、栄養を注入します。
胃ろうの方が特養へ入居する場合、別途費用は必要なく、ほかの入居者と同じように入居できます。
ただし、胃ろうには必要なケアがあり、施設によっては胃ろうの方を受け入れるのが難しいと、お断りせざるを得ない場合もあります。
施設での胃ろうケアの体制について見ていきましょう。
胃ろうの方が入れない特養(特別養護老人ホーム)もある
特養のなかには、胃ろうの方の受け入れが難しい施設もあります。
胃ろうのケアをできるスタッフが限られ、胃ろうの方を受け入れる体制が整わないためです。
胃ろうの栄養注入や処置は、本来医療行為であるため、看護師や医師しか行えない決まりでした。そのため、看護体制が整わない特養は、胃ろうの方の受け入れが困難でした。
特養(特別養護老人ホーム)では医療者でなく研修を受けた介護士が対応
2012年の法改正に伴い、看護師だけではなく、研修を受けた介護士でも胃ろうの栄養注入をしてもよいという方向性になりました。
介護士が胃ろうの栄養注入ができるようになり、特養でも、入居対象者が大きく広がりました。
しかし現在でも、介護士の研修体制や看護体制が整わないなどの理由で、胃ろうの方の受け入れをお断りしている特養もあるのが現状です。
引用元(厚生労働省「平成23年介護保険法改正について」)
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胃ろうへの管理費用は特養(特別養護老人ホーム)でもかかる?
胃ろうへの管理費用は、特養でも必要です。
主に定期的に医療機関を受診する費用と、特養に支払う費用という構成になります。
ここからひとつずつ説明します。
定期的に外部の病院を受診するため医療費がかかる
胃ろうは、一定期間ごとに医療機関を受診しカテーテルの交換をしなければなりません。
特養にも医師はいますが、胃ろうの処置は特殊なため、一般的には外部の病院、可能であれば胃ろうを作った病院へ受診します。
外部の病院を受診する際には、在宅の方と同じように公的医療保険制度を利用して費用を支払います。
通常、胃ろうの費用には、主に以下の3つが必要です
- バルーンやチューブの交換手技費用…2,000円
- 材料費
- バンパー型 約1万7,000円(ガイドワイヤーなし)~2万2,000円(ガイドワイヤーあり)4~6ヵ月ごとに交換
- バルーン型約7,000円1、2ヵ月ごとに交換
- 栄養剤の費用医薬品扱いの栄養剤:1200kcal30日分で、2~6万円程度
上記の金額は、公的医療保険制度の対象ですので、自己負担割合に応じて、金額の1~3割が窓口での支払いになります(69歳未満は3割負担、70歳以上75歳未満の一般的な年収の方は2割負担、75歳以上であれば1割負担)。
バルーン交換の頻度や費用は、バルーンの形状によって異なります。バンパー型よりバルーン型の方が安いですが、短い期間での交換が必要です。
栄養剤には、食品扱いのものと、医薬品扱いのものがあります。病院で処方される医薬品扱いの栄養剤は、1~3割負担ですが、特養に入居していると、食品扱いの栄養剤を施設で注文する所が多いです。その場合は、栄養剤は病院で処方してもらわずに、施設で注文して支払います。
胃ろうの費用は食費という扱い
特養での胃ろうの費用は、「食事代」として支払います。胃ろうの方の食費が決まっている施設、栄養剤の費用を実費で支払い、別途管理料が必要な施設などさまざまです。
胃ろうの栄養剤を医薬品として処方するのか、食品として注文するのかの決まりはないため、施設ごとに決められています。
胃ろうの食費は、管理費用も含みます。外部の医療機関を受診して医薬品扱いの栄養剤を処方してもらった場合でも、施設での支払いが全くなくならない可能性があるという点もご留意ください。
特養に入居する前に、栄養剤の入手方法は病院での処方でもよいのか施設での注文なのか、施設への支払い方法などについて事前に確認するとよいでしょう。
胃ろうで特養(特別養護老人ホーム)入居|費用を安くする制度を紹介
胃ろうで特養に入居する場合に費用を安くする制度を紹介します。
医療費負担を軽減する制度、介護保険サービス費用の負担を軽減する制度、施設の費用を軽減する制度などがあり、主に以下6つが挙げられます。
- 医療機関や薬局で支払う医療費が1ヵ月の上限額を超えた場合に、超えた費用が戻る、高額療養費制度
- 1ヵ月に支払った介護保険サービス費用が上限額を超えた場合に、超えた分が支給される、高額介護サービス費
