WHOのホームページによると、ホスピス・緩和ケアとは「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフを改善するためのアプローチ」であると定義されています。
痛みを和らげることを目的として行う処置であるため、死を早めたり遅らせたりするようなものではなく、生命を肯定し死にゆくことを自然な過程としてとらえるのがホスピス・緩和ケアの特徴です。
日本では医療保険制度を利用することもできるホスピス・緩和ケア病棟ですが、入院にはいくつかの条件があることに注意しなくてはなりません。そこで、本記事ではホスピスの入院条件について解説していきます。

ホスピスの入院条件
ホスピスの入院条件は施設によっても若干異なりますが、おおむね以下の2つの条件です。
- 末期の悪性腫瘍患者(がん)または後天性免疫不全症候群(エイズ)に罹患している方
- 医師・看護師等による入退院の判定によって認められた方
医師・看護師による入退院の判定基準についても詳しく解説していきます。
末期の悪性腫瘍患者(がん)または後天性免疫不全症候群(エイズ)に罹患している方
厚生労働省の「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」によると、ホスピス・緩和ケア病棟の施設基準として「末期の悪性腫瘍患者(がん)または後天性免疫不全症候群(エイズ)に罹患している方を入院させ」という文言があることからも、末期のがんやエイズに罹患していることが条件の一つとなっています。
文中に「または」という文言があることからわかるように施設によってはエイズの方の受け入れが無い場合や、逆に末期がんの方の受け入れが無い場合もあるので入院する際は施設の受け入れ体制を確認するようにしましょう。
例えば、日本で初めて院内病棟型ホスピスとして生まれた淀川キリスト教病院では入院条件を「原則として、当院または他の病院にがんのために通院している、もしくは入院中である。」としており、末期がんの方のみを受け入れていることがわかります。(出典:淀川キリスト教病院「入院の流れ/入院基準」)
以上より、ホスピス・緩和ケア病棟に入院するにはまず末期がん又はエイズに罹患していることが条件となります。
医師・看護師等による入退院の判定によって認められた方
厚生労働省の「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」によると、設置基準に「当該病棟における患者の入退棟を判定する体制がとられていること。」という条件があります。したがって、入退院の際は患者の入退院の判定によって決まることがわかります。
具体的な入退院の基準は施設によっても異なりますが、例えば上述した淀川キリスト教病院の場合、以下のような条件が設定されています。
- 原則として、ご本人ががんであることをご存知で、がんを治す治療ができないことを理解しておられる。
- ご本人及びご家族が当病棟への入院を希望されている。
- 当病棟にて対応できない医学的状況ではない(人工透析、頻回の輸血、血小板輸血など)。
- 患者さんに対して、嘘をつかないコミュニケーションを大切にしたいとご家族が希望されている。
(出典:淀川キリスト教病院「入院の流れ/入院基準」)
ホスピス・緩和ケアはそもそも死を迎えるまでに患者が人生を積極的に生きていけるように支える治療療法であるため、やはり本人が希望していない場合は入院できない場合がほとんどです。
そのほかにも、人工透析輸血などの高度な医療ケアが必要な場合は病院によって対応できる場合とそうではない場合があるので、施設によって入れない可能性があることに注意してください。
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ホスピスに入院できない条件
ホスピス・緩和ケア病棟に入院できない条件は以下のようなケースです。
- 在宅療養が可能と判断されているケース
- 末期がん・エイズ以外の病状の治療が優先されているケース
- 認知症などで他の患者に迷惑をかける可能性がある場合
それぞれについて解説していきます。
在宅療養が可能と判断されているケース
ホスピスの入所判定会議にて入院が出来ないと判断されるケースとして最初に挙げられるのは、末期がんやエイズなどの苦痛症状が緩和されていて、在宅療養が可能と判断されているケースです。
というのも、やはりホスピス・緩和ケア病棟は末期がんやエイズの方の痛みや苦しみを可能な限り取り除いて穏やかな最期を過ごすためのケアを行う施設です。
また、ホスピス・緩和ケア病棟への診療報酬制度も入院の条件と密接にかかわっています。というのも、ホスピス・緩和ケア病棟では以下の2つの条件のどちらかを満たす施設の方が報酬が高くなるよう設定されています。
- 全ての患者さんの入院日数の平均が30日未満であり、患者さんの入院意思表示から平均14日未満で入院させている
- 患者さんの15%以上が在宅や診療所に退院する
(出典:令和4年3月4日保医発0304第2号:「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いついて」)
一度入院した方を無理やり退院させたりすることはできないので、すでに症状が緩和されていて長期間に渡って入院することが予想される場合は入院できないようなケースが多いのです。
そのため、現在治療が進み苦痛症状が緩和されている場合などは入院できないことがほとんどとなっています。
末期がん・エイズ以外の病状の治療が優先されているケース
次にホスピスに入院できないケースとして考えられるのは、末期がん・エイズ以外の病状の治療が優先されるようなケースです。
というのも、上述したようにホスピス・緩和ケアの施設の設置基準として、末期がん又はエイズを罹患している人を対象とする施設であると明記されている以上それ以外の病の治療が優先される場合は入院が出来ない場合がほとんどなのです。
したがって、末期がん・エイズ以外の病状の治療が優先されている場合は入院できないことがほとんどです。
認知症などで他の患者に迷惑をかける可能性がある場合
最後に、ホスピス・緩和ケア病棟への入院が出来ないケースとしては、認知症などで他の患者に迷惑をかける可能性がある場合です。
というのも、ホスピス・緩和ケア病棟では季節ごとにレクリエーションなどのイベントが行われるなど、皆で楽しい時間を過ごす取り組みがされています。そのため、認知症などを患っていて他の患者や看護師などに暴言・暴力などがあり著しく迷惑をかける場合は入所を断られることもあります。