- 世帯単位で、1年間に医療保険・介護保険で支払った合計金額が上限額を超えた場合、超えた分の費用が支給される、高額医療・高額介護合算療養費制度
- 同じ医療保険の世帯の方が1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合に、所得の控除を受けられる、医療費控除
- 所得が低い方に対して、介護保険施設での居住費・食費の支払いに上限額(負担限度額)を設けて、超えた分の費用が介護保険から支給される、特定入所者介護サービス費
- 社会福祉法人が運営する特養などに入居する際に、一定の低所得者を対象に、費用が軽減される、利用者負担軽減制度
これらの減免制度について、制度の概要や適用条件、減免額、申請方法等について詳しく知りたいという方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

特養(特別養護老人ホーム)で胃ろうの管理費用に含まれるケア一覧
特養で胃ろうを管理する際に、行われるケアを紹介します。
胃ろうでは、トラブルを防止するためにも適切な管理が大切です。
口腔ケア
胃ろうの方には、口腔ケアが重要です。
口から物を食べていないと唾液の分泌量が減るなどの理由で、口腔内の細菌が増えやすくなります。胃ろうの方は嚥下(えんげ)機能、すなわち飲み込みの機能が落ちている方が多いです。そのため、唾液とともに細菌を誤嚥する(食道に入るべきものが誤って気管に入る)と、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。
誤嚥性肺炎を予防するためにも、日々の口腔ケアで、口腔内を清潔に保つのが大切です。
吸引で窒息や誤嚥を予防するケア
日常的に痰が多い方の場合は、胃ろうを長時間注入していると痰が絡んで吸引が必要になる可能性があります。栄養注入中や注入直後の吸引は、咳などを誘発して嘔吐しやすいです。
嘔吐すると、嘔吐物を誤嚥して窒息・誤嚥性肺炎になる危険がありますし、薬や栄養、水分が必要量摂取できなくなってしまいます。
普段から痰が多い方の場合は、胃ろうの栄養注入を開始する前に、事前に吸引するなどのケアが必要です。栄養の注入と同様に吸引に関しても、研修を受けた介護士が実施できるように法律が改正されたので、特養での吸引は、介護士が行う場合もあります。
逆流防止のためのケア
胃ろうでは、逆流防止のためのケアが重要です。
逆流とは、栄養剤が胃から食道やのどに向かって逆方向に流れ出る状態です。のどまで逆流すると誤嚥して窒息・誤嚥性肺炎になる危険があります。
胃ろうでの逆流を防止するためには、注入中や注入後30分~1時間は、上半身を30度以上斜めまたは90度に上げた姿勢を保つのが基本です。
胃ろう周辺部の清潔ケア
胃ろう周辺部の汚れは、きれいに拭き取るのが大切です。汚れが付着したままでいると皮膚トラブルにつながります。
理想は入浴ですが、入浴できなくても、カテーテルを軽く引き上げて温かく湿らせたガーゼや綿棒で拭き取ります。
皮膚トラブルがあった場合は、医師に伝えて早めに処置をするのがよいでしょう。
胃ろうの費用を安くする制度も活用して特養(特別養護老人ホーム)のご検討を
ここまで特養に胃ろうの方が入居した場合の費用や、費用負担を軽減する制度などについて説明してきました。
胃ろうの方は、定期的に外部の病院を受診したり、栄養剤を購入したりする費用がかかります。費用負担が重い方に対しては、負担を軽減する制度がありますので、活用しながら入居を検討しましょう。
胃ろうの方で入れる施設は、看護・介護体制などが整っている、介護医療院、介護付き有料老人ホーム、介護老人保健施設などがあります。胃ろうの方のケアは、看護師だけではなく研修を受けた介護士でも対応できるようになりましたが、施設によっては対応できない所もあります。上記以外でも受け入れ体制が整っている施設がありますので、胃ろうの方の入居に関して、直接問い合わせてみるとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
特養での胃ろうの栄養は、施設で栄養剤を用意して、食事代として支払うところが多いです。医薬品扱いの栄養剤を外部の病院で処方してもらい、持ち込めるのか、その場合の食費などの支払いはどうなのかなどは、施設ごとで決まりがあります。入所に際しては、栄養剤の入手方法や支払いについて事前に確認するとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。