ホスピスの平均滞在期間は?
ホスピス・緩和ケア病棟における平均滞在期間は、通常30日間程度です。
というのも、上述したように診療報酬として「全ての患者さんの入院日数の平均が30日未満であり、患者さんの入院意思表示から平均14日未満で入院させている」または「患者さんの15%以上が在宅や診療所に退院する」場合は、そうではない場合に比べて高い診療報酬が設定されているからです。
結果として短期間で退院してもらい在宅やクリニック等に通院してもらったほうが高い診療報酬が受け取れるので多くの病院では30日以内の退院を促される場合が多いのです。
入院期間はもちろん施設や入院する患者の状況によっても異なりますが、終身に渡って緩和ケアを受けることが特徴的なホスピス・緩和ケア病棟ですが実際には30日程度で退院しなくてはならない場合も少なくないことを覚えておきましょう。
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ホスピスに入院するタイミング
ホスピスに入るタイミングは法律などで明確に規定されているものではありません。そのため、手術や抗がん剤治療などの治療よりも苦痛症状の緩和ケアをするべきタイミングがホスピスに入るタイミングと言えるでしょう。
もちろんホスピスに入院した後も本人の希望によって退院できるだけではなく、在宅医療やクリニックへの通院で問題ないと判断された場合は退院するという基準を設けている病院も少なくないので、一度入ってから退院するという選択肢もあります。
ホスピスに入るタイミングについては明確なルールなどはないので、主治医や家族と話し合ってから決めるようにしましょう。
ホスピスの入院条件を知って慎重に検討しよう
本記事ではホスピスに入院する条件について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
ホスピスは最期まで末期がんやエイズなどの苦痛への緩和ケアを受けられる施設となっていますが、実際には平均在院日数は30日程度となっています。
そのため、入院条件についてだけではなくタイミングについても積極的に家族と話し合って慎重に検討を進めましょう。

ホスピスの入院条件としては、「末期の悪性腫瘍患者(がん)または後天性免疫不全症候群(エイズ)に罹患している方」「医師・看護師等による入退院の判定によって認められた方」が該当します。詳しくは、こちらをご覧ください。
ホスピスに入院できない条件は、「在宅療養が可能と判断されているケース」「末期がん・エイズ以外の病状の治療が優先されているケース」「認知症などで他の患者に迷惑をかける可能性がある場合」などのケースが該当します。詳しくはこちらをご覧ください。